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2015/2/9

イベントレポート

ジョン・ムーア氏レクチャー「在来種、F1種について」(+クリエイティブゼミvol.13 「食」編第1回) レポート

2015年1月29日(木)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる”食”の勉強をしよう!」第1回となる、ジョン・ムーア氏レクチャー「在来種、F1種について」を開催しました。

このゼミは、ゼミマスターの米山雅彦シェフ(パンデュース)がゼミ生に対して何かを教えるのではなく、米山シェフが、今興味のある、食にまつわる各分野の方々をお招きして、お話を聞いていくゼミです。米山シェフも毎回、ゼミ生と同じようにゲストのお話を聞いて、質問して、一緒に勉強していくようなかたちで参加します。

第1回のゲストは、教師→コピーライター→パタゴニア日本支社長→高知県にて在来種の種を守る一般社団法人SEEDS OF LIFE設立、とユニークな経歴を持つ社会企業家・ジョン・ムーア氏。在来種について、また、現在の日本の市販野菜のほとんどを占めると言われるF1種(一代雑種)についてのお話をうかがいます。
なお、今回のみ「食」プロジェクトの一環として、ゼミ生以外にも単発の聴講生も受け付け、通常回よりも多くの参加者が聴講しました。

始まってみると、「在来種」「F1種」の定義や問題点を論理的に説いていくような内容ではなく、植物、ジョンさんの生活や活動の中で触れている自然、天体などのイメージ画像のスライドを織り交ぜながら、「F1種」という、生物のサイクルに対して不自然なものを作る、ものの考え方について問うような、哲学的な語りかけでした。

この日も寒い神戸でしたが、ジョンさんはなんと半袖。ニコニコと笑顔で、レクチャー中は一度も座らずに、会場内を回りながら、受講者一人一人に語りかけるような口調でお話しされました。その一端を紹介します。

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私の日本語は中途半端。30年間日本にいるけど、日本語は勉強しない。完璧な日本語を使ったら、みなさんは、私の言葉だけ聞いて、私の話を聞かない。頭を使わない。私だけ話すのは意味がない。あなたの気持ちと心も半分使ってください。それからアクションしてください。毎日少しだけでもアクションして、今まで何もやってなくても、少しだけアクションしてください。私の言う事は信じないで、自分でやってください。言葉だけ、は、2Dだけ。

ほとんど私たちは、2Dの世界に住んでいる。幼稚園からあまり変わってない。新しい考えがあまり入ってない。
言葉の中、頭の中、心の中は2Dだけ。3D,4Dがわからない。その2Dの世界がF1種を、日本の原発問題を、サラリーマンの会社を作った。2Dの考え方は、世界中の、この惑星の問題を作った。だからもういい。3Dと4Dの世界を見ましょう。そうしないと絶対変わらない。まだ同じ問題を作る。

私は、高知市から2時間くらいかかる、山の上にある村に住んでいる。
食べ物も家も、ぜんぶ自分で作り、お金が必要のない生活をしている。
山の上は、毎日、一年中食べ物が出来る。あたたかいから、電気は要らない。テレビもない。
なぜテレビがないか。美しい景色があるから。3か月前は美しい紅葉だった。人間の魂は映像を欲しがり、イメージを欲しがる。イメージを食べる。だからテレビが薬になる。写真も広告もそう。本物がないなら、テレビを見ましょう、となる。

種は、国の、県の、人のものじゃない。次の世代のためにある。
誰が種を欲しいか。どうして欲しいのか。いい食べ物を作りたいのは誰のためなのか。自分のため?

A4サイズのタッパーの中で、元気な野菜を作ることができる。誰でもできる。畑に行かなくても、部屋の中やテーブルの上でできる。
種の相性もおもしろい。相性がとても悪い種同士でも、間に、お互いと相性のいい植物を挟むと、いいコミュニケーションがとれる。土の中、見えないところで良くなる。相性のいい種をまけば、2年後、3年後、どんどん収穫が楽になる。
大根、クローバー、そば、マリーゴールドを一緒に植えると、その土の中で、根っこは、仕事をしている。薬はいらない。何もしない。種をまくだけ。
F1種は、みんな同じ大根がたくさんできて、次の実が実らない。F1はDNAのかたちを決めちゃった。新しいかたちをつくらない。気持ち悪い。
自然はみんな違うのが当たり前。DNAも光も違う。ウイルスも違う。だからおもしろい。だから未来がある。だからいつも新しい道が出てくる。

種だけ守るのは意味がない。人間は自然のちょうどいいタイミングが分からない。私たちは自然の邪魔をしてしまうから。山の中、森の中は人間の手が入ってなくても元気。
野菜は、自然がつくる。農家の仕事はほとんどない。
人間だけの食べ物を作るのが、人間の問題。この惑星の生き物全部の未来の食べ物を作る、虫の食べ物もつくる、隣のおじいちゃんの食べ物も作る。
私たちだけがおいしい・おいしくないを考えること、それはF1の考え方。

DNAは、二つの螺旋。同じところをまわるのではなく、前へ、前へ進む。螺旋はヒント。
よく考えてください。山の野草、ほとんど人の口に合わないけれど、どんどん作っていって、少しずつ甘くなる。どんどん進むと、甘くなり過ぎて、水ばかりでおいしくなくなる。
バランスが大切。バランスは、中のかたち、味、DNAをつくる。中のDNAは、光の螺旋から作られる。

腸の中の生物と土の中の生物はほとんど一緒。お腹の中は畑。
生き物を絶対食べてください。本当の食べ物は生き物です。キムチ、納豆、みそ。

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終了後の参加者アンケートでは、「思っていた話と違った」という意見が多数。ただ、戸惑いを覚えつつも、「かえって面白かった」「ものの見方が変わった」「自分でも少しずつ生活を変えていこうと思う」といった感想を書いてくださる方が複数見られました。
種をきっかけとして、子ども、生き物、地球の未来を視野に含んだスケールの大きな話が、参加者一人一人の心に響いたようです。

4月から、ジョンさんは淡路島の洲本から20分ほどのところに、スタジオをオープンさせる予定とのこと。洋服、野菜、家具、などあらゆるものを、手を使って作るスタジオになるそうです。今後の活動も楽しみです。

次回のゼミは、「食ゼミにあたって考えること」と題して、ゼミマスターの米山シェフ自身から、本ゼミの趣旨や各ゲストをお招きした理由などをお話しいただきます。

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる”食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/