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2021/10/7

イベントレポート

自然との共生、サステイナブルな社会の実現について考える─社会貢献プラットフォーム 社会活動・地域活動についてのリレートーク 第3回 レポート

7月21日(水)
嘉納未來さん(ネスレ日本株式会社)と 坂野晶さん(一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン)をゲストにお招きし、「自然との共生、サステナブルな社会の実現について考える─社会貢献プラットフォーム 社会活動・地域活動についてのリレートーク 第3回」を開催しました。

リレートーク概要はこちら

はじめに、嘉納さんと坂野さんに自己紹介と活動紹介をいただきました。

ネスレ日本株式会社 嘉納未來さん

ネスレは日本にきて108年、神戸にきてからは約100年になる、兵庫県や神戸市に大変ゆかりのある会社です。
食の持つ力で皆様の生活の質を高めることを目指して、個人と家族、コミュニティ、地球の3分野にプラスの影響を与えるべく事業活動をおこなっていて、社会に対して高品質で安全な製品やサービスをお届けしています。

個人と家族のために
コーヒーについて私たちが注目しているのは、人と人をつなぐ力です。
ネスカフェアンバサダーというサービスにより、コーヒーを手軽に美味しく飲めるだけではなく、コミュニケーションが活性化されたという声がたくさん挙がっています。また、オフィスのみではなく、地域コミュニティの中でもネスカフェアンバサダーを利用いただいています。
介護予防カフェ-こうべ 元気!いきいき!!プロジェクト
神戸市と連携して、高齢者の元気を応援する「こうべ 元気!いきいき!!プロジェクト」を代表するのが「介護予防カフェ」です。コーヒー1杯を起点に高齢者が集まってお話し笑顔になる交流拠点の取り組みです。これまでに81か所の拠点が立ち上がり、それぞれの地域で運営されています。
桑名卓球珈琲(カフェ)プロジェクト
三重県桑名市との公民連携で、卓球とカフェで元気なまちをつくる取り組みです。身体を動かしながら、またコーヒーを楽しみながら語らうことを通じて、コミュニティが元気になっていきます。
両プロジェクトとも、憩いの場となるだけでなく、参加者同士が安否確認をするなど、地域でお互いに声をかけ支え合う仕組みづくりのきっかけになっています。

コミュニティのために
おいしいコーヒーをお客さまに届けるために、コーヒー農家の生活の向上をめざし苗木の提供やコーヒー農園のマネジメントをサポートしています。
日本では沖縄で初めて国産コーヒーの栽培を目指すために、2019年から「沖縄コーヒープロジェクト」を開始しました。サッカー元日本代表高原直泰さんが率いる沖縄SVと名護市、琉球大学と連携して大規模な国産コーヒー豆の栽培をしています。沖縄県内の耕作放棄地を活用することで、沖縄の第一次産業にも貢献したいと思っています。

地球のために
最後に、地球のための活動として「ネスカフェ エコ&システムパック」のご紹介をします。新しい詰め替えの形ということで2008年に発売され、その後プラスチックの使用量の削減やアルミ箔の使用量をゼロにしてきました。紙ベースの詰め替え容器を進化させてきたのは、プラスチックゴミ問題への貢献と、紙を含めた包材の使用量を無駄がないように設計してきた事例です。昨今ではリサイクル率や循環経済を確立していくことも重要で、リサイクルをさらに進めていくために、「ネスカフェ エコ&システムパック」のリサイクル率を上げるチャレンジをしています。
神戸において、個人と家族や、コミュニティ、そして地球のために、循環経済、リサイクルという取り組みでぜひご一緒したいと思っています。小さなことからでもテストしていけるよう、日々ディスカッションを重ねているところです。

   

田村:「ネスカフェ エコ&システムパック」の取り組みは随分前から実施されていると思いますが、他の自治体でも同様に実施されているのでしょうか。
嘉納:「ネスカフェ エコ&システムパック」の空きパッケージの回収などプラスチックごみ削減を啓発する取り組みは、実は神戸市が最初でした。好評だったので、現在は他府県のスーパーマーケットともコラボレーションしています。
永田:神戸市が発端となった取り組みが他府県に広まるのはとても良いなと思いました。KIITO:300で環境共育(教育)の点でコラボレーションできると嬉しいです。

一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン 坂野晶さん

地域、特に自治体と一緒にゴミを減らす取り組みをやってきました。最近は、サーキュラーエコノミー(循環型の経済)という言葉を聞かれる方も増えていると思います。まさにごみの問題、資源制約の問題、気候変動、いろんなものが重なりあう中で、なるべく資源を無駄にせず、私たちの社会にある物の価値を落とさずに使い続けていこうという考え方が広がっています。
経済の側面からみると、私たちは資源を取り、モノを作り、使い、捨ててゴミにしています。リサイクル技術が発達し元の素材と同じような状態に戻すこともできるようになってきたものの、大部分は劣化してしまうというのが現状です。寿命は延びゴミは減るかもしれませんが、リサイクルだけをすればよいというのではなく、私たちが資源やものの使い方、そのための仕組みについて改めて考えていく必要があります。サーキュラーエコノミーを説明する図のうち、目指すべきはリユースや修理をして長く使うというやり方を示す一番内側の輪で、地域の身近な範囲の中で資源循環の仕組みをつくっていくことが非常に大事になります。

ゼロ・ウェイスト
去年まで、徳島県の上勝町で資源循環に取り組んでいました。葉っぱビジネスで有名で、ゼロ・ウェイストを日本で初めて宣言した自治体でもあります。
オーストラリアのキャンベラ、アメリカのニューヨークでもゼロ・ウェイストが掲げられており、世界的に大事な政策方針とされています。上勝町はごみの45分別が話題になっていますが、ごみを無くすための仕組みづくりの視座を変えてきたことが大事なことだと思います。
日本のごみ分別は、燃やしていいものか、そうじゃないものかを判断するものになっています。その前提を変えて「これ、まだ使えるかな?」「リサイクルできるかな?」という視点で考え、ごみや資源を見直す発想転換をすることで、仕組みを作り直すきっかけができるかもしれません。
ごみを持ち込んでもらう仕組みに変えることで、役所、学校、病院、公民館など他のどんな施設よりもごみステーションに人が集まり、地域コミュニティの拠点となりました。単にごみを持ち込むだけの場所ではない、人と会うチャンスをつくる場所としての価値が広がっています。
ゼロ・ウェイストを最初に提唱したのはイギリスの経済学者です。焼却炉を建てる大型の投資をするよりも、地域の中で自分たちの市民の力で取り組んでいけることの方がよほど経済的にも合理性があるということを提唱し、2000年頃に政策を掲げたのが始まりです。

「ごみ」ってなに?
「ごみ」と判断しているのは私たち一人ひとりの主観です。技術を持った人に渡せば、リサイクルできるものもあります。出たものをどうするのかではなく、そもそも「ごみにしない」仕組みをつくる責任があります。自分たちがやっていることに意識的であること、意識的であれる範囲を少しずつ拡張していくことを地域の小さな単位から始めることが大事なのかもしれません。

   

田村:神戸と同程度の規模で、積極的に活動されている地域はありますか。
坂野:日本国内ではなかなか難しいですが、海外だと逆に大都市の方が頑張っています。ゼロ・ウェイストのメッカになっているのがサンフランシスコですし、ニューヨークは大きなインフラを入れることを第一にやっているというわけではなく、例えばストリートごとにあるファーマーズマーケットを活用して資源回収やシェアの仕組みをつくるなど、細分化して都市デザインをしています。自治体など大きな単位で、規模が大きいからこそ考えられること、また一方でコミュニティと呼ばれ得る単位にスケールダウンしてデザインできること、両方あると考えています。
田村:小さなコミュニティでデザインしたことが積み上げていったときのインパクトは大きいと思います。神戸は地理的に奥行きがあるので、うまくサーキュラーエコノミーをデザインできる気がしています。

トークセッション

田村: ネスレさんは世界の食品メーカーですが、グローバルの中で議論されている問題意識と日本国内で議論される問題との間で、ギャップを感じることはありますか。
嘉納:これまで、世界で考えられている重要課題と日本社会の課題との間にギャップがあると思っていましたが、最近は狭まってきたと思います。ネスレは2025年までに、すべてのパッケージをリサイクル・リユース可能にすると約束しました。ただそれを解決する方法はそれぞれの地域によって異なるため、ロードマップは現場に合わせてローカライズしています。
田村:グローバル企業と、ゼロ・ウェイストの小さなサークルは対極にあるようにみえますが、地域のプレイヤーとグローバル企業の接点をどのように繋げば目標に近づくか、ヒントをいただきたいです。
坂野:グローバライゼーションの中でこそローカライゼーションが大事なので、対立構造で捉えないようにしています。グローバル課題解決を実践する場は結局ローカルなので、しっかりローカルの課題に寄り添って、どういう仕組み転換ができるのかを現場で考え、それをグローバルスケールに戻していくのが一番近道ではないかと考えています。
永田:上勝町は素晴らしい成果がでていますが、宣言することと、それが浸透して成果が出るまでの間には色々あると思います。どのようにして町民の皆さんを巻き込んでいったのか、ポイントを教えてください。
坂野:プロジェクトを実施すると、テーマに共感していただける方が約2割、賛同いただけない方が1割、残りの7割程度は無関心層ですが、同じ結果の行動が生まれるのであれば、モチベーションは人それぞれで良いという考え方です。対象や、自分ごと化できる範囲も地域により様々な傾向があるので、それに合ったものを探し、仕掛けを作ることが大事だと思っています。
永田:KIITO:300におけるSDGsの取り組みとして、フラワーロード周辺エリアを舞台としたアクションプランを検討中で、現在ゼミ形式で大学生、社会人にアイデアを出してもらっているので、何か取り組みが生まれるといいなと思っています。
嘉納:私たち一社だけでは神戸の問題や日本の問題を解決することは難しいので、様々な方と一緒に、神戸特有の問題に取り組んでいけるのであれば夢がふくらみます。
坂野:地域で収集した情報をぜひ活かしていただきたいです。人の動線が可視化されると、どの場所にどんな機能が必要か、クリアになってくると思います。
永田:是非連携できればと思っていますので宜しくお願いします。
では、ここからは本日視聴参加いただいている皆さんからの質問をみていきましょう。

【質疑応答】

そもそも過剰に物、製品を作りすぎる社会の仕組みに違和感を覚えています。製品を作らない、作る物を減らすということについてご意見をお伺いしたいです。

嘉納:つくりすぎて捨ててしまうことが極力ないように、できる限り気候や社会情勢から需要を正確に予測して製造企画を行うよう、苦心しながら企業努力をしています。また環境負荷を考え、パッケージが目的以上の過剰なものになっていないかを見直しています。
田村:上勝や雲南、小布施は「自然との共生」というテーマ以外でも有名で、地域の様子もオープンにしているし、外部のアイデアもしっかり受け入れていて、トップダウンだけでなくボトムアップもしている町だなと思いました。いろんな担い手の歯車が噛み合えるような仕組みがある、プラットフォームが整っているところで色々な取り組みが進んでいく気がしています。
坂野:先程、地域にどう浸透させていけばいいかという永田さんの質問に、「自分ごと化できる範囲を増やす」と答えましたが、そもそも自分事化できる範囲が広い方々が多いという地域性はあると思います。まさに、しっかりしたプラットフォームがあることで取り組みが進んでいっていると思います。
田村:ローカルなコミュニティがしっかりしているが、外部へのネットワークも開かれている、そのバランスが大事だと感じました。
嘉納:目指すゴールはグローバル共通でも、課題解決のやり方や関係者は地域によって異なります。ネスレでは「自分たちのお客様は誰なのか、誰のために仕事をしているか」ということから、一人一人が自分事化して考えるマインドセットを進めています。身近な課題は世界に通ずる縮図になり得るので、最終的に社会課題を解決することにつながっていきます。
田村:グローバルはローカルの積み重ねでしかないと思います。神戸は最近、外への開き方が弱くなってきた気がしています。150年前の開港時とはまた異なり、まさに「自然との共生」に軸をおいた新しいグローバルとローカルの接点を、神戸だからこそ見出したいと思いました。いま一度、グローバルとは、ローカルとはそれぞれ何であるのか、また今私たちが直面している課題の解決策をどのように出していくかについて、あらためて考える必要があると思っています。

神戸市では上勝町のごみステーションにあたるような場所を「クリーンステーション」と言っていますが、その場所が地域コミュニティの場になっていません。ゼロ・ウェイストを自治体と地域で官民協働の話し合う場が起爆点になると思います。その意味から市内にモデル地区を設け実践することが必要では?

永田: 今後、ネスレさんや坂野さんにご協力いただいて、コミュニティに対してもう少しアプローチしていくような活動を、KIITO:300のスペースも活用しながら共に場づくりを行ったり、学校教育の中に入ったりしていくようなきっかけができればと考えています。
田村:グローバルな視点とローカルな視点を対比させながら大変深い議論が出来たように思います。3回のリレートークを通して、これから地域で必要な活動や、社会課題の解決にむけたアプローチのヒントをたくさんお伺いすることができました。何かアクションを起こす際に困りごとがあれば、ぜひKIITO:300にお越しください。最初の一歩を踏み出す後押しをします。

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課題を自分事化し、周りと協力し合って進めていく仕組み作りの重要さを感じる内容でした。様々な担い手が集うグローバルとローカルを繋ぐプラットフォームとして、KIITO:300が目指していく姿が見えてくるようなお話でした。

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第1回『「共生」の場と機会を作ること、支援すること』イベントページはこちら
第2回『人と現場をつなぐ「マッチング」と、地域の新たな「社会的資源」の可能性を考える』イベントページはこちら