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2024/5/2

イベントレポート

【レポート⑦】+クリエイティブゼミvol.39 リサーチャー養成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」 例題4:商店街の空き家をみんなで考える。

はじめに

7月25日(火)には+クリエイティブゼミvol.39の最終発表会を開催しました。
+クリエイティブゼミは、大阪大学COデザインセンターの山崎吾郎さんと協働し、フィールドワークに重点を置く「文化人類学」の観点より「リサーチ」にフォーカスしたゼミ形式のプログラムです。
これまで6回のゼミとフィールドワークを通して、空き家問題について考え練り上げたアイデアをゼミ生が発表し、山崎さん、渡辺さん(神戸市長田区地域協働課)、永田が講評しました。

 

A班 「みんなの道 芝生化計画」

■ 人が集い関われる場をつくり、活性化につなげる
高低差のある立地環境で地域全体での⼈⼝減少、地域の担い手不⾜などの課題がありますが、商店街のアーケードは大きな吹き抜けのある半屋外で気持ちの良い空間です。また、近くには保育園や学校、地域福祉センターが多数あり、多世代のいる地域性があります。
店舗が入れば活性化するということは、裏を返せば活性化すれば店舗が入ると考えます。つまり、私たちは人が集い関われる場をつくることで人が集まり賑わい、活性化につながると考えています。そこで、綺麗なアーケードの下に芝を敷きます。

■ もっと関われる、もっと⾃慢したくなる、商店街にするために芝を敷く
芝生を敷いて、井戸端会議やラジオ体操、ヨガをしたり、パンを販売したり、夜はプロジェクターを使って野球のナイター中継をしてみんなで観戦したりと、人と人との繋がりが持てるイベントや使い方を実施します。芝は人工芝を考えており、メリットとして枯れることがなく、手軽に取り外しができて設置や片付けが可能なので色々な使い道が考えられます。商店街の全面に敷くとなると費用がかかりますが、敷きたいエリアのみから始めるなど小さくスタートすることも可能です。神戸市内でも人工芝を使用している事例はたくさんありますので実績もあり安心です。

 

■ 講評
山崎:リサーチしてからの結果はよくわかったのですが、どのようにして芝に行きついたのかのプロセスや、芝じゃないといけない理由が気になりました。

渡辺:芝居以外に他に何か敷くもので考えたものがあれば知りたいです。こどもたちが駄菓子などを食べながら、地べたに座るかわりに芝生に座れるのもいいと思います。

永田:リサーチと紐づいたアイデアなのか、新しいものをしかけていくイメージなのか、どちらなのかが気になります。また、アクションを前提としているので商店街の全面に芝を敷いた場合に、いくらになるのかもし計算していたら教えてほしいです。

B班 「房王寺ショッピングセンターの10年後のために
アーケード下でつくって食べて、これからについて話そう!」

■ 商店街の良さを改めて認識し、アイデアを生み出す
お話を聞く中で、定期的にアーケードを補修しているところに商店街の方々の想いを強く感じました。また、天窓があり明るいので人が集まって何かをするのに最適です。人が集まる第一歩となるアクションを起こすために、とても良いアーケードがあること、人が集まれる場所であることを商店街に暮らす方々がまず認識する必要があると思います。そして、あれやろう、これやりたい、あれ面白いんじゃないかと考えられるようになっていくことがまず今やるべきことであると考えました。

■「外から人が入って来て定着すること」をゴールに
準備期間がいるかもしれないですが、中の人たちだけではなく外からも人を呼んできて、時間をかけて何かを一緒にする体験を重ね、繰り返し、徐々に外から新しい人を呼んでくることが大事だと思います。そこで、みんなで集まって同じものを作り、食べてワイワイ話す「巻き寿司パーティー」を考えました。商店街の日高寿司さんとも協力できればと思います。巻きながら、食べながら、次は何をやりたいか、外からやってきた人と商店街の人が一緒に話し合い、巻きずしパーティーを起点に、最終的には商店街の人々が核となって次は何をするか話し合える時間が必要なのではないかと思いました。集まった仲間と一緒に次のイベントを考えることを繰り返すことで、外の人が入ってくる・一緒に取り組む・地元に愛着が湧く・定着する・また外の人が入ってくる、という循環をつくることができると考えます。

 

■ 講評
山崎さん:リサーチと問いの部分が明確で、納得のいくプレゼンの構成だったと思いました。商店街の人たちが主役になっていくプロセスの作りこみについてチーム内で議論があれば教えていただきたいなと思いました。

永田:課題意識やアーケードの魅力からプログラムを考えているところ、場の作り方として「巻きずしパーティー」があるように俯瞰した企画の立て方がいいと思いました。一方、本当に巻きずしでいいのか、日高寿司さんを主役にしすぎていないか、という自問自答が必要で、そこをもう少し掘り下げられたらいいと思います。

渡辺:商店街をリビングに見立ててみんなでつくるというのがすごく素敵だなと思いました。協力もできるのでいろんな人を巻き込んで楽しい会ができればいいなと思います。

C班:「ひらく つなぐ つづく 房王寺シェアーケード
やりたいを叶えるアーケードシェアリング」

■ 商店街でみつけた「シェア」
まずはアーケードに魅了され、ここで何かできないかなと考えました。
商店街の中を見て歩いたり、お店で食事をしたり、お話を聞かせてもらうことを中心にリサーチしました。その際に、お店に飾ってあるものが別のお店の中でも見かけたことに気づき、シェアされていてお店同士の関係性が見えたのがいいなと思いました。お店や人口が減る中で、アーケードを介してみんなで一緒に繋がりを作っていければ関わりが広がっていくのではないかと考えました。

■ 場所を分かち合うシェアで、やりたいを叶える
みんなの「観たい」「話したい」「打ちたい」などを起点に、例えば「商店街の中を走りたい」という声から商店街での徒競走を思いつき、運動をすることが食べ物を買うことにつながるのではないかという話をしていました。さらに、近隣の中学校や高校の文化部が思い出をつくることができるような「房王寺文化祭」や、2年前に商店街で販売していたコロッケとKIITOのパンじぃがコラボした「コロッケパン」などができればおもしろいのではないかと思います。また、商店街の方の趣味や手仕事などのスキルを伝授してもらい、みんなで一緒に学ぶことなどができればと考えます。
まずは最初の一歩として、シェアスペースや商店街のシャッターをあげてもらってみんなでお掃除会をしたいと思います。

 

■ 講評
山崎:「シェアーケード」という言葉にひかれて、たくさん出たアイデアがアーケードをシェアするというコンセプトに収束していくのが、一過性では終わらずリサーチのしがいもあって素晴らしいと思いました。

永田:一緒に掃除をすることで関わった人たちがその後の空間の利用にも関わるきっかけになり、また掃除をする際の声かけが商店街のリサーチになったりと、掃除が次の展開に繋がるように思うので、最初に掃除をするアイデアがとてもいいと思います。

渡辺:長田に暮らす人々が楽しんで生活している様子がプレゼンに出ているところがいいなと思いました。コロッケのレシピがパンじぃにつながり、地域の歴史や文化を含めた資産として残っていってもほしいと思います。

D班:「スワレル商店街」

■ 集いの場をつくり、魅力ある街に座れる場所を
まず現状の課題である、人が来ない理由を考えた時に「人とゆっくり交流できる場所が商店街にない」ことに気がつきました。送り迎えをする保護者が立ち寄れる場所や、子どもたちが集まれる場所が駄菓子屋さん以外にないので、人が商店街にとどまることがありません。しかしながら、綺麗で整備されたアーケードがあることや、車の来ない場所であること、地域の人の目があり子どもを安心して遊ばせることができるなど、場所としての魅力をとても感じました。そこで、人々が立ち止まる仕組みづくりを考えた時に「座る」ことに行きつきました。

■ 「座れること」がもたらす広がり
座れることで長時間その場に滞在できるようになります。休憩したり、井戸端会議をしたり、椅子を机替わりに飲食したり、子どもを遊ばせておいたり、編み物をしたりと、いろんなことが座ることによって実現しやすいと思います。そこで、「みんなで座るを作るイベントをしよう」と思いつきました。家庭にある箱や漫画など椅子以外の座れそうなものを持ち寄って座れるものをみんなで作ります。放課後デイサービスの子どもたちが外で活動しやすくなったり、より座りやすい椅子を作るためのワークショップが生まれたり、作ることによって物や場所への愛着が生まれ、この場所をより良くしたい人が増えると活気づくのではないかと思いました。

 

■ 講評
永田:スワるを作るという視点から誰が関わるのかなど妄想が広がります。みんなの場所になるための場づくりにどう関わってもらうかのプロセスの中で、椅子をみんなで作るというアイデアがおもしろいと思いました。

山崎:椅子を作るではなくスワるを作るとすることで、人の動き方や生き方、関わり方のデザインを捉えているのがいいと思いました。どれくらいの規模イメージなのか、作った椅子をどうするのか、座った先のイメージが気になります。

渡辺:スワるに至った過程をこれまでずっと見てきましたが、意見を言い合いながら楽しそうに活動されていた様子が発表にも反映されていて、嬉しい気持ちになるプレゼンでした。

E班:「つぶれないパン屋さんをつくるには?」

■ 地域に暮らす方々が関わりやすいきっかけをつくる
リサーチを通して、子どもの居場所があまりないこと、パン屋さんに対するニーズが高いことがわかりました。かつては商店街にあったパン屋さんをつぶさないためにどうすれば良いか、地域に暮らす方々が主体的に考えるきっかけをつくります。そのためのわかりやすいキャッチフレーズとして、「つぶれないパン屋さん」をテーマとしました。

■ 日常的に人が集まる場所へ
そのためには人を集める必要があります。アイデアとして、家庭や商店街から廃家具を集めて愛着のある材料で遊び場を作り、少しずつ定着するようになれば子どもをはじめとした人の遊び場に繋がっていくと思います。場が盛り上がってくると、知恵を持った商店街の方々や口コミからいろんな人たちが集まってくるようになり世代を超えた交流が可能になると思います。一例として、椅子や机や台を作ってテレビを置いてみんなで試合観戦をしたり、作製した美術作品を展示したり、みんなのダイニングとして発展していきます。

■ 長く愛される楽しいアーケードをつくる
地域の人が集まり、いろんなことができるような場所にパン屋さんが入ることでパンを通したイベントスペースにもなり得ます。このようにして、パン屋さんだけでなく全てのお店が、なんでもできる愛着を持った広場を持つ商店街に生まれ変わらせることができるのではないかと考えています。

 

■ 講評
永田:場づくりがアクティビティにつながり、愛着のある広場になる流れに納得しました。みんなで頑張ってゴールを獲得できることが大事だと思う一方で、本当にパン屋さんの復活がみんなの共通のゴールになるのか、パン屋が無くなったことをどう捉えるかがポイントになると思います。

山﨑:本当につぶれない場なのであれば、それはパン屋にとって大きなメリットなので、まちの中のパン屋の在り方みたいなものを提案の中に含めるといいんじゃないかと思いました。なので、パン屋のリサーチがあるといいと思います。パン屋が路上に出てくるような仕掛け方も考えられるかもしれません。

渡辺:地域にとってパン屋がなくなったことがマイナスであり、地域の方々にヒアリングすればするほどパンがキーワードだと感じていて、共感できるプレゼンでした。

総評

渡辺:
ポジティブに楽しくプレゼンしていただいたのが嬉しく、みなさんの提案は地域にとっても希望なのではないかと思います。アーケードが身近な地域の人はその魅力に気づいていないかもしれません。本当にいいまちだと思うので、素敵なところを一つでも二つでも伝えてもらえると嬉しいです。

山﨑:
資料もとてもみやすく、どのチームも準備に力を入れたことが伝わるプレゼンでした。
現地発表会に向けてですが、みなさんは今いろんな角度からリサーチをして多くの情報を持っていますが、地元に住んでいる方がみなさんと同じ視点を持っているとは限りません。このギャップをどう伝えることができるか、今日のプレゼンとはまた違う難しさがあるんだろうなと思います。どのように伝わるかをイメージをしながら準備をしてもらうといいと思います。

永田:
「空き家を考える」のが今回のテーマだったんですけど、誰も空き家の提案をしてこなかったのがものすごくおもしろいと思います。みんなアーケードの空間に魅力、可能性を感じていて、全体として提案がシンクロしているので今出ているアイデアで構成を組めると思います。現地発表会では、地域のみなさんが同意をしてくれたらやりますよ、どこまでならできますか、やりたいですか、という作戦会議のような場を作りたいなと思います。

 
 

おわりに

今回でゼミは終了になりますが、8月には本ゼミのリサーチ対象である神鉄長田駅周辺にある房王寺ショッピングセンター内で地域の方へ向けた現地発表会を実施します。
講評を受けて再度アイデアを練り直し、現地発表会へ臨みます。

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