2016/2/9
イベントレポート
2016年2月2日(火)
11月からスタートした公園ゼミも、最終発表会となりました。講評には、中間発表でもご意見をいただいた、対象公園の公園管理をしている地域の方、神戸市建設局公園部計画課の方に参加していただきました。各班工夫を凝らした発表で、さまざまなアイデアが提案されました。
A班
健康とは何かをもう一度考えた。いくつになっても誰かから必要とされる、ニーズがあるということが、健康に暮らしていく源になるのではないか。いくつになっても自分の特技を生かせることが重要。地域に特技を持った人を発掘する仕掛けも必要である。発掘した特技や才能をつなげ、届ける仕組みを考え、「SATOYAMA ART WALK」「PARK SUMMIT」の2つを提案した。
「SATOYAMA ART WARK」は、すでに地域で行われているウォークラリーを活用し、さらに公園の里山活動とも連携していく。里山活動で出る廃材を資源として活用したミニイベントを一般公募し、コース随所で展開。アフターイベントとして、当日の様子の写真や作品を展示し、アーカイブできる仕組みを構築。ミニイベントアイデアは、落ち葉のマットでヨガ教室、地元のお医者さんによる森の中での視力検査、ボーイスカウトによる伐木で炊き出しなど。周辺の芸術系大学や福祉施設との連携も図る。
「PARK SUMMIT」は、活動的に公園を管理している団体の人たちが手を組み、結成される。地域にいる様々な才能を持った人たちをイベントで発掘し、その人たちを他の公園の地域のつなぎ役として連携していく仕組み。また特技を持った人を「公園マイスター」として認定する制度を設け、発信していく。
特技を持った人を発掘する「ART WALK」と必要な人をつなげる「PARK SUMMIT」という2つの仕組みが合わさることで、どこにでもある公園が、それを通してつながり、続いていく、未来の公園機能となる。
講評|
地域住民
12月の中間発表の時は論理的なもので、私の考えと共通するところが多く、それが最終発表では具体的な提案がなされ、参考になった。いろいろな特技を持った方は、我々の地域にもたくさんいる。昔の暗くて怖い森は、ずいぶん明るくなり、環境が整ってきたので、これから具体的にどうするか考えているところである。桜の木があるので、4月には総会を公園でやりたいと思っている。また地域で行われているお琴教室の先生に相談し、公園で演奏会も検討中。公園が楽しく集まれる場になるようにしていきたい。ウォークラリーの提案の中にあった、心拍数を測る、森の中での視力検査、地域にもお医者さんがいるので、ぜひ次回の開催に向け提案してみたいと思う。とても参考になった。
神戸市建設局公園部計画課
とても有意義で参考になった。まず感じたのは、公園を単体で考えるのではなく、地域のネットワークの中で考えていくところが印象深かった。公園を拠点にしたアートウォークラリーは、公園を活用していくことで、公園の資産価値を高めていくことにつながると思う。ネットワークを形成し、それぞれの強みを共有していくことで、地域全体のまちづくりにつながっていくと感じた。地域の公園でチャレンジしてみたいことは、どんどんやってほしい。既成概念を取っ払い、地域のために公園をどう使ったらいいのか、それをどう伝えていけばいいのか、発表を聞いて大きなヒントを得た気がする。
永田
なかなか見えていないだけで、活発に活動している公園は、今の時代だからこそあるのではないか。同じやり方ではなく、それぞれの地域、公園で特徴があり人も異なる。対象公園には植物に詳しい方がいる。他の地域で、そのような方がいなければ、教えに行くこともできる。マイスター制度も、具体的な部分は検討していかなければいけないが、シニアの方たちをはじめとして、人々が誇れるものになるとよい。
B班
対象公園の魅力は、やはり森である。この森の活用を通じて、高齢者や若者が世代を越えて学び合う場をつくることを提案する。森の整備は現在、公園管理をする団体が行っているが、整備や管理と次の世代へ引き継ぐ、伝えることも同時に進めていく必要がある。みんなで森について考える場を設けることで、新しい世代の参加や交流を増やせるのではないか。この企画を「森づくり大作戦」と名付け、公園、森での活動の見える化、みんなが参加したくなる環境づくりをコンセプトに実行する。まずは、話し合う場づくりとして、間伐作業で出た木材を利用し、イスを作る。この際には、KIITOのクリエイターのネットワークを活用し、建築家や家具職人などに指導を仰ぐ。さらに、伐採した竹を使い、竹グルメイベントを開催。食を通してつながりを生み、次へのアイデアを検討する。この対象公園の森には、様々な動植物が生息しているため、森の動物図鑑看板づくりをする。森での活動をするたびに、公園内動物の情報やイラスト付き看板を設置していく。
公園での活動を通して、森の知識を学び、管理にも新たな世代の視点を取り入れ、活気ある交流の場を創出していく。高齢者と若者が相互に学び合い、新たな生きがいや地域の役割を発見することで、豊かな生活を実現する。
講評|
地域住民
12月の発表の際は、こんな事をして遊ぼう、あんなことしたら楽しいのではないか、と盛りだくさんな提案であったが、最終発表は地元目線な提案で、とてもよかった。楽しいことも大切であるが、まずは正しくなければいけない。対象公園は、自然が大きい部分を占めているため、自然に対して、正しいことが重要で、その後に楽しさがある。次世代への継承部分は特に共感できた。公園だけでなくまちづくり全体に言えることだと思う。活動の見える化はとても大切なことである。見える化することで、今まで参加できなかった人も振り返ることができる。この公園には真竹がたくさんあり、何とかしなければいけない。竹を切るのは比較的簡単であるが、切った後が問題であり、ゴミにするのではなく、資源にするために、竹イスづくりは良いアイデアだと思う。竹グルメについても、地域にパティシエもいるので、先の話になるかもしれないが、実現したい。動物図鑑も地域の子どもたちと一緒に考えていきたいと思った。
神戸市建設局公園部計画課
「環境」「きっかけ」「足跡」の3つのキーワードをセットで考えているところが良い。環境は、まずそこへ行きたくなるようにしていかなければいけない。イベントもただ楽しむだけでなく、きっかけのために実施し、地域の人が公園へ愛着を持ってもらえるように行っていかなければいけない。継続はとても重要である。どのように継続させていくのか、回を重ねることで悪くなっていくようではいけない。1つの活動が長く続いていく提案が印象的であった。公園の大きな資源を生かし、若者を呼び込み、地域の高齢者との交流を持つことで、活性化していくのではないか。何をするにも地域の協力が不可欠である。
永田
作戦会議の場をどうつくるかということも提案次第だと思う。自分のイスをつくることで、場づくりから人を巻き込んでいく、料理も同じようなことである。たくさんの人が集うこと、みんなでワイワイと楽しい作戦会議の場をどうつくるかについてのアイデアだと思う。
C班
公園が地域の住民にとって、コミュニティを形成するにぎやかな場であるべきだ。健康といっても、心の健康、体の健康、場の健康などいろいろな見方がある。これらのバランスが取れた状態が健康と考える。現在の公園管理を始めた約2年間の活動を大きなカレンダーにまとめた。今までの活動を称えると同時に、どうやって公園に人を集めていくのか、未来のカレンダー20XX年として制作した。
場の健康として、公園の稼働率を上げるために、軸としてイベントを1年通して行う。まずは拠点づくりが必要。神戸市内で実際に行っている活動のリサーチも行い、さまざまな活動をしている団体がいくつも見つかった。このような先駆者たちを巻き込んでいきたい。拠点基地づくりから始まり、ファームづくり、春の野菜栽培、公園整備として行っている間伐作業で出た資源を農機具などに活用。里山を生かした子ども向けのワイルドな遊びも。つる科植物の除去の時期には、草木染イベントを行う。6月にはファームの収穫祭。前回の公園ゼミで生まれたピザ窯も活用できないか。夏休みには、星空観察会、星空映画祭。9月、防災の日を絡めた防災バーベキュー。10月、収穫祭に合わせて夜の音楽祭。11月、木こりサミット。12月、KIITOを会場にパークサミットを開催。市内各所で活発に活動する団体が集まり、自分たちの活動を称え、自慢し合う場に。
公園と健康を考えるということは、未来を考えることではないか、それで未来のカレンダーを制作した。カレンダーの中の企画が盛りだくさんになっているが、全て実行するのではなく、地域の方が実施したいと思うきっかけになればと思う。
講評|
地域住民
地域の中には、この公園を知らない方もいる。このゼミの参加者は、特にこの公園に縁もゆかりもない、そんな方々が、未来を見据え、ここまで考えていただき、涙が出るほど感動している。これらの提案をぜひ地域のみんなに今日の話を見てもらいたいと思う。8月に行っている定例の集まりでは、毎年勉強会をしているので、その場でお話しいただきたいと思った。私たちは地元の人間として公園を見ているが、みなさんは少し違った切り口、視点で見ている。里山づくりだけでなく、まちづくり、地域づくりに直結する話である。
神戸市建設局公園部計画課
手作り感満載で、とても分かりやすい発表であった。「みんなで育てることを、みんなでつくる」ということが良く理解できた。提案の中で特に良かったと感じたのは、20XX年の未来カレンダーである。さまざまなアイデアを出し、こんなことができるという提案が参考になった。公園の可能性を地域の方々にどうやって感じてもらえるのか、まずはチャレンジしてみようというアクションにつなげることが大切である。
永田
パワーポイントを使う発表が多い中、このような大きなカレンダーを制作し発表したところが評価できる、このカレンダーをそのまま地域に持っていけるのではないか。またこれを使えば、B班の提案にあった、森の作戦会議ができると思う。企画、アイデアに触発され、これをやりたいと地域から声が出るのではないか。これらのアイデアがただの思い付きではなく、参考の活動情報が合わせて掲載されている部分はリアリティがあり、説得力がある。これだけのことを神戸で活動している団体があるということは、パークサミットにもつながると思う。今は学び合いの時代だと思う。新しいことを行うだけでなく、すでに行っている活動を知り、教え合うようなつなぎが重要。
総評|
地域住民
とても新鮮でした。私たちは理系のアプローチで公園管理を今まで行ってきた。皆さんの提案は文系のアプローチの仕方だったのではないか。感心した部分は、リサーチをしかりしている点である。リサーチがしっかりしていれば、地に足のついていない提案になってしまう。リサーチによって、提案に説得力があった。切り口、視点がそれぞれ異なる提案で、大変参考になった。パークサミットもぜひ開催してほしい。
神戸市建設局公園部計画課
神戸市の公園を管理している立場からお話しを聞き、行政の限界も感じた。行政だけで公園をいじることは時代遅れである。地域と連携し、活動を行っているが、もっとプラスの部分がまだまだ公園には必要ではないかと感じた。地域と行政の協働はしていたが、+αが必要で、それがKIITOで活動しているゼミ生や公園をあまり活用していない方ではないか。我々もたくさんのヒントを得ました。行政としてこれからも公園をどのように使い倒していくのかが課題と感じました。公園はまだまだポテンシャルのある場所なので、これからも協力してほしい。
永田
公園、高齢者、健康がテーマであった。はじめは高齢者と健康ということで、流行りの健康器具を公園に置く方向に行くのではないかと思ったが、全ての班が、どちらかというと、高齢者が健康であることを、「地域の公園を舞台に、活躍の場、生き生きと活動するフィールド」と設定をして、そのための仕組み、どのような学びが必要なのかを考えていった。時代の流れもあるが、本質を突いているのではないかと思った。高齢社会になり、その人たちがどう活動して、どう生きがいを持ち、活躍の場をつくっていくかという、その中に、公園があるのではないか。未来志向型の良い提案ができた。個人としてはパークサミットを実現したいと思っている。今回のテーマは難しかったが、どの提案も地域に寄り添ったものであり、私もうれしかった。
11月からスタートした公園ゼミは今回で終了しますが、地域の方からご提案いただいた、対象公園地域での発表会の実施に向け、よい形で今回の提案が実を結ぶよう進めていきたいと思います。
+クリエイティブゼミ vol.18 まちづくり編 これからの公園のあり方について考える part.2「公園×健康」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/14882/