2019/9/1
イベントレポート
去る8月27日(火)に、「+クリエイティブゼミまちづくり編vol.32「人口減少時代の豊かな暮らしを神戸でデザインする」」の第4回目が開講いたしました。今回は中間発表に向けてのグループワークを行いました。
今回の「+クリエイティブゼミ」では、「風」「水」「土」というテーマごとにグループ分けを行い、アクションプランを考えていきます。前回のグループワークでは、全体として、「風の人」「水の人」「土の人」とに対応する人物像やグループを探し当ててみるという状況でした。今回は、さらに具体的に対象を絞り込んで、その対象に関わる既存のプログラムや取り組みに視点を向けて、リサーチの精度を上げていくことを目指しました。
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A班(土)
短期滞在者、若者、学生、共働きで子どもがいない人など、地域活動、市民活動になかなか参加しづらい人を対象として、何かをやりたいという気持ちを後押しするプロジェクトができないかを考えている。今回は、神戸ではソーシャルブリッジやソーシャルキャンパスなど、若い人や社会人を社会活動につなごうとする仕組みがあるので、そこの担当者にヒアリングを行い、成果を共有した。
また、支える仕組みを考えるうえで、その対象となる学生や外国人の人たちが、何に関心があるのか、何があれば市民活動に参加してもいいと思えるのか、当事者への意識調査も必要となる。メンバーの中には、そのリサーチの準備を進めている人や、あるいは、シルバーカレッジの卒業者を対象に、修了後どうやって地域に出ていくかについてのヒアリングの準備を進めている人もいて、その際に何を聞くのかということについても話し合った。
更に、神戸には短期滞在者や未婚の人などがどれくらいいるのか、そうした統計もシェアした。中間発表に向けて、テーマを明確にすること、それぞれが行う作業の分担を進めている。
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B班(土)
前回、C班の話で出ていた、個人が孤立しているという観点、また、人どうしのコミュニケーションの機会が減っているのではという問題提起が印象に残っている。また、A班の、神戸には若い短期滞在者が多い、という報告も印象に残っており、このグループでの議論の参考になった。
前回のグループ内の議論の中で、市内に見られる空き家、空き地をどう利用できるのかが話題になり、フリースペースとして利用することはできないかという意見が出た。それに関連して注目しているのが、神戸駅にピアノが設置され、誰でも弾けるようにしてある事例。演奏をする人と、それを耳にして集まる人どうしで、あるいは集まった人どうしでコミュケーションが発生するきっかけになりうるのでは、という意見が出ている。また、その対象を絞って考えてみるという点では、マンションの住民に注目していて、マンションに住んでいる人たちの間、あるいは、マンション住民と地域とをどうつなぐかを考えている。場があるならば、集まる、つながる、コミュニケーションを促す仕掛けをどう作っていくか、そこを重点的に議論している。
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C班(水)
人口減少という状況の中で、孤立する人、取り残されていく人が増えていくのではないか、あるいは、様々な社会的サービスが削減されたり、人が減ったりするという中で、社会的弱者が増えたり、富裕・貧困・老若男女問わず、孤立を感じ、生きづらさを感じる状況が強まっているのではないかという意見が出ている。このグループのテーマである、水の人を育てる、増やす、質を高めるということにひきつけてみると、そういう人たちに焦点を当てて、人どうしをつないだり、輪の中に入ってもらったり、さらに社会的に貢献してもらったりすることが、水の人を増やすことになるのではないかと考えている。
今回は、援助や配慮が必要であることを示す「ヘルプマーク」や認知症を支援する側が目印として付ける「オレンジリング」が話題にあがった。また、最近、神戸の高校生が「喜んで助けますよ」という意味を示す「マイプレジャーバンド」というものを考案したそうで、こういった声をかけられる仕組みを作っていくことで、孤立の解消につながるのではないかと考えている。さらにその発展として、ウーバーのように、バンドをつけている人が登録できるアプリがあれば、バンドをつけている人が多いという状況が可視化されて、ちょっと見てほしい、気にしてほしいというニーズにより適ったものになるのではないかとも考えている。
一方、大学や障害者の作業所といった組織にも目を向けて、デザイナーとのマッチングのサービスがあれば、工賃があがり、作業所へのサポートにもつながるし、双方で作りたいもの、手伝えること一致し、良いものを作れるようになることで、自立、ビジネス的に立ちゆくことにもつながるという話が出た。それを発展させて、街のために活動している人のマッチングの仕組みを作ることで、活動が起こるきっかけになるのではないかという意見も出た。例えば「カメラじぃ」のようなカメラの好きな高齢者(高い撮影技術、良い機材を持っている高齢者は多いのではないか)がそこに参加することで、楽しく活動を撮影して、活動のレポートをしてもらって、活動の面白さが可視化される。そこから、見ている人にとっても、次参加しようというきっかけになって、継続していくことをサポートできる、といった仕組みもつくれないか話し合っているところだ。
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D班(風)
どういったタイプの風の人を想定するか、また、神戸の課題や魅力、資源と、風の人をどう結び付けていくかを考えている。
風の人というと、地域にさっそうと入っていって、アイデアを提供して去っていくというイメージがあるが、そもそも、そんな完璧にモデル通りの人はいないという話が出た。そこで、神戸にいる様々な人が、風の人見習い、風の人をお試し的にやってみる、ということができないかと考えている。例えば、神戸の中にも様々な「まちづくり」のアイデアがあると思うが、そのアイデアを集めた場所やサービスがあって、そこから、地域にあった種を引き出せて、同じアイデアもよそではうまくいかないということも鑑みて、品種改良して地域に適応させる、そういった役割を果たす「プチ風の人」を、どうやって神戸の中から見出せるかについて考えている。
今後は上記の場所やサービスでの「種」の対象となるようなアイデアを、人口減少での課題、地域と組み合わせて考えていきたいと思っている。
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E班(風)
実際に風の人のような役割を果たす人に着目した。どうやって風の人なるのかと問うたとき、周りがそう盛り立てる人が風タイプの人なのだろうと考えている。高槻のジャズストリートを事例として見ていて、オーガナイザーの人が持っている目的や、それを実現しようとするときの周りに見せる熱量に対して人が集まり、ボランティア的に、自分はこういうことができる、とイベントを支えているように見える。発端となる人を軸に自然発生的にチームが出来上がっている。
ぱっと風が吹いてという状況ではなくて、これがやりたい、というモチベーションを軸に組織ができて、さらに一緒にやりたいという形で人が集まり、集まった人の中から、風的な人が現れる、そういう状況に見えてくる。巻き込まれる渦のような風。触れることでたくさんの人が関わって、つむじ風になり、また小さなつむじ風が発生し、そこに「水」が現れるという好循環。では、熱量と変化をもたらす人が、どうやったら神戸市に居ついてくれるのか、予備群は誰か、どうやったら発掘できるか、他の似たような事例も探って考えている。
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F班(風)
「人口減少」、「豊かなくらし」、「神戸でデザインする」、これらのテーマの理解が、グループ内で浅いように感じたので、それぞれの内実、状況について考えてみて、その上で、対処療法的、あるいは単発的に「課題解決」を目指すよりも、「課題発展」という形を模索するほうが、「風」というテーマにかなっているのではと考えている。
例えば、他都市に人口が抜かれているといっても内容は様々だ。例えば、福岡や京都が注目されているが、昼間の人口が多くて、いつも街中に人いて賑やかな雰囲気。それを見て、多くの都市が福岡を目指せとなっているようだ。神戸のことを考えてみるならば、単純に常住している人口を増やせば良い、というわけではないだろう。また、豊かに暮らすということも、単純に所得を上げれば良いということでもない。お金がなくても暮らせる、食べていけるインフラやサービス、コミュニティがあるかどうかが重要だし、神戸にある豊かな資源を生かすことが必要だと考えている。
ではどういう風の人が神戸に必要か。よくイメージにある、風来坊的な風の人は、助成をもらって何かするけど、いなくなってしまうことが多いという印象で、地域に根差してない。地域の中で何かを産み落とす、さらに、そこにつながる仕事があって、神戸にいてお金を稼げて生活できる仕組みを作れて、働きに来る人、よそから来る人も増えることにもつながっていく、そういうきっかけになる人が必要。マグネットのような人。
ただし、上記のような人を単に研修やプランニングや仕組みで「作れる」か、疑問。そうであれば、そういう役割を果たす人(例えばR不動産の小泉さんのような人)に会いに行って、どうして神戸に来たのか、今後をどう考えていくのか、ケーススタディを積み上げていく、人や活動どうしつなげていく、さらに何かをする時の手がかりとしてりようできるようにする、そうした課題を発展させていくというスタイルがよいのでは、というのがグループの現在の到達点だ。
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グループワークを通じて、社会的な排除や孤立に対して、社会的包摂や手助けの仕組みを考えたり、参加する機会やチャンネルを設ける方法を考えたり、人や活動どうしをつなげて、何かをしたい時に手がかりを得られる仕組みを考えたりと、より広範かつ長期的に、街をよくしよう、豊かな暮らしを実現するアクションやプログラムを模索しようという気運が、ゼミ全体として共有されていた、良い時間であったように感じられました。
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次回、9月3日(火)の中間発表となります。