お知らせ・レポート

デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2016年3月に開催するイベントについてプレスリリースいたします。

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2016年3月10日(金)
UDCK、アーバンデザインセンター柏の葉のセンター長であり、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の出口敦さんをお招きし、+クリエイティブレクチャーを開催しました。「アーバンデザインセンターってなに」と題しお話しいただきました。UDCKとKIITOの立場として、今後の可能性や役割についてのトークセッションも行いました。

 
私の仕事|
専門は都市デザイン、都市計画です。あまり関西の方ではお話しさせていただく機会がありません。東京出身で東京大学の都市工学科で勉強しました。1993年から九州大学で8年教鞭をとり、2011年から東京大学にいます。UDCKに勤めて5年になります。今でも九州に行きよく仕事をしています。
東京大学で丹下健三先生がはじめてアーバンデザインについてお話しされたと思います。この言葉が使われ始めて約50年になります。都市はデザインするものであるということですが、一般的なインダストリアルデザインやファッションデザインとは少し異なります。1つ明確なことはクライアントがいないということです。様々なものが対象になり、ゼロからデザインするということはなく、何かしらの条件があります。都市には文脈が存在するため解読をしなければいけません。都市は常に連続しているので、あくまで部分のデザインになります。そして重要なこのとは都市は永遠に未完成ということです。我々はマスタープランをつくる際は、10年後、20年後の姿を考えます。そういう意味では変化をデザインしているといえます。都市の対象は、機能や意味、景観などの知覚が対象になります。単に空間をつくるのではなく、そこに意味を持たせ、さらに人が利用し、社会的な意味を持った場になります。重要なことですが、大勢の人が関わり、長い年月をかけて組み立てていきますので、意思決定のプロセスを見据えていくこともデザインします。

東京も神戸もそうですが、立地がとても良いです。ものが集まり、大きな港があるので、都市が成長してきたのではないでしょうか。これからは人口減少の時代で、新しい競争は始まります。立地が土地の良さを決め、地域の資源が都市の魅力を決めていくのではないかと思います。地域の資源を掘り起こしデザインしていくことが私は大切だと考えています。

みなさんは空間、環境、場という言葉を使い分けていますか。寸法を操作し空間をデザインし、その空間に色を付けたり、光で演出したり、木を植えたり、それによって人間が五感で感じる環境になります。次に人間のアクティビティが生じてきます。例えばビルとビルの隙間のような空間に主婦が集まりおしゃべりなどすると井戸端会議になります。あるいは子どもが遊び始めると、子どもたちの遊び場になります。都市デザインは空間から環境、場をつくっていく一連のプロセスを言います。今一番問われているのでが、場のデザインです。
まちという言葉も難しく、まちをデザインすると言いますが、これはまさに場をデザインすることにつながっています。そこには精神的な奥深さを足したような文化をつくることになります。福岡や博多は2000年ぐらいの歴史があって、文化を育ててきました。そのようなまちが集まって圏域をつくっていきます。そのことも都市デザインの領域だと思います。多様な地域で構成され、いろいろな都市色のあるまちが集まる圏域をつくることも非常に重要です。

 
私の都市デザインの原点|
私の都市デザインの1つの原点は、オーストリアのウィーンという都市です。人口が150万人で神戸市と同じぐらいです。音楽の都として有名です。250年前にモーツァルトがここで活躍しました。今から150年前にすばらしい都市デザインがありました。元々は城壁で囲まれていましたが、城壁が不用になり、取り外しリングシュトラーセという道路がつくられました。その周辺には市民公園、オペラ座、博物館、美術館、国会議事堂…をつくり、城壁の中はほとんど凍結保存していました。ウィーンはとても優れた都市だと思います。近代化に必要な施設をリングシュトラーセに埋め込んでいき、それらは当時新進気鋭な建築家を起用し、すべて異なる建築様式で建てられ、オペラ座はルネッサンス様式、国会議事堂はギリシャ式でつくられています。リングシュトラーセの内と外回りに路面電車を走らせており、ぐるっと一周することで公共サービスを受けることができます。これまでの公園というと、貴族のレクリエーションの場でしたが、市民のために環境パークに変わりました。公園をつくって、木を植えて、環境をつくり、そこに音楽というアクティビティを入れ、空間の骨格をつくりました。
日本では現在、富山市がコンパクトシティ政策を実現し注目されています。LRT(次世代型路面電車システム)で都市の骨格をつくりました。これは公共の仕事で、行政が中心となって骨格をつくり、そこへ民間の施設を埋め込んでいくという開発事業です。ウィーンに似た発想だと思います。

エリアマネージメント|
地方を見てみると、京都駅が1997年に駅ビルが開業、名古屋駅にはツインタワーが建ちました。2003年に札幌が再開発され、2011年に博多駅、現在は大阪駅が開発されています。駅周辺の地価を上がり、コンパクトシティをつくるうえでは良いかもしれませんが、相対的に他の地域を衰退させる可能性があります。駅を巨大化することは良いことだけではありません。地方に目を向けると悲惨な状況です。21世紀には空き家空き地が増加しています。面白い点は、商店が無くなって空き地になった前のスペースに農家の人などがお店を出して営業し、お客さんも来ています。人がいなくなったのではなく、まだ需要はあると思います。店主の人はおそらく土地代を払っていないのではないでしょうか。つまり土地代を払わなければ商売が成り立ちます。ここに知恵や工夫をして、この地域に新たな変化を生み出すことを考えるのがエリアマネージメントです。この部分にデザインセンターが関わることはありえると思います。東京は交際競争が背景にあります。地域に行くと国際競争はありません。博多や神戸は国際競争もある程度考えなければいけませんが、地域の歴史や自然をどう残すか、どのように戦略を練っていくのかも考えていかなければいけません。国際競争を睨みながら、地域の歴史を保全していく、この戦略の1つが都市デザインの重要なポイントだと思います。都市の規模や立地に応じて、背景や考えも変わっていきます。デザインの対象にも関わってきます。デザインセンターとして密接に関わっていくことが課題だと思います。

 
アーバンデザインセンター柏の葉|
場所は、東京都心から約30km離れています。秋葉原と茨城県のつくば市を結ぶ、つくばエキスプレスという鉄道が2005年に開通しました。東京の一極集中を解消するために国の研究機関が移転し、ニュータウンをつくりましたが、鉄道がつながっていなかったため、陸の孤島になってしました。ようやく第三セクター方式で、沿線の県や市がお金を出し合って、この鉄道ができました。これをつくるための拓鉄法という法律をつくり、鉄道一体型区画整理として沿線の区画整理をしました。すでに市街化しているところに鉄道を通すことはできないので、市街地から少し離れた、市街地調整区域に走らせていますので、まだまちになっていません。そこでつくられた1つが、柏の葉キャンパス駅です。ここから2km離れたところに、東京大学3番目のキャンパスがあります。私はそこの大学んで指導をしています。そこには現在新しいまち、都市を開発しています。270haと非常に広大な土地で、もともとはゴルフ場でした。2005年のつくばエキスプレス開通当時は駅の周辺に何もありませんでしたので、キャンパスが移転してきたが、学生の居場所がありませんでした。そこから4年が経過し、巨大なショッピングモールができ、1,000世帯の超高層マンションが建ち、人が住み始めました。UDCKは東京大学の建物の1Fに事務所があります。現在、柏の葉スマートシティということで、エネルギーのマネージメントシステム、健康長寿都市、新しいベンチャービジネスを目指し、モデルが出来上がってきています。こうしたまちづくりの中心的な考え方が公民学というもので、私の前任の教授である、故北沢猛先生が公民学連携の言葉を打ち出しました。産官学は良く聞く言葉であるが、これには市民が入っていません。公民学の場合は、民は市民、住民の民であり、民間の民でもあります。官は行政のみですが、公はNPOなども含みます。学は学識者だけでなく、学生も含み、うちの学生も良く参加しています。産官学よりも幅広く使っています。公民学連携でまちをつくっていく活動の中心になっていくのがUDCKです。2006年に設立し、北沢先生が初代センター長です。そして今年が10周年でした。この10年で活動も益々活発になりました。現在、国内外の視察者も増え、年間300件を超えています。
年に1回マルシェを行っています。周辺の農家さんに出店していただき、交流の場として駅前広場を利用しています。このプロジェクトはピノキオプロジェクトとしてこどもが参加し、大人のビジネスを学ぶ場としてアーティスト、デザイナーが協力し行っています。また駅前広場で民間が講習を行い、公設化も進め、ケヤキを植えたりしています。公だけでは木の管理が非常に難しいです。普通は道路や駅前広場は行政が管理するのが当たり前ですが、柏の葉の場合は民間組織が管理しています。これは指定管理とは異なります。
UDCKの機能の1つはプラットフォームをつくり活動が集まる場所であること、2つ目はシンクタンク、専門家が常駐しているので、ディレクターも7,8名常駐し、地域に入ってコーディネートします。3つ目はプロモーション機能です。チラシやニュースを発行しています。センターの意味は、そこに人が集まってくる、活動を集めてくる、そうすることでおのずと情報が集まります。人や活動が集まってくると、課題も集まり、様々な問題が見えてきます。その課題をみんなで解決します。
センターの機能を支えるリソースとしては、専門家が常駐している、集まる拠点施設がある、公民学が支援する仕組みがある、メディアがある、このことで支えられています。
UDCKは行政から独立した組織で、公民学がそれぞれお金や人、施設を出し合って運営しています。毎年自転車操業で大変ですが、頑張っています。現在全国にUDCKと名前の付くセンターが10カ所あります。それぞれ違った役割を持っています。置かれている背景も中身も違います。

貨幣換算できない価値|
直接利益を生むことも大切であるが、公園のようなまったく利益にならないが、良い公園のある都市は住みたくなる。貨幣換算できない価値がある。一見無駄に見えるが、とても貴重な価値を生み出している。今の技術だと貨幣換算できない。そのようなものをつくり出していくことができるのは、福岡や神戸などの都市ではないかと思います。福岡にある大濠公園は、そこではほとんど収益はないが、その周辺は高級マンション街になっています。公園でジョギングをして、健康管理を行います。それらは貨幣換算できません。そのようなものをつくって行きことがアーバンデザインの役割だと思います。そしてアーバニストは都市をより都市らしくしていきます。

+クリエイティブレクチャー「アーバンデザインセンターって何?」デザインセンターの地域社会における役割を考える
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2016年3月8日(火)

+クリエイティブ・ラボ「新しいパンのはなし」の第2回を開催しました。ゲストは建築家の高橋真人さんと神戸のパン屋「ケルン」オーナーシェフの壷井豪さんです。はじめに高橋さんから建築の視点から新しいパンのはなしをしていただき、その後、壷井さんを交えトークセッション、会場からの質問を行いました。

 
高橋さん自己紹介
私は7年間スイスのバーゼルというところでヘルツォーク&ドムーロンという建築事務所で働いていました。北京オリンピックのスタジアム、通称「鳥の巣」を設計したところです。7年後に日本に戻り、今は東京をベースに活動し、建築設計を中心にしていますが、建築だけでなく、スケールを広げ、都市デザイン、都市開発のコンサルティングなどもしています。東京で開催されているAny Tokyo、Art&Designのパートナーとしてディレクションなどもお手伝いさせていただいています。小さいものではドアストッパーをデザインしたり、大きなものではスペイン、マドリッドの都市計画などもしています。

建築のはなし
スペインのサラゴサ市にあるゴヤ生誕の地のゴヤ作品を展示する美術館を設計しました。既存の建物の2棟を改築するプロジェクトです。ここにしかない空間、ここでしかできないことを目指し、ゴヤの人生にちなんだような場として、ゴヤが初めて教鞭をとった部屋、耳が聞こえなくなってから住んだ家などを再現するような空間をつくり、来場者がゴヤの人生を追体験できるようなものを展示とは別につくりました。
メキシコのグラダラ市の美術館は、絶壁のある特殊な敷地で、公園の中にあります。ギャラリーの箱状の空間を円形に集め、地上から10m浮かせ、それを美術館にしています。1つの大きな木をイメージしており、箱状の空間の下を通り、メキシコの強い日差しを避けながら会話をするなど、人の集える場になればと設計しています。
線を描いたり、絵を描いたりするのとは別に、国内外の都市に対して、低炭素など持続可能なまちを考える、コンサルティングもしています。経済産業省から話をいただき、海外で環境拝領型のエコシティをつくる計画を進めています。2012年のAPECから専門員として、環太平洋地域のまち、振興開発地域を回っています。日本はエコな都市に関して知恵があるので、その見識を発達させていき、炭素を出さないまちを一緒に考えていくための意見交換をしています。2014年からはJICAからの依頼で南アフリカのケープタウンで環境に配慮したガイドラインづくりも進めています。ここまでが建築の話です。

 
3つの視点
私がこのような取り組みをする上で気を付けているのは、3つの視点を持つということです。1つめは空間、建築、パンといった小さい世界、もっと小さくても良いかもしれません。小さいものから大きなものまで、ズームイン、ズームアウトするような、そういった鳥のような視点ということ。2つめは、過去から未来。何かをつくるときには、正しいものを求めるのではなく、過去を振り返ってみたり、歴史とか伝統とか、そういったものに目を向けることで、新しいアイデアを見つけたりする、タイムトラベラーの視点です。3つめは、自分も反省していますが、ものにばかりとらわれ過ぎてしまい、形とか色とか新しいものだけを求めることではなく、実際の空間で、人々がどんな気持ちか、幸福な思いをしているか、どんな気持ちを求めてそこに行くのか、もの、目に見えないこと、経験みたいなものもデザインできたらいいと思って設計しています。

新しいパンの考え方
私はカレーパンが好きですが、そういったパン自体を開発する、新規商品の開発といった話と、パンだけでなくパンをどう売るのか、どういった店舗で売れるのか、どこで食べられるのか、パン屋さんの仕事のあり方、日常の中でパンがどのように消費されるのか、を俯瞰して見ます。もっと大きく見ると神戸全体の話になります。リサーチによると神戸の皆さんは日本で1番パンを購入しているようです。私も神戸と聞くと街のイメージとしてパンが思い浮かびます。まちづくりの観点からパンを考えてみるのも面白いのではないでしょうか。公園のようなパン屋さん、みんなが遊べるパン屋さん…。産業や住む人のライフスタイルのようなものを改めて考えるにも良いかもしれません。
新しいパンを考える上で6つの質問です。参加されている皆さんは、こんなパンがあったらいい、こんなパンをつくってみたいなど発見を求めていると思います。そもそも自分のためにつくるのか、家族のためにつくるのか、恋人のためにつくるのか、whyの部分。who、そして誰がつくるか、一般的にパン屋さんがつくると思いますが、趣味で自宅でつくることも考えられます。どんなパン?どんなパン屋さん?どんなまち?whatの話です。whenは、今できる技術なのか、明日つくるのか、10年後につくるのか、10年後神戸はこうなってほしいなど…。where、どこで、家、パン屋さん、公園、バーベキュー。How、どのように、手段、技術…。この6つの枠を考えると皆さんの自分なりのパンの着想になるのではないかと思います。

食べるとつくるの関係
パンのはなしの射程距離についてですが、私がはじめに考えていたことは、商品開発の話でいうと、味の部分です。香り、形、感触、色…、こういったものの組み合わせで新しいパンが発見できるのではないか。味、材料は何か?国産小麦、輸入小麦、酵母の発酵過程は?菓子パン?パン中身は?食べるまでの量は?どうか。手に持った感触、口に入れたときの感触、噛んだ時の感触、舌に接したときの感触、そういったところをエンジニアリングしてみても新しい発想になるのではないか。心理的な部分では色もあります。環境心理のように青は食欲減退、暖色系は食欲を掻き立てます。プレゼンテーションとして、人の興味をそそる色付けをデザインしてもおもしろいのではないか。京都にある妙喜庵にある茶室は、躙り口(にじりぐち)という入口があり、内部空間は2畳と狭いです。入口はかがまなければ入れない構造になっており、しゃがんで入ることで、たった2畳の空間が少し広く感じたりします。そのような人間感覚は心理的であったり、相対的であったりします。パンのおいしさも同じ切り口で考えると面白いと思います。パンを取り囲む環境も重要です。パンのように小さなものでも大きな問題を考える切り口にもなります。パンを使ってまちを活性化させることはできないか、産業振興、地域格差、インバウンド…。パンの文化について現地を見に行っても面白いのではないか。ある程度の仮説を持ってまちに出てみることで発見もあると思います。まちに出て、観察してみる、時間帯、客層などいろいろあると思います。アイデアが出てきたら、試作、プロトタイプをつくり、つくりながら考えることで、さらに新しいパンにたどりつけるのでは。つくる人がこんなパンをつくりたいというよりは、社会が何を求めているのか、自分の周りの人が何を欲しがっているのか、食べる人の視点から、食べるとつくるの関係をデザインしてみてはどうでしょうか。

 
トークセッション・質疑
高橋さん:私はパンを買うときに、「このパンが欲しい」と目的をもって買に行きます。カレーパンしか買いませんが(笑)。こんな味のカレーパンを求めて買いますが、そこに「?」はいらないことが多いです。しかし、建築好きの私は、旅行などすると、まさに「?」を求めています。どんな雑誌にも載っている観光名所でも行かないと分からない情報がたくさんあり、初めてそこで体験して、考えます。なんでこんなデザインをしているのでだろうか。この壁の質感はなんだ…など、分からないことがあります。そこから価値が生まれてくると思います。「?」の発見がなければ、旅もしないし、食も楽しくありません。「?」があることで発展してきたと思います。
壷井さん:私も同じく常に「?」を感じています。お店でお客さんがパンを購入する様子や、パンづくりの際に感じる「?」を生かすことを大切にしています。このちょっとした違和感が大事だと思います。
高橋さん:違和感は大きすぎてもダメかもしれませんね。ちょっとした余地だと思います。学生の時に建築雑誌などを見て、この建築かっこいい、これはダサい、と感じていたが、ある程度建築を学んでいくと、これはダサいのか?なんなのだ?とフラットに見えるようになります。このような余地のある新しいパンができると良いと思います。

会場:壷井さんがパンをつくる際の発想やインスピレーションのもとは?
壷井さん:最近はいろいろ考え方が変化している部分がありますが、一人で食べるのか、家族で食べるのか、翌日もおいしく食べられるようにするのか…、パンの焼き加減、袋へ入れるタイミング、材料など、食べている状態を常に考えています。
高橋さん:パンの話を事前に聞いて、建築は簡単だと思いました。なぜならば、建築家は設計をして、大規模なものは設備や構造、エンジニアリングに関しては、外注の専門家のエキスパートに聞きます。壷井さんは勉強し、テクニカルな部分も自分で行い、全てを一人でやっている職能は今の時代はないのではと思いました。頭が下がります。
壷井さん:自己満足のところがあると思います。職人、シェフはある程度のエゴがあって、パン作りは大変であるが、満たされる部分があります。海外では、職業訓練学校があり、若い年代から職業に対するプライドを高めて大人になっていきます。誰も仕事に対して恥じていません。日本はその部分が欠如しているように感じます。

会場:古いからいいという建築もあると思いますが、新しいものをつくる際に時間を意識して、10年後、50年後の姿をイメージしますか。
高橋さん:基本はそのような感覚でつくっています。時間とともに変わっていくことは、記憶の集積だと思います。建築家が完成させない領域を残しておいた方が幸せになる人が増えるのではないかと私は思っています。

会場:設計図をつくる際に、自分のスタイルや個性よりむしろ場所から自然とデザインが生まれるとお話しされていました。ヨーロッパの方が活躍される中で、日本人として現地を理解するには、どうしていたのですか。
高橋さん:そのことが、私ははじめ、コンプレックスでした。言葉ができないし、歴史も日本史のように学んでいません。私たちは現地の建築家やデザイナーに比べて見えている世界は狭いと思っていましたが、むしろ現地の人が見えていないところをフラットに見られることもあります。言語や現地でしか学べない教養みたいなところがあり、好奇心を持って見ることで、現地の人が見えない情報が見えてくることがあります。そのことがデザインやアイデアに光るものを与えてくれます。そんなことを発見しました。海外で戦っていくためにはそうならざるを得なかったこともありますが、五感で感じられる情報にウエイトをおいて、そこの場所らしさを見つけようとしてきたと思います。


永田:前回同様にかなり揺さぶられる刺激的なお話でした。パンはとても身近なもので、とても良いテーマだと思います。まちとか地域に広がった話を聞き、“パン”はさまざまな可能性に満ち溢れていると感じました。

次回のゲストは、IDEO Tokyoのディレクターであり、プロダクトデザイナーの石川俊祐さんと、AnyTokyoのプロデューサー・田中雅人さんのお2人です。どんな話が飛び出すのか楽しみです。


+クリエイティブ・ラボ キックオフ連続トークセッション 「新しいパンのはなし」
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デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2016年3月に開催するイベントについてプレスリリースいたします。

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2016年2月22日(月)

2016年度、KIITOとAnyTokyoが「innovation」をキーワードに共同でスタートする新しいラボ形式のプログラム「+クリエイティブ・ラボ」。初年度に取り組む最初のテーマは「新しいパンをつくる」です。この新たなプログラムのキックオフとして、さまざまな分野で活動するパートナーとともに、トークセッション「新しいパンのはなし」を3回シリーズで開催します。第1回となる今回は、バイオアーティスト・福原志保さん、神戸のパン屋サ・マーシュのオーナーの西川功晃さんをお招きし、デザイン・クリエイティブセンター神戸の副センター長の永田をモデレーターに、このイノベーティブなプロジェクトについて、トークを展開しました。

はじめに、サ・マーシュオーナーの西川さんにお持ちいただいた、低糖質のパンを参加者全員で食べました。このパンは、小麦粉の代わりに大豆を使用して作ったもの。「パン=小麦粉からつくられる」という概念をくつがえすようなパンが、既に存在しているということに、会場からは驚きの声が上がっていました。
パンのプロである西川さんと、バイオアーティストの福原さんという全く違った背景を持つお二人が、本当に今までにない、想像もつかない「新しいパン」とはどんなものか、参加者のみなさんと共に、ひもといていきました。

まずは、バイオアーティストとして、科学とアートとデザインの領域を超え、テクノロジーや独占市場を人々に開いていくことをミッションとした活動を展開している福原さんに、ご自身の活動についてお話しいただきました。

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【福原さんの活動まとめ】
□「PROJECT JAQUARD」
Google の先進技術プロジェクト部門であるATAP( Advanced Technology and Projects)が進めている、伝導性繊維を生産する方法を研究・開発するプロジェクト。
イギリスのサヴィル・ロウの名門紳士服店で、タッチセンサーが内蔵されたジャケットを制作し、電話をかけることにも成功した。現在はプロジェクト・パートナーとしてリーバイスとタッグを組み、その伝統的な機械織りの技法を生かしながら、新しい素材を生み出すための研究を進めている。
PROJECT JAQUARD

□「Ghost in the Cell(細胞の中の幽霊)」
生命は機械のようにオン・オフすることは出来ず、生と死の境界線はグラデーションになっている。この境界に位置する「may be」の状況は、「Ghost(幽霊)」と言えるのではないかと考えた。そして、日本を代表する人気キャラクターである「初音ミク」がこの状況にあるのではないかと仮定した。声や体、またファンにとっては心も存在するが、細胞と心臓は存在しない。この状況に、細胞と心臓を与えることで、彼女の「生きている状況」を作り出した。iPS細胞で神経細胞(心臓)をつくり、そこに初音ミクの外見に近い遺伝子データを混ぜ、バイオロジカルな初音ミクを生み出した。
金沢21世紀美術館「Ghost in the Cell:細胞の中の幽霊」

□「Common Flowers」
バラやカーネーションには、もともと青い色を出す遺伝子は存在しないが、遺伝子組み換えによって、企業がそれをつくることに成功した。この花は海外で栽培され、日本では切花として販売されている。福原さんは、ベビーフードのプラスチックケースや、寒天、スティックシュガーなどの身の回りの日用品で、その遺伝子操作をした花を自宅のキッチンで培養することに成功した。現在は、遺伝子組み換えのされた青いカーネーションを、元の姿の白いカーネーションに戻す研究を行っている。

□「BIOPRESENCE」
故人の遺伝子を木の中に移植し、生きた墓標にするプロジェクト。木に人の遺伝子を移植することによって、その人の生きていた時の記憶やストーリーが、その木を取り巻く残された人々によって、何十年も先の後世まで紡がれていくことを目指している。テクノロジーを見えなくすることによって、そこにある何かを改めて考えて欲しい。このプロジェクトによって、これまでのお墓の風景が変わるかもしれない。

福原さんから、新しいパンは記憶から生まれるのではないかと参加者のみなさんへ投げかけがありました。約8000年前のエジプトの壁画に、パンを作っている様子が描かれていたことや、約3300年前の、人の指紋がついたパンも発見されているというエピソードをご紹介いただきました。
古代のパンの素材であった、当時の小麦をバイオテクノロジーによって再現したときに、そこから作られるパンは古いものなのか、新しいものなのか?また、その古い小麦を使って、今の技術でパンは作れるものなのか、研究をしてみたいとのことでした。


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【福原さん×西川さんトーク】
西川さんに今回お持ちいただいた低糖質のパンは、素材に大豆を使っています。これは、日本人らしいパンのタネとして、植物由来のものから作りたいという考えから生まれたものなのだそう。西川さんは、これは「次のパン」だとは言えるが、今回のプロジェクトにおける「新しいパン」ではない、と言われていました。もっと神秘的で、想像もつかないようなものを作ってみたい。しかし、世界中の人にこれはパンじゃないと否定されるものでは無く、世界のどこかの誰かがそれをパンだと言えるようなものを考えたいとのことでした。

新しいパンについての話を進めていくなかで、パンづくりとバイオテクノロジーの共通点も見えてきました。
西川さんは、25年前につくったパンのタネを、今も使い続けています。タネを生み出した当時、西川さんはそのタネを他のパン職人たちと共有したそうです。今後もタネとして残っていくが、それぞれの手に渡り、微妙な変化をしていくのだろうとのことでした。もしかすると、既に25年をかけてまったく違うものに変わっているのかもしれないともお話しされていました。
福原さんは、このパンのタネを生命に例えられました。一卵性の双子は、同じ遺伝子を持って生まれますが、それぞれに変化して当然同じ人間ではないように、バランスを取りながら常に変化し続ける生命と、通じるものがあるのではないかとのことでした。手法や環境によって、完成するものが変わっていくことに、お二人とも関心を抱かれているようでした。


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最後に、永田から西川さんに、パンの定義とは?という質問が投げかけられました。
これまで、パンではないと言われていたものが長い時間たって認められることは多くあり、西川さんにとって、パンとはこうでなくてはならないという定義は無いのだそうです。ただ、これからさらに科学技術が発達し、遠い未来の人間が自分自身でする活動が少なくなった時に、食べるということですらしなくなる時が来て、パンの定義どころか、必要ではないものになるのではないかと懸念されていました。
福原さんは、英語で「bread and water(パンと水)」という言葉が、人間の生活にとっての一番大事な要素を意味するように、主食という感覚がこれからも続き、パンが必ず食べるもの、無くてはならない存在であってほしいとお話をいただきました。

今回のキックオフトークセッションは、全3回で「新しいパン」とはこれだ!という答えを見つけるものではありません。異なる分野のクリエイターやパン職人、参加者のみなさんと一緒になって、どのようなパンを生み出すか、一緒に考え、研究していく機会になればと思います。第1回目となった今回のトークセッションでも、すぐに解決することのできないモヤモヤした感覚や、発想のアイデアとなるような刺激を受け、参加者の方それぞれに「新しいパン」にまつわる宿題ができたのではないかと思います。次回以降も、その答えをみんなで探しながら、次年度のプロジェクトに繋げていければと思います。

+クリエイティブ・ラボ キックオフ連続トークセッション 「新しいパンのはなし」
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