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2013/7/25

イベントレポート

+クリエイティブゼミvol.7 特別 レクチャー|避難する人が「主役」になる津波避難訓練づくり レポート

2013年7月22日(月) 

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+クリエイティブゼミvol.7「防災+まちづくり+観光編」の初回ゼミとして、京都大学防災研究所巨大災害研究センターの矢守克也氏を迎え、特別レクチャーを開催しました。

このゼミでは、来街者の多い都心部に設置予定の「津波避難情報板」を「防災」の観点だけでなく、「まちづくり」や「観光」の観点からも考え、日々利用されることで災害時にもより一層機能する、そんな「津波避難情報板」のあり方を導き出していき、神戸発の新しい「津波避難情報板」のあり方を発信を目指します。

様々な視点で津波避難を考える|見通孝(神戸市危機管理室 神戸市危機管理官理事)
神戸市は津波想定の最大が2.5mとされ、沿岸部以外への浸水被害はないと言われていましたが、現在は4mとなり、防潮堤を越えて居住地区まで津波が押し寄せる想定となっています。日常的に使用し見ていただけるサインの設置を行い、誰もが安心して買い物ができる、安心をもてなしの一つとして考え、神戸のまちの魅力を高めていきたいと考えています。ゼミで様々な視点から考え、良いアイデアをご提案いただきたいと思っています。

ゼミの進め方|永田宏和(デザイン・クリエイティブセンター神戸 副センター長)
どのような避難案内板があれば、普段から目にしながらも、被災した時に役立つのか、その視点から考えることが本当に役立つものを生み出すことに繋がると思います。対象エリアは三宮、元町、ハーバーランドとし、来街者が主なターゲットになります。看板を設置して終わりではなく、これからの避難案内の担い手づくりも大切なことです。6回目に中間発表を行い、10回目のゼミでの最終発表の提案を基に、コンペなどでアイデアやデザインを募集し、実際に製作する予定です。

避難する人が”主役”になる津波避難訓練づくり|矢守克也(京都大学防災研究所巨大災害研究センター)

ゾーンディフェンス
チリは地震や津波の多い地域で、2010年2月に巨大地震が発生し、その影響で24時間後日本にも津波が到達しました。チリでは誰もが一目で逃げる方向がわかるように電柱に色で塗られています。矢印等で示すとみんなが同じ方向に行き、渋滞や衝突が起こります。津波は水の動きであるので、逃げる方向が分かれば十分なため、このゾーンディフェンス的な考え方で伝える方法が良いと思います。どの方向に逃げれば安全かを簡単に示すことが重要です。

全国最大の津波想定
神戸とは条件が異なりますが、高知県四万十町興津地区を紹介します。人口約1000人の小さな集落ですが、小学生を中心に地域の方と津波防災教育の試みを3.11以前より行っています。全国的にも津波避難の施設整備が非常に進んでおり、全国からの視察が相次いでいる地域ですが、3.11後、全国最大の津波の高さ34mが来ると想定が変更されました。それにより既に設置されている避難タワーを従来よりも5m高く積み上げることが検討されています。

4大よろしくない対応

1.「絶望、あきらめ」
 もうだめだと思っているご年配の方が多くいらっしゃいます。確かに、就寝時や入浴時に15分以内に逃げるというは大変難しいことです。
2.「油断、慢心」
心理学的には「絶望・あきらめ」とほぼ同様の対応で、注意を怠り、準備や対策を行わないことです。高さ30mの津波が本当にくるのか、過去の南海地震(1946年)では沿岸部の一部が被害にあった程度の為、研究者が極端な想定をしているのではないかと考える人もいます。
3.「徒労感」
 従来12mの津波が想定され、15mの避難タワーの設置や高台に逃げる訓練を度々実施していましたが、想定が変更され、今までの行いが無駄になった、報われないと考える方もいらっしゃいます。
4.「お任せ」
 「より高いタワーを建てて欲しい、私たちは何もしないからみなさんお願いします」という他者にお任せする態度があります。住民の方の話やアンケートでも「先生よろしくお願いします」と度々言われます。主体的に行動し、頑張るのはみなさんなのですよとお答えしています。

個別避難訓練
昨年から実施している「個別避難訓練タイムトライアル」は、4大よろしくない反応をする住民の方やその反応をせざる負えない状況の方々に対し、自らの力で状況をどのように乗り切るのかを自主的に考えていただく試みです。自分たちが逃げようと考えている避難場所へ実際に逃げ、その一部始終をビデオ撮影します。GPSを持って避難を行い開始から何分後にどこにいるのかが地図上に表示され、それぞれの「動画カルテ」が出来ます。現在、全住民1000人の「動画カルテ」をつくることを目標としています。「動画カルテ」は、想定より15分早く津波が来た場合と15分避難が遅れた場合の2種類のシミュレーションがされています。映像では、訓練通りであれば15分余裕を持ち避難可能だという前向きな情報を伝えるとともに、一方で15分避難が遅れることも容易に想定され、その場合について考える機会にもなります。地震で家屋の状況が異なり、電柱が倒れ道を塞いだり、足をけがしたり、人を助けたりするかもしれません。避難が遅れる要因を少なくするために、どうしたら良いかを考えます。

津波防災の第一歩
誰もが高齢者になります。一人でも多くのお年寄りが元気に歩くことが、津波防災の第一歩です。しっかり歩けるという事はその方も助かるし、助けに行こうとするリスクが減ります。

+クリエイティブゼミvol.7 防災+まちづくり+観光編
「神戸発:日常的にも活用される津波避難情報板を企画する」

http://kiito.jp/schedule/seminar/article/4227/