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「息子もまだ若く将来を夢見、仕事に励んでおりましたが御影石町のアパートが全壊により絶命、今も信じられない思いです。この様な中で不眠不休のご活躍、社会貢献に私ども家族も悲しんでばかりおれないと勇気づけられます。兵庫県臨床検査技師会の災害支援活動に期待します」

臨床検査技師の後輩のお父さんから手紙をいただいた。この活動とは、被災者の避難生活は長期化が予想され、糖尿病や高血圧など劣悪な避難所の災害弱者への慢性疾患対応が深刻な課題となったことで立ち上がったものだった。

全国から医療チームが178派遣されたが、残念ながら臨床検査技師の派遣は皆無で全く検査ができない状況であった。現在医療で臨床検査ができない事は考えられない。被災地の医療機関が機能不全で避難生活が長期化する現状から備えもマニュアルもなく国内初の災害医療支援仮設診療所付属の仮設臨床検査室を稼働させた。カナダ政府から寄贈のテント検査室には生化学検査、血液検査、尿・一般検査、心電図検査、血液学検査の検査機器が完備され延べ181名のボランテイア検査技師が総件数1,202件の検査を実施した。糖尿病等慢性疾患検診時にも協力して避難所に出向いての検査も行った。また避難所の2次医療災害を未然に防止・予防するため公衆衛生面から既設トイレ、仮設トイレ、汚物ゴミ集積所の消毒作業等の防疫支援活動も実施した。

自然が人の生きる権利を奪うのなら奪われずに生き残った者は心静かに亡き人々に弔意を示し、生きている証しを今後の糧となるように防災対策マニュアルに編纂して全国の検査技師会や関係団体に配布し、その後に発生した大規模災害に活かされたのは救いであるが課題が多く残されている。

タイトル

防ぎえた災害弱者~臨床検査技師の活動~

投稿者

福田邦昭

年齢

79歳

1995年の居住地

神戸市西区

手記を書いた理由

病院等の医療機関では看護師、医師に次いで3番目に多いのが臨床検査技師です。若き後輩を含め2名が亡くなりました。人の命を救う病院が未曾有の大震災により機能不全となりました。システム化・自動化された最先端の機器は使えなくなりハード面だけでなく医療機関で不可欠なマンパワーがライフラインの断絶で大混乱が起き、備えのマニュアルは役立たない劣悪な状況下で何ができたか、貴重な体験から何をすべきか、その後の災害で何が活かされたのか。いざというとき、医療に携わる者として何ができるか常に考えてほしい。30年経過の今、大規模災害時の支援人材育成講習会が始まりました。