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2015/7/4

イベントレポート

未来のかけらラボvol.6 トークセッション「水俣からの新たな価値創造―甘夏ミカンから国産ネロリが生まれるまで」 レポート

2015年6月27日(土)

未来のかけらラボvol.6 トークセッション「水俣からの新たな価値創造―甘夏ミカンから国産ネロリが生まれるまで」を開催しました。

今回お招きしたのは、熊本県水俣市で甘夏ミカンから抽出する国産ネロリの開発・製品化に尽力されている、ネローラ花香房の森田恵子さんです。
ディフューザーからのやさしい香りと、紅茶に甘夏ネロリを数滴たらしたフローラルティを楽しみながら、多岐にわたるお話をお聞きしました。

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ネロリ
ネロリはローズ、ジャスミンと並んで世界三大アロマの1つ。ビターオレンジの花から抽出され、甘いだけでなくバランスが良い香りで、パーフェクトなアロマと言われる。
紀元前から地中海地域の生活の中の一つの習慣として、傷薬、胃薬(海外で展示会などに出展すると「昨日飲み過ぎて胃の調子が悪いから、ネロリを飲ませて」と言ってくるアラブ系の人が必ず1,2人いるほど)、化粧水、儀式、お菓子など万能に活躍し、今も作られているもの。

甘夏ネロリは、甘夏ミカンの花を蒸留器にかけて作る。甘夏ミカンの花のネロリ成分はとても細かい分子のため、近年、健康への影響が問題になっている乳化剤(界面活性剤)がいらない、天然の化粧水を作ることができる。

甘夏ミカン
甘夏ミカンは日本の固有種。作りやすさ、花付きの良さが特徴。あまりにも実がなるので、実を取る人にとっては摘果が追い付かず大変なくらい。花摘みは摘果作業を少し減らすことになって、農家にとっては両得になっている。
むきやすくて甘い伊予柑やデコポンの登場によって、甘夏栽培が不振になってきたところに、甘夏ネロリ事業がぎりぎり間に合った!というところ。農家の+αの助けになっている。

水俣
水俣病があって、すばらしい海産物があったのに漁業は全面禁止になってしまった。代わりに、甘夏栽培が奨励された。当時の強い農薬をまいて育てたところ、体調を崩す人が出た。それではいけない、できなければできないでいい、悲劇を繰り返さないように、と無農薬で栽培し始めた。
水俣が無農薬で栽培していたことが、ここならひょっとしたらネロリを作れるのかな、と思ったきっかけになっている。

人工アロマの未知の危険性
アロマの世界はとても深い。化学合成されたアロマについては、未知の問題点が指摘されている。帝王切開すると羊水から柔軟剤の香りがする/香気成分が経皮吸収されて子宮に蓄積する/香気成分が情動、感情をつかさどる大脳辺縁系に直接脳に影響を与える? など。柔軟剤の警告表示も強い表現に変わってきている。

怖いのは、飲んで溜まるわけではなく、皮膚を通して溜まるということ。水俣病の例が思い返される。これからの未来をどう考えるか?甘夏ネロリの活動も、こういったことへの注意の喚起ができるようなものになればと思っている。

今後の展開
オーガニック志向が強くなってはいるが、国内の消費者志向が大きく変わったというまでではない。甘夏ネロリは、海外の方が「日本製」「オーガニック」「トレーサビリティ」の3つが強みになり、反応がある。反応を見ながら長く世界に流通できるものを目指したい。

剪定する葉や青みかんからの抽出にも取り組んでいる。これらが進んで、甘夏一本で一家を食べさせられて、Iターン希望者や後継者も出てくるくらい、魅力がある事業にできればというのが目標。
いま事業に共感して協力してくれているのは、60代くらいのシルバー世代の方々。どこもそうだと思うが、地方では彼らが若手。彼らが支えている。

オーガニックなものをもっと追究して、水俣から新しい分野ができるくらいになるといい。元々これをやるつもりではなく、たまたま甘夏ネロリを見つけて、その奥深さに出会い、私がやるしかない、伝えるしかない、と、えいやっと起業した。まさか私がこんなことをするとは。でも、せっかくだから、そこまでやって、未来に良いことがしたい。

過去の教訓から学び、未来のために、環境や健康に配慮しながら事業としても成り立つシステムを目指すこと。森田さんの明確なビジョンと、それを着実に形にしていく地道な行動力。またさらにそれを偶然のような必然が後押ししていること。具体的な取り組みを通してお聞きすると、とても興味深く、示唆に富むものでした。

最後に森田さんからは、KIITOも生活全体を見渡して、未来のあり方をいろいろな人たちと協働しながら、総合的に考え目指していける場だと思う。新しい未来のデザインを打ち出していくような場にしてほしい、とメッセージをいただきました。

未来のかけらラボvol.6 トークセッション「水俣からの新たな価値創造―甘夏ミカンから国産ネロリが生まれるまで」
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