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2015/5/11

イベントレポート

KIITOアーティスト・イン・レジデンス 柴 幸男+ NO ARCHITECTS ワークショップ「まち歩きでつくる小説と地図」レポート

2015年3月14(土)-15(日)

劇団「ままごと」主宰の柴 幸男さん、建築ユニット「NO ARCHITECTS」さんを講師に迎え、各線三宮駅からKIITOに向かう道のりである「フラワーロード」をまち歩きし、地図と小説を作るワークショップを行いました。

 

1日目:3月14日(土)13:00-18:00

まずはウォーミングアップの遊び。ワークショップの拠点となる部屋「303」の室内のみで、「気になるもの/こと」を見つける遊びです。いくつかのポイントが見つかったら、一つを選び、それを自分自身に関連付けて自己紹介をしました。自分にはこんな性格や性質があり、見つけたポイントと似通っているところがある…、あるいは、自分は仕事をする時にこんなことに気をつけているから、このポイントが気になってしまった…など、様々な自己紹介が飛び出します。不思議と、年齢や所属などの情報を紹介し合うよりも、強く印象に残ります。

 

さきほど室内のみで練習した「気になるもの/こと」を、今度はまちをフィールドに行っていきます。3つのチームに分かれ、NO ARCHITECTS さん特製の白地図を手にさっそく出発!KIITOを出てフラワーロードを歩きながら、その都度地図に書き込んでいきます。

 

途中、神戸市役所の展望ロビーに上り、柴さんと合流。歩いてきた道のりを上から眺めつつ、見つけたポイントを報告します。通常地図に書き込まれるのは、建物や道路など「動かない」ものですが、今回はそれらに限らず、その時その場で遭遇したものであれば、後々消えてしまうものでもOK!

 

2時間のまち歩き時間はあっという間に過ぎ、KIITOに戻ってきました。ここからは、またまたNO ARCHITECTSさん特製の、とても大きな白地図が登場。その長さ、なんと7.2メートル!この長い地図上に、見つけたポイントをすべて載せていきます。
オリジナルの地図が完成!同じ場所を歩いていても、気になるポイントは一人ひとり違うのですね。これまで意識していなかった場所に、こんなにもまちの見どころがあったなんて…。

 

2日目:3月15日(日)13:00-18:00

この日もウォーミングアップから始めます。今度は「303」の室内だけでなく、部屋を出た廊下や共用スペースの部分も対象として「気になるもの/こと」を見つけ、昨日とは違うやり方で紹介してみます。
自身を、ポイントを紹介する「案内人」と設定し、ポイントを「人物」に見立てます。その時考えるべき要素は、ポイント(人物)の「名前」、案内人とそのポイント(人物)の「関係性」、性別や性格、どんな歴史を持っているかといった「キャラクター性」。これらの要素をどのように設定するかによって、紹介の仕方はまったく異なるものになります。
ここで取り組んだのは、対象を「観察」し、「設定」を考え、読み手にどのような順番で何を伝えるかという「構成」を考える、ということ。これは、柴さんが演劇の戯曲を考える時の手順と同じだといいます。

 

さてここで、昨日みんなで作った地図に戻ります。地図上に載せたポイントのうち一つを選び、それを主人公に設定して、いよいよ小説を書き始めます。参加者みなさんが主人公に設定したのは、ごみ箱、池に落ちていたたばこ、写真店のアルバイトスタッフ、ノラネコ、彫刻、貼り紙…などなど。丸い形をしたオリジナルの原稿用紙を使い、これまでのワークショップで学んだことを総動員して、それぞれのペースで書き進めていきます。
200字程度書き進めていくごとに、柴さんに読んでもらってアドバイスを受けます。主人公が誰なのか、場所はどこで、時間帯はいつぐらいなのか(朝、昼、夜?)など、小説の基本設定を読み手に分かりやすく伝えるのは、予想以上に難しいことが分かります。これらをしっかり書くためには、まち歩きの時に行った観察が生きてきますね。

 

今回は小説を完結させることよりも、何を主人公に設定したのか、そこにどんなキャラクターを加えたのかといった、物語をつくる視点を持つこと、またそれらを共有することが第一の目的です。ある程度書きすすめた時点で、地図上で主人公がマッピングされている位置に原稿を配置して、参加者同士で小説を読み合いました。
本ワークショップを通じて、まちをこれまでとは違った視点で観察すること、観察を生かして物語を生み出すプロセスを具体的に体験いただけました。
本ワークショップは、柴さんとNO ARCHITECTS さんの制作プロセスの一部でもありました。今回のワークショップをもとに、柴さんによる新作戯曲とNO ARCHITECTS さんによるオリジナルの地図を制作し、リーフレットとしてまとめました。リーフレットを片手に歩けば、各線三宮駅からKIITOへの道のりが、これまでとまったく違った見え方になるかもしれません。
リーフレットはこちら

KIITOアーティスト・イン・レジデンス 柴 幸男+ NO ARCHITECTS
ワークショップ「まち歩きでつくる小説と地図」
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