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2014/11/15

イベントレポート

未来のかけらラボvol.5 トークセッション「森と棚田と近代化~水俣川の上流社会から~」 レポート

2014年10月29日(水)

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「未来のかけらラボ」は、センター長・芹沢高志をモデレーターに、身近に散らばる多様な未来のかけら、つまり可能性の芽を拾い集め、草の根的に自分たちの未来を思い描こうとしていく試みです。

今回は熊本県水俣市より沢畑 亨さんをお招きし、レクチャーの後に、モデレーターの芹沢との対談を行いました。沢畑さんは、熊本県水俣市・久木野地域の村おこし施設「愛林館」の館長として、約20年のあいだ山里に根付き、環境教育や食育、村おこしの実践に取り組みつづけています。
久木野地域は、豊かな水、土、きれいな空気、生き物、景観を持ちます。それらは市場経済における評価には乗らないものですが、きれいな水や食を育む大切な資源であり、保全のためには林業や農業を支える必要がありますが、その重要性は認識されにくいと沢畑さんは言います。そのような中で、愛林館は地域の人と密に連携しながら食育や棚田保全の取り組みを行い、地域内のコミュニケーションを活性化させることで、その重要性を社会に対して示しているといえます。

対談において、モデレーターの芹沢からは、沢畑さんは1994年よりこの活動を開始されていて、その先見性と継続性は特筆すべきものであること、農学や環境学の研究者でありながら、いわば町医者のように地域住民とともに実践に取り組んでおり、この姿勢はどの地域でも参考にすべき事例であることが述べられました。
また、次のような話題が会場で共有されました。
いまだに日本社会は成長し続ける前提で構築されていますが、長いスパンで見れば、近代の経済成長や人口爆発がむしろ特異な状況だったと言えます。縮小社会は恐れるべきことではなく、これからは創造性が必要となる時代であるといえるのではないか、ということ。
また、高齢化社会について、65歳はもはや高齢者の定義に当てはまらないくらい活躍している時代であり、若者が一方的に高齢者を助けるという構造ではなく、それぞれができることで助けあって暮らしていけば、社会は良くない方向には行かないのではないか、ということ。
このような観点においても、愛林館は先立って実践を続けてこられたと言えるでしょう。

未来のかけらラボvol.5 トークセッション「森と棚田と近代化~水俣川の上流社会から~」
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