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2018/2/5

イベントレポート

セルフ・ビルド・ワークショップ 「あそび」のための「大きな家具/小さな建築」第2回目レポート

2018年1月20日(土)、21日(日)

セルフ・ビルド・ワークショップ 「あそび」のための「大きな家具/小さな建築」第2回を開催しました。

第2回目のゲスト講師は、浜松を拠点に活動する「+tic」(プラスチック)の鈴木知悠さんと鈴木陽一郎さんです。
第1回目と同じく、+ticによるミニレクチャーからスタート。自己紹介から、浜松でどのように暮らし、働いているか(暮らしと働きを連動させているか)、設計についてどのように取り組んでいるか、また、今回のテーマに則して、「建築として捉える家具」について、スライドを交えて分かりやすく説明していただきました。

2人は2013年に静岡文化芸術大学デザイン学部空間造形学科を卒業し、そのまま独立。建築設計的な考え方をベースに、まちづくり、家具、アートプロジェクトなどさまざまなことを手がけながら活動しています。
建築を学びながらも、隣では家具、写真、映画、都市計画を学んでいる人がいるような、居住にまつわることを共通点にしつつもさまざまなスケールで制作を行う大学に身を置いたことが、+ticの考え方の一つの柱になっているようです。他方で、コーディネーターの川勝真一さんとの出会いとなった「リサーチストア浜松」への現地リサーチャーとしての参加など、地域で実践的な学びを得たことも大きかったとのこと。本人いわく、「大学と地域を父母(あるいは先生)とした建築設計ユニット」。

現在は、400メートル四方くらいにシェアハウス、オフィス、ゲストハウスなど、5つくらい拠点を持ち、すごく小さい範囲で、多拠点で活動しています。
大学卒業後、「自分たちの身を置く場所を作るため」からはじまって、やがて人から相談を受けたり、自分たちで調べて交渉したり。施工後も自分で借りたり、利用したり、仕事の受け方も、施工とウェブ制作を物々交換(スキル交換?)にしたりして、関係が続き、それでだんだんと多拠点化しているようです。
施工の仕事を受けるだけでなく、自主的な動きも展開しています。「まちの使い方ラボ」では、空いているけれど賃貸情報に出ない物件の事情を聞き取りして、改装をする代わりに安く借りる。完成後も自分たちで占有するのではなく、イベントを開催できるようにするなど、自分たち「が」ではなく「も」使える場所-「住むこと+α」の場所として少し開く仕組みを埋め込む。複数の共有空間があるほうが、自分が身を置く空間によって集まる人も違うし、まちにとってオープンな場所が増え、まちなかで暮らしながら働くことになっている、とのこと。

施工の仕事は、スケールに応じた考え方の違いから説明していただきました。50~100平米は、基本的には職人に依頼し、部分的に参加する。30~50平米は、基本的には自分たちで作り、作り方を工夫して、まわりの人やクライアントを制作のプロセスに巻き込む。10~30平米は、時間をかけて特殊解を考えて取り組む。どのスケールでも、作ることの横断、まわりの人々を巻き込む方法について考えられ、実践されています。
物件だけではなく、家具も手がけています。家具職人と渡り合おうとするのではなく、どうやって、僕たちが建築を学んできたことを活かして家具とするか、を念頭にしていてるとのこと。「家具を建築プロジェクトとして捉えると、、」という考え方が印象的でした。そうすると、敷地、素材、まわりの状況とどういう関係を新しく作っていくか、という意識に向かうようです。

ミニレクチャーに続いては、今回の課題の説明です。
今回は、建築家・ル・コルビジェが提唱した、最もシンプルな住居の構造=ドミノシステムを参照しつつ、スラブ=KIITO内に残る端材、柱=長ネジを素材に、家具/建築を作っていきます。

設置場所のスペースのうち窓がある一面を対象地に設定。面を均等に3分割して、1チーム1区画を担当。設計にあたり、+ticが設定した条件は3つ。窓の開け閉めを妨げないこと。場所に対する説明を何かしらできるようにすること/プレゼンできる言葉を持つこと。隣接するチームと最終的に接合できるデザインにすること。また、区画の中には、窓の位置や、もともとの設備でパイプや配線が通っているところがあったり、区画ごとに異なる環境もチェックしたうえで設計する必要があります。
+ticから伝えられた、考えるためのヒントは、「空間のガイドラインみたいなものを意識すること。今回の設計敷地を注視してみると、窓の間隔、カーペットの模様、置いてある家具など、敷地状況が実はある。それらに対してどのような反応ができるのかを考えること」。

チームに分かれたら、まず担当する区画を計測。設計作業は、絵に描いて/使える端材を見ながら/現場で話し合いながら、、、とチームごとにさまざまな方法で行っていました。
端材+長ネジといっても、どうやったら作れるのか、どうやって考えていけばいいのか?一般的にイメージする「DIY」より少々複雑な課題に、しばらく「?」となっているようすの参加者も複数いるように見えましたが、+ticやコーディネーターの川勝真一(RAD)さんのアドバイスのもと、設計、構造の検討、材料の切り出しへと行程を進めていくうちに、そんな表情も見られなくなりました。

1日目はほぼ設計作業で終了。2日目にエンジンをかけて急ピッチで作業をしていきました。講師たちもしっかり各チームに入ってアドバイスと作業の手伝いに入りました。

長ネジは、金属用の高速切断機で使いたい長さに切ります。高速切断機は火花が散るので扱いにはくれぐれも注意が必要。使ったことがある参加者は少なかったですが、何本も切っていくうちにかなり慣れたようでした。
材料の切り出し、長ネジ用の穴あけが終わり、組み立て作業で待っていたのは、延々とボルトとナットを締める作業!長ネジには、板材の順番を間違えることなく通していかないといけません。間違えると間違えた場所まで板もナットも一度外す必要があります。

時間がオーバーしましたが、なんとか3チームとも完成。スペースの一面をカバーする大きな家具/建築ができあがり、達成感はひとしおです。

Aチームは布を使ったり、スペースの角にパイプがあって角を避けないといけない逆境を活かして、人が入れるスペースを作ってみたり、遊び心のあるデザインでした。
Bチームは、スライドさせることができる面をつくったり、端材の中でも変わったかたちをした引き出しを使ったり、アクロバティックな試みが目立ちました。
Cチームは、同じ素材やかたちの板材を連続で使う中にひとつ違う色・かたちの板材を入れてみたり、バランス感覚が良いデザインが特徴的でした。

今年度のセルフ・ビルド・ワークショップのタイトルには「大きな家具/小さな建築」とありますが、今回は絶妙に、建築であり家具でもある、中間領域にあるものを作っていたのでは?と感じられました。次回も楽しみです。

セルフ・ビルド・ワークショップ 「あそび」のための「大きな家具/小さな建築」
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