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2015/8/19

イベントレポート

‬+クリエイティブゼミ vol.17 ものづくり編「ものづくりのデザインを見つめなおす。」第1回

2015年8月19日(水)

+クリエイティブゼミ vol.17 ものづくり編「ものづくりのデザインを見つめなおす。」第1回目は、講師のセメントプロデュースデザイン金谷勉さんと、KIITO副センター長永田によるトークセッションを開催しました。

まずはじめに、永田より、タイトルにもある「ものづくりのデザインを見つめなおす。」ために必要なこととして、「プロデュースの力」があるのでは、という考えから、KIITOで実践している企画やプロデュースの事例について、紹介しました。

また、その事例として、永田が理事長をつとめるNPO法人プラス・アーツで手がけた無印良品との共同企画「いつものもしも」についても紹介しました。この企画は、無印良品が防災に取り組む上で、新しい防災グッズを開発するのではなく、既存の商品の使用方法や組み合わせを考えなおすことで、防災グッズとして新しい価値を生み出すという、たくさんのアイテムを持つ無印良品ならではのものです。
これらのように、既存のものやことを見つめなおし、新たな価値観を生み出していくことが大事ではないかと、話しました。

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次に、金谷さんより、セメントプロデュースデザインのこれまでの事業事例をご紹介いただきながら、ものづくりデザインにおけるプロデューサーの役割について、お話をいただきました。

セメントプロデュースデザインは、製造者のポテンシャルと市場のニーズを、デザインというかたちで橋渡しをし、製造者の市場における価値向上を目的とする、戦略的なアプローチを行っています。
多くの製造業事業者たちは、高い技術を持っているのにも関わらず、それらの生かし方がわからず、ただ技術の継承のみを行っているという現状が見られるといいます。
しかし、製造業を仕事とする人々のうち、60歳以上が73%、30歳以下が6%という統計結果が出ており、ただ継続して仕事を行っているだけでは、近い将来、多くの技術が失われていくことが懸念されます。
この現状に求められるのは、最新機器の導入などではなく、製造業を営む人々が、その技術や設備、人材を活かしながら、革新となるものを模索する意識を持つことが重要であるとのことでした。

また、大多数の製造業者の仕事の現状として、以下の問題があげられました。
・OEM(完全受注仕事)でのビジネスの売上がメインになっている
・自社での販売流通がない
・営業体制が整っておらず、不況期に煽りを受けやすい。
請負の仕事は、収支の増減が読みにくく、価格競争に巻きこまれやすいというデメリットが考えられ、仕事自体を失うリスクも高いとのことでした。
反対に、自販・発信の方法を持つ業者は、収支の増減が読みやすいためコントロールがしやすいため、幅広いビジネスにはなりにくいかもしれないが、運営が安定しやすいというお話がありました。

これらを踏まえ、セメントプロデュースデザインが製造業者に介入をするときには、「コト、モノ、ミチ」の3つからなる商品開発活動を行います。
【コト】意匠設計→クリエイティブコントロール
【モノ】製造設計→コストコントロール
【ミチ】販路設計→ストックコントロール

今は、「良いものをつくっていたら黙っていても売れる」という時代ではありません。
価格勝負ではなく「価値」で勝負をするために、企画段階では、何度も検証を重ね試行錯誤し、戦略的に生産・流通まで見通し、人々の手に渡るまでの流れを、製造業者自身がしっかりと把握することが求められているといいます。
セメントプロデュースデザインは、多くの事業者が、その高い技術を次世代へと伝承し、また先へ繋がるための挑戦を行いながらも、安定した生活を送ることのできる仕事づくりを目的に、今後もデザインの力で事業者の再生を促していきたいとのことでした。

次回は、富山県の鋳物メーカーである高田製作所の高田晃一さんをお招きし、私たちが手に取る商品の向こう側について、職人としての目線から、そのプロセスをお話いただきます。

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