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2013/11/11

イベントレポート

第一夜:住み続けながら拡張する復興住宅「コアハウス」 レポート

「コミュニティ・アーキテクト イカプトラ」三夜連続レクチャー
2013年10月16日(水)

 

一夜目は、住み続けながら拡張する復興住宅「コアハウス」を取り上げました。コアハウスとは、核となる必要最小限の住宅を作り、居住者が徐々に建て増していくことで、住宅を復興させる考え方で、仮設住宅と復興住宅の二つの機能を併せ持つ応急住宅といえます。
まずイカプトラさんに取り組み事例をご紹介いただきました。2006年、ジャワ中部地震が発生。イカプトラさんは地震から2週間後に、壊滅的被害を受けたカソンガン村に被災調査に入ります。そこで地域の人々に会ってニーズを汲み取り生み出されたのがコアハウスでした。

コアハウスとは
コアハウスの原則は、構造的、建築的、経済的に成長させていけるということです。構造的に、増築した部分も地震に強くなければなりません。また、最小限のスペースから建て始めて、収入があった時に住むスペースを徐々に増やしていけるというものです。
これを実現するためイカプトラさんが行ったこととしては、まず建物の意匠的なユニークさをなくし、シンプルな家にすること。建物の個性を出そうとするのは、この場面においてはそぐわないからです。
また、地域の人に作り方を伝え、彼ら自身が耐震性のコアハウスを作っていけるよう、マニュアルを作るとともに、連夜一般向けのレクチャーを開きました。

コアハウスを建てる際の留意点として、人だけではなく持ち物、そしてプライバシーも守ることができるシェルターの機能を持たせること、安く仕上げるためにその場にあるものを活用し、かつ耐震のために必要な物資を用いること、外部の資金を得ることが挙げられます。

事例比較から見えること
また建設時期について、震災直後にコアハウスを建設したカソンガン村と、政府によるパーマネント住宅の建設が始まった後にコアハウスを建設したケブンアグン村を比較。前者は建設費用が後者に比べ2分の1ほどであり、増築がより進みました。その理由は、震災から時間が経つと資材が高騰し、また政府からの復興援助が既に届いていて家が建ち始めていたため、増築するための十分なスペースがなかったためです。カソンガンではまずコアハウスを建て、その後に政府の援助によって増築するという流れを作ることができたため、よりよい事例と言えます。
インドネシアの場合、多数の家族で一軒の家に住んでいることが多く、政府の援助はその実情に合っていませんでした。その点コアハウスは住む人の事情に合わせて建てることができます。

日本のコアハウス事例
次に、聞き手にお迎えした曽我部 昌史さんからは、被災地における様々なプロジェクトに関わってこられた中でも二つの事例をご紹介いただきました。

板倉の家
牡鹿半島のための地域再生最小限住宅の開発プロジェクトで、アトリエ・ワンが設計を担当した「コアハウス/板倉の家」。
牡鹿半島らしい風景をつくる、予算に応じて規模が選べる、地域の産業と連動する、の三点を重視し、コアハウスのが採用されました。住む人に漁師が多いため、仕事から帰ってきて玄関を通さずに直接風呂場に行く習慣に対応するなど、住む人に合わせた構成としました。

オカミのイエ
被災地復興計画のコンペで、岩手県のある地域の生活習慣や風習を前提として提案されました。
この地域の家には「オカミ」という地域の人が雑談するスペースが必ずあり、そのオカミを中心に置き、周辺に増築できる形のコアハウスです。地域の人々をむすび協働するような生き方を目指し、かつもともとある集落に足していく形の建設が提案されました。土地に合った風景を作り出すとともに、陽の光や風を取り入れる構造でもあります。

ディスカッション
コアハウスを日本で普及させるための課題として、まず日本人の意識として、自身の経済状況に合った家のイメージをみんな持っていて、それを実現することを考えがちなのではないかという意見が挙がりました。また増築する際に、日本は人件費が高いこと、建築基準法から見れば確認申請を出し直さなければならないなど、色々な障壁が複合的に合わさっているということが話されました。
コアハウスは復興住宅とは異なり、その地域に住み続けられるためコミュニティが守れるという利点があります。住み継いでいく家としてコアハウスは可能性を秘めているといえるでしょう。

開催概要はこちら
(撮影:辻本しんこ)