2019/11/6
イベントレポート
10月20日(日)、LIFE IS CREATIVE展 2019の関連イベントとして、〈高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション〉④「高齢者の夢ややりがい、新たなコミュニティを生み出す活動」を開催しました。
“いつかできたらいいなと思っていた夢”、それを叶えることは、年齢は障がいではないかもしれないという視点で、高齢者の夢を実現すべく「弘道老人福利基金會」(台湾)を立ち上げたの李若綺さんから活動についてのお話を伺い、既成概念が包み隠してしまっていた高齢者の可能性について紐解きました。
そして全トークセッションの最後となる今回は台湾・台中の事例リサーチ、アウトプットに多大なご協力をいただいた東海大學の陳明石教授、李俐慧准教授にご登壇いただき、全トークセッションを通しての感想と、高齢者の活躍の場を広げていくためのこれからの社会の在り方について意見交換を行いました。
「老いることのない夢」その理念と活動について
まずは李若綺さんから「不老ライダー」「不老野球」の活動についてその起源から活動理念、その後の展開についてお話を伺いました。
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李若綺さん|弘道老人福利基金会 執行長
台湾の高齢化社会の中ではケアが長期的になってきていることが課題の1つとして挙げられます。この企画は健康寿命を延ばし、老後の目標をいかに見出してもらうか、そして、いかに高齢者の既成概念を塗り替え、明るく、魅力のあるものとして発信していくかが、我々の持つ目標であり課題です。
特に世間一般が高齢者に対して抱いているイメージは高齢者自身が何か活動をする上での障害となり、生きづらい社会を作る根源になっているのではないかと我々は考えています。
弘道は、創立から25年になる、高齢者が慣れ親しんだ生活のまま人生を終えることを目指してコミュニティケアを行っている団体です。
その活動の中で、「年を重ねるごとに人生の目標が失われていく」「暮らしのモチベーションがなくなっていく」そういった状況を何度も見てきました。そんな高齢者の方々の余生をもっと楽しむための企画として、かつての夢をあきらめず現実のものとする「不老の夢」の企画が発足しました。
そこで、「不老の夢」と題した、高齢者の夢を現実のものに変える企画をスタートしました。
この企画は、中国で行われていた「愛のために千里を」という81歳のおばあちゃんが300日以上かけて大陸を歩く企画、そして日本で出会った大阪から東京まで高齢者が徒歩で旅をする、というイベントがアイデアのきっかけです。いずれも、人生の最後をよりよく迎えるために行われていました。
我々はこの壮大な企画を台湾でも実現したいと考え、小さな台湾でどうやって実践をするか、さまざまな議論を重ねました。
不老ライダーについて
80歳を超えると旅行に行くことはどんどん減っていきますし、台湾では社会保障を受けられなくなることもあります。そういった高齢者が自身のやりたいことに挑戦する企画はもっとあっていいはずだ、という想いから、2007年に17名の参加者による台湾1周のバイクツアーを開催することとなりました。
徒歩や自転車での旅も検討に上がりましたが、台湾においてバイクは、通勤はもちろん、家族でのお出かけにも使うようなとても思い入れのある乗り物です。その背景もバイクツアーを開催することとなった要因です。参加者募集を行ったところ、20名程度を予想していたのですが、100名を超える応募がありました。大変驚きました。
その中の一人の最年長だった87歳の男性は、この台湾を一周するバイクツアーへの参加を誰よりも強く希望をされていたんです。
その想いを聞いた際、我々も本来の目的に立ち戻り、いかにその想いを実現できるようにするかということを重視し、健康診断での選出をやめ、最年長の方のペースに合わせた企画とすることにしました。また、我々が87歳の彼自身のもつリーダーシップに期待を寄せたことも最年長の彼を筆頭に年長者から参加者を選出することになった要因です。
この企画を若い人たちにも見て頂き、高齢者の持つエネルギーを伝えたいと考え、このツアーの魅力を伝える企画の1つとして、若い世代をターゲットにこのバイクの一団を撮影する写真コンテストも開催し、その写真を通してこのツアーの魅力を伝えました。
また、50分の短いドキュメンタリー映画も制作しました。
この映画はとても大きな反響があり、150回以上の上映会が学校やコミュニティスペースで行われました。非常に勇敢な高齢者がいるということを社会に投げかけることが出来ました。
2012年にはこの長編版となる120分のドキュメンタリー映画が完成し、台湾ではもちろん、アメリカ、香港などでも上映されることとなりました。映像を通して、私たちが考えている以上のことを高齢者が行える、ということをメッセージとして発信することに成功しました。
高齢者にとっても、自分の健康維持のためだけではなく、誰かのために活動することはよりやりがいがあると感じている方が多数いることが参加希望者の声から判明し、9回目の今年の企画は「不老ライダー2.0」として、参加した高齢者がただ台湾を1周するのではなく、地域の独居老人や高齢者施設に入居する方々を訪問し激励する、食事を届ける、などのイベントを加えました。
今年の参加者の一人である60歳の方はパーキンソン病を持っていました。歩くことは困難だがバイクだけ乗れる、という方でした。彼の参加は、「同じような病を持った人にも勇気をもって生きて欲しい」というメッセージの発信にもつながりました。「病」という檻から抜け出すことはできる、というそのメッセージは多くの方を感動させました。
また、この企画の最高齢となる90歳の方の参加も今年実現しました。
以前、癌を患った方が参加され、ツアーを終えた数日後に天命を全うし亡くなられました。我々や彼の家族は、彼自身が人生の最後にやりたかったことを実現し、この世を後にすることが出来たのではないかと感じています。
私たちは彼らから「つまらない人生を送るのか、後悔のない人生を送るのか」という問いかけを得ました。
一生の中でやりたいことを誰しもが持っている、それを実現することが「悔いのない人生」になると私たちは信じて活動を続けています。
不老野球リーグの発足
不老野球のキャッチコピーは「人生のホームベースにどうやって戻ってきたいですか?」です。人生を終えるとき後悔のないように、という不老ライダーと同じ理念を表しています。
発起人はデイケアに来ていた一人の高齢男性です。ある日、絵を描くプログラムの時に彼がバットとグローブの絵を描きました。話を聞くと、彼は高校生の時にピッチャーとして活躍をしていたそうです。もう一度野球をしていたあの頃の感覚を取り戻したい、という彼の声を聞き、一人のスタッフが子ども用の野球道具を買って渡した、ということがありました。すると彼は「これは子どものおもちゃだろう、僕は本物の野球をしたいんだ」と言ったのです。
それならば、と彼の望む”本当の野球”を実現するために私たちは企画をスタートさせました。
65歳から参加できるルール(外野の守備のみ、サポートプレイヤーとして若者を起用することが可能)とし、練習を重ねつつ、参加者を増やしていき、友好試合を開催するまでに発展していきます。
スタートして2年をかけ4つのチームが結成され、リーグを発足するまでに至りました。
2019年現在には様々な地域でチームが結成されていき、16チーム347人もの選手が参加するまでに成長しています。
最高齢の選手は89歳という方もいます。
台湾の男性高齢者は、家に閉じこもってテレビばかりを見ていてコミュニティには参加しないということが問題視されますが日本ではどうでしょうか?不老野球はこの問題についても焦点を当てており、主に男性向けの企画として始まっています。その甲斐があり、参加した方の体力向上に一役を買いつつ、コミュニティへの参加意欲も上がるという成果が見られています。なお、男性だけでなく、1チームに2~3名の女性もプレーされています。家庭でもお子様やお孫さんと一緒に練習をするという機会も生まれ、家族の関係を深めていくことにも一役買っています。
多様な企画展開
音楽や踊りを好む高齢者に向けた企画として、台北の8,000~10,000人を収容できるドームで行った演劇のプログラムもあります。全員素人ですが、舞台演出においてプロが指導を行う本格的なものとなっています。年に2回開催で、日本の団体にも出場いただいたことがあります。
その他にも、カヌーに乗ったり、農家と協力したキャンプ、ファッションショー、サーフィンなども、1つ1つは華やかで楽しいイベントとして開催することが出来ています。それは健康を保つための1つの方法であり、自身を表現する場でもあります。アクティブシニアと呼ばれる世代の方々も含め、いかに充実した人生を送ることが出来るかが何よりも大切なのです。
こういったイベントとしてのコミュニティは多種多様に完成しました。そこから徐々に日常的なコミュニケーションの場所の需要が高まりましたので、3年前に台中市でかつて市長官邸だった場所を受け継ぎ、コミュニティスペースも作りました。13名のシニアシェフが食事を準備してくれる仕組みができており、そのコミュニティスペースの利用者はもちろん観光客に対しても料理を提供できるようにしています。
さらなる展開として、様々な世代に対して「不老」の精神をより広め、いつでも身に着けてもらいたいという想いから「DYC」というブランドと協力し、グッズ制作も行いました。
企画の効果
我々の活動のいくつかを紹介してまいりましたが、これらはいずれも「予防介護」として効果があると考えています。長期的なケアをいかに短くし、健康寿命を延ばしていくか、ということが我々の課題であり目標なのです。
夢を追い求めることは、生きる目標の1つです。
実は不老騎士の申し込みで、90歳の方が「70歳よりちょっと上だ」とごまかしながら応募をしてこられる、ということがありました。90歳だと断られるかもしれないと思われたんでしょう。しかし、私たちは90歳であっても彼の挑戦を評価し、協力するつもりでした。なぜなら夢を叶えることと年齢とは関係がないからです。私たちは常にその姿勢で活動し、様々な方の夢の実現のために力を注いでいきたいと考えています。
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続いて、不老騎士の活動について、東海大学のお2人からコメントをいただきました。
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陳明石さん|東海大学工業デザイン学科教授
私は高齢者が自分自身で生活ができるためのサポートができる商品のデザインを研究することで、介護が必要な方を少なくしていくことを目指しています。男性のリタイア後のコミュニティへの参加は常に課題です。私自身も男性ですので今回紹介されているいくつもの企画に関心を寄せているのですが、不老ライダーやKIITOで行われているパンじぃは男性が参加しやすい状況をしっかり作られています。台湾の高齢化社会は文化背景において複雑なところがあり、それぞれの生活に違いが多々あるため、一人一人の生活習慣を理解した上でのサポートが求められます。そういった観点から日本文化の視点で今回紹介されている台湾の事例を見ると、日本では実現しがたい、台湾独自のプログラムでもあるように感じることもあるかと思いますが、その背景にある精神には互いに学びあえるようなポイントも多々見ることが出来たと感じております。異なる文化背景の方々が同じ活動をすることが出来る仕組みづくりが不老シリーズの活動では実現ができており、とても価値がある事だと気づかされました。これからどちらの国も大変な高齢化が進んでいきますので、協力し合いながら社会をよくしていくことが出来ればと考えています。
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李俐慧さん|東海大学工業デザイン学科准教授・学科長
KIITOとは同じ社会課題に対する視点を持っていたところから今回の事例リサーチに協力させていただきました。不老騎士についてはリサーチをする前から、台湾では有名でしたので存在はよく知っていましたが今回のリサーチで機会を得て弘道基金会さんに何度も足を運ぶ中で、私の知らなかったさまざまなプログラムが実践されていることがわかっていきました。弘道の皆さんはとてもフレンドリーで親身になって働かれており、同行した学生ら自身も驚く事が沢山あったようで、良い学びにつながったり、勇気をもらったように感じました。
こういった活動はなかなかメディアに取り上げられづらいのですが、KIITOが展覧会を通して社会とつなげてくださるのはとても良い機会でして、多くの方に目に触れる機会が生み出せることに大きな意義があったと感じています。
より多くの人の関心を生んでいき、今後生まれていく企画において、様々な分野の知恵やサポートが集結することでよりよい社会になっていくのではないかと思いました。
私の専攻は工業デザイン分野ですが、弘道さんのような組織に対して異なる知識、価値を提供することでインタラクティブな関係性を生んでいけるのではないかと考えています。
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多種多様に展開される弘道基金会の活動について深堀りし、継続して開催するための仕組みについてや、「不老の夢」の企画の真髄に迫る質疑応答を行いました。
永田
不老の夢のシリーズ展開として、キャンプやサーフィンなどもされているなど、バリエーションの多さに驚きました。我々の活動も学校の部活動のようにバリエーションを多く持ち、どれに参加しようかな、とワクワクしてもらえるような場づくりを目指しています。裏を返せば日本ではまだまだそういう活動が高齢者に向けて開かれていないんです。弘道さんの多様なプログラムはどのようなスキームで生まれているのでしょうか。
李さん|弘道
2つのスキームがあります。1つはスタッフ、ボランティアが高齢者と直接会話をして探ったニーズから開発をしています。野球はまさにそうですね。最近ではボディビルをしたい、という声から企画を考えているところです。
もう1つは我々の持つコネクションからの展開です。海洋文化基金会の「台湾の美しい海をもっと多くの人に知ってもらいたい」という想いから、年齢や体力をアクティビティに参加する障害ととらえている高齢者に向けても企画を起こそう、とカヌーの企画が生まれたことがあります。
夢の発掘は我々のプログラムの1つです。それを聞き出し、いかに彼らの人生を後悔のないものにするか、ということが我々のモチベーションでもあります。
永田
一人ではなく、仲間がいる状態や教えてくれる人がいる仕組みが確立できているのがポイントのように感じますね。
この様々な企画の運営予算はどのような仕組みですか?
李さん|弘道
企画ごとで異なりますが、例えば野球は企業から資金を募りました。その費用からユニフォーム、道具、場所代、コーチの人件費などを捻出しています。
現在ある16チームそれぞれの立ち上げの際には各地域の既にあるリソースや状況を踏まえつつ、それぞれに合わせたサポートを弘道が行いました。立ち上げ以降はそれぞれが独立して自費で行えるようになっています。
不老ライダーは、政府からの助成(50%負担)を受けつつ、参加者が5万台湾ドル(およそ18万円)を支払い、その予算からすべてを賄います。
以上のように状況に応じて企業からの支援や政府からの助成などを活用しつつ、参加者自身も負担をしながら開催されています。
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次に会場から感想やご意見をいただきました。
●ボランティアの方の募集はどのように集められていますか?
→バイクや野球などのイベントについてはイベントごとに公募をしています。医療や総務、イベント運営に対して募集をかけます。同じエリアに住んでいる方に向けての広報をし、より密なサポートができるようにレクチャーをするのが我々の役割でもあります。
台湾全土に33のボランティアステーションがあり、主に周辺エリアに住む方が登録をしています。それぞれの余暇を利用して我々の日常的な活動もサポートしていただいています。
●島根の松江から来ました。私の暮らすエリアの高齢者の方々がされているのはゲートボールやグランドゴルフばかりです。せっかく海が近いのでサーフィンが出来たりするならいいのにな、と思いました。ご紹介いただいた活動はどのように広報して参加者やその家族の理解を得ていますか?
→広報としては不老シリーズの映像展示も行ったこともありますし、香港でプレゼンしたこともありました。台湾国内においてはバイクや野球はメディアからの取材がいまだに絶えず、時間がたってもまだまだ注目を浴びています。神戸でのプレゼンの機会を得られたのも需要があるという裏付けの1つだと感じています。
台湾国内でももっと広げていきたいですし、日本でも展開していけると素晴らしいなと思います。
●私は今30代です。ボランティアに参加してみたいなと思いますが、仕事もあってなかなか時間を割くことが出来ない状況です。台湾の1800人に上るボランティアの方の年齢層や職種はどういった属性の方でしょうか。
→若い方もいますが、まだまだ少ない状況です。また、ボランティアステーションの場所ごとに、年齢層も違います。都心を離れた台湾の中部では平均年齢が70~80歳を超える、という所もあります。板橋などの都心では、サラリーマンが多く、お昼休みや仕事後の時間を使って独居老人のケアをしてくださるボランティアがいるという事例もあります。
学生やサラリーマンであっても丸一日協力してくれる場合もありますので、それぞれの時間に合わせて協力をしてくれているように思います。
●感想になりますが、不老ライダーに参加される方々は体力の衰えた自覚を持ちつつ、改めてチャレンジをされているように感じました。そんな様子を拝見すると、どうしても田舎に住む私の祖父母はあきらめモードで人生を送っているように見えてしまいます。そういった高齢者やこれから年を重ねていく人たちが不老ライダーや不老野球のことを知ることで、チャレンジする気持ちを持って暮らすことが出来るのではないかなと思いました。
→もともと活発な精神をお持ちでコミュニティに入っていく意欲がある方がいる反面、ふさいでいた方々に対してのボランティアによる励ましの声で参加できるようになった例も少なくありません。この活動は誰しもが参加できる活動ですので、童心に帰って、それぞれがやりたいことに挑戦してもらえるよう、プログラムをより多くの人に開けていきたいです。
あなたも是非、あなたのおじいちゃんおばあちゃんの夢を探ってあげてください。それが活力になるはずです。
●私は兵庫の中でも一番人口の少ない町で高齢者の健康維持の支援をしているダンサーです。舞台の企画がとても良いなと思いましたが、日本ではなかなかステージに上がるということはしたがらず、内々で体を動かしているのがいいと考えている方ばかりです。そのあたりについて同じような課題を持っていたり、ステージに立ちたくなる仕掛けをされていますか?
→台湾では3000を超える高齢者の舞台演劇の団体・コミュニティがあります。この不老シリーズの中で行う舞台演劇についてはその各団体から応募されてくるビデオで一次審査を行い、20の団体が選出されます。そこからさらに舞台でのオーディションが行われ、9つの団体に絞られるという仕組みです。その選ばれた団体に対してプロの演劇の構成を基にした演技指導や衣装の作成まであらゆるフォローを行い、舞台をよりクオリティの高いものにしていきます。過去の舞台を見て感動して始められたという方も多いです。政府が促進している面もあり、その他の団体が行うコンテストも多数ありますので、台湾の高齢者にはこういった活動に慣れている方が多くいます。活動自体が社会的にも認知されているのでとてもポジティブに、かつ意欲的に参加されているのです。
もしあなたの団体も興味があればぜひ応募してください!国際的な交流もしていきたいと考えています。
●いくつかのイベントは高齢者にとって危なそうにも見えましたが、安全の担保はどのように行われていますか?
→不老ライダーは特に安全面の懸念があるのでこの企画はまずは体力づくりをするところからスタートします。合同でのトレーニングはもちろん、自宅でのトレーニングもプログラムの1つです。
疲れからくる居眠り運転などが起きないように、適度な休憩をとることを徹底していますし、バイクを降りて体操をする時間を設けるなどツアー中のスケジュールを調整しています。また、バイクの速度を50km/h制限にするという対策も行っています。その他にも、移動中の交通整理や引率を若者のボランティアに行ってもらっています。交差点などでは前乗りして交通整理を行って頂きますし、交通量の多いエリアでは警察のサポートをしていただくこともあります。
救護車も並走し、医療スタッフも同行します。ツアー中に血圧のチェックなど健康診断も行い、それぞれの健康状態を把握したうえで旅を続けています。
どんなイベントにおいてもリスクはありますが、そのリスクに対して十分なリスクヘッジをはかること、そして何より、参加者本人の希望に対しての家族の理解を深めることが今日までの継続した開催につながっていると考えています。
最後にゲストおひとりずつからコメントと、これからの高齢化社会についてご意見をいただきました。
李さん|弘道
衣食住遊のあらゆる分野で高齢者のことを考えていく時代に入っていると思います。
その中で我々がサポートをできる分野を広げ、高齢者にとっても若者にとっても暮らしやすい社会を実現していきたいです。
李準教授
4つのトークセッションを全て拝聴させていただき、1つのキーワードとして「関心を持つこと」を挙げたいと思います。高齢者と若者の互いの理解を得て、どのように人間関係を築くかがポイントだと感じました。
本来であれば家族でのサポートだけで完結できたほうがよいのかもしれません。しかし、そうできない理由が仕事や子育てなどに紐づいていくかと思います。そういった時にいかに外部の組織やコミュニティでのサポートを活用できるようにデザインしていくことができるかが重要になってきます。様々な分野、立場の人が協力し合える社会を目指すことが我々の役割だと気づくことが出来ました。
陳教授
この2日間で日本と台湾、それぞれの団体が高齢化社会に向けてのよりよいアクションを模索していることに深い感銘を受けました。私は日本への留学経験から日本と台湾との生活様式や考え方に親和性を感じていましたが、今回の様々な事例から多くの異なる点にも気づくことがありました。
これは一見ネガティブな意見ですがそうではなく、多様性を感じました。日本で実践が難しいことが台湾ではすぐにでも行えるようなかもしれませんし、その逆もしかりです。
その中でも不老野球はとても間口が広く、台湾と同じく野球人気の高い日本や韓国でも実現できるのではと感じました。国際交流試合が行われるようになれば素晴らしいですよね。
通信の発展によって、こういった活動が国境を越えてより多くの方に認知される時代になりました。これからはそういった情報発信の質を高めることも重要になってくると感じました。
私も間もなく高齢者に数えられるようになりますので、その時にはぜひ野球をしたいですね。
永田
私はこの展覧会全体を通して、「つなぎのデザイン」を意識することが最も重要だということを改めて学びました。そしてもう1つ、事業として確立させることはとても重要だと感じています。儲けを出すという意味ではなく、お金がきちんと回る仕組みがある事で継続開催が実現できることを台湾の事例から学ぶことが出来ました。どのトークセッションの中でも「既成概念を捨てること」重要視されていました。このポイントを意識することで多様なプロジェクトに展開していけると考えています。台湾のどの企画も写真に写った方は素晴らしい笑顔でいらっしゃることがとても印象的でした。これが何よりの成果であり、企画の価値を物語っていると思います。
台湾の事例についてはこれからも引き続きリサーチを行いつつ、双方のプログラムを通した交流も図っていきたいと思います。
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LIFE IS CREATIVE 展 2019〈高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション〉①についてはこちら
LIFE IS CREATIVE 展 2019〈高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション〉②についてはこちら
LIFE IS CREATIVE 展 2019〈高齢化が進む台湾の先進事例から学ぶ、連続トークセッション〉③についてはこちら
LIFE IS CREATIVE展2019についてはこちら
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photo:片山俊樹