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2019/7/18

REPORT

+クリエイティブゼミvol.30 リサーチャー育成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」第5回レポート(最終発表会)

6/18火、第5回のリサーチャーゼミの最終発表会を行いました。全6チームから、「未来の図書館」についてそれぞれの観点から実施したリサーチと、それに基づくアイデアが提案されました。

|コミュニティ・人の交流チーム|

自分の好きな図書館のこれからの姿について、3つの着眼点から提案する。
1つ目は、本を介した繋がりである。従来の図書館の機能は貸出・情報の蓄積であったが、今後は「資料をどのように使い、学習するか」をアドバイスすることが求められる。外国人を含め、様々な人の知的欲求を満たし、異文化に触れるような、本を介した人と人のコミュニケーションがあると良い。
2つ目は、図書館員の役割である。従来は利用者と図書館員はカウンター越しで関わるのみであり、気軽に話しかけづらいという点があった。そこで、図書館員だとわかりやすいユニフォームを着たり、利用者と一緒のテーブルにつくなど、声をかけやすい工夫を考えた。
3つ目は、図書館の入り口である。これまで図書館に関心がなかった人に来てもらうために、敷居を低くする必要がある。例えば、パフォーマーの力を借りて、図書館の入り口で昔遊びのパフォーマンスを行ってもらい、中へ呼び込む。
以上から、本を提供するだけではなく、人と情報を交流させるツールとして図書館を考えた。

|講師コメント|
永田:ここまでのリサーチがそれぞれのアイデアにどう反映されたのか、もう一度振り返ってもらえればと思う。
山崎:コンセプトを決めることで、リサーチや作業のうち、やるべきこととやらないことが決められる。決めずに進んでしまうと、アイデアがてんこ盛りになってしまう。一歩踏み込んで何かを切り捨て、グループ内でコンセプトを戦わせる場面があればよかったかもしれない。



|しかけ・サービス1班|

図書館をもっと活用してもらうために、図書館に来たくなるような仕掛けや仕組みをつくれないかと考えた。ターゲットは社会人。社会人は働く上で大量の情報が必要だと考えられるが、図書館に行っていない人が他の世代よりも多いことから、コンセプトを「多くの社会人に足を運んでもらう図書館」とする。
社会人は本をあまり読まない、会社以外の人と出会う機会が少ない、ごはんを1人で食べることが多い、自由な時間は夜、といった特徴がある。このような人が図書館に集うアイデアとして、①映画の原作本を課題図書として設定し、②映画の上映会、③ごはんを食べながらの感想会、④作家やイラストレーターなど制作者を招いてのトークを行う、という4点の組み合わせを考えた。なお、課題図書を設定することで、本との接点を作ることや、他の参加者と制作者側の視点を知る機会を作るという点が、既存の映画上映会から工夫した点である(新しい人・新たな本・新たな視点・読み方との出会い)。

|講師コメント|
永田:ターゲットの設定と彼らの特徴のリサーチ、ニーズ把握ができていた。課題図書設定してイベントを絡めている類似事例をさらにリサーチするとよい。今後企画を強化するとすれば、本当にその企画にターゲットとなる人々が来てくれるのか、注意してリサーチする必要がある。
山崎:社会人という設定であったが、社会人以外が参加してもよいと思ったまずは対象を社会人として企画を深めて、次に対象を広げて企画自体をブラッシュアップしていくとよい。



|しかけ・サービス2班チーム|

コンセプト:みんなのまちの図書所(としょどころ)
図書館に行かなくても、買い物ついでに本に出会えて、借りることができるような、街中の「図書館のような場所」を増やし、本に触れる機会を増やす。また、本を通して本を置いているオーナーとのコミュニケーションを増やし、まちがつながり成長していければと考えた。
リサーチ
既存の建物にとどまらず、スーパーと併設した図書館など、街に出ていく図書館も増加しているほか、地下鉄やマンション、職場、商店街など、さまざまな場所に本や本棚が出ていくような取り組みがなされている。一方で病院の待合室や美容院にはボロボロの本が雑然と長期間置いてあるなど、死んだ本(=本・本棚に魅力がなく読んでもらいにくい状態)となっている。自分から本を積極的に読まない人が本を読むせっかくのタイミングを生かして、街なかでの本との接点づくりや、魅力的な見せ方が必要である。
アイデア
個人店でも本の貸出を行う(運営・管理)、または複数のお店が協働してお互いの本を循環させる。また、街中の本棚の情報発信や、本の帯などに共通のフォーマットをつくり、店主やその本を読んだ人のコメントを書けるようにするなど、新しい本との接点づくりを提案する。

|講師コメント|
永田:情報を網羅する巨大な「図書館」像とは逆の、図書館的なものを小さく、様々な場所にばらまくようなアイデアであった。また「生きた本棚」をつくるアイデアだったかと思う。選書する人や本の管理・貸出の運営者は誰になるのかなど、仕組みが重要ではないか。店主とのコミュニケーションという発想は面白い。
山崎:死んでいる本を救う、という発想が独自で、さらに精度を高められる余地がある。古いままセレクトも修繕もされないが、処分もしないのは、本を捨てる(焼く)ことに抵抗感があるからかもしれない。



|新しい空間、今までにない図書館像チーム|

コンセプト
「本を読みたいけれど、図書館に行く時間がなく、本が読めていない人」をターゲットとして、その人たちに「もっと本と新しい接点」をつくることをテーマとした。
リサーチ
既存の調査から、成人の読書量が少ない(毎日15分未満等)ことがわかった。またインターネットでは「読書時間 つくるには」など、時間を確保する方法や、短い時間でどう読書するかなどが検索されており、関心が高い。
アイデア
「本を読みたいけれど図書館に行く時間がない」人と図書館をつなぐ方法であり、図書館に行かなくても、本との素敵な偶然の出会いを手に入れられる方法として、回覧板ならぬ「回覧本」を考えた。これは、ある団体に本を貸し出し、回覧板のように次の人に回す仕組みである。また、隣のポストなどに本を回すことで、返却の手間を省くことができる。試しにチーム内で本を回してみたところ、「気になるけれど時間内に読めるか不安」「この本には興味がないけれど、別のジャンルは読んでみたい」など、様々な意見が出た。
回覧本で重要なのは、人と本の距離を近づけることであるため、必ずしも回ってきた本を読まなくてもいい。回覧本は図書館と貸出団体(パートナー)の間で管理され、パートナーとしては、回覧板が回っているようなマンション・アパートだけでなく、会社の部署や、入居者などを団体として想定している。
当チームの提案は、人が本のあるとことに行くのではなく、本が人のいる場所にやって来る、本から会いに行く仕組みである。

|講師コメント|
永田:斬新なアイデアだけれども、参考事例はあるのか。
発表者:街中の様々な場所に本を勝手に置き、人と本の偶然の出会いをつくるブックフェアリーという活動をするNPOがある。そこからヒントを得た。
永田:本が返却されるかなど、仕組みとして成立するのかなと思った。本が回る=人と人がつながるときに、本に「乗せられるもの」が何かあるのではないだろうか。参考事例については、アイデアが「単なる思い付き」ではないことを伝えるためにも、発表に含めた方がよい。さらに膨らませることができるアイデアだと思う。
山崎:リサーチにはいくつか種類があるが、今回のように、実際に実施してみてその反響を踏まえて考えをすすめていくやり方はアクションリサーチという。



|今ある空間の編集+αの機能チーム|

コンセプト
現在の図書館にすでにある機能だけでは、図書館に行く目的がなかなか見出せないということが課題だと考えた。そこで、レファレンス機能に着目し、「みんなでつくる図書館」をテーマに、「〇〇の部屋」を主とした+αの機能を提案する。なお、常連ユーザーが気に入っている空間を損なわないようにした。
アイデア
あるテーマについて物知りな人やコレクションをしている人など、司書の資格はないが、その道を極めている人がつくる、偏ったレファレンス機能を持った部屋が「○○の部屋」である。(例)おばあちゃんの長生き知恵の部屋、個展が開催できるアトリエの部屋。
その部屋をつくった「人」に話を聞きに行くなど、図書館に立ち寄る目的を作ることを目指す。
リサーチ
図書館がこのアイデアに取り組むメリットとして、①他の公共施設・体験施設のレファレンス機能が各分野に特化しているのに対して、図書館は全範囲を網羅していること、②入館料がかからないこと、③地域の中で話題が生まれたり、人と人がつながる可能性があること、の3点があると考えている。また、書店やギャラリーとの比較から、広さや(スペースの)利用料金の低さが図書館の強みだとわかった。

|講師コメント|
永田:地域にいる人が達人になれる点、その人が読んでる本や好きなものの展示だけでなく、その人がいるリアリティなどが面白いと思った。モデルも仕掛けやすそうだ。
山崎:面白かった。テクニカルなことだが、聞き手を説得するには、メリットだけでなく、デメリットも考え、提示することが必要である。



|体験(自分の体験)チーム|

概要
自分のために時間をかけて選んでくれること、また自分自身の人となりや好みが当たる嬉しさを感じられる「選書」という体験に着目した。現在の図書館の現状から、司書の「レファレンス」という職能があまり使われておらず、周知されていないことを課題として取り上げる。
リサーチ&コンセプト
現在司書として勤務している方は、勤務年数が長くなるにつれ、事務職に転換されるなど、司書として活躍できなくなる傾向がある。また、司書となるには、司書講習または、大学での単位取得の2つの方法があるが、司書資格を持つ人が何万人ほどいるのか、年間何万人ほど新しく司書になっているかを、どの機関も把握できていないことがわかった。10年前の調査からざっと見積り、年間約1万人弱が資格を取得し、平成だけでも資格保持者は約30万人となるが、実際に勤務している司書の人数との差から、何十万人という人がそのスキルを活かせていないということになる。われわれはこの方々を「休眠司書」と名付け、彼らを活かすアイデアとして「選書」を提案する。
アイデア
どちらのアイデアも実際にその場に本がなくても、また司書がその場にいなくても成立する、新しい図書館の機能である。
1.クラウドで受けられる選書サービス
利用者は自分の人生を豊かにするような1冊を司書に選んでもらえる。一方、地域の休眠司書は、レファレンスの職能を生かすことができる。クラウドで行うことにより、実際にその場に本や司書がいなくても、自分が読みたい本を選んでもらえるため、レファレンスの役割を身近に感じてもらえる。
2.選書ブック
お店の利用者からの声や悩みに社員がどう答えたか、という回答集が書籍になった例をヒントに、地域の人のお悩み相談に対して、司書が「本」で答えるというアイデアを考えた。良いコメントや良い選書の例が蓄積され、「名物司書さん」が生まれる可能性がある。

|講師コメント|
永田:司書がどういう資格なのか、どのようなスキルなのかなどを、もっと知りたい。また、司書の職能を知らない人が司書と触れ合う機会をどうやって作るかなど、さらにリサーチができる。
山崎:今回リサーチで「休眠司書」という課題に行き着いたのが秀逸であったと思う。他にも、休眠博士(ポスドク)など教育を受け資格を取得しても、専門性を発揮できていない人は多い。社会にとって必要なサービスになりうる。


  

  

全体発表の後、講師の2人が総括を行いました。
永田:リサーチすることで、注目するツボ(ポイント)が見えてきて、さらにそこを掘って行くリサーチがあって…とリサーチは終わりがない。また、企画やアイデアのタネからアクションに向かうまでのリサーチにも相当取り組む必要がある
山崎:リサーチには、今日コメントの中で紹介したアクション・リサーチ以外にも、インクルーシブ・リサーチという、当事者が自分自身、自分の周りの課題をリサーチして、社会にその課題を訴えていくというものもある。みなさん自身が日々直面する課題があると思うので、それに対してリサーチするというチャネルを持ってもらえるといい」
受講者からは、「実際にリサーチに取り組むと、どのレベルでのリサーチを行うのかが難しかった」「本を借りる、ネットで調べる以外のリサーチのやり方もやってみたい」「アイデアの種がないかと街を歩いた」など、様々な感想をいただきました。また、リサーチの方向性を見出す際に、こっちだなと見つける方法はあるのか(勘所・発想のジャンプ)という質問に対して、山崎さんは「実際に、リサーチを行う人自身の「嗅覚」とかコミュニケーション能力によって、他の人とは違う面白いデータが出てきたりするが、これはリサーチを繰り返すことで熟成されるスキルでもある。まずは仮説をつくり、なぜ〇〇じゃないのかと様々な視点から考えるなどを経て、テーマを絞り、またリサーチを行う、と繰り返すと良い」とアドバイスしました。また永田からは、「言葉や概念にまとわりつくものがある時、さらにリサーチする価値がありそうだという感覚がある」と述べました。

全5回のリサーチャーゼミはKIITOの+クリエイティブゼミ、初の試みであり、みなさんのフィードバックも得ながら、さらにパワーアップさせる予定です。また7月からは「人口減少時代に豊かに暮らすには」をテーマとするアクションゼミも実施されます。今回のゼミがどのように生かされるか楽しみです。

+クリエイティブゼミvol.30 リサーチャー育成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」 例題1:「図書館の未来を考える」 概要

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