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2021/2/17

REPORT

食からはじまるライフデザイン -自然によりそう暮らし- volume.7 レポート

1月17日(日)

阪神・淡路大震災から26年目の日、食からはじまるライフデザイン -自然によりそう暮らし- volume.7「ぶどう畑から広がる 人と自然の循環」を開催しました。

7回目を迎えた「食からはじまるライフデザイン-自然によりそう暮らし-」。日々の食や消費行動、生産背景を見つめなおすことで、心豊かな暮らしをおくるきっかけになれば、と始まったシリーズプログラムです。
今回のゲストは『AL FIORE』の目黒浩敬さんです。『AL FIORE』=一輪の花という意味で、一輪の花がやがてタネをこぼし、お花畑のように多くの人々の幸せへと広がるようにという願いが込められてつけられたそうです。そんな広がりの中に関われたら、というモデレーター川浪さんの思いのもと、目黒さんのお話が始まりました。

自然に恵まれた子供時代 そしてイタリアへ
福島県に生まれ、自律性の育みを大切にし、自然・食への愛にあふれたご両親、そして山に海にと豊かな環境のもと生まれ育った目黒さん。幼い頃から食の本質にふれていきます。
教師になる道を歩んでいたものの、最終的にご両親の言葉が蘇り、あらためて食を仕事にしようと思われたとのこと。負けず嫌いな性格や海外志向、その時注目が集まっている料理ジャンルだったことも合わさり、イタリアへ渡航されます。新しいものを作っては古いものを壊して…だけを繰り返すのではなく街並みを大事に残し、また家族との飲食時間を非常に大切にするイタリアの文化に触れ、日本の良さは何なのかあらためて考えなおすようになります。

レストラン『AL FIORE』オープン
帰国後、単に現地から食材を取り寄せたイタリア料理店を開くのではなく、どうすればその土地にあるものを新しい郷土料理として提供してずっと残していけるかということを深く考え、仙台の地で『AL FIORE』をオープンされました。
イタリアのように伝統野菜の固定種の作り手が仙台にいない、ならば自分が作ろうと自然に負荷をかけない方法で始めた農園は、7年ほどたち漸く良い土になってきました。愛情をかければかけるほど応えてくれる野菜の姿が、目黒さん自身の生きる糧になったといいます。

「ケの日」の食の大切さ
そうして地産地消を突き詰めた結果、お客様はもともと食の大切さを意識されている県外の方ばかりに。レストランで食事をするという特別な「ハレの日」がある一方、普段の「ケの日」にスーパーで大量に並んだレトルト食品に手をのばす人を見たときに、今後子供の味覚のベースがおかしくなっていくのではと懸念します。「ケの日」の食の大切さをもっと親御さんに伝えたいが、レストランに来る人、提供できる量は限られている…
そう考えるうち、レストランという「箱」の存在にだんだん動きづらさを感じてしまいます。東日本大震災で炊き出しをしている際、どんな場所でも作れ、またお客様にあったものを提供するという料理人の真髄を強く実感されたこともあり、2015年にレストランを閉店。誰でも集える・地域に溶け込む場作りを目指します。

何故ワイナリーか
そんな場で何を作ろうかと考え、チーズかワイン作りで迷います。最終的にワイン作りを選んだ理由は、「投資額が一番高く、法的な障壁も多く、ぶどうが収穫できるまでの時間が一番長いから。」若いうちに始めるなら一番ハードルの高いものを、と考えます。
目黒さんは、実は殆どお酒が飲めません。アルコール、そして化学調味料が身体に合わないのが理由です。『Fattoria AL FIORE』のワインは酸化防止剤等を一切使用せず、ぶどう100%でつくられています。
今回のチラシデザインのもとにもなっている美しい風景が、ぶどうが育っている場所です。また廃校をリノベーションしたワイナリーは、元々建築デザインを生業とされていた奥様で現代表の坂口礼奈さんの設計です。今後更に畑が広がったり目黒さんのお家が建ったりと、ますます素敵な場所になっていくそうです。

単にワインを作って販売することではなく、ワインを通して様々な文化が混ざりあってできる背景を伝え、飲んで実感してもらうことで更なる広がりをみせることに豊かさを感じ、ワイナリーを立ち上げた目黒さん。ふと、TV番組出演後あまりにも大きな反響があり、四六時中手が離せなくなったレストラン時代のことを思い出します。
このまま自分が代表として運営し続けると、また同じように抜け出せなくなってしまうのでは…と思いはじめたタイミングで、礼奈さんが入社。のちに、ワイナリーを託します。
周りからは「全権限を他人に委ねてしまうなんて!折角築いてきたものを何もかも持って行かれてしまうのではないか」と危惧する声があがりましたが、たとえそうなったとしても今後ちゃんと循環していくのであればこれまでの投資は無駄にはならないし、自分はまた別のことをすれば良い、と考える目黒さんの中に、不安心はありませんでした。

カンバスと道具だけ
移住してくる人は殆どいなかった川崎町に、今ではバリスタやアーティストなど色々な志を持った方が集まり、沢山の面白い取り組みが生まれています。そんな中、今後の構想についての質問をよく受けるそうですが「先のデザインは何も見えていないし、それを自分がデザインすること自体がおこがましい」と言います。
「生物の多様性や循環の中では、自然とひとつの集まりが生まれ、また個より集合体の方が長続きするものです。それと同じように、意図的に人を集めて完全な場を作りこんでしまうのではなく、私がやるのはカンバスと道具を用意しておくことだけ。自然とそこに絵を描きたい人が集まってきて、その人を通してさらに面白い人がやってきて…というのが一番継続的なつながりであり、広がりだと思っています。」



目黒さんが撒いた種がどんどん目を出し、自然にお花畑が広がっていく様子が、目に浮かんでくるようでした。


――


後半は、目黒さんへの質問タイムです。
お話に聴き入った皆さんから、実際に『Fattoria』に行きたい、場を体感したいという声も。沢山の質問に、目黒さんがひとつひとつ丁寧に答えていきます。

・ワイン作りについて教えてください
ワインも料理も独学で始めました。向き合うのはレシピではなく、目の前にある素材です。野菜や酵母など、同じ生き物同士互いに感じ合うことが大事だと思っています。酸化防止剤無しでワイン作りをすると、移動させる際空気に触れ酸化リスクができたり、ワインの中の生き物によってネガティブな香りや味が出たりする可能性も確かに生まれますが、信頼できる農家さんが作った良い素材を用いて、あまり機械頼みにせず、自分たちの目の届く範囲でひとつひとつの工程で手をかけて管理していると、ちゃんと酵母の声がきこえてきます。だから教科書通りではなく、その時々のタイミングによって対応の仕方が変わってくるのです。子どもの体調について、育てている親にしかわからないことが沢山あるのと一緒ですね。
農場でのお手伝いも可能ですよ。特に9~10月は、沢山の人が集まってきてワイン作りをしています。

・今回のワイン『Everything is a gift』について
最初に出す2020年のワインです。『Everything is a gift』はFattoria AL FIOREのコンセプトとなっている言葉で、”全ての事柄に対して感謝”してこのワインができています。 フレッシュさを楽しむ瓶内二次発酵タイプのワインで、詰めて間もないため少し残っているぶどうの甘さを味わうことができます。どんなジャンルの料理にも合いますよ。またラベルの字は私が書きましたが、他のワインのラベルはデザインに拘りをもつ礼奈さんと、レストラン時代のお客様であるデザイナーの方とで一緒に作り上げていっています。猫がラベルのモチーフとなっているワインがあり、それは一緒に暮らしている7匹の猫のキャラクターと名前をそれぞれ合わせています。

・目黒さんにとっての豊かさとは何ですか
意識を共有している人たちと同じ見解を持ち、彼らのつくった食材で毎日の食卓を彩れることができる。幼いころ経験していたような生活を、せわしない今の時代でも仙台で体現できていることです。

・都市部で暮らす人ができることは
東日本大震災を経て、消費者と農家を繋げる活動をしたいと思い、ファーマーズマーケットなどを開催してきました。他にも、農園で食をテーマとしたイベントをしたり、地元の音楽アーティストとコラボレーションしてワインを飲むときにぴったりの音楽を提供したり、和紙の良さを伝えたり、また地域や関わる人なんど生産背景を伝えながら、ワインを国外12か国にも輸出していたり…。提供した場に関わる人たちの中で、自然と多くの繋がりが生まれています。都市部では色んなところからの情報が集まってきて、選択肢も沢山あると思うので、そこで場をつくり、繋がりが生まれていけばよいと思っています。また、コミュニティは田舎でしか築けないというものではなく、都市部だからこそできることも沢山あると思います。舞台が違うだけ。それぞれの思い描く形は変わってきますが、どこでも築いていけるものだと考えています。

・これからの時代に思うこと
時代はずっと変化していくようで、巡っていくものと思っています。生物が自然の循環の中で生きる一方、人間だけが欲を持ち便利だけど忙しい今の世の中になっていますが、世界各国で災害やウイルスが多発しているのは何らかの警告だと思い、今この活動をしています。皆さんの「ケの日」の食卓が本当の意味で豊かになり、周囲がハッピーで、その連鎖がまるで良い菌のように他地域に派生していくと良いなと思います。




穏やかに、丁寧にお話される目黒さんの生き方は決して安易なものではありませんが、本質的な豊かさがあふれていました。
「食」「ワイン」という枠をもこえ、日々の暮らしや繋がり、自然の循環について顧みるきっかけになったのではないでしょうか。

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