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2015/10/24

イベントレポート

LIFE IS CREATIVE展 レクチャー「高齢社会における新しい防災のカタチを多面的に考える。」

2015年10月17日(土)

LIFE IS CREATIVE展「シニア防災ラボ」内の企画、トークセッション「高齢社会における新しい防災のカタチを多面的に考える。」を開催しました。

神戸市兵庫区前入江地区防災福祉コミュニティ委員長である六條進さんと、滋賀県高島市の災害支援ボランティアネットワーク「なまず」の代表である太田直子さんにお越しいただき、NPO法人プラス・アーツ理事長永田宏和と共に、超高齢化社会に求められる2つの防災のカタチ「高齢者を対象としたカタチ」と「担い手としたカタチ」 について考えました。

 
まずは永田より、地域防災の課題についてNPO法人プラス・アーツが実施している楽しみながら防災を学ぶプログラム「イザ!カエルキャラバン!」を通して問題提起をしました。
「シニア防災ラボ」では、イザ!カエルキャラバン!が全国各地で多数開催されている一方、高齢者の多い地域だとおもちゃが集まらない、開催が大変だという声もあり、もっと高齢者に寄り添った新しい防災のカタチはないのかと考え、全国の開催団体にヒアリングを行いました。

●幅広い世代の参加を促す
東京都墨田区「一寺言問を防災のまちにする会」の事例では高齢者中心の活動を続けているが、地元の若手建築家などを積極的に巻き込み多世代で防災活動の今後について話し合ったり、大学の研究対象として毎年ゼミ生が集会所の会議に出席し、高齢者と一緒に毎年新しい防災訓練の企画を考えたりしています。

●かえっこをしない簡単なイザ!カエルキャラバン!へ
防災訓練がマンネリ化していて何か新しいものに変えたい―。しかし、地域では急にシナリオを変えることが難しいということも分かってきました。垂水区で行われているミニカエルキャラバンや調布市上ノ原まちづくりの会が行う「防災チャンプになろう!」は実施が容易なスタンプラリー形式で行われています。子どもが少なく高齢者中心でも無理なく行える身の丈のあったスタイルにアレンジして続けている地域もあります。

●世代を超えて日頃のご近所付き合い、他防コミとの連携
防災訓練の集まるメンバーの顔ぶれがいつも同じー。本山第二防コミでも他の防コミと同じ問題を抱えていました。
年間通じて様々な行事に防災訓練を取り入れている本山第二防コミが、地域に溶け込み、また地域の団体活動に寄り添うことや他防コミだけでは解決できない課題を共に考え、連携することで、新しい輪や取り組みでの発見が広がっています。

●介護の技を取り入れる
会場にはリサーチでヒアリングをした復興庁復興支援専門員の川池知代さんもお越し頂いていおり、被災した宮城県山元町で行われている「老老避難」での工夫もお聞きしました。
高齢化する災害公営住宅のコミュニティづくりの一環として避難訓練が行われ、毛布で人を運ぶ際に介護の技がとても役立ち、膝を立てて肩と一緒に持って体を横にするといった簡単に体を動かす方法や腰を痛めない持ち上げ方なども説明がなされているという事例を教えて頂き、そこから「高齢者のための防災」には介護の世界の技のスキルや商品が参考になるのではないかというヒントが浮かび上がりました。

このように全国各地で様々な高齢者防災の工夫がなされている事例が紹介され、「無理なくコンパクトに訓練を行う」という選択肢がある中で、そこにプラス・アーツが何かしら提供する価値、必要性があるのかという問題提起がなされました。
 

 
続いて、六條さんより、兵庫区入江地区で行われている「ぼうさい運動会」の事例をご紹介いただきました。
「防災○×クイズ」や「畳に載せて搬送する体験」など実践的な取り組みが多数行われており、主に高齢者と主婦の方や女の子が集まりにぎわったそうです。
誰でも楽しめる防災ゲームをご自身で探され、積極的に防災訓練に取り入れているのが印象的でした。メンバーは平均72歳。飽きがこないように内容を変えて、2年に一度ぼうさい運動会のような企画を実施。開催の度に新しい防災知識を覚えて帰ってもらうようにしているそうです。2年前は200人ほどが集まり、今年は250人を集めたいと意気込まれていました。

次に滋賀県高島市「なまず」代表の太田さんからお話をして頂きました。2001年から52000人ほどの小さな街で活動をされております。(高島市は高齢化率が約30%)元々社会福祉協議会で勤められていた際に阪神・淡路大震災の教訓をたくさん学び、仕事以外でも防災にのめり込み、地域の皆さんに声をかけて団体を立ち上げたそうです。被災をしたメンバーは誰もいないので方法を考えないと何も伝わらないということで様々なアイデアが生まれたそうです。地域防災出前講座では全員参加型を狙い、漫才や腹話術、クイズを取り入れて盛り上げているそうです。年間70回実施されており、中身を少しずつ変えて子ども向け高齢者向けとアレンジを加えられています。

最後に、参加者も一緒に「高齢者が主体となる防災のカタチ」について話し合いました。
(以下主な質問)
●防災ゲームなどを作っているのが楽しそうに見えたが?(永田)
(六條氏)中心メンバーで考えて、こんなものを作っているけどどうですかと相談をしている。
(太田氏)アイデアを考えてみんなで内容を決めてメンバーに集まってもらって一生懸命作っている。文化祭、クラブ活動のように楽しんでやっている。

●一緒に作る仲間をどのように増やしているのか?(永田)
(太田氏)毎年研修に行き、参考になる模型などがあったら、作れる人に頼む。その人はスキルを活かせるので一生懸命になる。
(六條氏)消極的な方が多いが、種目別に任せていく。担当町会からこれをやりたいという声はまだないが、担当種目について町会ごとに考えるという感じだ。

●男性の高齢者がなかなか社会参加できないと言われているが、いい呼び水はあるのでしょうか?(永田)
(太田氏)「なまず」サークルのメンバーは様々なサークルにも参加している。防災サークルにもいつの間にか入っているという感じだ。
(六條)「なまず」はかなり成熟している。何か面白いことをちょっとずつやって、役割を少しずつ担ってもらって、変わっていく感じでしょうか。

ユニークで本質的な回答も会場から出ました。惹きつける方法の一つは「飲み会」。「飲み会」があれば必ず参加する。消防団でも「飲み会」を楽しみに来る人は多い。もう一つは、ゴルフ三昧の生活をしていた方が「男にはDuty(義務)が必要なんだ」と言った。ゴルフも毎日やっていたら飽きてしまう。人から頼まれるとか、頼られるとか、ある種義務感があれば、自分の特技を活かせるのではないか。お酒の場で聞き出したり、頼んだりするといいのではないか。

(永田)根無し草になってしまっている人が根をはれる場の作り方が大事なのでは。いきなり防災組織づくりというのではなく、関われるプロセスを踏んで、仲間を作っていく。これが大事なのでは。
(川池氏)高齢者と一括りにせずに、それぞれの自負やプライドを尊重して、趣味や好きな事の延長から引っ張っていく。おじいちゃん、おばあちゃんと言わずに「人生の先輩」と見てみると関わり方が変わるのでは。60歳だとバリバリ元気で、レッテルを貼られるとやる気をなくしてしまうので、新しい呼び方があってもいいのでは。

まとめ:
本トークセッションでは大変示唆に富んだキーワードが飛び交いました。「お酒とDuty」、「楽しく防災をやっている」「無理をしない」「自分で作っていくプロセス」「誰かのためになるというモチベーション」「いきなりではなくプロセスを踏んで担い手を増やす」そこから、特技やスキルが見えてきたら、頼みやすい関係性が生まれてくる。そのためにはつなぎ手(地域の世話役)が必要ということで締めくくりとなりました。
 
 
 
LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。開催概要はこちら

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