2020/7/17
イベントレポート
「コーヒーは好き?」と聞かれると、「好きです!」と答える人が多いと思います。でも、必ずそのあとに「でも、詳しくは知らないんですよね」と、続けてしまう。そんな言葉をとにかくなくしたい、という思いで珈琲学の講座を4年も開催し続けてくれたLANDMADEの上野先生。2018年7月~2019年1月まで続く全10回の講座は、上野先生の持っているコーヒーの知識、愛、全てを詰め込んだ集大成となりました。そんなあらゆる思いが詰まった、「コーヒーのいろはを学ぶカキクケコーヒー学」の第三回の総合レポートです。ゆっくりじっくりコーヒーのいろはを学びながら、自分がなぜコーヒーのことを好きなのか語れるようになるといいなぁと思います。
味のストライクゾーンを探ってゆこう
おいしい豆を買ったはずなのに、淹れてみると、あれ?美味しくない?みたいなことありませんか。味のストライクゾーンを知れば、コーヒーは実は簡単に美味しく淹れられるはずなんです。おいしいコーヒーを淹れるのを難しいと感じる理由は実は、粉量、湯量、挽き目など、いろんな要因が入り混じっているから。どんな状況でも、おいしいコーヒーを淹れるにはどうしてゆけばいいのか探ってみましょう。まず、コーヒーが一番おいしく簡単に淹れられるのはカッピング。次に、ティーバック型。最後が、ハンドドリップです。ハンドドリップ…、あまり詳しいことはわからないという人、コーヒーの基本を理解すれば問題ありません。今回は、深煎り、浅煎りをドリップで。まずは正しい、良いコーヒーの入れ方を知ること。あとは、基本的には好みです。自分の好みを知り、いろんな豆の味があることを知って、それぞれの豆をひきたてる淹れ方を学んでいきましょう。
深煎りのドリップコーヒーのおさらい
まずは、深煎りから。初めに粉全体にお湯をかけて、蒸らしていきます。表面がふくらんでいるのが、炭酸ガス(以下ガス)がでている証拠。この炭酸ガスが全体から出た瞬間、すべての面に再度お湯をかけていきます。表面を潰していきます。全体が浸ったら、高さを保ち、一定にお湯を注いでいきます。淹れるときに大事なのは、液面の高さを保つこと。お湯の注ぎ方は、回し淹れても回さなくてもOKです。
ここで重要なのは、はじめのうちに、豆に含まれるガスを出し切ってしまうこと。コーヒーという液体は、そもそも98%以上がお湯で、1%ちょっとがコーヒーの成分です。例えば、レモンスライスを水にいれたとき、レモンの成分が水にじわぁと広がっていくのが目に見えますが、コーヒーもあのようなイメージ。レモン水は、水にレモンの成分が溶け込んでいっているんですね。ですので、そもそもコーヒーもお湯につけこむだけで、コーヒーの成分が溶け込んでいきますが、コーヒーは焙煎で、豆に化学変化を施しているので、豆の中にガスが含まれています。だから、コーヒーの成分を移動させたいのですが、お湯をかけたときに真っ先に出てくるのは、ガスの方です。ガスが水の中に溶け込むのではなくて、成分よりも先にガスが出てくるので、成分が出てくるのを少し邪魔をしちゃうんですね。結果、思ったより成分が取り出せず未抽出になってしまいます。あまり味のしない未抽出のコーヒーに仕上がってしまうことは、よくあることですね。
最初にばぁと全体にお湯をかけて、蒸らすことで、余分なガスを空気中に抜いていきます。逆に、お湯をかけたときに膨らまない場合は、蒸らす必要はありません。
浅煎りのドリップコーヒーのおさらい
浅煎りも、深煎りと同じく全体にお湯をかけます。そして浅煎りのポイントは、蒸らし部分です。
粉があまり膨らまないようなら、蒸らし時間を短くしましょう。もしくは蒸らしそのものを省くようにします。そもそも、浅煎りは持っているガスが少ないので、蒸らしてガスを逃してあげる必要がありません。逆に蒸らしてしまうことで、コーヒーの層が崩れてしまうので、お湯がコーヒーと触れ合わず流れていってしまいます。つまり、お湯があまり触れてない部分は未抽出に、逆に触れすぎている部分は過抽出になってしまいます。きれいに膨らみ続けていっている状態が、一番良い状態です。膨らんだ状態で注ぎ続けることで、粉の中でお湯が滞留し、うまく抽出してくれます。深煎り、コーヒーの中の構造がわかれば、浅煎りを淹れる際のイメージもつきやすいと思います。
逆に、うまくコーヒーの中で滞留していないのはこんな感じです。蒸らし時間を長くすることで、ガスがでていってしまっています。表面をみてもらうとわかりやすいのですが、べちゃべちゃになっています。つまり、コーヒーを淹れる際、ある程度のガスは必要なのです。
味のストライクゾーンを探していく
カッピングで、でてくる味が一番その豆の味といえるでしょう。その味をストライクゾーンとして、淹れ方を調整してゆきます。コーヒーを淹れる際に注意したいポイントは5つ。温度、粉量、抽出時間、湯量、挽き目です。粉量と湯量は、濃度を表す縦軸に影響し、抽出時間と温度は、横軸の未抽出と過抽出に影響します。うーむ、深いですね。
ストライクゾーンはコーヒーの旨味が感じられて、舌にぴりっとした雑味が残らず、飲みやすいものです。難しく言っていますが、おいしい!というものです。なんでこのストライクゾーンを探すのは大切なのか?というと、コーヒーは、どんな状況でもおいしく淹れられるからです。例えば、一般的なコーヒーメーカーは挽き目と粉量しか変えられません。抽出時間と湯量と温度は、機械の方で決まっています。だからコーヒーメーカーは味が安定しやすいんです。湯量が一定だと、粉量が雑でもだいたいは、おいしいコーヒーを淹れることができます。
どうやってストライクゾーンを探ってゆくか?の例をみてみよう
例)カッピング
①粉量(9,5g)/挽き目(粗い)/湯量(170ml)/抽出時間(4分)/温度(100度)
② 粉量(9,5g)/挽き目(粗い)/湯量(170ml)/抽出時間(1分)/温度(100度)
あれ、淹れたコーヒーがおいしくない?と思ったときも全てを変えるのではなく、①と②のようにひとつの要素だけを変化させていきます。変えた要因がどう味に影響するかを探っていきます。一気に変更するより、ひとつずつ変更していきましょう。味の変化を感じるよりも、飲んだときに感じた雑味や渋みを消して行く作業です。
抽出時間の1分、4分で味の違いがあるんだなぁということがわかればOKです。試してみてください。ちなみに、味は、酸味から早く抽出されていきます。そのあとに、苦味の成分がでてくるんです。だから、抽出時間が、短すぎると、酸味の強い味を感じたりすることも。抽出時間が、ちょうど良いと苦味をはじめ他の成分も適切に抽出されてバランスの取れた味わいになります。
コーヒーを淹れるのに一番大事なこと
全10回の授業と、3回のレポートでいろんなことを伝えましたが、正直伝えきれません。でも、一番大事なことは、本当に自分の好きな味を知り、それを誰かに伝えることです。そして、その次にコーヒーの基本を学び、正しいコーヒーの淹れ方をすること。コーヒーは難しそうで、とても簡単。まず、誰かにコーヒーの想いを伝えるだけでいいんですから。
イベントについてはこちら
神戸珈琲学 コーヒーのいろはを学ぶ「カキクケコーヒー学」
過去のレポートはこちら
コーヒーのいろはを学ぶカキクケコーヒー学レポートvol.1
コーヒーのいろはを学ぶカキクケコーヒー学レポートvol.2