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2019/9/9

イベントレポート

「+クリエイティブゼミ Vol.32まちづくり編「人口減少時代の豊かな暮らしを神戸でデザインする」」第5回レポート

9月3日(火)

7月末からスタートした「+クリエイティブゼミ Vol.32まちづくり編「人口減少時代の豊かな暮らしを神戸でデザインする」」。班ごとに議論を重ね迎えた第5回は中間発表会を行いました。前回、途中経過報告として互いに共有し合ったリサーチやアイデアはどのような方向に展開を見せているのでしょうか。今回は各班のプレゼンテーションに対して、ゼミマスターであるKIITO副センター長永田と、神戸市都市局の飯塚さん、奥町さんの3名からの講評がありました。

  

A班「土の人」
私たちは、地域に根ざす存在である「土の人」の育成をめざしています。まず、神戸市の人口に関する現状リサーチを進め、転勤族や単身者の割合が高いため外からの力を借りる場合が多いことや、自治会やまちづくり協議会の後継者となる人物を充分に開拓できていないという状況から、未婚者や短期滞在者の存在に目をつけました。そこで、「土着は無理でもプランター程度」つまり「地域にずっと寄り添うことはできないけれど、せっかくその土地に身を置いているのであれば少しだけでも関わりたい」という人を増やすためのプロジェクトを提案したいと考えています。リサーチしたの統計結果に加え、実際の短期滞在者の数値調査、関係団体への意向調査を経て、何らかのアウトプットに落とし込みたいと思っています。調査結果によっては、地域に関わりたいという意向が多ければマッチングイベントのようなものや、そういった人を受け入れられる活動や拠点の情報源となるツール(チラシ等)を多くの人に頒布する仕組みも考えられると思います。

〈講評〉
飯塚さん|神戸市も地域団体情報を収集しきれているわけではないので、うまくお互いをマッチングさせるシステムを考えることができれば面白そうだと思いました。
奥町さん|神戸市としても課題解決に難航している対象層をターゲットにしているため、設定が上手だと感じました。今悩んでいる部分を乗り越えて面白い仕組みをつくっていただくことに期待します。
永田|未発掘のマンパワーに注目する視点がよいと感じました。このゼミにも学生が参加しているので、地方から移住してきた側の意見などを聞けるのではないでしょうか。2~3年の契約を以て派遣された地域で活動に取り組む「地域おこし協力隊」の発想に共通する部分があるので、その仕組みをひもときながらアウトプットのアイデアにつなげてみるのもよいかもしれません。対象が絞れているので、まちづくりの事例をもう少し探ってみてはどうでしょうか。

  

B班「土の人」
私たちは「空き地・空き家問題」から議論が始まり、議論を重ねるうちに高齢者や弱者の孤立問題や地域内でのコミュニケーションの減少を課題として捉えるようになりました。また、現役大学生、子育て世代のお父さん、外国人住民とチームの顔ぶれがバラエティに富んでいるというチームカラーがあるため、私たち各々の視点で考えたアイデアを発表します。

幸せを呼ぶ花車(地域の高齢者によるフラワーアレンジメント)
商店街の花屋で売り物にならなくなった処分する前の花を利用して、地域のおばあちゃんにミニブーケをつくってもらい、たくさん集めて飾って花車をつくるプロジェクトです。シャッター街になっている商店街や駅前に花車を飾って地域の雰囲気を明るくすることが目的です。
紙芝居プログラム
教育的な内容の物語(桃太郎など)や、防災・防犯といったテーマの紙芝居をすることで、フリースペースに集まった人どうしでその内容について意見を交わして交流できる場作りをするためのアイデアです。
ダンス交流会
海外移住者が多いため、各国の民族舞踊を教え合ったり、ヨガやラジオ体操など大人数で交流を楽しむことができるプログラムをフリースペースで実施することを提案したいと考えています。
人が集まる仕組みづくり
人と人とのコミュニケーションが生まれるきっかけをつくるために、フリースペースを活用したプログラムを考えています。親から言われて、ではなく街中にあるピアノ(例:ストリートピアノ)を弾いてみたいと思う気持ちやダンスしてみたいという自発的に興味をもってもらえるような子どもの心動きにも影響が及ぼせるのではないかと思います。

〈講評〉
飯塚さん|商店街で花を売る実践はすでにおこなわれていて、仕事帰りに近所ではない商店街に立ち寄るというハードルの高さといった課題も浮き出ている状況です。花車のアイデアについては、ターゲット層を具体的に絞った上で引き続き検討してもらえるとよいと思いました。
奥町さん|具体的な提案内容でよかったのですが、どういった問題を解決するためのアイデアなのか、何を活気付けたいのかというメッセージ性がほしいと感じました。
永田|「空き地のマネージメント」寄りのアイデアになってきてしまっています。個々のアイデアを深堀りしていって種のバリエーションを増やすのではなく、いろいろなやりたいことを持った人が空き地に集まることでどんなことが実現できるのかという「仕組み」の部分を考えるほうが、より面白いアイデアが生まれると思います。

  

C班「水の人」
地域に落とされた新しいアイデアである「種」を育てていく立場である「水の人」を育成することについて考えました。ゼミのタイトルにもある「豊かな暮らし」がどういったものなのか、そして水の人とはどういう人を指すのかということに注目して議論を進めてきました。
人口が減少するにつれてサービスが縮小されると、地域に取り残されてしまう人が現れ始め、ひとりでまちの中にいる状況が増えてきます。また、水の人を「地域が魅力的になっていくことを自分のことのように喜べる、地域に誇りを持った人」にし、ターゲットは「孤立している人」としました。
これらを踏まえ、水の人の役割は「孤立している人々をマッチングしていく」ことが大きいのではないかと考えました。

個人と個人をマッチングする事例としては「MY PRESURE BAND」「ヘルプマーク」といった、困っている人自身が意思表示するために持つアイテムがあります。しかし、どちらも「弱い立場に見られてしまうのではないか」「恥ずかしい」という気持ちからなかなか浸透しにくいアイテムとなってしまっているのが現状。ゆえに、「困っている人は声をかけてください」というような、手助けする側が意思表示できるアイテムをつくり、実際に身につけることで社会に浸透させていく方法を考えました。スマートフォンと連動することで位置検索機能を利用し、さらなる情報拡散につなげるとよいのではないか、という意見もありました。また、活動に参加したいと思っている人が仲間に入れるような「団体」と「個人」のマッチングや、時間によって空いているスペースをうまく活用する「場所」と「個人」をマッチングするというパターンも想定できます。まちで起こっていることをいろんな人が知ることができると面白いのではないか、というのが今回の発想のヒントです。

〈講評〉
飯塚さん|補い合うという視点の重要性を感じながら聞かせていただきました。個々がどうすれば取り組んでみようと思うようになるか、というきっかけづくりをどうするかが大事ですね。どうすればこの仕組が回るかまで考えていただけるとよいと思います。
奥町さん|「MY PRESURE BAND」、やり方によっては広がるチャンスがあると思います
。広がるきっかけが捕まえられれば希望が見えてきそうですね。
永田|マッチングという方法に展開したのは良いですね。個人と個人のマッチングで言うと、最近は個々の特技と依頼内容のマッチングコンテンツも出てきました。デジタルコンテンツ寄りにするのか、リアル寄りでいくのか、視点や方法はさまざまあります。リサーチゼミの講師でもあった藤浩志さんは、必ず自己紹介で特技を聞いて、その人が活躍できる場をつくっていくようにしているのだとか。もう少しリサーチを重ねたうえでもっと深堀りしてみてほしいと思いました。

  

D班「風の人」
私たちは「風の人を育てる仕組みをつくる」というテーマを設定しました。ただし、基本地域に根ざす立場ではない「風の人」をいきなり一から育てるのは難しいのではないかという懸念から、「もともと地域に属していて知識やつながりをすでに持っている人を、神戸を豊かなまちにするアイデアを生み出す存在として育て上げる」ことを「風の人を育てる」定義としました。また、今回のゼミタイトルにある「豊かさ」について、チームメンバーの神戸歴や年代、職種がばらけているというステータスを活かし、豊かさの感じ方が違う幅広い世代に対して対して柔軟にアイデアを提供できる風の人を育てたいと考えています。
具体的には、共通の課題認識(子育て、終活など心配事)をもつ人どうしが集まる場に、サポート役として専門家を配置。そのような状況で議論を繰り返すことで風の人を育てることができないか、というのが提案です。集まって議論を展開する「場」については、区ごとに特色があるという点に注目して、横のつながりをつくることにもつなげて居場所づくりの面も検討する方向で進めています。
今後は、既存の事例リサーチを増やしながら具体案を詰めていきます。

〈講評〉
飯塚さん|「風の人育成」と「居場所づくり」のつながりが少し見えにくいと感じました。風の人を育てる仕組みが、最終的にどんなアウトプットにつながるのかという点に留意しながらまとめていっていただきたいと思います。
奥町さん|実は、自治会に専門家が入って課題について話し合うという仕組み自体はすでにあるんです。ただ自治体の中に風の人にあたる人がいないとなかなか有力な解決策が挙がってこない、というのが課題だと感じています。目指すビジョンと現状のギャップを認識できて、課題を解決するワンステップを登ることができる人をどうやって増やしていくかを考えていただければと思います。
永田|風水土の人という3つの役割は固定化されておらず、さらに水の人が風の人のスキルを身につけたら「霧の人」と呼べるようになるといったかたちで兼任できる人もいます。居場所づくりの話はスタート地点に据える議題ではなく、課題解決の先にあるものではないでしょうか。極端なことを言えば、土の人から風の人に変わる人が出てくるかもしれない、という状況をどうやったら生み出せるのかを考えてみてください。

  

E班「風の人」
まちを変えていくために必要な風の人について、市外の事例をリサーチしました。そこから見えてきた共通点は「熱量がある」「ぶれない軸がある」「自然と人が周りに集まる」「本人は風の人であると気づいていない」の4つ。そして、熱量はあるが実践する自信がなく、そもそも方法わからないという人を風の人として育てる〈人の質を高める方法〉と、自分の素質に気づいていない「風の人予備軍」を発掘するための場作りをする〈人の数を増やす方法〉という2つの柱を設定しました。
この2つをどちらも叶える方法として、今回はイベント開催を考えました。例えば、「神戸にくまつり」と題して、肉に関心がある、つまり同じ興味を持った人が集まった状態で何がしたいかを参加者側で考えてもらう場をつくります。こうすることで、先ほどの2つの柱にあてはまる人を集め、内に潜む熱量にさらに火をつけることができるのです。
イベント開催の影響としては、まちづくり参加へのきっかけやまちのイメージアップ、また外部からの人口増加が考えられます。コンテンツ実施後も、継続して風の人になるための学びが継続できる仕組みをつくっていければと考えています。

〈講評〉
飯塚さん|コンテンツのテーマ設定によってどういった風の人予備軍が集まるのかが変わってくるため、課題・目標設定が重要になってくると感じました。また、高まった熱量をいかに昇華させて風の人の誕生につながられるかという仕組みをしっかり考えていただければと思います。
奥町さん|ポイントは「継続性」。あるイベントに集まった人が別の場所でまた種をまいてくれること役割を持つのが風の人なので、そのきっかけとなるイベントをどういうものに設定するのかが重要だと思います。
永田|僕がその考え方で提案するなら、神戸市の既存のイベントであり、予算もついていて可能性もある「078」に絡めます。イベント開催の方向で進めるならそれなりに強度がある内容でないとアクションプランの提案まで突き詰めることができないので、「本当にイベント開催でいいのか?」という部分を含めて再考してもらいたいですね。

  

F班「風の人」
「風の人を育てる」ことに着目し、まずは「人口減少」や「豊かな暮らし」というキーワードについてじっくり考えました。人口が減っているこの状況の中で豊かな暮らしを送っている人はどれだけ居るのか、また、チームメンバーが思う「風の人」3名にヒアリングを実施しました。
コミュニティに依存しすぎず、枠を取り去った場作りをしているCOCCAの今津さん。グラフィックデザイナーとしての自分の枠を飛び出してさまざまな領域に足を踏み入れ、幅広い活動をしている濱さん、生産地と消費者をつなげてセミクローズド化をはかる、神戸R不動産の小泉さん。それぞれの活動から見えてきたのは、神戸がプラットフォームになりうるのではないか、というアイデアです。
この3名にはつながりがあるということが神戸の面白い部分で、地域に根ざしながらも風を起こしているのが共通点でもあります。具体的なアイデアにはまだ辿り着いていませんが、こういった風の人をきっかけにしてプラットフォームづくりを考えていけるのではないかと考えています。

〈講評〉
飯塚さん|地域資源を活かすという話もありましたが、こういった風の人の取り組みをどうプランに落とし込んでいくのかをぜひ詰めていっていただければと思います。
奥町さん|ビジネスの世界でもプラットフォームづくりが流行っていますね。今後、どういった人に集まって欲しいのかにも注目して進めていただきたいです。
永田|プラットフォームをつくることができる人を育てるのか、プラットフォームをつくること自体を考えていくのか、アクションプランの方向性が少し曖昧に感じました。3人から何を学び、このような人を増やすためにどうするか。整理はできてキーワードは出てきているので、アクションプランに向けてどう進めるのかを検討していってください。

  

総括

永田
もっと本気で意見をぶつけ合って、班の中で議論してみてください。素晴らしいアクションプランをつくることも大事ですが、真剣に議論することも重要です。さらにリサーチをしたほうがいい班もありました。リアル感をめざすと実現性が高まってきます。みなさんつかみかけている感はあるので、引き続き検討してください。

飯塚さん
このあと出てくる具体的なアクションプランに、まだまだ余地がありそうだと感じました。我々神戸市も、日々試行錯誤しています。みなさんの議論は神戸市の議論でもあるのです。最終的に出てくるアイデアは、今後実践を期待できるものもあるのではと踏んでいます。
また、このゼミに参加して活発な議論を交わした経験がみなさんのスキルアップにつながり、今後の活動に活かしていってほしいと思います。

多くの課題が見えた中間発表となり、各班最終プレゼンに向けて改めて足並みを揃える機会となりました。

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+クリエイティブゼミ Vol.32まちづくり編「人口減少時代の豊かな暮らしを神戸でデザインする」

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