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2015/9/2

イベントレポート

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第10回 レポート

2015年5月30日(土)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」最終回となる第10回は「楽しく食べて健康になりましょう!~糖質制限食のススメ~」を開催しました。北里大学北里研究所病院・糖尿病センター長の山田悟氏をお招きし、糖質制限食についてお話を伺いました。

血糖値測定
お話を伺う前に、普通食と低糖質食を食べて、血糖値がどのように変化するのか、ゼミ生から10名参加してもらい、2組に分かれ、食事を食べる前・食後30分後・食後60分後の3回血糖値を測定しました。測定する機械は手のひらに収まるほど小型なもので、すぐに数値が表示されます。講義を聞きながら、普通食(梅おにぎり2個、野菜ジュース)と低糖質食(低糖質パン2個、チーズ、牛乳)を食べました。どちらもカロリーはほぼ同じです。食べ終わったころに、2回目の血糖値測定を行い、講義を再開し、最後に3回目の血糖値測定を行いました。低糖質パンは今回特別にゼミマスターの米山さんに作っていただきました。
普通食 食事前(5名):平均101mg/DL、食事直後:平均153mg/DL、1時間後:平均145mg/DL
低糖質食 食事前(5名):平均98mg/DL、食事直後:平均106mg/DL、1時間後:平均111mg/DL
※正常な血糖値 食事前:110mg/DL未満、食事後:140mg/DL未満
普通食に比べ、低糖質食を食べたグループの血糖値は、食事前から食後まで大きな変化はなく、急激な上昇は見られませんでした。一方普通食を食べたグループは、食事後すぐに大きく数値が上昇し、その後の減少は緩やかでした。

 
生活習慣
「おいしいものは体に悪く、健康に良いものはおいしくない」と思われているのが現在の常識。低糖質の食事をとると、おいしく食べて健康になることができます。この低糖質食の普及の活動も行っています。
年々医療費が上がっており、年齢が高いほど、費用も高くなっている。中でも生活習慣病に関する医療費の割合が非常に高く、その生活習慣病の中でも、糖尿病、高血圧、脂質異常がほとんどです。この3つの疾患はそれぞれバラバラではなく、兄弟関係にある病気です。糖尿病は世界で約3億8200万人います(2013年)。その内の約1/3は日本を含む西太平洋地域にあたります。一方、アメリカは体の大きな人が多くみられるが、インスリンというホルモンを出す力が強いため、血糖値が上がっても、脂に変えることができます。日本人はインスリンを出すことができないため、極端に太るようなことができず、先に糖尿病になっていきます。東アジアの人は欧米に比べ、糖尿病になりやすいです。糖尿病、高血圧、脂質異常の3つがそろうと、メタボリックシンドロームといいます。それぞれが少しでも異常を起こすことで、普通の人の3倍、心臓病や脳卒中などを引き起こす可能性が高くなるといわれています。年齢別にみると、40歳以上の2人に1人はメタボリックシンドロームまたはその予備軍に当たります。
メタボリックシンドロームの状態では、自覚症状はなく、ちょっとした異常も無視していくと糖尿病になり、糖尿病から腎臓が悪くなったり、目が悪くなったりします。糖尿病にならなくても、心臓病、認知症、脳卒中などになることもあります。世界的に糖尿病やメタボリックシンドロームが増加しており、日本人の死因の1/3に関係しています。生活習慣を見直すことがとても大切です。

糖尿病にならないための対策は何か。食事を減らして、運動をすればいいと言われていた。しかし今まで健康に良いとされてきたことが怪しくなってきている。摂取するカロリーを減らすことが良いとされてきた。ある実験で、①白米200g、②白米200g+タンパク質、③白米200g+タンパク質+脂もの、④白米200g+タンパク質+脂もの+食物繊維、の4つの食べ方で食後の血糖値を測った。4つの食べ方は①から④は順にカロリーが高くなっています。1番血糖値が上がったのは、1つめの白米200gのみの食事です。タンパク質や脂、食物繊維を合わせて摂った方が、血糖値の上昇を抑えることができました。これは昨年の実験です。これまではカロリーを抑えた方が、血糖値が上がりにくいと言われていたが、上昇させるのは、糖質、でんぷんと糖分だけでした。脂やタンパク質を一緒に食べることで、血糖値上昇にブレーキをかけることが分かりました。

 
20世紀の常識では、カロリーを減らすだけでなく、脂も減らした方が良いと言われていたが、21世紀は違います。脂の摂取量が減っている中、糖尿病は増加しているデータがあります。食べる脂は4つに分類されます。動物性の脂(飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸)、魚の脂、植物性の脂、オリーブオイル。最初に体に良いことが分かったのは、魚の脂です。魚の脂をたくさん食べているグループは食べないようにしていたグループに比べ、生存率が高いというデータ(2002年)がある。2013年のデータでは、植物性の脂、オリーブオイルを多く摂取したグループは、控えていたグループよりも摂取カロリーは高いにもかかわらず、糖尿病、脳卒中、心臓病が減っていました。このときのオリーブオイルの1日の摂取量は1リットルです。つまり動脈硬化になりたくなければ、脂を控えるのではなく、植物性脂やオリーブオイルをしっかり摂ることも大切です。

健康食
健康食はおいしくなければ意味がありません。肉や魚はどの部位をとってもほとんど糖質を持っていません。低糖質食では、肉、魚は無制限食です。デザートなど砂糖は糖質であるが、現在は低糖質の甘味料もたくさん出ています。パンも普通は100g弱の糖質を含んでいるが、小麦の外皮を使ったふすまパンは25g程度です。糖質制限食というと、我慢している感じがするため、ロカボ(a low-carbo hydrate 低炭水化物)と呼んでいる。近頃は糖質制限食を提供しているお店もどんどん増えており、コンビニなどでも販売されています。1食の糖質40g以下の低糖質メニューは満腹まで食べることができ、痩せられ、締まった体型となり、血糖値が改善し、脂質値が改善し、血圧も改善していく。そして、健康になることで使用する薬などが減り、医療費減にもつながります。
 

 
質疑応答
■糖質制限食は何歳頃から始めたらいいのか?
正確なデータはないが、社会人からではないか。会社に勤務を始めて、運動量が落ちているにもかかわらず、学生時代並みに食べている人が20代から太っていくので、そこからと思われる。20代の生活習慣で、40代頃からメタボリックシンドロームや高血圧などになる可能性があります。また清涼飲料水を大量に飲んで、子どもでも糖尿病になる場合もあります。
■子どもが地域の野球チームに入ったが、スポーツドリンクを飲ませない方がいいのか?
代謝能力的には問題ないと思います。中高生レベルでも運動部に入っているなら大丈夫です。趣味レベルで少し走っている程度の場合はよくありません。人工甘味料や糖質ゼロの商品もあるので、糖質を押さえながら水分と塩分を摂る事が必要です。

一般的にカロリー制限が健康への道だと思われていたため、お話はとても衝撃的な内容でした。実際に自分の血糖値を測り、数値の変化を目にすることで、糖質量の違いに理解できました。糖質をゼロにする生活を送るのは現代社会では難しいと思いますが、少しでも減らすことで病気へのリスクが下がる事が分かり、できることからチャレンジすることが大切だと感じました。

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」は全10回が無事終了しました。F1種の話から野菜や塩、添加物まで、非常に幅広い角度から食について学ぶことができました。良い悪いではなく、自分で判断するための知識を得ることができたのではないかと思います。学んだことでさらに興味関心が広がったのではないでしょうか。今後もレクチャーや体験を通して、食と向き合い学ぶ機会をつくって行きたいと思います。

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/