NEWS NEWS

2019/4/9

イベントレポート

+クリエイティブレクチャー KOBE ECOSHIP!TALK 「見える」がつくる これからの服‐透明性のある未来へのガイドライン‐レポート

KOBE ECOSHIP!TALKは、「節約」「我慢」といった地球温暖化対策のステレオタイプな方法に一石を投じ、楽しみながら取り組むことが出来る方法を探るトークイベントです。本企画は、「WEAR」「FOOD」「LIFE」のいずれかの分野で活躍するクリエイターをゲストとして、また環境の専門家の方をインタビュワーとして招き、ゲストの活動の中から楽しめる地球温暖化対策の「ヒント」を得ることを目的とした、公開取材型トークです。

第3回となる今回のテーマはWEAR(衣)をテーマに「着る人も作る人も豊かに」をビジョンにウェアブランド「10YC(テンワイシー)」の代表を務める下田将太さんをゲストにお招きしお話を伺いました。

まずは下田さんの活動についてのお話からスタートです。10YCというブランドは開設して1年と少し、10年来たいと思われる商品をつくることをテーマにモノづくりをおこなうウェアブランドです。もともとアパレルのブランドで勤めていた下田さん。彼が日々ものづくりを行うなかで疑問に思ったことにからこのブランドは生まれました。

  

着る人も豊かに
「新しく買ったTシャツが一回洗濯しただけでよれよれになっちゃんたんだけどお前の業界どうなっているの?」という下田さんの友人の一言よりこのブランドはスタートしたとお話をされます。その時、ユーザーと生産者の間の距離を感じ、趣味でTシャツづくりを始めたそうです。自分が10年着たいと思うものをつくること。そのために工場を巡り、ビジネスで売ることを考えず、遊びの延長線上で1からものづくりを始めました。

作る人も豊かに
そんな中、巡る工場で会う人から否定的な意見をたくさん聞くようになったと話を続けます。「日本製って高いからどうせ使ってもらえない。」「いいものをつくることよりも、頼まれたからつくっている」「なんのために作っているか分からない」そんな言葉が工場から上がってきたそうです。これってどうしたら解決できるのかを「価格とデザイン至上主義のアパレル業界にそれ以外の価値観で勝負するべきではないか。と下田さんは考えます。

もっといい商品がつくれるにも関わらずブランドが遮断する。たくさんつくって、安い値段で売られて、すぐに飽きられる。そんな業界に「だれも得してないんじゃない」とさらに疑問に思うようになっていきます。そして、着る人も作る人も豊かにすることを目標に10YCというブランドが立ち上がりました。

10YCというウェアブランドの特徴
10YCがブランドとして大切していることは4つあります。
①直接販売
「卸しという状況は生産者へのフィードバックが限りなく少ない。生産者のと売る人の距離が出来る事で、モノの良さも伝える事が出来なくなる。だから、きちんとお客さんに接して想いを伝えるため直接販売を行っている。そうすれば思いが伝わっていくんじゃないか」と下田さんは話します。

②直接取引
「普通のアパレル会社だと、色々な役職や委託会社が間に挟まってしまう。そうすることで自分達がものをつくる人の声が聞こえない。」と下田さんは話します。10YCの活動として、きちんと工場に出向き、生産者の声を聞きながらものづくりを進めています。そうすることで、10YCのひとが来たと工場の人からも声をかけられるようになったそうです。「顔が見えるということは責任を負うという事」という下田さんのセリフが印象的でした。

そして、中間マージンの排除につながる。そうすることで、生産者にお金が落とすことが出来ると話を続けます。
「「メイドインジャパンだから高い」という無駄な付加価値がついているんです。それは作り手側ではどうすることもできない。ブランドの仕組み次第でメイドインジャパン=高いの価値観を省くことができる。例えば同じ6000円でメイドインジャパンとメイドインチャイナの服をくらべる事ができる。どっちがいいか。それを決めるのはお客さんという構図を作ることだってできる。」

③見える化
「服は自動販売機からでてくると思っている人」がいる。そう話をはじめ、こう続きます。「すごい簡単に作られてると思う人がいるんです。1000円で変える服。じゃあその原価って200円とかそんなもの。自動販売機で買うくらいの安価な感覚で作られていると思われても仕方がない現状でもあるんです。」

「服が作られる、その工程を知ることでものを作る人やそこにかかるコストに思いを馳せることが出来ると思うんです。」工場を巡り、モノづくりの現場を見てきた下田さん。彼の想いは現場で働く人たちにフォーカスを当てるということでした。

④アフターサポート
10年着続けたい服をテーマにブランドづくりをする下田さんはこう話しをします。
「自分たちが作った服が捨てられるって悲しいし。それにいいものをつくったから、じゃあ10年着てください。っていうのも無責任だと思うんです。例えば、汚れたTシャツを”染め変える”サービスやほつれを”直す”サービス、襟元を”取り換える”サービス」など、長く着てもらうためのサービスも同時に提供しているそうです。

「消費者に価値が認められること」をスタート地点として、10YCの活動を紹介していただき、トークは後半戦に入ります。

  

後半戦は環境問題にひもづけ地域環境研究所ecotoneの太田さんからのお話に入ります。
「ものの豊かさ」と「こころの豊かさ」では心の豊かさを重視し、大量生産大量消費に対して疑問に思うという声も年々増しているそうです。
これからのものづくりを考えたときに「さまざまな基準がある中で、なにを大切にするのか。」太田さんは、SDGsを例に出しながら話を進めます。10YCの活動を太田さんは「8:働きがいも経済価値も」「12:つくる責任つかう責任」と読み解き話を進めます。
「モラルを押し付けるのではなく、知ってもらうことで選択肢をつくる。下請けと呼ばれていた人たちをパートナーとして付き合い光を当てる。そういった活動をしている。」と話をされました。

ごみを元から減らすということ
リデュース、リユース、リサイクル(3R)という考えが太田さんから話をされました。「リデュース、リユースは難しい。飲み物を買おうと思うとカップやビンみたいなゴミまで買うことになる。回収されたビンはもうビンとしては再生しない。壁やアスファルトの材料になるんです。ものづくりに関わる、全ての人の意識を変えないとそもそも実現することすらできない。」と話をされました。

その後、参加者それぞれ明日からできる環境活動への取り組みとしてONE ECOSHIP!を発表していきます。
「何かを消費するとき」に「つくった人の気持ち」を「考えて使う」
「時間があるとき」に「やぶれたくつした」を「なおす」といったような、
今回の話からそれぞれ発表していきました。

10年着続ける商品やサービスをつくる若い起業家の考えからこれからの地球環境やものづくりの裏側を考える機会になりました。

  

イベントの詳細はこちら
http://kiito.jp/schedule/lecture/articles/33241/