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2015/8/28

イベントレポート

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる”食”の勉強をしよう!」第9回 レポート

2015年5月24日(日)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第9回「塩について」今回は、赤穂市立海洋科学館・塩の国見学ツアーと題して、塩づくり体験と施設見学、横山嘉人氏に塩についての講義を行っていただきました。


塩づくり体験
晴天の中、塩の国に集まった一行。ゼミ生に加え、ツアーのみの参加者を含め、総勢36名の大所帯です。
まずは塩づくり体験のワークショップから始まりました。
250mlのかん水から、約50gの塩を作ります。まず、かん水の入った鍋を火にかけ、へらで鍋幅をいっぱいに使いながら混ぜ続けます。しばらくして煮詰まってくると、鍋の縁をスプーンで削ります。その後火を消し、まだ余熱がある状態でスプーンで混ぜ、さらさらになるまでダマを潰します。最後にビニール袋に入れ、空気に触れないようねじって閉じ、完成。
参加者は指導員の方の素早い動きに見とれつつ、塩づくりを楽しんでいました。

 

塩づくりの歴史
その後、2グループに分かれて施設内を案内、解説していただきました。
宏大な施設内には、揚浜式塩田、入浜式塩田、流下式枝条架塩田の3種類の塩田が復元され、塩作りの歴史を辿ることができます。

揚浜式塩田は1200年前からある、日本海側で栄えた塩田である。人力で海水を汲み入れ、塩田に撒く。
その後できたのが入浜式塩田。満潮時に水門を開け、塩田に海水を入れる。干潮時に水門を開けると塩田の中の海水が外に出ていく。潮の満ち引きで海水をコントロールするため、人の手はほとんど入らない。
上記2つの塩田は砂の力を借りる。砂全体に海水を蒔き、その海水が蒸発すると砂に塩の結晶が付く。その後、砂と塩分を分けるため、海水で溶かす。それが溶けたものがかん水である。

これらの塩田は昭和27年を境になくなってしまう。その後できたのが流下式枝条架塩田。竹の枝を組んでできている、梯子のかかった大きな塩田がそれである。
地下の大きなタンクに海水を引き、ポンプで汲み上げる。組み上げた海水を、竹の枝を通して下に落とす。上から順番に雨のように落ちる。落ちる途中、太陽熱や風で、かん水の水分だけが蒸発する。落ちて汲み上げて、を何度も繰り返し、濃縮させる。

 

 

 
塩について
最後は塩に関する講義。薬学研究者であった横山嘉人氏に、熱のこもった講義をお聞かせいただきました。塩が食品をおいしくするのはなぜか、うどんやそうめん作りに塩を加える理由など、意外に知らない身近な塩の役割について、幅広く教えていただきました。

塩の人体での役割とは。
養分の吸収、老廃物の排泄、神経伝達、体内の水分を維持するなど、様々な役割を果たす。体内では水分・塩分は一定に保たれている。塩分を採り過ぎると余分なものを排泄しなければならなくなり、血圧が上がる原因となる。

塩が食品をおいしくするのはなぜか。
雑菌を塩で押さえつけると発酵菌がよく働くようになり、おいしい漬物などができる。発酵菌はにがりに入っているマグネシウムを必要とするので、にがりが入っている塩はより発酵がよくなる。にがりは15%~20%ほど塩味もアップするので、にがりが入っていると、同じ量でも塩辛い。旨味と同時に塩味もアップする。塩と水の間ににがりが入り込み、物質と水の結合力が強くなることで辛み(塩味)も強くなる。

うどんやそうめんに塩を加える理由
うどんやそうめんは塩がないと作れない。麺の中にバラバラに入っているグルテンを水で繋げ、塩を加えると水を引っ張る力が強くなり、コシが出る。旨味を出すには、塩と水の関係が大事。土地土地の水の違いによって味が変わる。
かまぼこを作る際、塩を入れると白身魚の筋原線維を溶かしてくれる。それを再加熱するとタンパクが繋がり、コシが出る。

「味割れ」とは何か。
塩味を他の味覚と別々に感じること、これを「味割れ」という。塩は水を引き付ける力が強いため、水と結合するのが非常に速い。砂糖や酢は水と結合するのに時間がかかるため、後になって味を感じられるようになり、味が一つになる。それを我々は「味がまろやかになった」と表現する。

味覚に温度差はあるのか。
熱いもの、冷たいものよりも、30~35℃程度の温度のものが味覚を感じやすい。
なお、15歳くらいの頃が一番味に敏感である。味覚は年齢とともに衰える。

塩味を感じるのに個人差はあるか。
唾液中のナトリウム濃度により感じ方が変わる。濃度が高い人程、濃くしないと塩味を感じない。

ネズミを使った実験がある。1匹、3~4匹、10匹の3つのグループに分け、それぞれの部屋に塩水と真水を置き、どちらの水を良く飲むかを実験した。1匹と10匹のグループは、塩水を好んでよく飲んだ。対して、3~4匹のグル―プは真水をよく飲んだ。孤独でも、過密でもストレスになる。ストレスを感じると塩を強く好むようになるのではないか。はたして人間はどうか。

参加者とのQ&A
Q.紅茶も塩を加えたらおいしくなるのか?
塩は水をコントロールする。「辛くする」だけが塩ではない。ほんの少し加えると、甘みも紅茶の成分もより感じられるようになる。コーヒーも同じ。
うどんなど、実は相当な量の塩が入っているが、グルテンと水を塩でつないでいる、その塩は辛く感じない。加工食品の場合、辛く感じるから塩の量が多いというわけではないので、気をつけなければいけない。

Q.ほうれん草など、葉物を茹でる際、沸騰した時に塩を入れるのはなぜ?
すぐに色が悪くなるので、色を保つためだろう。にがりの入った粗塩を使うと色が良くなる。塩を入れてすぐに取り出すとよい。


科学知識を要する専門的な内容もありましたが、横山氏はユーモラスな語り口で、時に冗談を交えながら語ってくださいました。氏のお人柄が滲み出るような楽しい講義に、皆引き込まれていました。
いつものKIITOのゼミの部屋を離れ、大人の遠足を楽しんでいただいたようです。

次回はいよいよ最終回。北里大学北里研究所病院より山田悟先生をお招きし、「21世紀の栄養学」である糖質制限食について、食べ比べの実験をしながらレクチャーしていただきます。

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/