2023/4/14
イベントレポート
はじめに
KIITO:300ファームスクールは、地域活動や学生活動といった取り組みを進めるなか、広報や記録、イベントの企画などで悩みを抱える方々に向けた地域活動に役立てるための5テーマのクリエイティブ講座です。
最終回となる第5回ではKIITOセンター長の永田宏和が講師を務め、地域向けのイベントをより魅力的でサステナブルなものにするためのノウハウを伝授しました。また、これまでにデザイン・編集・写真・映像とテーマ別で4つの講座を実践してきましたが、各回で学んだことがイベント企画へと結びつく繋がりを感じていただけるような内容となりました。
まず1時間ほど講座を受け、その後にワークショップを受けます。後半のワークショップのテーマは、「KIITO:300を舞台に、誰かと誰かをつなぐ(例:多世代)プログラムを考える」であると冒頭に説明がありました。テーマを思い浮かべながらレクチャーを受けることで実際にイベントを企画するイメージが膨らみやすくなります。
「風の人」「水の人」「土の人」そして「種」の考え方
まずはセンター長永田のフィロソフィー(活動理念)を伺います。地域の人々をどう巻き込んでいくか、サステナブルで豊かな活動にするにはどうすればいいかなどを考えるとき、地域での役割を整理する必要があります。そこで重要なのが「風の人」「水の人」「土の人」「種」の考え方です。
「水の人」とは、その土地に寄り添い「種」に水をやり続ける中間支援的存在の自治体や企業などのことです。
「土の人」とはその土地にしっかりと根を張り活動し続ける地域住民を指します。
「風の人」とはその土地に「種」を運び、刺激を与える存在のことです。
そしてここでいう「種」とは、活動プログラムやイベントのことを指します。例としてお祭りや防災訓練などが挙げられます。現状では「種」を植えても芽が出ないという問題があります。なぜかというと土が枯れてしまっている、つまりは地域活動のマンネリ化や担い手の不足、高齢化、あるいは世の中が楽しいことで溢れているために地域住民の興味がそちらへ行ってしまっているからです。しかし、そんな時代においても地域活動には重要な意味があります。例えば、人々の見守りや災害時の助け合いに繋がります。ですから、どんな時代においても地域のつながりは大切なのです。そこで必要なのが「種」の「品種改良」。「種」を作り変えるところからはじめて、風に乗せて必要な所へ持っていくことは「風の人」の役割です。「風の人」はあくまでも専門家なので、育て続けてくれる人が必要になります。それが「水の人」です。地域のために汗をかくことをいとわない人々(地域おこし協力隊など)など地域に寄り添い伴走してくれる「水の人」はいますが、「風の人」が足りていないことが現代の問題であり、いい「種」が見つからず困っているのが現状です。「みんなが強い「種」を求めている時代。だからこそ、このイベント企画編に価値がある」というお話から講座がスタートしました。
そこで、いい「種」に必要不可欠な2つの条件に関しても伺います。
いい「種」に必要不可欠な2つの心がまえ
まず一つ目が「不完全プランニング」です。完璧に仕上がりすぎていない方がいいという考え方です。手伝えるかどうか、どれだけ人が関われるプロセスが残されているかが重要です。またそれは地域の人をどれだけ愛することができるか、信じることができるかにも繋がります。一緒にやろうと思う気持ちが大切です。「一度場をひらいてみると、自分が持っていないものを持っている人たちがそもそも集まるので、自然と活動が豊かになる。常にオープンマインドになれるかどうかが大切」とのこと。関わりしろとしての余白があることで主催者の活動から「みんなの活動」になります。
二つ目が「+クリエイティブという手法」で、こちらはよりテクニカルな視点になります。
楽しい、美しい、感動的、非日常、夢のような、ワクワクする、かっこいいなどの関わりたいを生み出し「魅力化する」ことがポイントです。テレビを見ていて面白そうと思えるような家ではできないこと、現実的には実施が難しいことにヒントがあるそうです。また、「ゼロから何かを創り出す」ことに加えて、「今ある何かを作り直す、困っていることを焼き直す、すなわち再編集する」ことも重要な考え方です。
「風の人」の心得
なにかいい企画をしようと思うとベースが必要です。そのベースが何かというと「たくさん引き出しを持っていること」。引き出しを増やす際に最も大切なことは「一度体験すること」です。ネットベースで見て知るのではなく、自分で体験し身をもって「いいな」と思った経験をどれだけ持っているかが大切とのことです。
また、「失敗は成功のもと」という言葉がありますが、失敗をした時に何が課題かを見つけて改善したりやり直したりすることに意味があります。そしてリサーチも欠かせません。人の興味関心をわかっていないと企画はできないので、世の中の出来事に対して興味を持つことも重要です。
事例紹介
永田が実際に手掛けてきたKIITOでのイベント事例を挙げてイベント企画のノウハウを学んでいきます。例えば、「ちびっこうべ」は「子どもたちに学校では学べない創造教育を!」というテーマに「子どもたちがゼロからプロに学びながら自分たちでまちをつくる」という「+クリエイティブ」な発想を掛け合わせています。今の時代、何でも発注しようと思えばすぐにできますが、それではもったいないと永田は言います。ワークショップをして子どもやいろいろな人と一緒に作れるものも実は多いのです。「作ることを放棄している社会」に対して、「作ることができる場」というのはものすごく価値のあることだと語ります。地域にいろいろな人がいるにも関わらず繋がれていない今、人と人を繋ぐことはイベントを企画することの意味になります。また、地域でイベントをするときに「プレイヤーがいない」という声がよくあがるそうですが、「プレイヤーは作ればいい、育てればいいんです」という言葉も飛びでました。
その他、男・本気のパン教室、+クリエイティブゼミや、ナゾトキウォークラリーなど数々の事例とその企画が生まれた背景を伺います。
ワークショップ①:練習問題 「もちつき」で人気の地域イベントを再生するアイディアを考える
一部の例外を除いて多くのまちから姿を消している年末の「もちつき」をキーワードに、人気の地域イベントに再生するアイディアを個人で1分間考えてみます。どんなアイディアでもいいのでとにかくどんどん見つけていきます。ここでも「不完全プランニング」や「+クリエイティブ」の考え方を意識します。参加者のみなさんからは、「ダンスもちつき」「くじつきもちまき」「立体もちアート」などユニークで興味をそそるイベントのアイディアが出てきました。伝統行事などの型が決まっていそうなものにも色々な可能性が秘められていることを改めて実感させられます。
ワークショップ②:「KIITO:300を舞台に、誰かと誰かをつなぐプログラムを考える」
ワークショップを行う前に企画をする際のポイントを何点か教えてもらいます。「誰と誰をつなぐのか」「KIITOの既存の活動」「ステークホルダー」「空間」「設備」など企画のためのリソースを整理すること、「カフェ」「ショップ」「工作」などのテーマを決めること、いろいろ掛け合わせてみること、などのアドバイスを受けたのちワークに入ります。まずは5分間個人で検討し、その後の10分間は2人組でそれぞれのアイディアを共有します。さらに4人で1つのグループをつくり、40分間でアクションプランを練り上げていきます。そして最後に、1チーム3分の持ち時間でプランを発表します。タイトルとキャッチコピー(スローガン)は必ず入れること。あとは自由です。実現が可能そうないい案があれば実施するとのことで企画に力が入ります。
各チームより、「KIITO SDGS ジャズフェス」「神戸JBコレクション~シニアのファッションイベント~」「本気の大学生 高校生が子供とつくる最高の文化祭」「KIITO:300で服・変身!~Reborn 今あるものを長く大切に~」「ノリ乗りイベント」「ちびっこうべ2.0 ~中学生が起業家に!?~」などのユニークなイベント企画が生まれました。1チームずつ永田よりフィードバックを受けました。
おわりに
やはり大切なのは、「不完全プランニング」と「+クリエイティブ」の考え方です。この2つを常に意識して、もっといろんな人を巻き込めないか、つまらなくなっていないかと自問自答を繰り返して企画をしていくこと。企画した後に「土チェック」「水チェック」「種チェック」の3つのチェックをすること。活動に関わりしろがたくさんあって、いろんな人を巻き込めるだけの魅力がクリエイティブな発想で生み出されているかをもう一度確認することが欠かせません。「企画には酔ってしまう瞬間がある」と永田は言います。やっていくうちにもうこれが最高だと思ってしまいそこから離れられなくなる人もいますが、おもしろい企画には冷静さが必要です。参加してほしい人のニーズに企画がちゃんと合致しているか、テーマをちゃんと実現できているのか、楽しいの先にどういう未来が作れるかをしっかりと描けているか、そして最後に、地域で水をやる人や育てる人の重荷にならないか愛情を持って確認することを怠ってはいけないとメッセージをもらい、講座は終了いたしました。
地域活動に役立てるためのクリエイティブ講座「KIITO:300ファームスクール:初級編」
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