2021/12/4 Sat - 2022/1/17 Mon
EXHIBITION
わたしは思い出す、涙は意外と出なかったことを。
わたしは思い出す、14時7分を。
わたしは思い出す、赤い靴を。
わたしは思い出す、福田パンの焼きそばパンを。
わたしは思い出す、字を書きはじめたことを。少し寂しかった。
わたしは思い出す、2人で影送りをしたことを。
わたしは思い出す、忘れてしまうということを。
わたしは思い出す、音楽教室をはじめてズル休みしたことを。
―
仙台から、神戸へ——。
仙台市の沿岸部に暮らしていたかおりさん(仮名)は、
初めての出産を経験した2010年から育児日記をつけ始めました。
本巡回展は、その再読をとおして彼女が思い出した
“晴れたり曇ったり”な日々を紹介するものです。
かおりさんは、毎月11日の娘の月誕生日に何を綴り、
それらを再読して何を思い出したのか。
誰にも語られるはずのなかった
およそ20万字の言葉たちに触れるその時。
彼女と異なるあなたの時間が、彼女と同じように流れていたことを
あなたは思い出します。
展覧会概要:本巡回展は、2021年2月から実施された企画展『わたしは思い出す 10年間の子育てからさぐる震災のかたち』(主催:せんだい3.11メモリアル交流館、企画:AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ])の展示内容に、新たな要素を加えて構成されたものです。仙台での企画展を実施するにあたり、東北地方太平洋沖地震の前後に出産を経験した方を対象に、これまでの10年間を振り返るワークショップを実施しました。その参加者の1人がかおりさんでした。かおりさんは、第一子を出産した2010年6月11日から育児日記を綴り始めます。そしてその9ヵ月後、沿岸部の自宅にてあの地震に遭います。彼女はそのあとも日記を書き続けました。仙台での企画展では、育児日記の再読をとおして生まれたかおりさんの語りを企画者(AHA!)が文字に起こし、展示しました。ひとりの女性の育児の記録と記憶をとおして、あの地震からの10年を振り返る。そんな試みの成果を新しい要素も加えて神戸の地にて発表いたします。
*本巡回展は、KIITOアーティストサポートプログラムの一環として開催します。
▼特設サイト
https://aha.ne.jp/iremember/
関連イベント
<トーク|わたしは思い出す>
12月5日(日) 15:00-16:30 話題提供:飯川晃(公益財団法人仙台市市民文化事業団)、松本篤(remoメンバー、AHA!世話人)
※本イベントは終了いたしました。
12月11日(土) 15:00-16:30 話題提供:清水チナツ(インディペンデント・キュレーター、PUMPQUAKESメンバー)
※本イベントは終了いたしました。
12月19日(日) 15:00-16:30 話題提供:高森順子(愛知淑徳大学助教、阪神大震災を記録しつづける会事務局長)
※本イベントは終了いたしました。
<読書会|わたしは思い出す>
1月15日(土) 15:00-16:30 進行:松本篤(remoメンバー、AHA!世話人)
お申込み、詳細はこちら
<アンケート|わたしは思い出す>
かおりさんの記録と記憶をとおして来場者自身が思い出したエピソードを、会場内で集めます。集まったエピソードは、主催者のウェブサイトやSNSにて紹介することがあります。
<無料観覧日の実施について>
阪神・淡路大震災の発災から27年を迎える2022年1月17日(月)は、展覧会の観覧料が無料となります。
この機会にぜひご来場ください。
AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]
8ミリフィルム、家族アルバム、戦時中の慰問文など、《私》の記録と記憶に着目したアーカイブの活動。remo[NPO法人記録と表現とメディアのための組織]を母体に、2005年に大阪にて始動する。ウェブサイト、書籍、展覧会など、さまざまなメディアの制作を企画・運営している。これまでの主なプロジェクトに、記録集『はな子のいる風景 イメージを(ひっ)くりかえす』(武蔵野市立吉祥寺美術館、2017)、ウェブサイト『世田谷クロニクル1936-83』(生活工房、2019)などがある。仙台での企画展、及び、本巡回展の企画者。
『わたしは思い出す』展レポート
かおりさんの育児日記が問うもの─『わたしは思い出す』展ができるまで