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2015/3/14

イベントレポート

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第5回 レポート

2015年3月13日(金)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第5回となる、MCフードスペシャリティ―ズパン資材事業部・室町秀夫氏のレクチャー「食品添加物について考える」を開催しました。

ゼミマスターの米山雅彦さんも、レクチャーを依頼する際、「厳しい目線や質問をあびると思います」と伝えたそうですが、室町さんも、食品添加物が悪いイメージを持たれていることは承知済み。過剰に安心をアピールするのでもなく、危険性の認識を煽るのでもなく、なぜ「添加物=悪」というイメージがあるのか、そこに根拠があるのかを、公の調査研究データを元に、丁寧にレクチャーしてくださいました。
※このレポートでは、データの出典や細かい名称は省略しています。ご了承ください。

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「食品添加物=悪」というイメージ
「癌の原因は何か?」というアンケート調査の最多回答では、主婦=食品添加物(43.5%)/癌の疫学者=ふつうのたべもの(35%)、タバコ(30%)、という大きな差が出ている。なぜか?
2000年ごろ、食品添加物の安全性に疑問を呈する本が多数出版された。本の内容は、食べてはいけないものを具体的に提示したり、食品添加物メーカーの元セールスマンが舞台裏を内部告発するような形式をとった語り口のもので、たいへん話題になった。この現象が、「添加物=悪!」という認識を広く世間に植え付けることになったと考えられる。
今回のレクチャーにあたり、それらの本を読み、そこで何が悪とされているのかを確認した。その根拠は正しいのか、をきちんとデータを見せながら、検証したい。

保存料(ソルビン酸)
ソルビン酸は、脂肪酸の一種。幅広い用途に使えるので、一番よく使われている保存料。漬物、ジャムなど、消費期限の長いものに特によく使われている。「カビ、細菌を殺すなら、人体にも悪いに違いない!」と言われている。
→物質の毒性は、半致死量(LD50。動物の体重1kgあたりの投与重量mg/kgが数値になる。数値が小さいほど毒性が強い。)で比較できるが、その数値によれば、ソルビン酸は食塩よりも毒性が低い。ソルビン酸が危ないという根拠は反証できる。

イーストフード
イーストフードは、発酵を促進させ、パン生地を膨らませる力を強化して、使うとパンがふっくらする。16品目(無機塩類)の総称。他に、かんすい、にがり、凝固剤も無機塩類だが、別記される。16品目の中に含まれる、塩化アンモニウムの毒性について指摘がある。
→ソルビン酸と同様、半致死量で比較すると、食塩の方が毒性が高い。

臭素酸カリウム
パンを膨らませたり柔らかくしたりする効果がある。発がん性が指摘されており、国によっては使用が禁止・制限されている。日本でも、パン以外での使用は禁止され、制限値以下の使用量であること、かつ、最終製品には残留してはならないという規制がある。
発がん性の指摘があって以降、日本でも使用自粛が申し合わされたが、正常な製造工程の遵守をすれば最終製品への残留はなく、問題はないという日本パン工業会の見解が出され、これを厚生労働省も承認したことから、一部メーカーでは使用が再開された(2003年)。臭素酸カリウムは「加工助剤」なので表示義務はなく、消費者が使用の有無を知るのは困難だが、消費者の不安を煽らないようにあえて注釈として別記するなどの取り組みがなされている。
また、カビにくい市販のパンは、臭素酸カリウムの使用によるものという言説があるが、エタノール濃度が高いとカビの生育が遅い、という実験結果があり、カビにくいのは臭素酸カリウムではなくエタノールに由来すると考えられる。
→臭素酸自体は、水道水にも入っていて、パンの臭素酸の基準値は水道水の基準値より20倍厳しい。臭素酸カリウム批判には、量的考察が欠けていると考えられる。

発色剤(亜硝酸塩ナトリウム)
元々はボツリヌス菌抑止のために食品に入れ始めたもの。色と風味を良くする。ハム、ソーセージ、イクラなどに入れられている。生鮮食肉に入れるのは禁止されている。生ハムなどには必ず入っている。合成着色料とは違う。亜硝酸塩自体には発がん性はなく、タンパク質に含まれる物質との組み合わせで発がん性が指摘される物質へ変化する。ビタミンCはその生成を阻害する。
→亜硝酸塩は野菜に含まれている物質で、食品添加物から摂取される量はわずかで、野菜由来のものの方が圧倒的に多い。野菜に含まれるビタミンCは発がん物質の生成を阻害する。亜硝酸塩も、一般的にビタミンC(酸化防止剤として)の同時添加がなされる。

総じて、「食品添加物が危ない」という指摘には、量的検証が欠けている。偏った情報を信じて危険と決めつけるのは正しいとは言えない。

「安全」と「安心」
ただ、食に求められる「安全」と「安心」は違うもの。「安全」は科学で追求できるが、「安心」は人の気持ち。自称「専門家」の存在や、不安を煽るメディア、企業不祥事などによって揺るがされる。
食についてのアンケートで、「不安を持っている」と答えた人が75%いた、という結果がある。不安の理由には「偽装表示」「輸入食品の安全性」が多く挙げられている。つまり、業者の不正を不安に感じている人が多い。
企業側も「無添加」「無漂白」「合成着色料・保存料無添加」をうたうが、無添加の定義は企業ごとに定義が異なるし、合成着色料は使っていないが天然の着色料は使っていたりする。書くことで過剰な「無添加」信仰を煽ってしまう部分があるのではないか。

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さまざまな言説があるなかで、賢い消費者になるためには、情報を鵜呑みにしない(メディアの「~が危険・体に良い」、「体験談」)、安易な判断をしない(「国産」「無添加」「高価」なら全て良いとは限らない)、量的思考で、自分の五感で判断すること、が重要。

質疑応答
さすが食ゼミ生、というべきか、質問には具体的な食品添加物名や海外の事例があがり、突っ込んだ質疑が交わされました。一部を紹介します。

Q:食品添加物には、保存のため以外にも、嗜好のためで必要ではないものもある(香料など)。脳が求めてしまうから歯止めがきかない。海外では規制している事例もある。国が規制すべきでは。また、企業側も、口当たりの良さ・柔らかさばかりを打ち出した、日本人の好みにおもねる一方の商品ばかりを作るのはどうか。企業側が変えるべきでは。
半致死量が検証の基準になっているが、死ぬことはなくても病気になる量だったら大変なこと。実験では1年が基準になっているが、人間で考えたら1年で判断するのは短すぎる。これらのデータで安全と言い切るのは不十分ではないか。

A:パンに限っては、必要ないものは使わないので、香料などについては詳しくないが、企業側としては、実際に好んでその商品を買う人がいる限り、その人に対して「それは間違いです」ということはできない。また、現実問題、24時間営業のコンビニで、無添加のサラダを提供し続けられるかというと難しい。ソルビン酸の摂取を避けるために、しょっぱい沢庵を食べ続けられるか?というと、食べないと思う。ライフスタイルに合わせて、適切に使っていくという考え方をしてはどうか。
これから、食べたくても食べられない時代が来て、質の良い材料が減っていき、食品添加物は増えていくのではないか。使えなかったものを使えるようにするような技術が必要になるのではないかと思っている。
いろいろな考え方がある。天然が一番、というのにも疑問がある。今回のレクチャーのまとめやゼミの趣旨につながるが、人に求めすぎないで、自分で選ぶ、ということが大事ではないか。

米山:たしかに甘いパンは良く売れる(笑)。
本質的な商品を作って消費者がそれに合わせてくれるならよいが、商売としてやっている限りは、ある程度合わせないとやっていけない。人のライフスタイルに合わせて商品を提供しようとすると、ずれてきてしまう、とは思っている。

最後に、室町さんが「やっぱり添加物は不安ですか?」と質問したところ、数人が手を挙げました。
ゼミ生のみなさんが自分の基準を作っていることのあらわれと言えるでしょう。
食品添加物は、未来に向かってこれからも新しい研究開発が進んでいく分野だと言えそうです。安易に結論を出さずに、継続して知識を深めていきたいものです。

第6回となる次回は、「醤油についてのお話と手作り醤油ワークショップ」と題した、大徳醤油株式会社・浄慶拓志氏によるレクチャー+ワークショップです。

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/