2020/2/7
イベントレポート
1/25土、大人の洋裁教室3講座D「着る人に寄り添った洋裁」を実施しました。この洋裁教室は、洋裁やおしゃれのセンスを磨き、その技術を活かして日々の暮らしを楽しむことを目指して実施しております。今回の講座は「着る人に寄り添った洋裁」をテーマに、神戸芸術工科大学ファッションデザイン学科の見寺貞子教授、笹崎綾野准教授、様々な学校で非常勤講師を務める韓先林先生を講師に開催しました。今回も多くのお申し込みをいただき、抽選で選ばれた10名の参加者と共に学びました。
初めに自己紹介からスタート。参加者の皆さんに参加動機も合わせて発表していただきました。「母の残してくれた服をリメイクして活用したい」「年を重ねてだんだん不自由になり、自分に寄り添った服を学びたい」「一般の服が身体に合わないので、自分で調整したい」。参加者はそれぞれのお話に頷きながら耳を傾けていました。
ユニバーサルファッションについて|見寺貞子先生
ユニバーサルファッションは、誰もが自由に好きな服を着られるようにするものです。私はバイヤー出身で、その後大学に勤務しています。高齢社会では、健康寿命を延ばすことを目的に、運動や食事が重要ですが、私はファッションも重要だと考えています。ファッションの分野で高齢社会の役に立ちたい、ファッションで元気にしたいと考え、活動を続けています。
研究する中で、ユニバーサルデザインをファッションに置き換えることを考えました。2016年から始まった、大人の洋裁教室を初回から指導をしています。過去に開催した「大人の洋裁教室」では、いらなくなった着物を素材に、ワンピースやシャツへリメイクするプログラムを実施しました。過去の洋裁教室の参加者は、“洋裁マダム”と呼ばれ、こどもたちに洋裁技術を教えるワークショップやイベントに出店するなど、活動を継続しています。前回の講座Cでは、初めて男性のみを対象に洋裁教室を開催しました。皆さん一生懸命に蝶ネクタイをつくり、笑顔で楽しい会でした。
いろいろな体型姿勢がありますが、人に寄り添うということは、体型だけでなく気持ちを汲み取ることが大切です。着脱しやすい工夫、排せつしやすい工夫などを考えなければいけません。また、色の視認性も大切です。黄色と黒色は、工事現場などで使用され、目立ち、分かりやすい色です。しかし、視界が悪くなってくる夕方の時間帯に時速60kmで走る車からは、黒い服を着た歩行者には26mまで近づかないと認識できません。黄色と合わせれば目立つ黒色も、単体では危険につながる可能性があるのです。そのような危険を回避するために有効な手段のひとつが反射板です。反射板のついた、おしゃれなグッズも販売されており、帽子やバックなど、特に面積の広いものがおすすめです。靴かかと部分などについているものもよく光ります。
15年間、兵庫モダンシニアファッションショーを開催しています。出演すること、表現すること、人に見られることはとても大切です。このファッションショーはドキュメンタリー映画にもなり、神戸の活動はモデルケースとなっています。神戸の人は意識が高いと感じています。神戸ファッション都市宣言を50周年を迎える2023年をまた新たなスタートラインとして、アジアに広がるユニバーサルファッション、元気な高齢化社会を目指しています。
体型とファッションについて|笹崎綾野先生
最近はおしゃれ高齢者を取り上げた雑誌が多く登場しています。また、おしゃれ高齢者をテーマにした映画など注目されています。元モデルだった方もいると思いますが、おしゃれな方は世界中にいます。
私は、背中が丸くなる円背(えんぱい)について調べています。高齢者に多い体型です。首や腰、くるぶしなどを、点を結んだ際に、まっすぐだと健康な姿勢ですが、円背の方は各点を結ぶと曲がっています。高齢者施設内でまちを形成している中国のある場所を訪問した際は、円背の方がとても多かったです。研究者としてはとてもワクワクしましたが(笑)。円背の方は、服がはねたり、しわができてしまいます。また片麻痺などの障害者の方は、身体に左右差ができてしまいます。3D撮影すると、左右差の特徴がよく分かります。首の詰まったシャツを着ると着崩れが目立ちます。布を斜めに使った生地を使った服は、さらに大きな着崩れが起きます。歩く際に左右のブレが大きいため、衣服の肩の部分が落ちてしまい、ねじれてしまうのです。服のサイズはJIS規格で、身長を大中小、体の大きさの大中小で決められています。基本体型寸法とされる9ARは、身長158cm、バスト83cm、ヒップ91cmと決められています。これにあてはまる高齢者はどれだけいるでしょうか。体型特性の分類も前傾、後傾、肩の位置、首などを踏まえて、着る人に寄り添った工夫が必要だと思います。体型で若い頃と変わったところはどこですか?後ろ姿が変わった…腕が…お腹周りが…背中の肉が移動した…。たくさんの意見があります。私も年を重ね、体型が変化し、以前の服が着られなくなることもあります。皆さんも体型変化が起きていると思います。
参加者のみなさんの衣服を持ち寄り、それぞれの悩みや改善点などを発表しました。
「パンツの幅が合わず、身長がより低く見えてしまう」「若いファッションは、おしゃれでデザインも好みだが、丈が長くどのように着ていいのか分からない」「体の幅に合わせると腕の部分が大きく、邪魔になってしまう」「母の服を着たいが、細くて着られない。どんな加工ができるか知りたい」…たくさんの悩みや問題点が話されました。
なぜリメイクをするのかについて|見寺先生
着にくいと話がありました。その理由は、服が合っていないからです。合わせるためにリメイクをします。Aラインにしてお腹周りをカバーする。サテン系のパンツにサテン系の生地を入れて、流行りの太めのサイズにリメイクする。体型が変わってもシンプルに考え、リメイクしていくことが大切です。長いドレスの裾を切って、ストールのしたもの、ユニクロのシャツにタックを入れたもの、小さかったら大きく、大きかったら小さくと、シンプルに考えていくことが重要です。上下を100%として、上下のバランスを合わせていくこともポイントです。一色よりも少し色が入る方が、深みが出ます。黒に別の黒を足すなどなど同系色で、違う素材を合わせるのもおすすめです。おしゃれは難しくない、法則を覚える事もポイントです。
重度の障害者の方は、スーツや着物が着にくいため、わきが開くようにデザインにし、着脱だけでないその人の喜びを加えることも大切です。後ろから着ることができる、身体が不自由で着られる、見かけでは分からない、磁石のボタンなどもあります。車いすの方は座る姿勢、座ったら台形になります。姿勢に対して合わせ、Aラインでつくります。そうすると車いすに座っていてもきれいです。認知症の方ように、前後がない、間違えない服をつくりました。これは健常者でも着ることができます。
最後に、各自持ち込んだ服の改善案について、今回の講師の方のお話を聞いて、どのように解決できるか、アイデアなど話し合いました。
「私は、背が低いので、上にポイントを持ってきてバランスを取りたいと思いました」「丈が長いのでカットして、少しスリットいれ、切った生地でスヌードをつくろうと思います」「腰のゴムを抜いてAラインにしてみます」「同じような雰囲気のツイードの生地を足すのはどうでしょうか」「腕のきつい服なので、腕から腰までまっすぐに幅5cmぐらいの生地を入れてみたい」「Yシャツに少し派手な柄の生地を入れてみることで雰囲気が変わるのではないか」「カバンの防犯用としてスカーフを使ってみるのはどうか」みんなで意見交換を行い、とても盛り上がりました。
参加者からは、「これからは、ファッションに対して考えを変えようと思いました」「体に合わせるさまざまな方法を学べて良かったです」「早速家に帰ったら実験をしたいと思います」といったコメントがありました。
次回は、2/29土「和服を仕立て直す(ボトムス編)」を開講します。こちらも事前申込制、応募者多数の場合は抽選となります。
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