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2019/11/3

REPORT

「LIFE IS CREATIVE展 2019」高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション① レポート

10/19土、LIFE IS CREATIVE展2019〈高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション〉①
「“食”が育む、高齢者の活躍」を開催しました。KIITO副センター長で同展ディレクターの永田宏和をモデレーターに、台湾から陳映璇さん(SUI)、游麗裡さん(財團法人老五老基金會)、神戸から加藤慧(KIITO)が登壇しました。
高齢者シェフが腕を振るうレストラン「食憶」(台湾)、野菜栽培から調理、配達までを一貫して行う「OLD YES!」(台湾)、2015年のLIFE IS CREATIVE展をきっかけに誕生した本気のパンづくりチーム「パンじぃ」(神戸)の活動から、“食”をテーマに高齢者たちの社会参画について考える内容です。

  

■高齢者シェフが活躍するレストラン|陳映璇さん(SUI)
「食憶」とは、食の記憶という意味です。コミュニティ醸成を目指し、プロではないが、料理が上手な高齢者を集め、料理を作りながらお客さんとコミュニケーションをつくっていくレストランである食憶を運営しています。私の両親も友人の両親も徐々にリタイヤし、リタイヤ後の3-40年の生活に直面しています。私の祖父は90歳を超えても元気です。この高齢者のパワーを社会や地域にどう生かすかを考える中で、料理を思いつきました。高齢者の中には料理上手な方が多いです。6-70代の7,8割の方が料理をしています。3-40代は1-2割しか料理をしていません。高齢者はリタイヤ後目標がありません。自分のこどもたちも忙しくてコミュニケーションをとれません。さみしい老後を送ることになってしまいます。この問題に対して、食を通して物語をつくり、高齢者やお客様もお互いにコミュニケーションをとれ、新しい友達がつくれるような仕組みにチャレンジしました。
はじめに祖父や祖母、周辺の友達の両親からレストランの実験をスタートしました。料理が上手で作るのが好き、またお客さんとの会話も楽しめる方を、高齢者シェフとして集めました。会場探しも大変でした。食事スペースも広く確保したいです。料理をしながらコミュニケーションを深めていくためには広く、オープンなキッチンも必要です。そのような条件を満たす場所はあまり多くありませんでした。実験を重ね、撮影した動画を宣伝に活用し、自営での営業をスタートさせました。高齢者シェフは3名で調理を行うのがバランスがいいことがわかりました。登録数は20名います。シフトを組んで毎回3名で、お客さん30-40名の料理をつくります。キッチンには高齢者シェフ3名にアシスタントの若いシェフを1名つけています。毎回オープン時には高齢者シェフの紹介からはじまります。召し上がっていただく料理の背景にあるストーリーを体験していただきます。ここからコミュニケーションがスタートします。またテーブルに行き、少しお話もしてさらにコミュニケーションを深めていきます。
2018年に4カ月間で、30回ほど食事会を開催しました。1000名を超える方が来られました。料理を食べながらコミュニケーションを深め、家に帰ったら料理を作ってみたくなるような感覚になり、お互い友だちになって、交友関係が広がっています。
2019年にとてもいいお店の場所も決まりました。50名以上の高齢者シェフに料理を作っていただき、年間100回の食事会を開催しました。将来的には高齢者シェフの料理の真空パックも出していきたいと考えています。台湾の美食を通して、多くの方と交流をしてきたいですし、ケアするだけの目的ではなく、高齢者のポテンシャルを最大限生かしていきたいです。

  

■高齢者コミュニティ醸成|游麗裡さん(財團法人老五老基金會)
台湾は日本と同じように高齢化を迎えています。85歳以上の比率が上昇し、60代の若い高齢者がどのように後期高齢者をサポートしていくかを考えています。現在高齢化が急速に進む国には、韓国、台湾などがあります。少子化も進み、基金会の20年でもひしひしと変化を感じています。高齢者も多様化しており、独居老人も増加しています。
私達の基金会は、非営利型の基金会です。1997年に設立、5年前に全国組織へと発展しました。歳を取る前に身体、資本、家、パートナー、友達をしっかり結び付けて豊かにしていくことを目指しています。台湾の中部から北部にかけて7つの拠点、12のサービスセンターがあります。それぞれ高齢者のコミュニティがあるところに作られています。高齢者がコミュニティに貢献することが大切だと思います。歳を取るにつれ豊かな生活を送れるようにすることが一つのビジョンです。すべての人が自分の人生を選択する機会があると信じています。それは、私達サービスを提供する際にスタッフが頭の中にある理念です。活躍できる高齢者生活を過ごしてほしいと思っています。彼らに十分な貯蓄がなければ負担になってしまいます。現在の人口構成で、健康・未病の人口は282万人、高齢者が330万人ほどなので、彼らに健康を維持し、達成感を感じ、貢献してもらうことを私達は考えていかなければいけません。
独居老人のための給食サービスをスタートし、そこから食堂へ発展していきました。高齢者の家へデリバリーし、独居老人に外へ出てきてほしいと思い、食堂ができました。高齢者の場所をつくり、活躍できる、活躍してもらうための食堂です。サービスを受けるだけでなく、他の高齢者へサービスをしてもらうことも考えています。高齢者は食堂でキッチンのサポートをしたり、デリバリーのサービスを請け負ってくれています。お弁当の宅配サービスは、冷めた料理の嫌いな台湾の人のために保温機能に優れたお弁当箱を使用しています。また栄養バランスも考えたメニューで、健康指数が低かった高齢者が、血糖値が良くなったなど効果が出ています。多くの人に栄養を考えた健康なお弁当を届けたいです。まだ400-500件なので、もっと拡大していく必要があると思っています。

  

■男性高齢者のパンづくりチーム|加藤慧(KIITO)
ワクワクする高齢社会を目指し、2015年に「男・本気のパン教室」という、高齢男性を対象とした料理教室を開催しました。仕事を引退した男性高齢者は今までの仕事の偏ったつながりのみで、地域とのつながりがつくれず、孤立、引きこもるという問題があります。我々はリサーチをする中で、誰かのために新しい技術を身に付け、活躍できる場をつくることで、きっかけが生まれるのではないかと考え、パンのまち神戸ということもあり、パンづくりを本気で学ぶ取り組みを行いました。我々は高齢者との接点をあまり持てなかったため、社会福祉協議会やあんしんすこやかセンターなどと連携し、チラシなどでの参加者募集を開始しました。
参加者は、家族からの推薦などで参加された方が多く、自ら申し込むという一歩がかなり難しい事も分かりました。パンづくりは、神戸の有名なパン職人から指導を受けます。料理をあまりしたことがないため、計量なども苦戦しながら行いました。シェフの指導だけでなく、参加者による自主練習も重ね、約2か月で美味しいパンを焼けるように成長しました。はじめの目標は、カフェイベントや地域イベントに参加し、一般の方に自分たちが焼いたパンを食べていただくことです。100-200個のパンを焼きました。不安の中での販売スタートでしたが、お客さんからの「おいしい!」という声を聞き、参加者も大きなやりがいと自信が生まれました。参加者は「パンじぃ(=パンをつくるおじいちゃん)」と呼ばれています。その後も継続的に活動を続け、KIITOのイベントや地域の様々な催事に出店し、パンの販売を行っています。新しいメニューを学ぶ場として、スキルアップ講座も開催しています。現在神戸市内5チーム、佐賀県、広島県に各1チーム生まれ、全国に広がっています。
パンじぃの活動を振り返ると、いくつかポイントが見えてきました。一つはスタートラインが一緒であること。全員が初めてパンをつくるため、一緒に成長ができます。二つは本気である事。遊びや趣味でなく、全員が本気で取り組む姿勢がモチベーションを上げていきます。
パンじぃに続けと、コーヒーチーム、マドレーヌチーム、カレーチームとバリエーションも増えています。また各チームのコラボレーションなども計画中です。
継続的なスキルアップ、無理をしない活動、パンじぃ(高齢男性)だからできる事を常に考えながら我々もサポートを続け行きたいと思います。

  

会場からは、「高齢者プログラムのアイデアの発想と目指す目標のバランスはどのように考えているか?」「台湾の活動は、はじめからビジネスにするつもりで活動を始めたのか、どこかの段階でビジネスしていこうと設計したのか?」「ビジネスにしていくための重要なポイントは?」などがありました。

まとめ:モデレーター永田
どのお話も“つなぎのデザイン”がとてもうまいと思います。いろいろなものをつなげている、人と人、高齢者同士、高齢者と若者、高齢者と社会、高齢者とシェフ、高齢者と農園…さまざまなつなぎのデザインが展開されています。どのような新しいつなぎのデザインを考えていけるかがポイントなのではないかと思います。日本には“三方良よし”言葉があります。江戸時代に活躍した近江商人の経営哲学で、売り手も喜ぶ、買い手も喜ぶ、世の中のためにもなる、3つが良いという事が大切という意味です。今日のお話はまさに三方よしであると思います。高齢者も喜んでいる、食べている人も喜んでいる、いろいろな世の中にとっていいことを生んでいます。“食”の切り口はそのようなものを作りやすいポイントだと感じています。世の中にはもっとたくさんの食のプロジェクトがあると思います。これからもっといろいろなプロジェクトを起こしてくためにも、台湾と神戸で学び合い、広げていきたいと願っています。

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LIFE IS CREATIVE 展 2019〈高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション〉②についてはこちら
LIFE IS CREATIVE 展 2019〈高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション〉③についてはこちら
LIFE IS CREATIVE 展 2019〈高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション〉④についてはこちら

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photo:片山俊樹