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2013/11/13

イベントレポート

第三夜:国境を越えて、BOSAIを地域に根付かせる試み レポート

「コミュニティ・アーキテクト イカプトラ」三夜連続レクチャー
2013年10月18日(金)

三夜目は、センター長の永田が取り組んできた防災訓練プログラム「イザ!カエルキャラバン!」と、インドネシアにおける受容と広がりについて取り上げます。

イザ!カエルキャラバン!
まちづくりには「風の人」「水の人」「土の人」が必要不可欠です。土の人は土地に根を張って暮らし、土壌を作る人達です。水の人は土地に寄り添い、種に水をあげ育て続ける中間支援的存在。風の人は外から種を運び、土地に刺激を与える存在。

永田は風の人として、次のような種を運ぶことを重視しているといいます。
・色々な人に手伝ってもらい、一緒に考えてアレンジしてはじめて完成するもの。集まった人がどんどん参加して自分たちのものにできるため。
・楽しい、美しい、感動的、非日常など、関わるものそのものに魅力があるもの。

阪神・淡路大震災から10年目、被災者からの被災体験談を半年ほど掛けて収集し、防災マニュアル『地震イツモノート』を出版。カエルキャラバンは、そのリサーチをもとに開発された新しいかたちの防災訓練システムです。アーティストの藤浩志さんが開発した「かえっこ」(いらなくなったおもちゃを会場に持ってきてポイントに交換し、他のおもちゃと交換できる遊び)と体験プログラムを合わせたものです。体験プログラムの内容が防災のノウハウを学べるものとなっており、参加することでポイントがたまります(消火器的あてゲーム、バケツリレー、毛布で担架タイムトライアルなど)。

カエルキャラバンを開催したい地域にはノウハウを教えに行き、普及を進めています。防災組織だけではなく地域のPTAなども巻き込み、地域のお祭りのようになればいいと考えている、と永田。現在はモンゴル、ブータン、タイなど、様々な国に広がっています。

インドネシアにおけるIKCとBOKOMI
インドネシアにおいては、災害が過ぎれば被災のことは忘れられ、次の災害に備える動きがみられないとイカプトラ氏は感じていました。
そんな中、永田と出会い、まず子どもへの防災を行うべきと教わりました。被災体験をより長く語り続けることができるのは、大人ではなく子どもであるからです。

カエルキャラバンをインドネシアで受け入れるにあたり、運営方法を開発する必要がありました。まず氏の所属先であるガジャマダ大学が先導し、地域のNGOと小学校の先生を巻き込み運営を始めました。その後政府の支援を得て、先生をトレーニングすると共に、NGOも含めて情報交換ができるネットワークを形成し、彼らにリーダーシップを任せていきました。

「イザ!カエルキャラバン!」の頭文字「IKC」を「INISIATII KANCA CILIK〈小さい友だちによるイニシアティブ〉」と読み替え、「イカチェ」というイベント名にしました。また日本ではカエルをマスコットキャラクターとしていますが、インドネシアではより身近な子鹿(KANCIL)をキャラクターとしました。

IKCを発展させるためには、(1)地方政府に活動を見てもらい活動の重要性をアピールすること、(2)ツール開発、(3)担い手である先生たちをトレーニングをすること、(4)実行するためのシミュレーションをすることが大切でした。
特に先生のトレーニングについては、IKCを楽しんでもらうだけなく学んでもらわなければならないため、正しい方法を子どもたちに教えられることが不可欠でした。そのために先生たちには、医学者やボーイスカウトなど専門家から学んでもらいました。

さらに、神戸の防コミ(防災福祉コミュニティ=消防や警察といった行政の力だけでは足りないほどの大災害に対し、住民による自主的な消火や救助活動が重要であるという認識の元形成される自主防災組織)をBOKOMIとしてインドネシアで発展させました。
まず、神戸市消防局に地域の防災組織について教わりました。神戸の防コミでは、地域の防災訓練に子どもたちも参加していることを知りました。
日本の防コミが持っている消火ポンプなどの設備はインドネシアでは高価すぎるため、地域にあるものを応用し、低コストで作るよう工夫しました。現在では三週間に一度の防災訓練を行い、子どもも参加しています。現在はさらにBOKOMIを広げようと、ツールを計画中とのことです。

ディスカッション
インドネシアのBOKOMIでは消火ポンプがとても人気があるとのこと。これは、自分たちが自主コミュニティを作っているという誇りの象徴の意味を持っているのではないか。またイカプトラ氏は、シーズマネーを生かし、プロジェクトをさらに発展させるためのアイデアを持たれていて、また、資金を提供する立場、運営を担う立場など、様々な人を巻き込む力があることがすばらしい、と永田から指摘がありました。
会場からも多くの質問が出されるとともに、インドネシアから来日されたBOKOMIの担い手のみなさまには、会場からの質問に答える形で、BOKOMIの具体的な様子や、運営する上で気をつけていることなどについてお話をいただくことができました。

開催概要はこちら
撮影:片山俊樹