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2023/3/20

イベントレポート

【レポート⑥】+クリエイティブゼミvol.37 リサーチャー養成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」例題3:空き家をじっくり考える。

8月2日(火)には+クリエイティブゼミvol.37 リサーチャー養成編の最終発表会が行われました。神戸市長田区の空き家についてこれまで5回のゼミに加えフィールドワークを行い、グループで話し合ったことを発表しました。

A班「若者が足しげく通いたい場所」にするために

■空き家が増えている固有の要因
リサーチ対象地域の空き家は、敷地内が草木に覆われていて生活の気配がない建物がたくさんありました。件数までは調査できていないので正確な数値はわかりませんが、推測ですが半分くらいは空き家状態なのではないかと推測しました。全国的な人口減少に加えて他の原因があるのではないか、と考えました。現地リサーチの結果、地域の高齢者の方の要望で接道を作り直してほしいという要望があるが、道幅が狭く、工事業者含め、車が侵入できないということがわかりました。
①歩行が困難になった高齢者が住み続けることができない
②資材搬入など人力でする必要があり、工事費用がかさむため新しい家がなく古い住宅が多い
③公共交通機関からのアクセスは良く、山間の静かな暮らしができる場所だが、集まる場所がなく外部の人へ魅力が届かない

■課題への対策
①の課題に対して、スモールモビリティの事例を活用する案を考えました。スモールモビリティは1~2乗り用の電気自動車なので騒音も少なく、狭い路地にも入ることができます。愛知県豊田市で名古屋大学と提携して行っている「里モビ」は人口の5割が高齢となっている山間地域でニーズによってカスタマイズできるスモールモビリティが活用されています。また地域によってはセブンイレブンの配達サービスとしてもスモールモビリティが利用されており、買い物の困難な地域に導入されています。
②の課題に対して、空き家をDIYをしてまちをひらいていく「基地」にする案です。岐阜県各務原市でDIY型空き家リノベーション事業が行われています。自治体や不動産、インテリアコーディネーター、工務店、建築学生、金融機関などが連携してリノベーション事業が行われていることがわかりました。ベースとなる拠点があれば、地域で農業をされている人とレクチャー付きの農業体験農園を農地の所有者が農業経営の中で都市の住民と連続した農作業が体験できるというものです。農作物は春夏秋冬いろいろなものが取れるので、足しげく通う場として有効だと考えました。
③の課題に対して、「みんなの台所」を軸とした交流の場の提案です。対策②の農園で育てた野菜をDIYの拠点空間で料理を作る交流の場を考えました。事例として徳島県のMINDEキッチンでは、交流の場としてだけではなく、小中学生の野菜接種不足による肥満率が高いという食の課題にも取り組んでいるそうです。対象エリアでも学生が利用したり、社会とこの空間でつながってみたり、ビジネスパーソンのワーキングスペースとしての利用方法なども考えました。

 

山崎:飛び出す絵本のような発表方法が面白かったです(笑)。食べ物は求心力が強いし、農業もコンテンツとして強いと思います。ただ逆にそれが一般化されやすいこともあり、できればこの地域で行う強みのポイントなどが加われば、特有性もありつつ、一般的な社会課題のメッセージにもなりうる方向性が開けると思いました。
渡辺(神戸市):最初私もあの場所を見たときにダッシュ村みたいにできたらいいなと思いました。スモールモビリティもおそらく入っていけるんじゃないかと不動産とも話をしていました。いろいろな提案をしながら地域の魅力を上げて、どういうアクションを起こせばよいかという提案がとてもよかったです。
永田:真正面からなぜ空き家が多いのかという課題抽出や整理をして、それを解決していくための方法や逆手に取ったプランの提案が新鮮でした。個人的に響いたのは最後の「みんなの台所」でした。みんなのというところが、限定されているのではなく、ひらかれていろんな人が使える場所としての活用や人の関わりのイメージが湧きました。言葉としての強さを感じたところがありました。

B班「地域をひらく」どのような仕組みがあれば人が訪れる場所になるか

大通りから一本道を入れば、秘境があり、住んでいる人たちが住みやいように工夫されている街並みを感じました。一方で外部の人が訪ねてくるのには何かきっかけがないと入りにくいと感じました。地域を盛り上げるために関わってくれそうな人が入れる仕掛けを考えました。
まちの成り立ちの歴史や各地域行われている空き家活用の先進事例をみて、現状では新規流入者を無理に斡旋できないのではないかと考え、また空き家へのソフト面で関わり続ける重要性と関わり続ける人を呼び込む仕組みが必要です。

■拠点と屋台の活用
空き家をリノベーションして拠点となる場所を持つことに加え、移動できる屋台を用意してまちの外側と内側をつなげる仕組みを考えました。他域での空き家の取り組みなどとも連携したイベントなども行えれば良いと思います。屋台は一つのものを提供するだけではなく、いろいろな利用方法があります。屋台自体を作るときには、空き家をリノベーションするときに出た廃材などを利用してみたいです。
今回のリサーチで過去の開発のされ方と現行のシステムの折り合いつかず、身動きが取れない空き家の持ち主がいるのではないかと考えました。地域によって空き家になっている原因が違うので、一律の制度だと空き家を改善するのが難しい場合もあります。家が古くなって倒壊の危険性や山がすぐ近くにあるので土砂災害などの危険性もあるので、対策も必要だと思いました。今回のリサーチ対象の地域に合う制度作りはより専門の方にリサーチをしてもらった方が良いのではないかと考えています。

■私たちにできること
第一段階として、地域住民の方と外から訪れる方のゆるやかなコミュニティ形成の場所や仕掛けづくりが必要です。10年から50年後という長期で考えたときには、人口減少の中で、過去に無理な開発をした地域をさらに無理やり開発するよりも、都市やまちのゆるやかな終活が必要なのではないかと感じました。その間に解体をしたものを、資材や資源として再利用したり、工夫が必要だと考えます。

 

永田:歴史や先進事例などを分担して深く調べられてのプランの提案だったので、とてもよかったと思います。秘境感や探検のような楽しさなど、まちそのものに魅力を感じ、そこからつながるリサーチとプランには説得力があると感じました。拠点と屋台というアイディアは良いなと思いました。魅力をどうやって伝えていくかということを、拠点を持ちつつ屋台でひらいていく面白さを感じました。
渡辺(神戸市):まちを山に還すという議論はすでにありますが、ハザードマップを見ると神戸は中央区、灘、東灘も土砂災害警戒区域があり、そこは残してここは山に還すのかという議論になると、たぶん地域の人が本当にそれで納得するのかということは気になります。隣に学校もあり安全な場所もあると思うので、防災などに関してみんなで一緒に楽しめる提案があると地域の人たちの気持ちの面でも良いのではないかと思います。
山崎:地域や空き家を多層的に見ようとしていることがよくわかりました。歴史から見ると、どうして今の形状になっているのかという説明がただ家を見ただけとは違うストーリーが見えてくるので、リアリティが複合的になってイメージが膨らみました。「無理な開発をした」という表現をされていたと思いますが、これはいろいろな捉え方ができて、必要に迫られて目の前のことをやらざるを得なくてそこに入っていったことにはおそらく無理があったのだと思います。それが変な階段の魅力であったり、当時の人の作り出したデザインを今から見ると特徴的な面白さは無理から生まれた側面があります。全部きれいに安心安全で平和な社会では生まれないまちの魅力がこの地域にはあったのではないかと聞いていて感じました。その魅力が、今みなさんが感じている「他にはない場所」としていく道筋なのではないかと思います。

C班 空き家活用を通じて地域にスポットを当てる

長田区の空き家を横断的に見ていくと、その地域によって空き家の捉え方が違うのではないかとメンバーで話しました。駒ヶ林は古い街と新しい街が入り混じっており、よそ者を受け入れてくれそうな雰囲気を感じました。今回リサーチ対象としたエリアは、静かで自然もありますが接道がないなどの課題はありますが、関わりし代ありそうだと感じました。

■対象エリアの課題からみる特徴の視点を考えてみる
・「ヒト」:高齢化、プレイヤーが少ない → 関わり代がある。昔職人として働いていた方もいるとのことで、経験などは財産でもあるので協力してもらえれば力になる
・「モノ」:坂道が多く、車は通れない → 湧き水など自然が豊か、健康を維持する
・「カネ」:土地と建物の所有者が違う → 地域への関わりが深いので良好な関係を築ける可能性

空き家の問題や事例などを調べていくうちに、空き家が地域に与える影響とは何だろうかという疑問が上がりました。空き家を中心に、エリアの内と外の人がつながり、課題に取り組みながらリサーチを深めていきたいと感じました。
・まちの調査団:近隣の学校の学生と一緒にまちの調査の手法を学びながら、地域をめぐって観察調査を行い、高取山マップをつくるなどという取り組みを一緒に行う
・解体&リノベ部:空き家のリノベーションができる人材や仲間を増やす拠点をつくる
・そばじい:KIIITOのパンじいを参考に、湧き水でそばをうつ高齢者チームをつくる
・Hike and Clean:リサーチ対象エリアは登山口でもあるので、登山者とまちの人が一緒にまちのことを学べる機会や山をきれいに掃除をしたり手入れをする拠点として空き家を活用する

地元の人たちにどこまで受け入れられるのか、他に面白いアクションを起こせないか、できることから始めながら、取り組みを通じて関係人口を増やし、地域に魅力を感じる人を増やしたいと考えています。空き家の価値を考え、人にフォーカスをしてさらにリサーチを深めていきたいと思います。

 

山崎:お聞きした発表から「アクション」が大事であるという趣旨を感じました。「アクション+何か」というアイディアがたくさんあったように思います。一般的には「リサーチ」というと距離があって、堅苦しいイメージもあります。いきなりリサーチから入るのはすごく問題意識が高くないとできないので、そこにいろんな仕掛けがあって段々巻き込まれていき関係ができて、新しいことを知るというストーリーが見えたような気がしました。グループのみなさんの想いと地域の人の想いというものがきちんと整理されて発表されていたところがとてもよかったと思います。
渡辺(神戸市):すごく楽しく見させていただき、一緒にできたらいいなと思いました。空き家活用をすると一人よがりだったり、地域の方からもの反発があるということが多々あると思いますが、地域の人がどう思っているのかということを考えながら一緒に関わり方を増やしていくというアイディアが非常に丁寧で、地域の人とも良い関係を作ることができるのではないかと思いました。
永田:いろんなプランが出ているなかで、地域に暮らしている、特に高齢の方の関わりはどのようになるのかと思いました。みなさんがアクションできたとしても、継続しては難しいのではないかと思います。そういうなかで最初のきっかけを作り、いずれ起こしたアクションが引き継がれ、関わりを増やしていくのかというところを聞きたいです。
C班:地域の人の関わりについては、やりながら考えなければいけないところだと思います。調査団でいうと子どもたちとまちの大人たちが一緒になって地域のことを知るきっかけに交流が生ます。また子どもたちが地域について学ぶことは、長い目でみて地元のことを気に掛けることのできる人を育てることにもつながると思います。蕎麦の話が出たときには、薬味などもすべて地域内で住人の人たちが管理しながら作れないかと考えました。そういうことから地域のなかで様々な取り組みが生まれていけば良いと思います。登山に関しては、ただ登るだけではなく、地域の歴史を学んだり、エコツアー観光など環境を守る活動の循環にもつながれば良いと考えています。

総評
山崎:リサーチゼミとしての視点で聞かせていただいていましたが、フィールドワークをした時の感想とその後の調査がきちんとリンクしていたと思います。空き家は今の日本で一般的な問題ですが、それを扱いなながら固有の問題がどこにあり、突破口を見つけていくかというバランスを工夫されていると感じました。アイディアはそれぞれにあり、他のチームのアイディアとくっつける余地があったり、一緒にブラッシュアップできると思いました。実際にフィールドワークを行い、課題を見つけ、そこにアイディアを結び付けていくプロセスがとてもよく見えたので素晴らしい発表会でした。
渡辺(神戸市)みなさんひとつひとつ丁寧に考えられていて、ぜひ何かひとつでも一緒にできたらと思いました。本当に動くのであれば、一緒にやれることはたくさんあると思います。マイナスとされる空き家でも切り口によってはプラスのところがあり、発見があるので、どのまちにも良さがあると改めて感じました。
和渕(神戸市):楽しみがないと、難しい課題を解決していくことは難しいので、ワクワクするアイディアがたくさんあったので、非常にこれが発展していくと面白いことが生まれてくると感じました。
永田:回数も限られていた中で、リサーチゼミを運営している私たちも一緒にエリアを絞ったり考えることができました。3班ともそれぞれユニークで、カラーにあったリサーチをされていて、聞いていても非常に興味深かったですし、いいリサーチをしていただけたと思いました。今回はすべての班がリサーチだけで終わることなく、アクションプランの提案へも行きついていたところが良かったです。各班ともにアイディアやプランの中に光ものがありました。アイディアやリサーチ結果、プランの提案をKIITOが受け止めて、今後のアクションゼミへの発展など、これを終わらせることなく展開をしていきたいと思っています。
 

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