お知らせ・レポート

2015年5月26日(火)


第3回目となる今回は、一般社団法人Think the Earthの上田壮一氏にお越しいただき、レクチャーをしていただきました。

Think the Earthはその名の通り、「地球的視野で考え行動する人」を育てることを目的とした団体です。
今回、我々が問題点としてあげた地球温暖化問題を含む、様々な環境や社会問題への無関心とあきらめの心こそ最大の課題ととらえ、書籍やウェブサイトなどで情報発信を行っているほか、企業、NPO、クリエイターとともにどんな方でも参加のできるプロジェクトを開発、提供し、環境問題、社会問題を自分事として捉え、考えてもらうことを目標に活動をされています。


まず、プロモーションを行うという視点から、無関心の状態をどのように関心に傾けるかという話がありました。
人間が行動するに当たっては、「理性(あたま)」「感性(こころ)」「感覚(からだ)」の3つの起点があり、頭でばかり考えさせようとするのではなく心に働きかけたり、身体を直接使って取り組んでみることで、より良い理解、興味を誘うことが出来ることを
「心が動けば体と頭が動く。」
「体が動けば頭と心が動く。」
という2つの言葉を用いてお教えいただきました。

次にこれまで上田さんが行なってこられたプロジェクトや環境問題に対するプロモーションの事例を紹介いただきました。
また、「緩和策」と「適応策」の2通りの活動の方法があることを紹介いただきました。
※「緩和策」・・・ex.二酸化炭素の削減、資源有効活用
 「適応策」・・・ex.氾濫する河川に対して流域に即した都市の形成

合わせて、「サスティナブル(持続可能)」を実現するための状態を表す表現として「レジリエンス」という言葉を紹介いただきました。レジリエンスは"しなやかな強さ"を意味しており、例えば、津波での被害が起きたことに対して「巨大な堤防を築く」のではなく「住む場所を改め、街を環境に適応した形で再建する」というふうに創造的に回復、適応していく能力を表す言葉です。
環境問題を緩和、または適応していく上で持続を可能にするためには柔軟な判断と創造力が必要であることを解説いただきました。

お話の中で2000年代に「ベロタクシー」が東京を走った事例の紹介がありました。
ベロタクシーは人力で走る自転車タクシーです。燃料がいらない代わりに街にはガソリンスタンドを模した「水スタンド」が設置され、運転手が水分補給をしたそうです。
ガソリンを使わない社会を想起させるこのプロモーションについて、「見れないはずの未来を街に登場させ、純粋に『街がこうなっていったら素晴らしいよね』と、イメージさせる力があった。デザインには少し先の未来でも現代に登場させ、体験させることが出来る。」と当時の街の反応も含めて紹介いただきました。

最後に、「ほんの30~40年前は美しい星空が見えていたが、今は殆ど見えなくなってきている。エネルギーの消費についてのことが今一度見直され、いつかまたかつて見た星空を見れるようになることを望んでいる。」とお話いただき、自分を取り巻くの狭義な生活のことばかりでなく、意識を「地球規模」に広げ、身の回りの環境を今一度見直すことの大切さを学び、上田氏のレクチャーは終了しました。


レクチャー後には質疑応答を行いました。
「環境問題に対して自分事として捉えてもらうにはどのようなアプローチが望ましいか。」
という質問に対して、
「一番わかり易いのは"お金"。例えば、ガソリンが増税するとなれば化石燃料や再生可能エネルギーへの関心が高まる傾向がある。自分事と捉えるきっかけとして生活と深く関わるものにアプローチをかけると受け手も理解を深めやすい。」と回答されました。
別のゼミ生からは、
「経済活動と自然を守るための活動は二律背反であり、やるせない気持ちになるのですが。。」
という声があり、
「やるせないのは仕方がない。しかしネガティブになってはいけない。とはいえ、楽観的であってもならない。"悲観的でありながらもポジティブ"に受け止め、取り組むべき。」
と回答がありました。

永田さんからは今回のレクチャーを受けて、「『"対策"を促す』よりも、『活動した"結果"が実は"対策"になっていた』という方が目指すプロモーションとしてふさわしいのではないか。また、世代を絞ったターゲット設定を行うことも重要。」とのコメントがありました。

第4回目の次回は、中間発表に向けたグループミーティングです。

+クリエイティブゼミ vol.15 環境編 「地球温暖化対策プロモーション大作戦!!」
開催概要はこちら

デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2015年6月に開催する催事についてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)

2015年5月19日(火)


ゼミ第2回目となる今回は、前半に前回のおさらいとしてゼミへの取り組み方の心構え、+クリエイティブの考え方について簡単に説明をし、その後にKIITOスタッフが事前に行ったリサーチを発表しました。

リサーチは地球温暖化だけに絞らず、「環境問題」という大枠に対してクリエイティブな考え方や手法を用いることで問題解決や啓発を行なっている活動をターゲットにしました。
リサーチ結果を

活動(設備強化、企業活動、ワークショップ)
広告(ポスター、チラシ、CM)
情報可視化(図解、インフォグラフィックス)

の3つに分類し、アウトプットの状態を意識した発表を行いました。

紹介した事例(抜粋)
Voice Your Choice  環境保護団体の活動支援
PANDA BLACK  お気に入りだった服を、黒く染めて着直すキャンペーン
re-muji  リサイクルされた無印良品の服を藍染めして再販
カホンプロジェクト  間伐材を活用したワークショップ
GARBAGE BAG ART WORK  ゴミ捨て場をアートするゴミ袋
greenbird  「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに街のゴミ拾いをする
ゼロウェイスト  ゴミをゼロにする活動
モノ:ファクトリー  リサイクル率95%の産業廃棄物処理業者ナカダイ。廃棄物を素材として使ったワークショップ
1more Baby  子どもを産める社会実現のための、結婚・妊娠・出産・子育て支援
GREEN IS GOOD  ウェアリサイクル
green drinks  エコな飲み会、ネットワークの創出、ワークショップ実施
アスファルトで作る地球温暖化メニュー  地球温暖化に警鐘を鳴らし、温暖化に対する危機感を啓発
グリーンニュースペーパー  楽しく緑の大切さを学ぶ新聞。植えると芽が出る「シードペーパー」で出来ている
食料の未来を確かなものにするために  食料の未来を描く戦略会議のメッセージの映像資料
REUSE! JAPAN PROJECT  リユース情報サイト



後半は宿題として出していた、環境問題に対してのプロモーション事例や活動事例、ワークショップ事例などのリサーチを班内で発表していただきました。




終了間際には全体に向けて各班から全体に向けてよかった案、目指したい案を発表いただきました。
最後に、次々回に向けて各自リサーチを進めるために、向かう方向性(環境局からの情報を整理する、ワークショップを企画するなど)を大枠を話し合ってもらい、ゼミは終了しました。






下記、各班のミーティング内容
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A班議事録(抜粋)

【リサーチ】
■世界のごみ焼却場の約7割が日本にあり、家庭ごみ焼却によるCO2が原因ではないかという視点からリサーチ
年間ひとりあたりのごみ焼却時のCO2量+ごみ収集車の排出するCO2量+ごみとなったものの製造時に出るCO2量=186.6kgという試算あり
ごみ削減の先行事例として、『ゼロ・ウェイスト政策』の徳島県上勝町の試みや、量り売りの上勝百貨店
・祭や行事など楽しい場でリユース食器を体験することから始めてみる
 →先行事例:2014年から採用している京都祇園祭、無償でリユース食器を貸し出す試みをしている新潟市、高校や大学での学園祭でのリユース食器利用を呼びかけているNPO、実施している学校など紹介(神戸市の学校はいまのところ未利用)。
・神戸市の人口分布で最も多い、団塊の世代と、団塊の世界ジュニアをプロモーションのメインターゲットにし、その世代の特徴といわれるこだわりや個性を重視してみる?
→ごみを減らす活動ではあるけれど、おしゃれで楽しく、個性的であったり、気持ちよかったりすることをそれぞれが自主的に体感し、自発的に暮らしの中に定着させていけるものを提案できればいいのでは

■食ゼミでコープの人から聞いたジレンマ
→野菜に傷がつくので包装をしなければならない(手間もかかるしごみも出る)

■若者の関心が集まりにくい。ネット検索、文字ばっかり。画像も教育っぽい。若者の関心が集まらないと嘆いている割には、若者向けではない情報ばっかり。「地球温暖化対策」を調べて見ると文字小さく気分がなえる。
・エコに貢献できること:スタバの容器持参はかっこいい。おしゃれで安くなる若者も親しめる
・食品トレイの会社「エフピコ」(広島)は全国に拠点があり、リサイクルに貢献している。エコマーク認定を受けている

■木を切ると環境に悪いって言うけれど、昔は切って薪として利用していた。切ったほう新陳代謝ができ、切らなくなったから、森林が何百年も体験したことがないような状況が生まれている。切って、若い木を増やした方CO2の吸収が良い。燃やす前に材料とし利用してから燃やすとより良い

■地球温暖化がホントなのかどうかは気にしないという方向
・「疑問」を持たれやすい課題を、どう前向きにとらえて「動いて」もらえるかをプロモーションできる試みとする

■「説得力≒インパクト」、再生可能エネルギーの切り口
・ガソリン:電気・水素で膨大な量の削減見込みあり。しかし、どの代替技術が標準になって省コスト化されるかはわからないため、今回のプロモーションに使うのは難しい
・プロモーション自体でエコを表現、他のプロモーションと違う何かを表現する
・ITは時間・距離を消滅させて情報を届けることが可能。受け取ってもらえるきっかけさえあれば、エコ。
・受け取ってもらえた、反応してもらえた事から、エコが数値的に計測。(神戸市役所から受け取った人までの距離を輸送費などに勘案とか?)
→数値の積み上げを人と人のつながりを利用してリレーしていくという拡がりが可視化が感動を生み、思いもよらない広がりがあるかもしれない(アイスバケツチャレンジで少し賛否分かれますが)

■エコって何?
・再生可能エネルギーに置き換える。エコといいきれない。全体でエコを選ぶのか?
・一年間でやるプロモーション:ピンポイントでこれだ!と注目してもらう、体験した人には深く刺さるもの。
・みんなに言いたくなるようなこと。
・写真にとって言いたい。
・エコのきっかけ。

ガーディアン紙の気候変動キャンペーントップ10の中から、3位のiChange competitionを紹介
・「私が変える」を短い映像にしてYoutubeに投稿してもらうキャンペーン。
・市民が参加しながら、幅広い試みを紹介。
・コストを抑えて、若い人も巻き込める。

【意見交換】
・地球温暖化のプロモーションをする際に、よくも悪くもいろんなイメージのついている「エコ(eco)」ということばは逆に使わないのも面白いのではないか。
・“もったいない”とか、“節約”ではなく、楽しいとかかっこいい、おしゃれなこととして、暮らしの中に入っていくようなことを提案できれば
・同時に、“啓蒙・啓発”といった、ある意味“上から目線”であったり、教えるタイプの提案は、おそらく受け手はもうお腹いっぱいになっていて、届かないのでは
・種となるものを提案し、それをどうしていくかいっしょに考える
・体験したり行動して体感して考えていきましょう、みたいなもののほうがいいのかも

【アウトプットの方向性について】
■「おしゃれ、かっこいい」をキーワードに

■ITを使ったキャンペーン
・「やったよ」を投稿して紹介する
・やりっぱなしで終わらない
・試みを紹介し合うしかけ
・環境局の知識の可視化(審査)データ

■環境局がこれまでやってきたこと(キャンペーンなど)の効果を紹介
 例)エコバッグ何個作ったの?レジ袋どれだけ削減できたの?などの情報の可視化

■イベント
・ネットで見ていて面白いイベントのしかけ
「美人ゲート」「そうじゃないゲート」の例

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B班議事録(抜粋)

【リサーチ】
・電力会社と自治体による家庭の無料省エネ診断
(省エネ専門家よるアドバイスを提供)
・鷹の爪団とのコラボによる広報活動:資源エネルギー庁×鷹の爪「みんなで支える再生可能エネルギー」
京都市の環境広報施設(京エコロジーセンター)
・エコ生活の体験紹介による"じぶんごと"に感じられる情報発信
・打ち水イベントによる冷房使用削減
電化製品などを修理する地域コミュニティイベント(Repair cafe)

【アウトプットの方向性について】
・省エネ専門家による診断は効果金額が具体的に分かるためモチベーションが上がる
・電力に関する話題を伝えていきたい
(データは神戸市の資料から引用できそう)
・情報可視化や広告の方向性で検討したい
・20〜30代の働いている人を中心に伝えたい
・お金や労力などの身近な情報に置き換えたほうが伝わりそう

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C班議事録(抜粋)

【リサーチ】
■ロハスフェスタ
・テーマは、おしゃれにかわいくエコを実践
・マイ箸・食器の利用を促進するシステム
・手作り雑貨や地産地消食材を使用したフードの販売

■省エネ型ビジネススタイル実践中
・ステッカーの掲出
・大田区地球温暖化対策地域協議会にて実施
・事業所や店舗等に募集
・実践中の省エネ対策をステッカーにして掲出しPR

■子ども向けワークショップ
・地球や北極のシロクマなどに向けた手紙を書いてもらう
・小学生の地球温暖化問題に関する理解を深める

■そば殻枕づくり
・エコハウスやまなしで実施
・そば殻まくら作り体験を通して地産地消やリユーズの理解を深める

■港北あかりプロジェクト
・横浜市港北区にて実施
・街をあげてLED利用を促進

■緑のカーテン
・窓辺でつる性植物を育て、直射日光をさえぎる「緑のカーテン」
・夏場のエアコン使用の抑制

■坪田愛華さんの地球の秘密
・12歳の若さでこの世を去った少女,坪田愛華の作による地球環境漫画
・6年生の国語の授業で環境問題調査の一環として作成
・全11ヶ国語に翻訳されて世界各国へ贈られている

【意見交換】
・親子をターゲットにした対策は多くみられる。単身世帯をターゲットにしても良いのでは
・普段の習慣の中で自然と考えることのできる仕組み作りが有効ではないか

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D班議事録(抜粋)

【意見交換】
・広告や呼びかけ、これだけやっても効果がない
 →みんな何をすればいいのかわからないのではないか
 →ある種しつけ、しくみのようなものをつくらないといけないのかも
・◯◯に取り組めば地域通貨になる、モノ(植物や古着など)と交換できるといったインセンティブが必要?
・予算をとってきて活動しても、予算が尽きれば関わる人がいなくなるようではだめ
 →長期的に取り組めるものを考える
・生活に密着した対策を考える必要アリ
 (ex.神戸電鉄 運賃高くて結局車の方が安いという判断になり、環境に負荷がかかることをしてしまう。)
・予算をまんべんなくばらまくよりも、効果が出ると期待できる部分に集中的に投資?
・しつけであってもしつけと気づかないうちに生活に密着していることが求められる
 (ex.お金を払うの嫌だからエコバッグを持っていく。環境対策だけどみんなが自然とやっている。)
・興味がない人にも伝わるしくみづくり

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第3回目の次回は、一般社団法人Think the Earthの上田壮一氏によるレクチャーです。

+クリエイティブゼミ vol.15 環境編 「地球温暖化対策プロモーション大作戦!!」
開催概要はこちら



KIITOが年4回発行する情報誌「KIITO NEWSLETTER」のVol.9英語版を制作しました。
PDF版は下記リンクからご覧いただけます。

The English version of KIITO NEWSLETTER Vol. 9 has been released!
Please check the following link to download the PDF file for the latest release.


KIITO NEWSLETTER
バックナンバーを含めたPDF版はこちら
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デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2015年6月に開催する催事についてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)

2015年5月15日(金)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第6回に開催した、「醤油についてのお話と手作り醤油ワークショップ」で、参加者がつくった醤油づくりの経過報告です。
参加者に醤油の現在の写真を送ってもらいました。

ガラス瓶に食塩水、麹を入れてつくったものを、毎日かき混ぜ、約1ヵ月が経過しました。
日が経つにつれ、色がだんだんと濃くなってきて、臭いも少しずつ醤油らしく変化しています。醤油ができあがるまでには、まだ約11ヶ月かかります。また、ふた夏をこすとさらにおいしい醤油ができるそうです。まだまだ完成までには時間がかかりますが、完成の報告ができればと思います。

参加者の醤油経過写真
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+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/

2015年3月14(土)-15(日)



劇団「ままごと」主宰の柴 幸男さん、建築ユニット「NO ARCHITECTS」さんを講師に迎え、各線三宮駅からKIITOに向かう道のりである「フラワーロード」をまち歩きし、地図と小説を作るワークショップを行いました。

 

1日目:3月14日(土)13:00-18:00


まずはウォーミングアップの遊び。ワークショップの拠点となる部屋「303」の室内のみで、「気になるもの/こと」を見つける遊びです。いくつかのポイントが見つかったら、一つを選び、それを自分自身に関連付けて自己紹介をしました。自分にはこんな性格や性質があり、見つけたポイントと似通っているところがある…、あるいは、自分は仕事をする時にこんなことに気をつけているから、このポイントが気になってしまった…など、様々な自己紹介が飛び出します。不思議と、年齢や所属などの情報を紹介し合うよりも、強く印象に残ります。

 


さきほど室内のみで練習した「気になるもの/こと」を、今度はまちをフィールドに行っていきます。3つのチームに分かれ、NO ARCHITECTS さん特製の白地図を手にさっそく出発!KIITOを出てフラワーロードを歩きながら、その都度地図に書き込んでいきます。

 


途中、神戸市役所の展望ロビーに上り、柴さんと合流。歩いてきた道のりを上から眺めつつ、見つけたポイントを報告します。通常地図に書き込まれるのは、建物や道路など「動かない」ものですが、今回はそれらに限らず、その時その場で遭遇したものであれば、後々消えてしまうものでもOK!

 


2時間のまち歩き時間はあっという間に過ぎ、KIITOに戻ってきました。ここからは、またまたNO ARCHITECTSさん特製の、とても大きな白地図が登場。その長さ、なんと7.2メートル!この長い地図上に、見つけたポイントをすべて載せていきます。
オリジナルの地図が完成!同じ場所を歩いていても、気になるポイントは一人ひとり違うのですね。これまで意識していなかった場所に、こんなにもまちの見どころがあったなんて…。

 

2日目:3月15日(日)13:00-18:00


この日もウォーミングアップから始めます。今度は「303」の室内だけでなく、部屋を出た廊下や共用スペースの部分も対象として「気になるもの/こと」を見つけ、昨日とは違うやり方で紹介してみます。
自身を、ポイントを紹介する「案内人」と設定し、ポイントを「人物」に見立てます。その時考えるべき要素は、ポイント(人物)の「名前」、案内人とそのポイント(人物)の「関係性」、性別や性格、どんな歴史を持っているかといった「キャラクター性」。これらの要素をどのように設定するかによって、紹介の仕方はまったく異なるものになります。
ここで取り組んだのは、対象を「観察」し、「設定」を考え、読み手にどのような順番で何を伝えるかという「構成」を考える、ということ。これは、柴さんが演劇の戯曲を考える時の手順と同じだといいます。

 


さてここで、昨日みんなで作った地図に戻ります。地図上に載せたポイントのうち一つを選び、それを主人公に設定して、いよいよ小説を書き始めます。参加者みなさんが主人公に設定したのは、ごみ箱、池に落ちていたたばこ、写真店のアルバイトスタッフ、ノラネコ、彫刻、貼り紙…などなど。丸い形をしたオリジナルの原稿用紙を使い、これまでのワークショップで学んだことを総動員して、それぞれのペースで書き進めていきます。
200字程度書き進めていくごとに、柴さんに読んでもらってアドバイスを受けます。主人公が誰なのか、場所はどこで、時間帯はいつぐらいなのか(朝、昼、夜?)など、小説の基本設定を読み手に分かりやすく伝えるのは、予想以上に難しいことが分かります。これらをしっかり書くためには、まち歩きの時に行った観察が生きてきますね。

 


今回は小説を完結させることよりも、何を主人公に設定したのか、そこにどんなキャラクターを加えたのかといった、物語をつくる視点を持つこと、またそれらを共有することが第一の目的です。ある程度書きすすめた時点で、地図上で主人公がマッピングされている位置に原稿を配置して、参加者同士で小説を読み合いました。
本ワークショップを通じて、まちをこれまでとは違った視点で観察すること、観察を生かして物語を生み出すプロセスを具体的に体験いただけました。
本ワークショップは、柴さんとNO ARCHITECTS さんの制作プロセスの一部でもあります。今回のワークショップ成果を生かして、柴さんによる新作戯曲とNO ARCHITECTS さんによるオリジナルの地図が生み出され、リーフレットの形で配布予定です。リーフレットを片手に歩けば、各線三宮駅からKIITOへの道のりが、これまでとまったく違ったものになるかもしれません。
完成次第ウェブサイトでもお知らせいたしますので、楽しみにお待ちくださいね。

KIITOアーティスト・イン・レジデンス 柴 幸男+ NO ARCHITECTS
ワークショップ「まち歩きでつくる小説と地図」
開催概要はこちら

2015年5月9日(土)

各界で活躍するトップランナーをお招きする「+クリエイティブレクチャー」、2015年度の第一弾として、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムの館長、マーク・ツェーントナーさんをお迎えしてレクチャーを開催しました。

ヴィトラ・デザイン・ミュージアム
スイス、フランス、ドイツ国境の交点に近いヴァイル・アム・ライン(ドイツ)にある、スイスの家具会社・ヴィトラ社の工場敷地内に設立されたデザイン・ミュージアムです。1989年に開館し、家具、照明器具、プロダクトなど優れたデザイナーの作品を収蔵し、企画展を開催しています。工場敷地内には、フランク・ゲーリーをはじめ安藤忠雄、SANAA、ザハ・ハディド、ヘルツォーク&ド・ムーロンなどによる建築作品が顔を揃えており、デザインや建築を学ぶ人々が世界中から集まる「聖地」としても有名です。
http://www.design-museum.de

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デザイン・ミュージアムの歴史
デザイン(design)という言葉が一般的になる以前、応用美術(applied art)や工芸(craft)と呼ばれていた20世紀初頭までの第1期、デザインの黎明期ともいえる1968年を中心とした第2期、ロンドン・デザイン・ミュージアムとヴィトラ・デザイン・ミュージアムが設立された1989年以降の第3期に分けてデザイン・ミュージアムの歴史を概説いただきました。

ヴィトラ・デザイン・ミュージアムの使命と活動
デザイン・ミュージアムとして多層的な活動が行われるようになる第3期の代表、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムについて詳しくお話いただきました。
個人コレクションからはじまるデザイン・ミュージアムの設立経緯(歴史)とコレクション(椅子、照明、プロダクト)の紹介、アーカイブとリサーチ、主な今までの企画展をスライドで紹介。今後の活動のキーワード(グローバリゼーション、デジタル技術革新、継続性、先端技術による表現)についても解説いただきました。
また、今後に開催される企画展(Thinking Things展、Alexander Girard展)や、2015年末に開館予定のヴィトラ社オフィスに近接した新館(家具を中心としたコレクションの展示会場となる予定)の計画も紹介いただきました。

ここで印象に残ったのは、「オープン・デザイン(Open Design)」という考え方でした。多様な意見を採り入れること、国際的な協働を促進することで、企画の質を高めるだけでなく、可能性をも拡げ、また、交流を生み出す作用があります。
このオープン・デザインという考え方は、KIITOの事業目的やプロジェクトを進める手法にも通じるところがありました。

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デザイン・ミュージアムのこれから
最後に、「デザイン・ミュージアムのこれから」を総括して解説いただきました。

未来のデザイン・ミュージアムは…
…グローバルに考え、活動すること
…参加できること、参加することで考えを深められること
…建築、デザイン、ファッション、写真など学際的に研究し、考えること
…書籍、トークやワークショップなど、展示だけでなく何かを生み出すこと、オープンにして考えを共有すること
…身体的でありつつ、デジタル(webなど)で共有すること
…内と外の境界に疑問を投げかけること、スタッフと来館者の交流を生み出すこと
…トレンドを見据えつつ、現実に沿った企画を行うこと
…社会変革と発展のために、デザインを促進すること
…起業家精神を持ち、ファンドレイジングを行うこと、資金調達で企画の自由度を高めること
…デザイン・センターや商業主義とは一線を引き、コレクションを持つこと
…新しい傾向に積極的に取り組むこと

デザイン・ミュージアムの軌跡(これまで)と、今後の展望(これから)のお話しを通して、デザインやアート、文化活動分野に関わる人々と施設(デザイン・センターやデザイン・ミュージアム)双方が、どのように発展できるかを考えるきっかけとなったのではないでしょうか。

なお、本レクチャーは、5月10日(日)からそごう神戸店で開催中のヴィトラ・デザイン・ミュージアムの巡回展「Antibocies1989-2009:抗体」展を記念して開催いたしました。

+クリエイティブレクチャー「デザイン・ミュージアムのこれまでとこれから」開催概要はこちら

5月10日、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム世界巡回企画「Antibodies 1989-2009:抗体」展が、そごう神戸店9階催会場で始まりました。

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オープン前に行われたレセプションでは、前日5月9日にKIITOにて「デザイン・ミュージアムのこれまでとこれから」と題した特別講演をしていただいた、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム館長のマーク・ツェーントナー氏から、開催を喜ぶ祝辞と、ぬいぐるみを組み合わせた椅子や、緩衝材のエアキャップ(プチプチ)の椅子など、独創性あふれるカンパナ兄弟の作品群を紹介した本展について、短い解説がありました。
また、KIITO副センター長の永田も、来賓代表として短いスピーチを行いました。

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日本では西武渋谷とそごう神戸の2会場のみの巡回となる本展ですが、会場の都合で、渋谷では展示できなかった大型作品が、神戸では数多く出品されており、たいへん見応えのある内容になっていました。展示構成も、斜めになった展示台など、工夫が凝らされています。

会期は5月15日までの5日間と短いですが、またとないこの機会、ぜひ会場に足を運んでみてください。



ヴィトラ・デザイン・ミュージアム館長 マーク・ツェーントナー氏特別講演 「デザイン・ミュージアムのこれまでとこれから」の概要はこちら

2015年4月10日(金)

+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」第6回となる「醤油についてのお話と手作り醤油ワークショップ」を開催しました。
大徳醤油株式会社浄慶拓志氏をお招きし、醤油に関する講義と、家庭でできる醤油づくりを教えていただきました。


醤油づくりの現在
大徳醤油は創業100年以上の会社ですが、新規参入のない醤油業界ではまだまだ“若造”。国産原料を使い、化学調味料を使わない醤油を自社製造されています。
近年、醤油の海外での消費は増えているが、国内の消費量は70年代をピークに徐々に減少。ピーク時は130万キロℓ近かった使用量が、現在では約82万キロℓ程度。昔は町に一軒は醤油屋があり、各家庭に配達していたそうですが、現在残る醤油屋は全国に約1,500軒。

醤油づくりのあり方も以前とは様変わりし、大量生産・低価格販売路線に。大手メーカーは丸大豆(大豆を丸ごと使用)ではなく脱脂大豆(大豆から油を抽出したもの)を使い、短期間で醸造する製法に。大手の価格に対抗できない小さな製造所は自社で醤油を作ることをやめ、生醤油を購入したものを瓶に詰めて販売している。
昔は一升瓶(約1.8リットル)の醤油一本が散髪代と同じくらいの値段と言われていたそうですが、今では安いもので1リットル98円。1リットル入りの水よりも安い。少し考えれば不自然なことがわかるはず、と浄慶さん。
国内の醤油の8割に脱脂大豆が使用されており、丸大豆使用は18%ほど。そのうち、国産大豆の使用は約3%。日本は輸入に頼りすぎており、海外から食糧を奪っている。国産原料を使うことが大事だと浄慶さんは言います。

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家庭でできる醤油づくり
講義の後は、お待ちかね、醤油づくりを体験する時間。
昔、醤油は各家庭で手づくりされていたのだそうです。浄慶さんは、醤油が「工場でしかできないもの」であってはならない、と言います。
醤油づくりは麹をつくることから始まりますが、今回は浄慶さんにご用意いただいた麹を使います。まず、1.8ℓの水に414gの食塩を入れ、透明になるまでよくかき混ぜ、23%の食塩水を作ります。そこに麹を入れ、さらにかき混ぜます。「櫂(かい)で潰すな麹で潰せ」。ゆっくりと空気を入れるように、麹を潰さないようにかき混ぜる。

今回の醤油は、約一年以上かけて手入れをしてようやく完成します。日に一度、かき混ぜることが基本。初めの7日間がとくに肝心。食塩を行き渡らせ、腐らないようしっかりとかき混ぜます。2週間は微生物を育てるため、よくかき混ぜて酸素を入れることが重要だそうです。
無事夏を越えたら、少し目を離してもOK。「二夏越すといい醤油ができる」そうで、一年半~二年かけて熟成させたものが一番おいしいのだそう。
ある日突然、あら不思議、フルーティーな香りに!これをメイラード反応といい、抗酸化作用により赤褐色に変わり、色が濃くなってきます。
手づくり醤油のいいところの一つは、酵母・酵素を生きたまま食べられること。市販のものは、工程の途中で取り除かれてしまうのだそうです。
 
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伝統を残す使命
「醤油づくりに手間暇がかかっていることを知ってもらえるだけで有難い」と浄慶さん。
現在“醤油に投資しても回収できない”といわれ、設備の老朽化で醤油づくりをやめてしまう工場が多いといいます。また、後継ぎもなかなか見つからず、年間100社が店を畳んでいるともいわれます。
大手醤油メーカーでさえ国内では利益が出ない現状。大手メーカーの生産分で国内に必要な量はまかなえるが、「伝統を残していくことが小さい醤油屋の使命」だと浄慶さんは言います。

今回作った醤油は、これから約1年、各人が手入れを欠かさず、愛情を持って育てることが必要です。
食べ物を作るには時間と手間がかかるということ、そしてそのことを忘れさせてしまう現代の生産の仕組みについても再考する機会となったのではないでしょうか。


次回は第7回「野菜工場について」です。野菜工場の現場から、食糧難の時代を見据えた広い視野でお話をしていただきます。


+クリエイティブゼミvol.13 「食」編 「神戸発:自分で食べる“食”の勉強をしよう!」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10640/

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