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2015/5/6

イベントレポート

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第6回 レポート

2015年4月10日(金)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第6回となる「醤油についてのお話と手作り醤油ワークショップ」を開催しました。
大徳醤油株式会社浄慶拓志氏をお招きし、醤油に関する講義と、家庭でできる醤油づくりを教えていただきました。

醤油づくりの現在
大徳醤油は創業100年以上の会社ですが、新規参入のない醤油業界ではまだまだ“若造”。国産原料を使い、化学調味料を使わない醤油を自社製造されています。
近年、醤油の海外での消費は増えているが、国内の消費量は70年代をピークに徐々に減少。ピーク時は130万キロℓ近かった使用量が、現在では約82万キロℓ程度。昔は町に一軒は醤油屋があり、各家庭に配達していたそうですが、現在残る醤油屋は全国に約1,500軒。

醤油づくりのあり方も以前とは様変わりし、大量生産・低価格販売路線に。大手メーカーは丸大豆(大豆を丸ごと使用)ではなく脱脂大豆(大豆から油を抽出したもの)を使い、短期間で醸造する製法に。大手の価格に対抗できない小さな製造所は自社で醤油を作ることをやめ、生醤油を購入したものを瓶に詰めて販売している。
昔は一升瓶(約1.8リットル)の醤油一本が散髪代と同じくらいの値段と言われていたそうですが、今では安いもので1リットル98円。1リットル入りの水よりも安い。少し考えれば不自然なことがわかるはず、と浄慶さん。
国内の醤油の8割に脱脂大豆が使用されており、丸大豆使用は18%ほど。そのうち、国産大豆の使用は約3%。日本は輸入に頼りすぎており、海外から食糧を奪っている。国産原料を使うことが大事だと浄慶さんは言います。

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家庭でできる醤油づくり
講義の後は、お待ちかね、醤油づくりを体験する時間。
昔、醤油は各家庭で手づくりされていたのだそうです。浄慶さんは、醤油が「工場でしかできないもの」であってはならない、と言います。
醤油づくりは麹をつくることから始まりますが、今回は浄慶さんにご用意いただいた麹を使います。まず、1.8ℓの水に414gの食塩を入れ、透明になるまでよくかき混ぜ、23%の食塩水を作ります。そこに麹を入れ、さらにかき混ぜます。「櫂(かい)で潰すな麹で潰せ」。ゆっくりと空気を入れるように、麹を潰さないようにかき混ぜる。

今回の醤油は、約一年以上かけて手入れをしてようやく完成します。日に一度、かき混ぜることが基本。初めの7日間がとくに肝心。食塩を行き渡らせ、腐らないようしっかりとかき混ぜます。2週間は微生物を育てるため、よくかき混ぜて酸素を入れることが重要だそうです。
無事夏を越えたら、少し目を離してもOK。「二夏越すといい醤油ができる」そうで、一年半~二年かけて熟成させたものが一番おいしいのだそう。
ある日突然、あら不思議、フルーティーな香りに!これをメイラード反応といい、抗酸化作用により赤褐色に変わり、色が濃くなってきます。
手づくり醤油のいいところの一つは、酵母・酵素を生きたまま食べられること。市販のものは、工程の途中で取り除かれてしまうのだそうです。
 

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伝統を残す使命
「醤油づくりに手間暇がかかっていることを知ってもらえるだけで有難い」と浄慶さん。
現在“醤油に投資しても回収できない”といわれ、設備の老朽化で醤油づくりをやめてしまう工場が多いといいます。また、後継ぎもなかなか見つからず、年間100社が店を畳んでいるともいわれます。
大手醤油メーカーでさえ国内では利益が出ない現状。大手メーカーの生産分で国内に必要な量はまかなえるが、「伝統を残していくことが小さい醤油屋の使命」だと浄慶さんは言います。

今回作った醤油は、これから約1年、各人が手入れを欠かさず、愛情を持って育てることが必要です。
食べ物を作るには時間と手間がかかるということ、そしてそのことを忘れさせてしまう現代の生産の仕組みについても再考する機会となったのではないでしょうか。

次回は第7回「野菜工場について」です。野菜工場の現場から、食糧難の時代を見据えた広い視野でお話をしていただきます。

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/