2017/12/15
イベントレポート
2017年12月2日(土)、3日(日)
セルフ・ビルド・ワークショップ 「あそび」のための「大きな家具/小さな建築」第1回を開催しました。
2014年度から、KIITOの建物が複数回の用途変更による改装を経て生まれた空間=「余白」について考察し、アプローチするワークショップを行ってきましたが(2014年度、2015年度)、今回は「余白=あそび=余裕」と捉えて、空間そのものの良さを残しつつ、そこに少し手を入れてみよう、というテーマを設定しました。機能でガチガチに固められているわけでもなく、何か行動を強制されているわけでもない、仕事やイベント参加の合間に、ふと、何もせずにいられる場所ができたら、という思いで企画しました。
川勝真一(RAD)さんのコーディネートのもと、毎回異なる3組のゲスト講師と、どうやって余白をあそびの空間に変えていけるかを考えていきます。ワークショップを通して、作り方はもちろんのこと、それ以上に、ゲスト講師の考え方やデザインの方法に触れて、どうやったらキラッと光るものができあがるのか、を体感してもらいます。
第1回目のゲスト講師は、西尾健史(DAYS.)さんです。
まず最初に、西尾さんの活動紹介や考え方をお聞きするミニレクチャーを開催しました。
西尾さんは、家具、インテリア、ショップのデザインなど、自身で手を動かしながら、さまざまなデザインの現場でお仕事をされている方です。
内容はプロジェクトによってまったく異なり、小さなステーショナリーのようなものから、家具、住宅、リノベーション、まちづくり的なことなど、さまざまなスケールの仕事を手がけておられますが、「基本的に中心にあるのは、暮らしに関わることをやりたい」ということ。DAYS.の由来は、その暮らしが日々続いていくようなイメージでつけられているとのことです。
過去の仕事紹介では、DAYS.のウェブサイトに掲載されている事例を中心に、Tokyo Art Book Fair(2017)の会場構成、ニットに箔押しをする洋服デザイナーの友人のための什器、ポップアップショップの什器、オリジナルデザインの家具、書店の内装の事例などをご紹介いただきました。
最近初めて西尾さん自身がデザインして制作した家具は、家具単体よりもその奥にある暮らし方に、どうやったら家具のアプローチでできるか、を考えて制作したとのこと。折り畳みや組み合わせが可能で、組み立てに工具も不要。イメージは、「ふだんはデスクの周りにあって、週末だけパッと立ち上がるような家具」。洋服や音楽のように気分次第で、形や色、置かれる場所がぱっと変えられる家具ができると、いろんなことが楽になって、もの単体というより、暮らし方にちょっといい刺激ができるのでは、との思いで考えた、とのこと。西尾さんが「風がふわっと吹くような」家具と説明されていたのが、印象的でした。
レクチャーのあとは、西尾さん設計の今回の制作物についての説明です。
今回作るものは、木材+スポンジで作る、使い方が決まっていない遊具のような家具。
円形のスポンジケーキが8分割されたようなかたちで、高さもばらばらの、段のようなもの。ひとつでもいろいろ組み合わせても使える、どう余白と合わせられるかが遊べるものです。
高さは西尾さんがバリエーションをすでに決めてくれていましたが、「サッカーボールくらい」「ガードレールくらい」「カウンターくらい」「跳び箱8段くらい」とふだん何気なく座ったりもたれたりするもので設定されていて、ユニークです。
チームに分かれ、素材の重ね方や固定の仕方は、西尾さんや川勝さんのアドバイスを受けながら自由に設計します。分業するのではなく、全部の行程を行い、作り方、考え方を体得します。
スポンジは台所スポンジから練習用のゴルフボールまでさまざまですが、簡単に手に入る素材を集めました。なお、素材を無駄にしないように、用意されたスポンジは全部使うこと、が条件に掲げられました。
4チームに分かれて、各チーム高さの異なる「ケーキ」を2個ずつ作ります。どのスポンジをどう重ねるか、どう高さを出すか、キーワードを出したり、イメージ図を描いたり、設計を行います。
設計がある程度できたら、インパクトドライバーや丸ノコ、スライド丸ノコ、トリマーの使い方を習い、各自作業を進めていきます。
チームごとに採寸し、合板を丸ノコやトリマーでカット、やすり掛けしてささくれを取り、天板のみクリアニスを塗布します。ニスまで塗れれば、、、という目標でしたが、1日目は、合板のカットまでで終了となりました。
2日目は、最初にチームごとに中間報告を行い、進捗状況を共有しました。
各チームで2個ずつ作るので、組み合わせることを前提として、片方を収納できるように等、セットで設計しているチームがあったり、スポンジの感触を最大限楽しめるように動きが楽しいかたちにしたり、スポンジの積み重ね方にバリエーションを持たせたり、チームごとにさまざまな工夫が考えられていました。
制作に戻ると、スポンジを使いたいサイズにカットして、速乾ボンドで接着します。
なんとか全員時間内に完成し、設置場所のプロジェクトスペース4Bに「ケーキ」を運搬し、設置して、感想を共有しました。
層のバランス、色のバランス、素材の使い方、足の存在感をなくして作るか、逆に存在感を出して作るか、制作の過程でさまざまな選択があり、実際、想像以上にバリエーションに富んだものが生まれました。
2日間のワークショップを通して、素材や道具の扱い方を学び、設計から制作までを講師の考え方に触れながら行うことで、今まで見えていなかったものが見えてきたのではないかと思います。
西尾さんも最後にコメントされていましたが、今度はこれを作ってみよう、と自分でもものづくりをするきっかけにしてもらえればと思います。
セルフ・ビルド・ワークショップ 「あそび」のための「大きな家具/小さな建築」
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