お知らせ・レポート

神戸「食」プロジェクト

2016年10月28日(水)

神戸料理学会のトークイベント「スタートラインepisode:1」を開催しました。神戸料理学会は神戸に店を構え、日本を代表する料理人、パティシエ、パン職人、ハム職人であるメンバーたちが食について考えていこう、神戸の未来の食を豊かにしていこうという意思のもと結成されました。将来的には神戸で食学会の開催を目指しています。今回は最初の一歩として講演、トークセッションという形で行われました。

 
知る事の大切さ|福本伸也|カ・セント
料理の世界には15 歳の時に入りました。中学卒業の際に、高校への進学ではなく、大好きだった料理の道を選びました。20歳の時に海外へ修行に出ました。イタリアで修行しているうちに、他の国も見てみたいと思い、あちこちへ手紙を出し、返事のあったスペインへ行くことになりました。そこで26歳から「カ・セント」のシェフを任されることになり、料理の楽しさ、修行の大切さが分かり、料理の世界で頑張っていこうと決心しました。28歳の頃、「カ・セント」の改修工事の時期に、母が難病にかかり、急遽日本に帰ることになりました。その後1年間は母の看病もあり、料理をしていませんでした。いつかは料理ができると思っていたので、あまり不安はありませんでした。母のことがきっかけで、日本に帰り、いろいろなことを目にして、気持ちの部分で料理への姿勢も変わっていきました。なぜ修行が大切なのか、なぜシェフになるのか、なぜ、こういう料理を作っていくのか、そういったことを毎日探していると、だんだんと知る事ができると思います。知る事でアイデアや新しい自分が見つかります。日々、お店のスタッフには自分自身とどう向き合っていくか、恵まれている生活のなかで、全力で生きていくこと、自分で見つけることができるものを大切にしてほしいと思っています。現在も私は学び続けています。

なぜ老舗のお菓子は美味しいのか?|平井茂雄|ラヴニュー
1.作った個数によって技術やセンスは磨かれる。
作り手の技術の上達は経験と比例していくと思っています。私自身も元々持っている技術やセンスというのは他の人とあまり大差がないと思っています。キャリアをスタートさせてからの考え方や取り組む姿勢に左右されると思います。同じものをどれだけ真剣に作ったかが重要で、それを行っている職人は上達していきます。
2.失敗の理由を考えること、タイミングを常に計る事。
シュー生地を焼いたとします。膨らんだり膨らまなかったり、原因としてはいろいろ考えられます。器具のサイズ、火入れ、工程、ミキサー、空気の入れ方…常に失敗の理由を自分の中で見つけていけるかが大切です。食べる人は、どのように持って帰って、どのように保存して、どのような温度帯で、どのような環境で食べるのか、口に入るときに、自分が思っている状態になっているのか、そのようなところまでイメージして作っています。
3.シンプルな物ほど難しい。
お店に来るお客さんは多くはチョコレートを目当てに来られます。ボンボンショコラは、直径27㎜、7g程度のものです。中身は3層で作られています。フルーツのフレーバーは、糖度の高いものをフルーツのピューレと煮詰め、鍋の底を焦がさないギリギリの強火で手を休めることなく掻きながら炊き上げます。固まったゼリーにチョコレートを加え、口当たりの滑らかな食感にしたガナッシュ(口どけのよいチョコレート)を仕込みます。型を付け替えまた違う風味のガナッシュを仕込み、流して3層にします。その後、チョコレートでコーティングし、均一なサイズにカットします。小さなボンボンショコラ1粒にもたくさんの作業工程があるのです。自分がおいしいと思うものを表現したときは、上記のような構成をとることが多いです。シンプルでおいしいものを作る方がより難しいと思います。
4.真剣に向き合ってきた職人は、自身の引き出しが増えていく。
何回も繰り返し、何が悪かったのか、その都度最善の対応をしていく、常に答えを出していけば、その中でいろいろなことを学び、引き出しが増えていきます。おいしいものを提供できるお店は、そういったことを長く続けているから、老舗のお店は美味しいのだと思います。

 
シャルキュティエの仕事|楠田裕彦|メツゲライクスダ
芦屋で食肉加工の専門店をしています。シャルキュティエはフランス語で食肉加工人を指します。ドイツ語では、メツガーと言い、店頭の裏で商品を作っているお店をメツゲライと言います。昔から肉は、人間に必要なタンパクとして、冬の寒い時期にお肉を乾燥させたり、燻製させたり、塩漬けしているものを少しずつ切り出したり、スープに入れたり、焼いてみたり、いろいろな手法で食べられてきました。現在は冷蔵庫などの普及、流通の拡大により、保存食から美食として一般的になりました。私のお店は毎週水曜日が定休日で、木曜の朝一に豚肉の塊からソーセージを作ります。筋や必要のない部分を細かく取り除いていきます。約70㎏の塊を2時間ぐらいかけて、すべて手作業でさばいていきます。さばいたお肉を専用のミキサーで塩とスパイスで混ぜていきます。その後すぐにミンチにしていきます。ミンチ後は肉と油を均等に混ぜ、作る内容に合わせて、仕分けします。お肉の鮮度が高ければそれほど混ぜなくても結着します。ソーセージ用の機械はコンピューターで真空状態、速度、肉量などすべてコントロールできるようになっています。その機会を使い豚の小腸に肉を詰めていきます。小腸はとても破けやすいので、難しくコツがいります。破れるないギリギリの圧力で詰めていきます。お店では切り分けて販売しているので、サークル状にしています。木曜の11時過ぎにはお店に並びます。ソーセージだけで80種類ぐらいあります。他の商品を合わせるとトータルで1000種類を超えます。常時お店には50、60種類並んでいます。食肉と言われるものはほとんど作っています。イノシシやシカもありますし、豚がメインですが牛もあります。ほとんど国産ですが、鴨など一部はヨーロッパのものを使っています。食肉加工の職人は文化的にもまだ日本は少ないです。これからの職業と言われています。各地域でも食肉加工のお店が増えていけたらいいと思っています。

夢は本気で願えば現実に|パティスリー モンプリュ林周平

普段自分が言うことで、願いはかなうと思っています。将来こんなことをしたいとか、こんな風になってみたいなど、口に出したり、メモに書いたりする行為が大切だと思っています。私は思っていたことが叶っています。昔からものを作ることが好きで、高校を卒業して料理の道に進みました。なぜお菓子になったのか覚えていません…。母がよくお菓子を作っていたので、その影響ではないかと思っています。当時は卒業後フランスに行って修行したらいいやと単純な発想で、洋菓子、フランス菓子というのがなぜか頭にありました。ホテルで仕事を初めて3,4年のころにフランスに行かないかと話があり、二つ返事で行きますと答えました。ホテルで働いているときのシェフの持っている本で、ジャン・ミエさんのお菓子が載っているページがとてもかっこよくて、単純にここに行きたいと思いました。フランスへ行き、ホテルニッコー・ド・パリで研修に入りました。調べるとジャン・ミエのお店が近いことが分かり、働きたいと何回も行って、12回断られ、13回目にやっと、知人の紹介で入ることができました。お菓子屋さんでもお惣菜を売っているお店でした。地下にある厨房は半分がお菓子、半分が惣菜で、当日は6人で調理をしていたので、お菓子と惣菜の境目がありませんでした。朝は6時くらいにトラックいっぱいの食材を1時間かけて運ぶところから始まり、夜の8、9時まで働いていました。現在のフランスは労働時間も細かく規制されています。修行として考えると働く時間が規制されることで、少しもったいない部分も感じています。16、17時間働いていた時代と比べると同じものはできないので、メニューや精度が変わってきています。私は、自分が一番影響を受けておいしいと思うフランス菓子を伝える使命があると思っています。日本的な要素を入れるということはありません。フランスでがむしゃらに頑張って、日本に帰ってきましたが勉強は続きます。身近にすぐお菓子があるというところがパリでした。今後の大きな夢は、標高5,600mぐらいのとこにオーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)を作って、自分はオーナーでいて、庭掃除で芝などを刈りながら、パティスリーやブーランジェリー、レストランがあり、ホテル業務があるようなことをやってみたいと思っています。

 
お店づくりの考え方|サ・マーシュ西川功晃
店名の「サ・マーシュ」という言葉はフランス語で、お世話になっていた「コム・シノワ」で厨房内で自然によく聞こえていた言葉です。号令のような感じで、行けよ!というものです。独立する際に、一歩前進したい、何かを進めていきたいという思いから「サ・マーシュ」と付けました。今でもとても気に入っています。
お店作りは大きく分けて、商品の力と販売の力があると思います。商品の力は素材、技術、人の心です。素材は小麦や野菜を作る生産者が重要です。この人たちの力がなければ良い素材に出会えません。良い素材が手に入ることで良い商品を作ることができます。技術には経験が必要です。経験はいろいろなことを自分で体験すること、本物の技術をいかに得るかによって商品の力になっていくと思います。人、心は大切なところで、素材と正直に向き合うことが重要です。努力し続ける心も必要で、簡単に諦めてしまったり、気持ちが抜けてしまっては良い商品が生まれません。体力も重要です。体が元気で続けていけなければ心が折れてしまいます。またそれぞれが持っている感性も大切で、商品につながっていきます。最後に性格です。それぞれの個性が商品に反映されていきます。販売の力は、サービス、内装になります。サービスは明るい笑顔、スタッフの知識です。知識と同時に食が好きでなければ学びを広げることもできません。販売の人も体力が重要です。体力がなければ笑顔も作れません。内装はデザインなどですが、仕事のしやすい、お客さんが利用しやすい機能性が大事です。心地よさも大切で、なんかこのお店いいな、感じがいいな、気持ちいいな、と思えるように考えます。お店はセルフサービスではありません。商品とお客さんの間にバーがあり、バー越しにお客さんと会話をしながら提供するようになっています。スタッフがこのパンはこのように食べてください、こういう思いをこめて作った商品です、こういった素材を使っています、といったようにパンにまつわるいろいろな話をお客さんに合わせて提供します。昔の八百屋さんや魚屋さんのように、新しい商品を紹介し、お客さんとお話をしながら販売する手法がパン屋さんにも生かせるのではないかと思いました。セルフサービスの販売方法の方がパンがたくさん売れると思っていましたが、結果として売り上げも上がっています。お客さんも購入後に食べる際にお店で聞いたアドバイスを思い出されるそうで、喜ばれています。この時代は情報が先行してしまい、雑誌やテレビ、ネットなどで情報を見て、そこで判断し選択してしまうことは非常にもったいないことだと思います。もっと生の声を聞いて買い物をしていただきたいと思います。もっとこのようにしたらおいしいのでは、といろいろ考えていただきたいという思いでお店があります。お客さんにも、もっと質の高い食を目指していってほしいと思っています。

トークセッション

神戸のお客さんに感じていることは?
西川:パン屋冥利につきる環境です。昔からパンというものが根付いている街で、しっかりと発酵させ、焼き上げるパンの本質をちゃんと楽しんでいただけている、というお客様が他の地域よりも多いと感じています。我々の作りたいパンを理解していただける地域だと思います。
楠田:幼少期に神戸で育ちましたが、パンやハム、ソーセージが常に身近にありました。パンがあるなら、食肉加工のお店も成り立つと思ってお店を出しました。オープンしてからものそのような食べ方をする人が多かったので、うれしかったです。
福本:神戸って街は洋の文化があり、なんでも取り入れていく雰囲気を持っているが、すごく保守的だと思います。レストランを初めて7年になりますが、その中で感じるのは、食の文化はまだまだといった印象が強いです。

三好:福本さん、神戸の食文化がまだまだ、と思う理由は何ですか?
福本:神戸というのは外から見るといい街かもしれないが、食文化はあまりしっかりしていない印象があります。日本料理も違う、中華でもない、洋の文化があるかもしれないが、ちゃんと根付いていないと思います。神戸らしさって一体なんなのかというところです。
西川:少し過激な言葉に聞こえますが、師匠である荘司シェフも神戸料理というものを作りたいんだ、というのが口癖でした。神戸料理というのはどういうものか、なかなか生まれてこないです。たぶん福本さんが言っているのは、根付いた質の高い、よその土地にないクオリティーの高いものがないのではないかと思います。神戸はもてはやされているかもしれません。もっと努力すべきだと思います。飲食業界すべてがもっと質の高いものを求めていくことが必要だと思います。

参加者からの質問:何をどのように世界に発信するのか、何が発信できるのか?
西川:メツゲライクスダを発信すべきではないですか(笑)。技術的には料理もお菓子もパンもいいと思います。全日本食学会では日本から輸出できるものに「食」があり、食は国益になると思っています。前に出る機会が少なく、表現力が足りない。まだまだこれから、食の都神戸を表現していくべきではないか。

参加者からの質問:WHOが発表した、加工肉が大腸がんを引き起こす原因になるという調査報告が発表されたことをどう思いますか?
楠田:世界保健機関は体に関することを常に注意喚起する機関ですが、実際、欧米のどこで調査したことなのか発表されていません。何が原因かも発表されていません。全世界で食肉業界は一斉に声をあげて、WHOに抗議をしています。1日50g食べて、18%の確率で癌になると言われています。日本人はそれほどの量を食べているという話もないです。加工肉しか言っていませんが、実際は、赤身の肉に関する報告もあり、食肉全体にかかわる事です。今後細かい説明もあると思いますので、注視したいなと思います。なんでもそうですが、食べすぎは病気のもとになると思います。

参加者からの質問:低糖質パンを食べて、健康と食について学びました。菓子パンと食事パンのこれからの可能性について教えてください。
西川:スーパーでウロウロしていると、大手メーカーで低糖質ハムというのが売られていました。そんなものあるのかと驚きました。大量生産するための保存料や化学的なものを取り入れていることが一つの原因となっているのではと思います。低糖質は、あくまでも糖尿病で食事制限されている方のための低糖質パンと思っています。決してダイエットのためではありません。現在は有効だということで、ダイエットのために選ばれている方もいます。うれしかったのは糖尿病の方が低糖質パンを選ばれて、涙流して喜ばれたことです。低糖質パンをお店で少しでも用意することが重要だと思っています。北里大学の山田悟先生から依頼を受けて、パンを作り始めた。作ることによって、喜ばれる人に出会ったことは大切なことだと思っています。

神戸で取り組みたいこと
西川:世界に向けて神戸の食を発信していきたい、神戸ビーフだけではないぞと言いたいです。海外から来たお客さんが神戸のパン屋さんで日本的なパン、世界にはないみんなが喜ぶパンを作りたいと思っています。今はお米を使ったパンもいろいろと考えています。世界中の人に喜ばれるような商品にし、世界へ発信したいと思っています。
楠田:もっと密接に兵庫県の生産者とお付き合いをしていき、第一次産業から進めていって、今後いろいろなことが確立していって、その先に世界があるのではないか。第一次産業と一緒に取り組んでいきたいと思っています。
福本:神戸料理学会は5人から始まりましたが、次回はもっと人数を増やしていきたいと思います。神戸の料理人と手を組んで、努力していきます。
弓削:第一次産業の生産者として、生産者が作ったものをいろいろな形でデコレーションしてくれている方がたくさんいる中で、神戸を代表する5人のシェフたちも、さらに楽しい食文化をつくっていくと思います。神戸は海があって山があって温泉があります。それに加えて食。生産者のところにいつでも来ることができます。TPPの問題でいろいろな食材が入ってくると思いますが、その中で神戸の食というのをそんなに考えていない人も多いかもしれませんが、この5人のシェフたちは第一次生産者から第六次産業まで、生産者の思いをいろいろな形にデコレーションしてくれる方々ではないかと思います。神戸から発信する新しい食文化の団体として、良いものに人が集まり、みんなに知らせてくれるのではと思います。それが神戸の新しい食文化だと思います。


神戸料理学会「episode:1 スタートライン」
開催概要はこちら

2015年5月24日(日)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第9回「塩について」今回は、赤穂市立海洋科学館・塩の国見学ツアーと題して、塩づくり体験と施設見学、横山嘉人氏に塩についての講義を行っていただきました。

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塩づくり体験
晴天の中、塩の国に集まった一行。ゼミ生に加え、ツアーのみの参加者を含め、総勢36名の大所帯です。
まずは塩づくり体験のワークショップから始まりました。
250mlのかん水から、約50gの塩を作ります。まず、かん水の入った鍋を火にかけ、へらで鍋幅をいっぱいに使いながら混ぜ続けます。しばらくして煮詰まってくると、鍋の縁をスプーンで削ります。その後火を消し、まだ余熱がある状態でスプーンで混ぜ、さらさらになるまでダマを潰します。最後にビニール袋に入れ、空気に触れないようねじって閉じ、完成。
参加者は指導員の方の素早い動きに見とれつつ、塩づくりを楽しんでいました。

 

塩づくりの歴史
その後、2グループに分かれて施設内を案内、解説していただきました。
宏大な施設内には、揚浜式塩田、入浜式塩田、流下式枝条架塩田の3種類の塩田が復元され、塩作りの歴史を辿ることができます。

揚浜式塩田は1200年前からある、日本海側で栄えた塩田である。人力で海水を汲み入れ、塩田に撒く。
その後できたのが入浜式塩田。満潮時に水門を開け、塩田に海水を入れる。干潮時に水門を開けると塩田の中の海水が外に出ていく。潮の満ち引きで海水をコントロールするため、人の手はほとんど入らない。
上記2つの塩田は砂の力を借りる。砂全体に海水を蒔き、その海水が蒸発すると砂に塩の結晶が付く。その後、砂と塩分を分けるため、海水で溶かす。それが溶けたものがかん水である。

これらの塩田は昭和27年を境になくなってしまう。その後できたのが流下式枝条架塩田。竹の枝を組んでできている、梯子のかかった大きな塩田がそれである。
地下の大きなタンクに海水を引き、ポンプで汲み上げる。組み上げた海水を、竹の枝を通して下に落とす。上から順番に雨のように落ちる。落ちる途中、太陽熱や風で、かん水の水分だけが蒸発する。落ちて汲み上げて、を何度も繰り返し、濃縮させる。

 
 
 
塩について
最後は塩に関する講義。薬学研究者であった横山嘉人氏に、熱のこもった講義をお聞かせいただきました。塩が食品をおいしくするのはなぜか、うどんやそうめん作りに塩を加える理由など、意外に知らない身近な塩の役割について、幅広く教えていただきました。
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塩の人体での役割とは。
養分の吸収、老廃物の排泄、神経伝達、体内の水分を維持するなど、様々な役割を果たす。体内では水分・塩分は一定に保たれている。塩分を採り過ぎると余分なものを排泄しなければならなくなり、血圧が上がる原因となる。

塩が食品をおいしくするのはなぜか。
雑菌を塩で押さえつけると発酵菌がよく働くようになり、おいしい漬物などができる。発酵菌はにがりに入っているマグネシウムを必要とするので、にがりが入っている塩はより発酵がよくなる。にがりは15%~20%ほど塩味もアップするので、にがりが入っていると、同じ量でも塩辛い。旨味と同時に塩味もアップする。塩と水の間ににがりが入り込み、物質と水の結合力が強くなることで辛み(塩味)も強くなる。

うどんやそうめんに塩を加える理由
うどんやそうめんは塩がないと作れない。麺の中にバラバラに入っているグルテンを水で繋げ、塩を加えると水を引っ張る力が強くなり、コシが出る。旨味を出すには、塩と水の関係が大事。土地土地の水の違いによって味が変わる。
かまぼこを作る際、塩を入れると白身魚の筋原線維を溶かしてくれる。それを再加熱するとタンパクが繋がり、コシが出る。

「味割れ」とは何か。
塩味を他の味覚と別々に感じること、これを「味割れ」という。塩は水を引き付ける力が強いため、水と結合するのが非常に速い。砂糖や酢は水と結合するのに時間がかかるため、後になって味を感じられるようになり、味が一つになる。それを我々は「味がまろやかになった」と表現する。

味覚に温度差はあるのか。
熱いもの、冷たいものよりも、30~35℃程度の温度のものが味覚を感じやすい。
なお、15歳くらいの頃が一番味に敏感である。味覚は年齢とともに衰える。

塩味を感じるのに個人差はあるか。
唾液中のナトリウム濃度により感じ方が変わる。濃度が高い人程、濃くしないと塩味を感じない。

ネズミを使った実験がある。1匹、3~4匹、10匹の3つのグループに分け、それぞれの部屋に塩水と真水を置き、どちらの水を良く飲むかを実験した。1匹と10匹のグループは、塩水を好んでよく飲んだ。対して、3~4匹のグル―プは真水をよく飲んだ。孤独でも、過密でもストレスになる。ストレスを感じると塩を強く好むようになるのではないか。はたして人間はどうか。


参加者とのQ&A
Q.紅茶も塩を加えたらおいしくなるのか?
塩は水をコントロールする。「辛くする」だけが塩ではない。ほんの少し加えると、甘みも紅茶の成分もより感じられるようになる。コーヒーも同じ。
うどんなど、実は相当な量の塩が入っているが、グルテンと水を塩でつないでいる、その塩は辛く感じない。加工食品の場合、辛く感じるから塩の量が多いというわけではないので、気をつけなければいけない。

Q.ほうれん草など、葉物を茹でる際、沸騰した時に塩を入れるのはなぜ?
すぐに色が悪くなるので、色を保つためだろう。にがりの入った粗塩を使うと色が良くなる。塩を入れてすぐに取り出すとよい。

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科学知識を要する専門的な内容もありましたが、横山氏はユーモラスな語り口で、時に冗談を交えながら語ってくださいました。氏のお人柄が滲み出るような楽しい講義に、皆引き込まれていました。
いつものKIITOのゼミの部屋を離れ、大人の遠足を楽しんでいただいたようです。

次回はいよいよ最終回。北里大学北里研究所病院より山田悟先生をお招きし、「21世紀の栄養学」である糖質制限食について、食べ比べの実験をしながらレクチャーしていただきます。

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/

2015年3月1日(日)

第2回目の珈琲学はFrom Seed to Cupについて学びました。


コーヒーは農作物です。
しかし、インスタントコーヒーや缶コーヒーなど、安価なコーヒーの台頭により、農作物としてのコーヒーは意識されづらくなっているかもしれません。

今回の珈琲学ではコーヒーの原料であるコーヒーチェリーを育てる農園にまずはフォーカスをあてました。

コーヒーチェリーを育て、収穫し、豆を取り出して乾燥させ、等級分けをし、コンテナに積み込む、そして豆屋から焙煎屋に届けられようやく抽出の行程に辿り着く、というように幾人もの人がいくつもの行程で関わり、ようやく我々の元に届けられています。

高い品質の豆としての評価を得た豆であるスペシャルティコーヒーは、この一つ一つの行程を事細かに追い、あらゆる行程での品質管理を徹底することで高い品質の豆を実現しています。
この徹底された工程管理は「From Seed to Cup (豆からカップに注がれるまで)」と呼ばれ、世界でも大きな話題となっています。

このFrom Seed to Cupの本質を生豆の販売や焙煎に携わる松本しんごさんと主にインドネシアの農園からの生豆の貿易に携わる三木和彦さんから、ブラジルとインドネシアを比較しながらお話しいただきました。


ブラジルはコーヒーの産地としては大変有名で、コーヒー産業においては先進国です。
広大な農地、コーヒーチェリーの加工を一貫して行える「巨大企業」の様な農園が一般的です。
対してインドネシアはまだまだ発展途上国で、「中小企業」もしくは「個人農家」の規模でコーヒーチェリーを育てており、行程も細分化し、それぞれが専門分野を持つことで産業が成り立っています。
現地に直接赴いた講師のお話の節々で現地の人々の生活についても知ることができました。

それぞれの栽培環境を写真で紹介いただきました。
また、試飲をおりまぜつつ、地域によって異なる味を体験していただきました。
内容に沿った珈琲の試飲を行ったことで内容についてより深い理解を得られました。


「選んで消費する」ことが珈琲の流通に少なからず関与し、より豊かな珈琲の選択肢を作り出せることを「From cup to seed」と新たに定義し、これからの珈琲のあり方についても考えることのできる場となりました。

神戸「食」プロジェクト 神戸珈琲学学問編「From Seed to Cup」
開催概要はこちら

2015年1月29日(木)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる”食”の勉強をしよう!」第1回となる、ジョン・ムーア氏レクチャー「在来種、F1種について」を開催しました。

このゼミは、ゼミマスターの米山雅彦シェフ(パンデュース)がゼミ生に対して何かを教えるのではなく、米山シェフが、今興味のある、食にまつわる各分野の方々をお招きして、お話を聞いていくゼミです。米山シェフも毎回、ゼミ生と同じようにゲストのお話を聞いて、質問して、一緒に勉強していくようなかたちで参加します。

第1回のゲストは、教師→コピーライター→パタゴニア日本支社長→高知県にて在来種の種を守る一般社団法人SEEDS OF LIFE設立、とユニークな経歴を持つ社会企業家・ジョン・ムーア氏。在来種について、また、現在の日本の市販野菜のほとんどを占めると言われるF1種(一代雑種)についてのお話をうかがいます。
なお、今回のみ「食」プロジェクトの一環として、ゼミ生以外にも単発の聴講生も受け付け、通常回よりも多くの参加者が聴講しました。

始まってみると、「在来種」「F1種」の定義や問題点を論理的に説いていくような内容ではなく、植物、ジョンさんの生活や活動の中で触れている自然、天体などのイメージ画像のスライドを織り交ぜながら、「F1種」という、生物のサイクルに対して不自然なものを作る、ものの考え方について問うような、哲学的な語りかけでした。

この日も寒い神戸でしたが、ジョンさんはなんと半袖。ニコニコと笑顔で、レクチャー中は一度も座らずに、会場内を回りながら、受講者一人一人に語りかけるような口調でお話しされました。その一端を紹介します。

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私の日本語は中途半端。30年間日本にいるけど、日本語は勉強しない。完璧な日本語を使ったら、みなさんは、私の言葉だけ聞いて、私の話を聞かない。頭を使わない。私だけ話すのは意味がない。あなたの気持ちと心も半分使ってください。それからアクションしてください。毎日少しだけでもアクションして、今まで何もやってなくても、少しだけアクションしてください。私の言う事は信じないで、自分でやってください。言葉だけ、は、2Dだけ。

ほとんど私たちは、2Dの世界に住んでいる。幼稚園からあまり変わってない。新しい考えがあまり入ってない。
言葉の中、頭の中、心の中は2Dだけ。3D,4Dがわからない。その2Dの世界がF1種を、日本の原発問題を、サラリーマンの会社を作った。2Dの考え方は、世界中の、この惑星の問題を作った。だからもういい。3Dと4Dの世界を見ましょう。そうしないと絶対変わらない。まだ同じ問題を作る。

私は、高知市から2時間くらいかかる、山の上にある村に住んでいる。
食べ物も家も、ぜんぶ自分で作り、お金が必要のない生活をしている。
山の上は、毎日、一年中食べ物が出来る。あたたかいから、電気は要らない。テレビもない。
なぜテレビがないか。美しい景色があるから。3か月前は美しい紅葉だった。人間の魂は映像を欲しがり、イメージを欲しがる。イメージを食べる。だからテレビが薬になる。写真も広告もそう。本物がないなら、テレビを見ましょう、となる。

種は、国の、県の、人のものじゃない。次の世代のためにある。
誰が種を欲しいか。どうして欲しいのか。いい食べ物を作りたいのは誰のためなのか。自分のため?

A4サイズのタッパーの中で、元気な野菜を作ることができる。誰でもできる。畑に行かなくても、部屋の中やテーブルの上でできる。
種の相性もおもしろい。相性がとても悪い種同士でも、間に、お互いと相性のいい植物を挟むと、いいコミュニケーションがとれる。土の中、見えないところで良くなる。相性のいい種をまけば、2年後、3年後、どんどん収穫が楽になる。
大根、クローバー、そば、マリーゴールドを一緒に植えると、その土の中で、根っこは、仕事をしている。薬はいらない。何もしない。種をまくだけ。
F1種は、みんな同じ大根がたくさんできて、次の実が実らない。F1はDNAのかたちを決めちゃった。新しいかたちをつくらない。気持ち悪い。
自然はみんな違うのが当たり前。DNAも光も違う。ウイルスも違う。だからおもしろい。だから未来がある。だからいつも新しい道が出てくる。

種だけ守るのは意味がない。人間は自然のちょうどいいタイミングが分からない。私たちは自然の邪魔をしてしまうから。山の中、森の中は人間の手が入ってなくても元気。
野菜は、自然がつくる。農家の仕事はほとんどない。
人間だけの食べ物を作るのが、人間の問題。この惑星の生き物全部の未来の食べ物を作る、虫の食べ物もつくる、隣のおじいちゃんの食べ物も作る。
私たちだけがおいしい・おいしくないを考えること、それはF1の考え方。

DNAは、二つの螺旋。同じところをまわるのではなく、前へ、前へ進む。螺旋はヒント。
よく考えてください。山の野草、ほとんど人の口に合わないけれど、どんどん作っていって、少しずつ甘くなる。どんどん進むと、甘くなり過ぎて、水ばかりでおいしくなくなる。
バランスが大切。バランスは、中のかたち、味、DNAをつくる。中のDNAは、光の螺旋から作られる。

腸の中の生物と土の中の生物はほとんど一緒。お腹の中は畑。
生き物を絶対食べてください。本当の食べ物は生き物です。キムチ、納豆、みそ。

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終了後の参加者アンケートでは、「思っていた話と違った」という意見が多数。ただ、戸惑いを覚えつつも、「かえって面白かった」「ものの見方が変わった」「自分でも少しずつ生活を変えていこうと思う」といった感想を書いてくださる方が複数見られました。
種をきっかけとして、子ども、生き物、地球の未来を視野に含んだスケールの大きな話が、参加者一人一人の心に響いたようです。

4月から、ジョンさんは淡路島の洲本から20分ほどのところに、スタジオをオープンさせる予定とのこと。洋服、野菜、家具、などあらゆるものを、手を使って作るスタジオになるそうです。今後の活動も楽しみです。

次回のゼミは、「食ゼミにあたって考えること」と題して、ゼミマスターの米山シェフ自身から、本ゼミの趣旨や各ゲストをお招きした理由などをお話しいただきます。


+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる”食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/

2014年11月3日(月・祝)

「食からはじまるライフデザイン -自然によりそう暮らし- volume.1」を開催しました。
都市で生活する人々が、食を通じて自然に寄り添い、こころ豊かな暮らしを楽しくデザインしていくきっかけとして本企画はスタートしました。

第一回目は『土の下を食べる、土の上で染める』をテーマに実施しました。


初めに、無農薬野菜にこだわったレストランで10年間勤めてきた川浪典子さんに食と生活の関係性を自身の体験を通してお話いただき、また、今回のワークショップの趣旨について説明いただきました。
「一物全体」という考え
昔の衣服には布に染められた草木の薬効を皮膚を通して吸収させ、病を癒やすという外服薬としての機能をもたせたものがありました。今回のワークショップではどんな食材も丸ごと頂くことで栄養を余すことなく体に取り入れられる「一物全体」という考え方をもとにし、食べることのできない葉の部分も染色に用いて「食」だけでなく「衣」として食材の栄養やエネルギーを身体に取り入れることで、食材を余すことなくいただきます。


料理は神戸元町にある「マルメロ」の安藤美保さんが担当し、染色にも使う「ウコン」「落花生」「里芋」を素材に加えたメニューのランチをビュッフェ形式で提供していただきました。

ランチメニュー
・ピクルス(ウコン使って)
・里芋のフリット
・焼きビーツ
・さつまいものブルーチーズソース
・ごぼうと豆のアラビアータ、フレーゴラを添えて
・葉野菜のサラダ
・豚肉と根菜のココット焼き
・茹で落花生
・ウコンと落花生のピラフ
デザート
・栗の渋皮煮と新米のミルク煮のミルフィーユ
・黒豆枝豆のクッキー
・オートミールとナッツのクッキー

季節の野菜を多く取り入れた彩り豊かな料理の数々がテーブルに並びました。それぞれの料理について説明を聞いたあと、各自でお皿に盛りつけて食事をしました。食材の味を丁寧に引き出した料理を口に運んだ参加者たちからは自然と笑顔がこぼれていました。


次に、いよいよ染色の作業に入ります。染めるのはオーガニックコットンのTシャツです。
染めは、草木染め染色家の徳力弥生さんに指導していただきました。作業は、事前に煮だしておいた「ウコン」「落花生」「里芋」のそれぞれの葉を鍋から取り出して絞ることから始めました。染料を煮だした鍋からは葉のいい香りが溢れていました。「食事に出ていた野菜と同じ香りがする!」と言った声が上がっていたのが印象的でした。
葉を取り出し絞った染色液を鍋に戻し、そこに水に一度浸して絞ったTシャツを入れ、15分ほど煮立たせます。



草木染めは、初めに入れたTシャツと最後に入れたTシャツでは染まる濃さが異なります。染める成分がTシャツに吸収されていくことで染色液がどんどん薄くなってゆくからだそうです。
煮立たせたあと水洗いをし、媒染液に浸けます。媒染液は
・ミョウバン液(少し色が明るくなる)
・鉄媒染液(少し色が暗くなる)
・銅媒染液(春夏は明るくなり、秋冬は暗くなる)
の3種類があり、同じ植物の染めでもそれぞれで発色が変わります。各自好みの色を目指して媒染液に浸けてゆきました。最後にまた水洗いをし、染めは完了です。
全員のTシャツを中庭に一旦干し、カフェに戻って紅茶とデザートを頂きました。


今回は、食材を「食」と「衣」の両面から生活に取り入れる事を学びましたが、引き続き「食からはじまるライフデザイン」では、色々な視点で食と向き合い生活をより楽しくデザインすることを目的に開催していく予定です。
次回以降の内容が決まり次第、ホームページ、Facebook、Twitter等で情報を掲載いたしますので、ご興味のある方はぜひ次回ご参加ください。

神戸「食」プロジェクト 「食からはじまるライフデザイン -自然によりそう暮らし- volume.1」の
開催概要はこちら

2014年9月23日(火)

珈琲にかかわる様々な方を講師として招き、珈琲を基礎から学び、愉しむための知識を身につける「神戸珈琲学」。第2回目の今回もマツモトコーヒーさんにご協力いただき、カッピング(珈琲におけるテイスティング)を通してコーヒーについて学ぶ講座を、ワークショップ形式で開催しました。




第2回目のテーマは「自分に合った珈琲の選び方を学ぶ」です。
第1回目では「スペシャルティコーヒー」について学びました。その中で、スペシャルティコーヒーとは栽培からカップに注がれるすべての工程で高い品質管理をされているものであることを学びました。珈琲は抽出の仕方や保存の仕方で大幅に味が変わってしまいます。例えば気になる珈琲に出会い、豆を購入して帰ったとしても自宅で適切な抽出ができなければ、せっかくの珈琲の魅力を打ち消してしまうことになります。自分にあった珈琲を選べるようになるための方法の一つとして、スペシャルティコーヒーの定義も踏まえながら、今回は抽出する段階で珈琲の味を阻害する様々な要因を挙げ、欠点のない味のものと飲み比べることで、適切な抽出について掘り下げて学びました。
まずはじめはカッピングの前に珈琲の飲み比べを行いました。珈琲は抽出したものを冷やし、アイス珈琲にしたものを用います。飲み比べには産地の異なる豆や、同じ豆でも浅煎り、中煎り、深煎りと焙煎の度合いを変えたもの、品種の異なるものなどを用意しました。どれがどんな豆なのかは伏せた状態での試飲です。飲み終えたあと一番好みだった珈琲を各自で選びました。
飲み終えたところで皆さんの好みをうかがうと「さわやかな酸味が好きなので。」という方や、「深煎りの苦い感じが一番珈琲らしくて好き。」という方など、それぞれ異なる意見が出ていました。
今回飲み比べた珈琲は

1.イルガチャフィG1浅煎り
2.マンデリン浅煎り
3.ニカラグアナチュラル浅煎り
4.ニカラグアナチュラル中煎り
5.ニカラグアナチュラル深煎り
6.ロブスタ

以上の6種類でした。
それぞれ個性のあるものを今回は用意し、大枠ではありますが自分の好む珈琲の味についてとらえてもらえる機会となりました。
それぞれの珈琲の特徴をお話いただいたあと、3のニカラグアナチュラル浅煎りの抽出失敗したものを体験してもらいました。適切な珈琲と比べて粉量が多く、メッシュ(挽目)が細かいものを用意しました。珈琲は豆から珈琲の成分が液体に移動したものです。その液体へ移行させる成分量を間違えると本来美味しく飲めるはずの珈琲も嫌な味を出してしまうという結果になってしまいます。




次はいよいよカッピングに移ります。
ここでのカッピングではすべて同じ豆を使います。
同じ豆を5つの方法で抽出したものを飲み比べます。

1.バランスのとれた味
2.粉量が少ないもの
3.粉量が多いもの
4.メッシュが粗いもの
5.メッシュが細かいもの

以上の5種類で、1を軸にしてそれぞれを飲み比べ、その差異を体験してもらいました。
粉量が少ないと後味が短くなり水っぽい印象に、逆に多くなると珈琲の成分が多く抽出されすぎて、後味が長く、イガイガした感覚が口に残りました。
メッシュが粗いとうまみが出ず、細かいと湯に触れる表面積が増え、うまみ以外の雑味が出やすくなってしまいます。
珈琲を抽出する際には適切な豆の量、適切なメッシュの粗さを調節することはとても大切であることを知ることが出来る場となりました。
次のカッピングでは抽出条件によるその他の欠点によって出る味について学びました。

1.欠点のない味
2.ミルの汚れによる味
3.低湯温での抽出
4.鮮度の落ちた豆

以上の4つを比べました。
それぞれ体験したあと、前回も同じ意見を話された方がいましたが「家で淹れて飲んでいる珈琲と同じ味がする・・・」といった声が上がっていました。
ミルは清掃を怠ってしまうと珈琲の油分などが刃の表面に残り、雑味となって出てしまい、珈琲を 飲んだ際の印象が暗く沈んだものになってしまいます。
酸味は低い湯温でも抽出することができますが、苦味は高い湯温でなければ抽出されません。そのため、少し前までは質の悪い珈琲でも深煎りにし、低い湯温で抽出することで苦味を弱め、雑味を隠していたようです。故に湯温については「○○℃でそそぐべき」といったことがうたわれた本や雑誌などが多くありました。ですが昨今では欠点の無い上質な豆を手に入れることは一般でも十分に可能になってきました。上質な豆は、自宅で淹れる際に、沸騰した湯を使用して問題ないと説明いただきました。
鮮度の落ちた豆は単純に味の成分が少なくなって行ってしまいます。折角新鮮な豆を手に入れても、鮮度を落としてしまうと本来の素晴らしい味を損なってしまいます。イメージしづらいことですが、珈琲もあくまで生鮮食品であることを体験する場となりました。




最後は鮮度について掘り下げたカッピングを行いました。
保存状態を豆のものと粉のもの、さらにそれぞれを焙煎後常温保存で2日経過したもの、2週間経過したもの、冷凍保存で2週間経過したものの計6種類を用意しました。

1.豆のまま常温保存 焙煎後2日経過
2.豆のまま常温保存 焙煎後2週間経過
3.豆のまま冷凍保存 焙煎後2週間経過
4.粉で常温保存 焙煎後2日経過
5.粉で常温保存 焙煎後2週間経過
6.粉で冷凍保存 焙煎後2週間経過

以上の珈琲で鮮度と保存状態による味の差異を体験します。
カッピングの用意をしながら「粉にすること」「そして冷凍で保存すること」 には様々な珈琲の味を落とすリスク があることを説明していただきました。粉の状態で豆を保存すると豆の状態と比べ、空気に触れる表面積がとても大きくなります。すると酸化を早めてしまい味が落ちてしまいます 。冷凍は買って持ち帰った段階での珈琲が酸化することを止めることができるので鮮度を保つことは可能です。しかしその分リスクがあり、例えば解凍した際に結露が出て珈琲の味を落としてしまったり、冷蔵庫の匂いが移ってしまう、といった問題が起きる可能性があります。
全員がカッピングし終えたあとの感想を聞いてみると「ここまでなら美味しい」と感じるラインにかなりばらつきがありました。この回についてはこれまでのどの回よりも答えがなく、豆屋さんによってもそれぞれ意見が異なる部分になってきます。そういった中でも鮮度や保存状態でどういった変化が起きるのかを知ることで自分の好む味を保つ方法を選択することを知る機会となりました。また、マツモトコーヒーさんはこういったことに神経を使うよりもせっかく美味しい珈琲なので1~2週間で飲めるだけ量の豆を購入し、新鮮なうちに飲むようにして欲しい、とお話されました。

以上で神戸珈琲学その2を終了しました。
終了後、マツモトコーヒーさんのご好意で希望者を募り、今回はそういった細やかな技術に注力せずとも家庭でもできる、美味しく珈琲を抽出する方法をレクチャーして頂きました。
ハンドドリップは細い湯でゆっくりと円を描くように、といったような高度な技術が求められているイメージがあるかと思います。もちろんそこにはきちんとしたノウハウがあり、そうすべき理由 がありますが、今回お教えいただいたのはそういった難しい事は全て抜きにして淹れる方法です。ドリッパーはペーパーの物を使用します。形状は円錐の物、台形の物、どちらでも構いません。ポットは細口の物を使用します。お湯は今回のお話にもあった通り、沸騰したものを使います。
ポイントはお湯の注ぎ方のみです。まず、豆全体にお湯を行き渡らせ、蒸らしを行います。お湯を全体にかけると、豆がゆっくり膨らみ始めます。これはガスが豆から発生するためです。この膨らみが止まり、へこみ始めた時がお湯を注ぎ出すタイミングです。膨らみがへこみ始めたところでもう一度全体にお湯をかけ、表面を崩します。あとは中心をめがけ、一定のペースでお湯を注ぎます。ドリッパー内で豆の高さを一定に保つことがポイントです。最後はドリップしきる前にカップからドリッパーを外すことで雑味がカップに落ちるのを防ぎます。こうする事でカッピングと同じ状態の珈琲をドリップできるのだそうです。
試飲の際、多くの方が「カッピングで味わったものと同じ味で出ている!」と話していました。




最後におみやげとしてニカラグア農園のシングルオリジンの豆と植えて育てることができるコーヒーノキの種をお渡しし解散となりました。

今回の神戸珈琲学もリラックスした雰囲気の中で行われ、参加者同士でも自分の好みの珈琲についてや、お気に入りのコーヒーショップを紹介し合うなど、珈琲についての意見交換が行われる場ともなりました。

今後も神戸珈琲学は様々な方面から珈琲についての知識を深める場を設けていく予定です。

神戸「食」プロジェクト 神戸珈琲学基礎編その2「自分にあった珈琲の選び方を学ぶ」
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2014年9月6日(土)

珈琲にかかわる様々な方を講師として招き、珈琲を基礎から学び、愉しむための知識を身につける「神戸珈琲学」。第1回目はマツモトコーヒーさんにご協力いただき、カッピング(珈琲におけるテイスティング)を通してスペシャルティコーヒーについて学ぶ講座を、ワークショップ形式で開催しました。


「スペシャルティコーヒー」という言葉は、近年街中で見かけることも多くなり、雑誌などにも取り上げられるようになりました。しかし、「スペシャルティコーヒー」の定義とは何でしょうか?
第1回目の本講座では、計4回のカッピングの体験を通して紐解いて行きます。

カッピングはワインを選ぶ上でテイスティングをするように、珈琲の甘味、苦味、酸味、飲み終えたあとの香りや風味を確かめるものです。買い付けの業者が豆を買い付ける際に行う方法で、珈琲の持ち味を最も引き出せる方法として採用されています。今回のワークショップでも、このカッピングを採用して珈琲を飲み比べます。

カッピング1回目は「産地別の豆」を飲み比べます。使う豆は
・ブラジル ・グァテマラ ・インドネシア ・エチオピア
の4種類です。
まずはそれぞれの産地の持つ個性を体験しました。想像以上に産地ごとで味が違うことに多くの方が驚かれていました。この産地ごとの個性を引き立たせるために焙煎は浅煎りにしてあります。

2回目は、なぜ浅煎りだと個性を引き立たせることができるのか、ということを焙煎度合いの異なる3種類の豆のカッピングを通して体感します。
同じ豆を用いて焙煎時間を30秒ずつ変えて「焙煎の度合い」を調節したもの、
・浅煎り ・中煎り ・深煎り
の3種類を用意しました。
カッピングの前には「たった30秒の差」と感じられた方も多い様子でしたが、実際にカッピングを行うとその差は歴然だったようです。浅煎り、中煎り、深煎りの順番で味わい、再度浅煎りも戻るとその差は顕著に感じられます。
焙煎の度合いによって変化するのは苦味だけではなく、酸味、焙煎の風味、豆独特の風味と香り、味の重さ、それぞれが変化します。それらが浅煎りから深煎りの間でどのように変化するのかをグラフを用いて解説していただきました。1回目のカッピングで体感してもらった産地ごとに異なる味、つまり豆の個性である部分は、焙煎が深くなるにつれ弱まってゆき、苦味が増えてくることを体感できました。


3回目のカッピングでは一般流通品とスペシャルティコーヒーを比べます。
産地はグァテマラに限定して行いました。豆は
・グァテマラ SHB
・グァテマラ ウエウエテナンゴ リモナール農園
・グァテマラ アンティグア タシータ農園 ウォッシュド
・グァテマラ アンティグア タシータ農園 ナチュラル
の4種類を用います。
1つ目のSHBはグァテマラの同じ標高にある農園で栽培されたものを指し、農家は限定されず、いわゆる「農協」に集められ、出来の良いものと出来の悪いものが混ざる可能性がある豆で、一般流通品です。
リモナール農園、タシータ農園はそれぞれひとつの農園で生産された豆です。タシータ農園ではさらにウォッシュドとナチュラルという異なった精製方法、2種類を比べます。珈琲豆は、コーヒーノキという植物に実るチェリーのような果実の「種」です。その種を取り出すために水で洗い落とすのがウォッシュド、身がついたまま干すことで果実の部分を発酵させてから剥がすのがナチュラルです。
ナチュラルは過程で果実の味が豆に移ります。これが、珈琲が持つ個性をより増幅させるそうです。しかしウォッシュドの精製には、実を剥がすタイミングを見極める技術が必要で、広く一般に流通するのはまだまだ難しいようです。
その味は他の珈琲とは明らかに異なり、さわやかなチェリーの香りがすっと鼻を抜けます。カッピングをした参加者の皆さんも感動されていた様子でした。

最後のカッピングでは、これまでで体験をしたスペシャルティコーヒーのうち、収穫から時間を置いたもの、焙煎を故意に失敗したもの、抽出を故意に失敗したものをそれぞれ飲み比べました。
・コロンビア アンデスコンドル 2014年産
・コロンビア アンデスコンドル 2012年産
・グァテマラ リモナール農園
・グァテマラ リモナール農園 焙煎失敗
・グァテマラ タシータ農園 ナチュラル
・グァテマラ タシータ農園 ナチュラル 抽出失敗
以上の6種類をカッピングします。
いままで飲んだものと改めて味の違いを比べると、その差を明白に感じることが出来ました。なかには「2012年産の豆は家で飲む珈琲とよく似ている・・・」と話された方もいました。
ナチュラルの抽出失敗は目を見開くほど適切な抽出したのものとは異なる味で、全員が驚いていました。抽出失敗として今回は豆の挽目を適切なものと、それよりも細かく挽いたものを用意しました。すると適切な抽出を行なったものと比べると、先程は爽やかに感じられていた香りが多くなり、珈琲の持つ個性の主張が強まった印象になりました。珈琲は適切な挽目で抽出しなければそのポテンシャルを引き出せない、という例を、顕著に体験することが出来ました。
最後に、講座内で飲んだ豆を特別にブレンドしたものをおみやげとしてお渡しして終了しました。

スペシャルティコーヒーは「From Seed to Cup」と呼ばれる考え方が根底にあり、栽培されるところから焙煎、抽出され、カップに注がれるまでのすべての工程において品質管理されているものを指します。つまり「豆の状態ではまだスペシャルティコーヒーとは判断できず、カップに注がれて初めてスペシャルティコーヒーとして呼ぶことができる」ということを、カッピングを通して直に体験していただきました。

次回もカッピングを通して珈琲の味や香りを体感しながら、ミルの扱い方、抽出について、豆の保存についてなどを学びます。

神戸「食」プロジェクト 神戸珈琲学基礎編その1「スペシャルティコーヒーについて学ぶ」
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