「人生で何よりも辛いことは何ですか?」と、聞かれたら、私は「大切に想う人を失うことです」と、答えます。
阪神・淡路大震災当時、私は中学校3年生でした。高校受験を控えた冬、家屋が倒壊し、家族と離れ離れになり、友を失ったことは私にとって涙を止めることができない出来事でした。
友とは小学校時代からの知り合いで、中学校では同じクラスになり、同じ係をし、同じ部活に所属しました。部活や受験勉強の悩みを話しながらも、最後にはいつも大笑いで下校していました。思春期にありがちな「俺、あいつ苦手」「私、あの子なんとなくイヤ」と、言った言葉が飛び交う学校生活の中で、友のことを悪く言う噂は一つもありませんでした。人や動物を好きな心の優しい誰からも好かれる友が何故……という気持ちは30年経っても消えません。
震災を経験してから私はいつも「彼の分も生きていきたい」と、思っています。「人生2人分」と思う気持ちで無茶をしがちな私を見て、「自分が生きていくだけでも大変なんだから……」と、心配して声をかけてくださる人もいました。確かにそうかもしれません。しかし、彼が高校生になってからしたかったであろうことや出会えたかもしれない人たちには全力で向き合うことで私の人生の財産も増えています。
約10年前、仕事を通じて、復興住宅に住む戦前生まれの方から昨今の人間についてのお話を伺ったことがあります。「最近の人は我慢が足りない。相手を想いやることを大事にする人が増えればいいのに」 私は、この精神を自分の息子や娘たち世代にも伝えていきたいと思います。
この30年間の内、祖母との別れにより自暴自棄になりかけることや仕事の影響による心身の不調を感じることもありました。それでも踏ん張れたのは、愛する人が沢山いたからです。生きる強さを見せてくださる友のご両親や当時避難所から私を引き取ってくださった塾の先生、切磋琢磨し合い、辛い時でも私の人生を明るい色に染めてくれた学生時代からの友人や社会人になってから出会えた仲間、そして家族も私の愛する人です。
相手を想うことは相手を幸せにするだけでなく、自分自身の人生もより豊かなものにしてくれます。努力を惜しまず、人をあたたかい気持ちで包むことが私たち生きる者の使命であると感じています。
あなたは人を愛していますか?
タイトル
あなたは人を愛していますか?
投稿者
中学3年生で震災を経験した人
年齢
44歳
1995年の居住地
神戸市東灘区
手記を書いた理由
人間関係の大切さを人は改めて考えなければならない時に差しかかっている時代だと感じたからです。インターネットが普及したことで、人との付き合い方や考え方に変容がもたらされていたところ、コロナやハラスメント、効率化主義等の影響が大きく、ここ十数年の間で人との繋がりの希薄化が加速している方も多くいらっしゃると思います。
面倒だと思う日常からの人との関わり合いが天災も含めて自分自身がいざ困った時に何ものにも代えがたい助けや支えになることを私自身が身をもって体感しているため、周囲を愛する気持ちや感謝することの大切さを伝えたいといった「想い」を広報誌を手にして持ちました。1人でも一瞬でも私の手記で人に優しくできるきっかけになれば幸いです。