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未来のかけらラボvol.2 ~パッシブデザイン再考~ レポート2

7/15(月・祝) トークセッション パッシブデザインとわたしたちの未来

 

二日目には、前日のレクチャーの内容を受け、モデレーターの芹沢とのトークセッションを行い、会場との意見交換を行いました。

60年代後半という時代は、「私たち人間はこのまま突き進んでよいのだろうか」と思い始める時代でした。レイチェル・カーソン『沈黙の春』に代表されるように、第二次世界大戦の時の、なりふり構わない技術の進歩によって、環境へ与える影響が蓄積し、顕在化してきた時だったのです。また、経済成長もいつかは頭打ちになるだろうことが見え始めた時でもありました。
そんな中、ガガーリンが宇宙に行き、「地球は青かった」という言葉を残し、人類が初めて自分たちの生活している場所を外から見た、という事実が世界に衝撃を与えました。音楽分野ではビートルズの「アビー・ロード」がヒットし、世界中どこにいても、レコードによって同じ音楽を聞くことができる、世界が小さくなったことを実感する時でもありました。また、バックミンスター・フラーにより「宇宙船地球号」概念が登場し、ローカルを超え、地球規模でものごとを考えなければならないのではないか?そのような視点が提示されたのです。
また、イアン・マクハーグにより「Design with Nature」(1969)が表され、「エコロジカルプランニング」という手法を確立しました。私たちをとりまく環境を自然と社会の総和として捉えるもので、例えばある土地の上に建造物を建てるとき、土地の利用の仕方を経済的な要素のみで決めずに、地面の状況や環境を調査した上で考えよう、というものです。
このような時代のなか、古代ギリシャ時代から存在していたパッシブデザインの概念に、1975年ごろにその名前があてがわれました。

今回、「パッシブデザイン再考」と題した意図として、そのような選択肢がそもそも存在するとことを知らせたかった、ということがあります。2011年3月11日以降、エネルギーの再考が叫ばれる中で、ソーラーエネルギーなどの代替案がそもそも「アクティブ」が前提となっているのです。そもそも、私たちの生活は現状のエネルギー消費量を保たないと成り立たないのでしょうか?そうではない選択肢もあってもいいのではないでしょうか。
この考えがあまり知られていない背景として、パッシブに重きを置こうとする人は声を大きくして(=アクティブに)主義主張を押し通すことに対して躊躇するマインドがあるのでは、と芹沢は指摘します。
専門家同士で共有するだけでなく、社会へむけて存在そのものをアピールしていくべきでは、そして、社会全体でオルタナティブなあり方を試していくマインドを持つべきではないか、と芹沢は続けます。

多量のエネルギーを使い、外界と遮断し、または熱を周りに無関係に排出することで、生活環境はどんどん自閉的になっています。今一度、私たちは生き物の世界に生きている、ということを思い出し、家の建て方、住まい方、食物の食べ方などについて、自然とうまく付き合っていくことを考えてもいいかもしれません。
一人ひとりが自分自身の行動をすこしずつ変えていくことによってのみ、生活をよりよくしていけるのではないか、と芹沢は提案します。大きなことは自分一人では変えられないけれども、個人で選択できる範囲のことは自分で責任をもつことができます。たとえば、家を建てるチャンスに恵まれた時、パッシブデザインを一部に取り入れることは可能なのです。

末武さんが例に出されたブラッド・メルドーの例は、そのままパッシブなあり方とは何かを指し示します。周囲の環境や人の話を聞く重要さです。末武さんが、尾根で囲まれている宮崎のある村での調査の経験を話してくださいました。地元の人を土の人、外から調査にやってきた人を風の人と呼び、風の人が土の人に地元のことについて聞くことによって、地域のポテンシャルを見つける手法を取ったそうです。アクティブに話すことばかりがクリエイティブだと捉えられがちですが、「聞く」とは何もしないということではなく、クリエイティブな営為なのです。

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2013.7.29

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