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2020/7/21

REPORT

+クリエイティブゼミvol.34リサーチャー養成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」 例題2:「With/Postコロナ社会のライフスタイルを考える」 第6回目 最終発表 レポート

7月14日(火)に、「+クリエイティブゼミvol.34リサーチャー養成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」 例題2:「With/Postコロナ社会のライフスタイルを考える」」の第6回(最終回)を開催しました。今回はグループごとの成果発表を行いました。このゼミでは、「Withコロナ」と言われる状況下での社会や生活の今後の展望を示すことを目標として、関心ごとに分かれた各グループで問いを設定することから初めて、リサーチ、考察を行い、成果をまとめる作業を行ってきました。初のオンラインでのゼミでしたが、各グループで知識や考えを出し合い、共同作業で発表をまとめるところまで達成しました。難しいところもありましたが、いずれも優れた内容にまとまりました。以下、各グループの発表を紹介します。




コミュニケーション

コミュニケーショングループではオフラインの価値に着目し、「オンラインコミュニケーションの不満・デメリットから見た、豊かなコミュニケーションのあり方とは何か?」という問いをたてました。

現状のオンラインの事例を、①技術革新によって補っている事例、②オンラインとオフラインのコミュニケーションが融合している事例、③オンライン技術による別体験の事例、の3つに分け、それぞれの状況を分析することを目的にリサーチをしました。

①では、zoomやどうぶつの森のように、空間を超えたオンラインコミュニケーションを行なっている例をリサーチしました。その中で発生する不満を解消するために、オンラインの技術で「より現実に近い状況」をうみ出そうとしているように感じました。

②では、今回のゼミのように、オフラインとオンラインのコミュニケーションが両立している状況の例をリサーチしました。人だけでなく物、ツール、サービスでも融合が起きていて、それらのコンテンツを多様に利用することでコミュニケーションの質を上げていると感じました。

③では、オンラインライブのように、オンラインにしかない体験の価値を生み出している例をリサーチしました。アイドルや商品開発者といった、比較的遠い存在とのコミュニケーションが可能になっていることがわかり、オンラインコミュニケーションの可能性や多様性を感じました。

これらをふまえ、オフラインコミュニケーションの価値を、世の中の事例から考察しました。コロナウイルスの影響でオンラインコミュニケーションが普及しても、オフラインは仕事やプライベートなどの多くの場面で必要とされています。オンラインで得られる情報には限界があり、オフラインでは五感を用いて、無意識のうちに膨大な量の情報を得ていたということに気づきました。

よって、オフラインの価値であると仮説を立てた「空気感」はこの情報量によって生み出されていたのではないかと考えました。また一方で、オンラインの手軽さなどによる、新たなコミュニケーションの可能性を感じました。

今後、オンラインベースのコミュニケーションが進めば、その状況に慣れ、今感じている不満は少なくなり、③のようなオンラインにしかないコミュニケーションが進化していくのではないかと考えています。しかし、オフラインで得られるものは変わらないので、人間がオフラインコミュニケーションに価値を感じ、求めるという状況は変わらないのではないかと考えました。

講評
全体に聞きやすい発表でしたし、問いもはっきりしていて、問いの導き出し方も良かったと思います。4象限でメリット/デメリット、オンライン/オフラインという図式を作っていましたが、網羅的に分析できる手法なので、問いを明確にする手がかりになっていたと思います。また、事例の話も良く練られていて、アプリの機能の話と実体験の話を取り上げて、複数の視点から観察をしている点も良かったと思います。時間が足りなかったのが残念でしたが、もっと調べたいということが出てきたのは、今後につながるのではないでしょうか。(山崎)

自分自身にも身近なことが出てきて共感できる発表でした。最後も、納得ができる形で落ち着いているのですが、オフラインとオンラインの乖離など、本当にみんなそう感じているのか、年齢、立場、関係性、異なる感じ方になるケースもあるのではないか、もっと声を拾ってみて、新しい傾向を探してみる、などといったことも試みては良かったのでは、とも思いました。分類してみて、ここがわからないというところから問いを作って、調べていくというのは良い流れで、面白い発表でした。(永田)





教育・芸術

このグループでは、今回のゼミの主題である「With/Postコロナ社会のライフスタイルを考える」ところから、これからの社会においてどのような教育の可能性があるかについての情報を集め、その中から「オンラインとオフラインを併用したハイブリッド教育の可能性」についてリサーチをすることにしました。リサーチは、その「可能性がある」という妥当性を確かめることを目標に据えました。

リサーチを進める中でオンライン教育のメリットとデメリットが浮かび上がってきました。
メリットとしては、オンライン教育はカリキュラムに縛られ過ぎず自分たちの興味関心を伸ばすことができる可能性があり、子どもたちの自立心・個別の能力を伸ばせる可能性につながること、学ぶ場所や講師の多様化、教師と生徒の双方向教育、・理解度に合わせた個別指導等の教育の機会の創出による学びの均等化、などが挙げられました。

デメリットとしては教師の能力やハード面に左右され、各種の試みが維持できるかとの懸念と、オンラインに偏重することによる、生徒たちの社会性の不足への懸念が挙げられました。

このチームではオンラインがオフラインの代替の役割として使われるところから、オンラインが担うことで問題がない役割とオフラインでしか果たせない役割、それぞれの利点を明確にし、組み合わせることで新たな可能性が見出せると考えていました。

しかし、リサーチを進めることでオンラインを使うことで切り開ける可能性が多様に示され始めているものの、その実として本当にオンラインが担うべき役割かどうかの検証が十分ではなく、そのデメリットやオフラインこそが持つ学びの場の価値について、評価できる事例を見出すことができない現状であることがわかりました。

オンライン教育のデメリットはハード面の整備の遅れや、オンラインによる授業形態に対する経験値の浅さなど、急を要したオンライン化整備によって起きた初期段階特有の問題点であり、時間をかけることで解決に導ける問題であることが予想できます。

その上で我々のリサーチでは本日の発表までのリサーチの結論として、オンラインがオフラインの欠点を担うことができるという点でこの発表の段階では「ハイブリッド教育の可能性」についてその妥当性はあると結論付けました。

強制的にオンライン化した教育形態の中から本当にオンラインが担うべき役割と、オフラインだからこそ価値を持つ学びの場の価値について、より明確化させていくことがリサーチを続けて行く上での次の課題だと考えています。

講評
妥当性を調べるということに絞っていたこと、そこからどうオンラインを活かせるかという問いに変換していったという内容だったと思います。その時に、何を捨象していったのかも、引きずりながらやっていくことも必要だったと思います。教育あるいは芸術という前提があって、それをオンラインでどう改善できるか、というアプローチになっているのですが、オンラインのラディカルさは教育の在り方じたいを変えるというところにもあるのではないか。メリット、デメリットという視点だと、今の教育に役立つかどうかという判断になるのですが、一方で、今と違う教育のありかたが起こるかもしれない。もっと広い可能性もありうるわけです。役割や立場を固定するのはリサーチの方向を定めるのに必要ではありますが、それでリサーチの方向が条件づけられます。新しいことを見つけるには、前提をまず疑うことも必要です。教育はこういもの、ということが問い直されたときに、オンラインでもオフラインでも、教育の新たな可能性を見い出せるかもしれない。そういう方向のリサーチがあっても良かったのではと思います。プロセスや結論はしっかりしていましたが、あえて複雑な方向に向かってみたら、違う議論が生まれていたかもしれませんね。(山崎)

芸術の話はどこに関わるのかなというのが、疑問の1つ。それと、良くまとまっていて、明解だと思うのですが、おさまりが良すぎるので、リサーチの結果や、プロセスが提示されても良かったと思います。代表的なリサーチの紹介や、こういうことが多く見つかったという背景的な要素があれば、説得力が補強されたと思います。データは沢山あったはずなので、そこに触れてほしかったと思いました。(永田)





情報・移動・交通

このグループでは、新型コロナウイルスの感染拡大で、進行中ゆえに「正しい」情報が存在しない、「わからない」ことが社会に溢れている状況下で「情報の信頼性」をどう確保するか、という問いを設定しました。その対象として、専門家が情報発信を試みた「コロナ専門家有志の会」(有志の会)の実践(noteやTwitterでの発信)を取り上げ、その実践や反応、成功点、改善点について、調査を行いました。

2020年1月以降の新型コロナウイルスの感染拡大とともに、様々な施策が打ち出され、2月より「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」(専門家会議)が開催されました。また、3月末には専門家会議のメンバーも含む「新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会」が「Change.org」が呼びかけを行い、直後に「コロナ専門家有志の会」がnoteやTwitterを通じて、専門家が直接、新鮮な情報を発信し、拡散する試みを開始しました。

主な発信手段であるnoteやTwitterを見てみると、noteではイラストや要約でわかりやすくメッセージを伝える、ハッシュタグで拡散を呼びかける、信頼できる情報源などを紹介するといった工夫が見られる一方で、フォロー数は伸び悩む傾向がみられました。また、表現や伝え方についてnote側や協力者からのフォローもなかったようで、「秒でわかる」はnoteの投稿では実現されませんでした。一方、Twitterではnote投稿と連携しつつ、生活上の注意点の紹介、疑問に答える投稿、市民への呼びかけといった性質のツイートが投稿されました。しかし、最も反応を(リツイート)を喚起したのは、「連帯」を訴える、情緒的なツイートでした。

これらから見えるのは、コロナの情報ではなく情緒的な投稿への反応が多く、注目が徐々に低下し、わかりやすく伝えることができなかった、ということです。結局、「専門家会議」(有志の会)としては、政府が発信をすれば良いという結論に至りました。

しかし、求められる情報が何かへの配慮や対応、他の媒体の利用、既存メディアとの連携など、まだまだ改善点はありますし、専門家からの発信はまだ可能性があるのでは、というのが私たち考えです。以前から、新型インフルエンザや東日本大震災を鑑みて、専門的な情報発信についての提言がいくつか示されてきました。「有志の会」は専門家集団が自ら情報発信を試みるという、新たな局面を示しました。一方で課題も明らかになったわけです。

4月5日のツイートはコロナとの闘いは必ず終わりがあると述べています。しかし、現状は「Withコロナ」です。多くの人が感染のリスクを感じ、一方で専門知や用語が氾濫しています。生活とこれらの知識、言葉が近くにある以上、政府だけが発信するよりも、上述のように、科学者・専門家からの発信も改善可能だし、可能性あるのではないかと私たちは考えます。

むろん、今回は情報発信の対象、狙いを詳細に考察はできませんでしたし、パンデミックに関する文化人類学分野の先行研究の参照も不十分でした。この点が今後の課題だと考えています。

講評
本格的なリサーチのにおいが感じられる発表でした。専門家の情報発信というのは面白い問いですが、そこにたどり着くまでのプロセスも知りたかったですね。例えば、東日本大震災でも、専門家が専門家がTwitterで情報発信することはありましたが、その時と現在とは状況が大きく変わっている。東日本大震災の時は「御用」などの批判がありましたが、今回の批判は、その時とは異なってきている。問題の出方が変わっているわけで、研究テーマとしても面白いし、問いとしては光るものがあると思います。メディアごとの傾向も出していたし、考察でも改善点を提示して、前向きなアクションにもつながる可能性を持った発表でした。この先の方向性が見えて何かがありそうだという、予備調査的にも可能性を感じるものでした。(山崎)

分析、リサーチの経緯も見えてきて良かったと思います。問いができてから分担をしていたと思うのですが、、noteやTwitterをしっかり分析していて、データや根拠から導き出された考察が多かったので、リサーチとしてよくできていると思いました。専門家の発信というと、テレビでも専門家が多く出ていて、色々なことが言われているけど、どういう専門家でどれくらい権威のある人なのか、信頼できるのか、わからなくなってきている。そういった領域はどうなっているのか、新たな問いとリサーチの可能性が広がっているのではないか、あるいは受け手の側の対応の仕方はどうするか、ということも知りたいと思いました。(永田)





働き方

「With/Postコロナ社会のライフスタイルを考える」というテーマを「働き方」という切り口から調査することになった働き方チームは、まずインターネット上の記事や雑誌、書籍から情報収集をするところから始めました。

調べていく中で共通していたのは、テレワークの増加に見られるような、制度や考え方の「変化」。これを我々の問いとし、第2段階では働く立場にある人の生の声を聞く、というリサーチ方法に切り替えることにしました。世代や地域、雇用形態の違う約40名の方々にご協力いただき、コロナウイルスの影響で「働き方に変化があったか」のヒアリングを試みます。

すると今度は、「時間」「雑談」「つながり」「家族」という、繰り返し出現するキーワードが見えてきました。ヒアリング内容にじっくりと目を通し、4つのキーワードに着目しながら読み解いていくと、時間の使い方が変わったことによるメリット・デメリットや、ちょっとした雑談が重要だったという気づき、家族や社員とのかかわりかたが変化したという意見から、「働き方」を起点にしつつも、生活の中のさまざまな場面に変化が広がっていることがわかりました。

また、今回のリサーチではヒアリング調査において予想よりも多くの調査結果が得られたことから、自身の経験や現状に対する考えを誰かに伝えたいと感じている人が多い、という気づきもありました。そして、経験を共有することにより生まれる、自他への優しさ・思いやり、そして未来に向けた「強さ」のようなものも感じ取ることができます。

一方で、リサーチ方法やまとめ方については、世代・職種別の分析や4つのキーワードの相互関係から、また別の解釈ができるのではないかという反省点がありました。ヒアリング時の質問事項をさらに洗練することでも、より興味深い調査結果を得ることにつながったのではないでしょうか。

以上のような課題もあったものの、チームメンバーにとって非常に実りのあるリサーチ結果となりました。

講評
本格的な素晴らしい調査だと思います。しっかりとしたデータの収集と分析を、これだけの短時間でできたことに驚きました。今回のインタビューデータはこれから残すべき貴重なものですが、これから、発言や考え、動きがどう変わっていくのかという問題も立てられると思います。大きな出来事が起こって時に人の声を聞いておくことはとても重要で、ここを参照点にすることで、次の変化がどういうものが読み取れるようになります。現状での解釈も重要ですが、データを残すことも、とても需要なわけです。文化人類学では、記述する、残すことが重要で、解釈は常に開かれているところがあります。状況が変われば解釈の仕方が変わることは当然起こることで、データを取集する、生のデータを残す、という点でも、このリサーチはとても重要なものだと思います。「気づき」であげられていたことも重要なことが多く、例えば、話に応じてくださった方が多かったというのは、話すことで、思っていることがクリアなったり、悶々とした気持ちから脱するということでもあります。その点で、文化人類学は「社会的ケア」と言われることもある。成果をだすことも重要ですが、調査することじたいが、パフォーマティブに人へのケア、問いへケアになっていることが、このリサーチからも見えるわけです。時間はなくても、ここまでできているのは素晴らしいの一言です。可能ならば、是非、続きをしていただければと思います。(山崎)

自分の仕事もインタビューがベースになっていて、防災のプログラムも、インタビューから作っていったという側面があります。その点で、このグループがインタビュー調査をするということにとても興味がありました。しっかりとインタビューをしたからこそ、4つのキーワードが浮かび上がってきたのだと思います。このキーワードから他の媒体についても掘っていくということも可能なのではないでしょうか。また、インタビューから考察へつなげる、良いプロセスを身につけられたのではないでしょうか。
オンラインの関係性は日常の関係性に起因しているのでは、というのが発表への感想です。どういう関係性が事前に築かれているかで、オンライン/オフラインの関係性も全く異なってくるではないか、当たり前のことですが、やはりそこが重要なのかと感じた次第です。(永田)



発表後の振り返りでは、今回が初のオンラインのゼミで、現在進行形のことを扱い、アクションプランをゴールとしなかったため、問いを立てるまでを苦労したり、意見の集約や難しかったり、発表へまとめるのに時間がかかったりと、難しさを感じたという意見が多く挙げられました。一方で、遠くからでも参加できたこと、今起こっていることについて話す機会がなかったので気持ちがクリアになったこと、問いを自分たちで立ててリサーチをしたので、色んな資料や声を実際に聞く機会が得られた、深く考える機会になった、といった意見も挙げられました。難しいゼミでしたが、文化人類学のリサーチを本格的に学んで実践する良い機会になったのではと思います。またこうした形で、ゼミの良い形を模索したいところです。

長い期間にわたって、ゼミへご参加いただいたみなさまに御礼を申し上げます。

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