お知らせ・レポート

2017年12月2日(土)、3日(日)

セルフ・ビルド・ワークショップ 「あそび」のための「大きな家具/小さな建築」第1回を開催しました。


2014年度から、KIITOの建物が複数回の用途変更による改装を経て生まれた空間=「余白」について考察し、アプローチするワークショップを行ってきましたが(2014年度2015年度)、今回は「余白=あそび=余裕」と捉えて、空間そのものの良さを残しつつ、そこに少し手を入れてみよう、というテーマを設定しました。機能でガチガチに固められているわけでもなく、何か行動を強制されているわけでもない、仕事やイベント参加の合間に、ふと、何もせずにいられる場所ができたら、という思いで企画しました。
川勝真一(RAD)さんのコーディネートのもと、毎回異なる3組のゲスト講師と、どうやって余白をあそびの空間に変えていけるかを考えていきます。ワークショップを通して、作り方はもちろんのこと、それ以上に、ゲスト講師の考え方やデザインの方法に触れて、どうやったらキラッと光るものができあがるのか、を体感してもらいます。
第1回目のゲスト講師は、西尾健史(DAYS.)さんです。

まず最初に、西尾さんの活動紹介や考え方をお聞きするミニレクチャーを開催しました。


西尾さんは、家具、インテリア、ショップのデザインなど、自身で手を動かしながら、さまざまなデザインの現場でお仕事をされている方です。
内容はプロジェクトによってまったく異なり、小さなステーショナリーのようなものから、家具、住宅、リノベーション、まちづくり的なことなど、さまざまなスケールの仕事を手がけておられますが、「基本的に中心にあるのは、暮らしに関わることをやりたい」ということ。DAYS.の由来は、その暮らしが日々続いていくようなイメージでつけられているとのことです。

過去の仕事紹介では、DAYS.のウェブサイトに掲載されている事例を中心に、Tokyo Art Book Fair(2017)の会場構成、ニットに箔押しをする洋服デザイナーの友人のための什器、ポップアップショップの什器、オリジナルデザインの家具、書店の内装の事例などをご紹介いただきました。
最近初めて西尾さん自身がデザインして制作した家具は、家具単体よりもその奥にある暮らし方に、どうやったら家具のアプローチでできるか、を考えて制作したとのこと。折り畳みや組み合わせが可能で、組み立てに工具も不要。イメージは、「ふだんはデスクの周りにあって、週末だけパッと立ち上がるような家具」。洋服や音楽のように気分次第で、形や色、置かれる場所がぱっと変えられる家具ができると、いろんなことが楽になって、もの単体というより、暮らし方にちょっといい刺激ができるのでは、との思いで考えた、とのこと。西尾さんが「風がふわっと吹くような」家具と説明されていたのが、印象的でした。

レクチャーのあとは、西尾さん設計の今回の制作物についての説明です。
今回作るものは、木材+スポンジで作る、使い方が決まっていない遊具のような家具。
円形のスポンジケーキが8分割されたようなかたちで、高さもばらばらの、段のようなもの。ひとつでもいろいろ組み合わせても使える、どう余白と合わせられるかが遊べるものです。
高さは西尾さんがバリエーションをすでに決めてくれていましたが、「サッカーボールくらい」「ガードレールくらい」「カウンターくらい」「跳び箱8段くらい」とふだん何気なく座ったりもたれたりするもので設定されていて、ユニークです。


チームに分かれ、素材の重ね方や固定の仕方は、西尾さんや川勝さんのアドバイスを受けながら自由に設計します。分業するのではなく、全部の行程を行い、作り方、考え方を体得します。
スポンジは台所スポンジから練習用のゴルフボールまでさまざまですが、簡単に手に入る素材を集めました。なお、素材を無駄にしないように、用意されたスポンジは全部使うこと、が条件に掲げられました。

4チームに分かれて、各チーム高さの異なる「ケーキ」を2個ずつ作ります。どのスポンジをどう重ねるか、どう高さを出すか、キーワードを出したり、イメージ図を描いたり、設計を行います。


設計がある程度できたら、インパクトドライバーや丸ノコ、スライド丸ノコ、トリマーの使い方を習い、各自作業を進めていきます。


チームごとに採寸し、合板を丸ノコやトリマーでカット、やすり掛けしてささくれを取り、天板のみクリアニスを塗布します。ニスまで塗れれば、、、という目標でしたが、1日目は、合板のカットまでで終了となりました。

2日目は、最初にチームごとに中間報告を行い、進捗状況を共有しました。
各チームで2個ずつ作るので、組み合わせることを前提として、片方を収納できるように等、セットで設計しているチームがあったり、スポンジの感触を最大限楽しめるように動きが楽しいかたちにしたり、スポンジの積み重ね方にバリエーションを持たせたり、チームごとにさまざまな工夫が考えられていました。


制作に戻ると、スポンジを使いたいサイズにカットして、速乾ボンドで接着します。


なんとか全員時間内に完成し、設置場所のプロジェクトスペース4Bに「ケーキ」を運搬し、設置して、感想を共有しました。

層のバランス、色のバランス、素材の使い方、足の存在感をなくして作るか、逆に存在感を出して作るか、制作の過程でさまざまな選択があり、実際、想像以上にバリエーションに富んだものが生まれました。


2日間のワークショップを通して、素材や道具の扱い方を学び、設計から制作までを講師の考え方に触れながら行うことで、今まで見えていなかったものが見えてきたのではないかと思います。
西尾さんも最後にコメントされていましたが、今度はこれを作ってみよう、と自分でもものづくりをするきっかけにしてもらえればと思います。


セルフ・ビルド・ワークショップ 「あそび」のための「大きな家具/小さな建築」
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KIITOの「+クリエイティブ・ゼミ」から生まれた、デートの街・神戸をプロモーションする観光振興プロジェクト「date.KOBEプロジェクト」のウェブサイトリニューアルオープンについてプレスリリースいたします。

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「date.KOBEプロジェクト」ウェブサイトリニューアルオープン





デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2018年1月に開催する「神戸スタディーズ#6『"KOBE"を語る―GHQと神戸のまち』」についてプレスリリースいたします。

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神戸スタディーズ#6「"KOBE"を語る―GHQと神戸のまち」

10月23日(月)、大丸神戸店6階に10月にオープンした「M BASE」にて、日本酒学「蔵元が語る、日本酒造りと楽しみ方」を開催しました。日本酒の歴史や酒造りの工程、またそこに込められた想いを講師の方にお話しいただき、実際に参加者の皆さんも日本酒を試飲して味わいを楽しむ形式のワークショップです。

この日の講師は、泉酒造株式会社 杜氏の和氣卓司さんと、播州地酒ひの 店主の日野明さんのお二人。まずは灘が日本酒の産地と言われる所以からお話いただきました。


仙介の革新的な日本酒造り
今回の日本酒学は全2回。1回目は泉酒造の和氣さん、2回目は剣菱酒造の社長・白樫さんをお招きするラインナップですが、日野さん曰く「剣菱が伝統を守る蔵だとすれば、仙介(泉酒造)は灘の中でも革新的な酒造りをしているイメージ」とのこと。
泉酒造の酒造りの歴史は、江戸時代後期にまでさかのぼります。1756年、初代当主の仙介が酒造りを始めたのは、神戸北区の道場町。その後、3代目のときに灘に進出しますが、第二次世界大戦中、そして阪神淡路大震災の際に蔵は焼かれてしまいました。
和氣さんは、震災後約12年間休造していた泉酒造が再開した3年後に勤め始めます。「休造している12年の間に、吟醸酒が生まれるなど酒造りが劇的に変わっていたんです。僕が入った時はすごく時代遅れな酒を造っているなあと。そこで、今の灘にはない、灘の風土を生かした味を自分たちでつくっていこうという流れができたんです。」

灘の酒蔵が発達した4つの理由
1.米が播州の軟質米であることと、有名な山田錦という米の産地があるため。
2.川が急流で、山からすぐに水をひくことができ精米が発達しているため。
3.灘の酒が生まれた当時、酒の一番のマーケットである江戸まで船ですぐに運ぶことができたため。
4.宮水を使うことでしっかりと発酵させることができるため。

また、泉酒造は、地元の農家とタッグを組んでやっていきたいという想いからすべて兵庫県産米のみを使用しています。他県の米を使わなくても十分補えてしまう、非常に恵まれた環境です。


酒の種類とそのメカニズム
酒には、醸造酒と蒸留酒の2種類があり、日本酒、ビール、ワインは世界三大醸造酒と呼ばれています。焼酎やウイスキーは蒸留酒です。
まず、酵母菌が糖を食べることでアルコールが発生。そして、糖が無くなった酒を甘くしてくれるのが、副原料と言われる麹です。麹の酵素が蒸した米に作用して、甘い糖にしてくれるのです。酵母がそれを溜め、アルコールと炭酸ガスを発生するこの仕組みが日本酒のメカニズム。ちなみに、ワインのように原料(この場合ぶどう)自体が甘くその糖を酵母菌が食べる発酵は「単発酵」といいます。
一方ビールは麦芽糖を副原料とし、麦芽の中に入っている酵素によって麦芽糖ができます。
基本的に、酵母がアルコールを出し、酵母のエサを作るのが麹の役割というのはすべて共通で、日本酒を蒸留すれば米焼酎に、ビールを蒸留すればウイスキーに、ワインを蒸留すればブランデーになります。蒸留酒には必ず醸造段階があり、芋焼酎のように醸造段階で飲めないような香りのあるものは蒸留酒になります。



今回は、話を聞くだけではなく実際に「大吟醸」「純米大吟醸 生酒」「純米大吟醸 無ろ過生原酒」「特別純米 無ろ過生原酒」「山廃純米 泉チャレンジ」の5種類の日本酒を試飲しました。

①大吟醸
アルコール添加する必要がない酒で、あまりアルコールを薄めず飲みたいときにもおすすめです。

②純米大吟醸 生酒
今回はこの純米大吟醸のみがアルコール添加してあります。「純米酒は含み感が深いので、口に含む前に鼻に近づけると良いですよ」というアドバイスに、みなさん一斉にカップに鼻を近づけ、その後、口の中から鼻に抜ける含み感を楽しんでいる様子でした。

③純米大吟醸 無ろ過生原酒
②の生酒。ちょっとガス感を感じるのが特徴です。
酵母が糖を食べる時にアルコールと一緒に発生する炭酸ガスは、火を入れたりろ過すると抜けてしまうのでなかなか味わえません。泉酒造は、搾ったそのまま感を伝えるためにできるだけガスを残しているのです。

④特別純米 無ろ過生原酒
特別純米の「特別」とは、「精米を使うことで純度を高めてある」もしくは「すべて酒造好適米を使用しており原料米にこだわりがある」という意味です。好適米とは、普段私たちが食べているような乾米ではなく、酒税法で定められた酒のためだけに造られた米を指します。このあたりの知識があるとなかなかの通です。

⑤山廃純米 泉チャレンジ
純米酒。掛け米で、麹米は山田錦、蒸米は一般米のヒノヒカリを使用しています。

 
 

山廃とは
酒母(酵母を培養したもの)のつくり方の一種で、今回用意した①~④の日本酒は速醸という酒母の製法を用いていますが、山廃は酒母の作り方は異なります。速醸の場合は最初に乳酸を入れておくので10日~15日ほどで酒母ができますが、山廃や生酛(きもと)は乳酸がつくられる時間が必要となるため倍の30日もかかります。
酒母造りの工程では硝酸還元菌(しょうさんかんげんきん)という井戸水の中にいる微生物を使って硝酸をつくりますが、硝酸還元菌がいない水で酒を造ると失敗してしまうため、仕込み前に水を調べます。この硝酸の量が増えてくると腐造(仕込み後の酒質トラブル)しなくなるので、重要なポイントです。
ちなみに、山廃は米粒をつぶさずにそのまま徐々に温度を上げて仕込んでいきますが、この米をすり潰す工程を「山卸(やまおろし)」または「酛すり」といい、その作業が省略された、つまり「山卸が廃止された」手法ということで「山廃」酒造と呼ばれるのです。
また、泉酒造の山廃は、あまり深みとコクがなく他の酒造のものと比べるとサッパリした味が特徴。「色も酸味もあるきつい酒を作れと言われたのですが、そんなの作りたくない。泉酒造の仙介カラーを出したくて作りました。山廃らしくない、というよりも、こういう山廃もある、という捉え方をしてほしいです」と、和氣さんの想いが語られました。

日本酒を様々な側面から見てきましたが、狙う酒質によって酒母のつくり方は決まってきます。山廃はアミノ酸を多く含むため味にコクと深みがありますが、傷みやすく、また酸味が多いためしっかりと熟成させる必要があります。一方で速醸はスッキリとした味の少なさが特徴で、安定した作り方ができると言えます。しかし、必ずしも山廃のほうが手間がかかっているから美味しいということではありません。自分に合う日本酒を見つける際のひとつの知識として覚えておきましょう。


「今日これだけ全部飲まないと帰れませんからね」と冗談を交えつつ、あたたまってきた会場ではワークショップの締めくくりに参加者からいくつか質問が出ました。

Q.種類の色を比べたら、山廃がいちばん透明に近いので、普通のイメージと全然違ってびっくりしました。色のちがいで何か違うのでしょうか。
A.生酒はもちろん吟醸系は色を気にしていません。色が抜けているほど良い酒だと言われる時代もありましたが、今は色のついたグラスで飲んだりもするので色で判断しないのです。山廃は、常温で流通したり、透明ラベルだと酒に光が当たってさらに劣化速度が上がってしまうため、泉酒造では「お客様が美味しく飲める期間を長くしたい」という見解から炭素を使ってある程度劣化を遅くする処理をしています。

Q.燗酒に向いているお酒はありますか。
A.基本的に燗にして温度を上げると甘味が増すため、苦味があっても酸味があっても、飲みやすくなります。甘くしすぎて飲みにくくなることもありますが、それが好きという人もいます。

Q.一回同じ日本酒を飲み始めるとほかに浮気ができません。ラベルを見ても自分に合うお酒かどうかを判断するのは難しいため、どこを見て一番合うお酒を選んだらいいのでしょうか。その基準や秘訣のようなものはありますか。
A.これは酒屋さんにとっても難しいところです。実際、「〇〇が欲しい」というように日本酒の名前が分かれば酒屋さんも出してくれますが、好みまでは難しいです。酒屋さんに行って、何種類か試飲させてもらうのがいいかもしれませんね。


ワークショップを通して、参加者の皆さんはより日本酒に興味を持った様子でした。和氣さんは、「なぜ日本は外からの文化を取り入れてばかりなのか、もっと自国の文化を広めていったらいいのに」と、日本酒のさらなる可能性についても言及し、奥深い日本酒の世界を堪能することができました。


日本酒学「蔵元が語る、日本酒造りと楽しみ方」

デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2017年12月に開催する「藤本智士トークイベント みんなが使える「編集」という魔法」についてプレスリリースいたします。

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藤本智士トークイベント みんなが使える「編集」という魔法

「つながる食のデザイン展」会期中の11月14日(土)と21日(土)に、つながる食の連続トーク「“パンじぃ”がパンをつくりながら、夢を語る」を開催しました。神戸を代表するパン職人から本格的なパン作りを学び、KIITOでのイベントや地域のコミュニティカフェで活動を続けている"パンじぃ"たちが、展覧会の会場でパンを焼き上げて来場者にふるまい、現在の活動やこれからの目標、夢について、来場者に語りました。14日(土)は、東灘区青木の「カフェやすらぎ」を拠点に活動する第2期メンバーが、21日(土)は大丸神戸店での「ちびっこうべカフェ」を控えた第1期メンバーがパンをふるまいました。

 
 
11月14日(土)
この日は第2期メンバーが登場。昨年12月から月1回、「カフェ・やすらぎ」にメンバーが集まり、「パンじぃのひるごぱん」と題して、パン焼き上げ、振る舞ってきました。メンバーも様々なパンのレシピについて研究を重ねてきて、満を持してKIITOに登場です。第2期メンバーの講師だった御影・ケルンの壷井豪シェフも、パンじぃたちの次の課題となるパンを携えて、応援に駆けつけてくれました。

この日、会場で振る舞うパンは2種類、50セットほど。少し早めに余裕を持って集合し、仕込みがスタートしました。今回はしっかりと練り上げる作業を行うことが重要になるメニュー。パンじぃたちが力を込めて生地を練り上げる音が、オープンしたばかりの展覧会会場にまで響き渡ります。大きな音に引きつけられて、キッチンまで足を運ぶ来場者の姿も見られました。練り上げに1時間弱、ようやく一次発酵へ。次の作業まで小休止です。

30分ほど発酵に時間を要したあと、成形と二次発酵へ移ります。順調に進んできたと思いきや、ここでトラブルが発生。レシピに不備があったようで、二次発酵に大きく時間を割いてしまいます。予想外のトラブルでしたが、壷井シェフのフォローもあって、パンじぃ全員でピンチを乗り切ります。ようやく二次発酵の工程が落ち着いたところで、焼き上がりを待っている来場者が会場に集まり始めます。手が空いたメンバーから、来場者のもとへ。壷井シェフも加わって、パンじぃと来場者との交流がスタート。第2期が始まった経緯、現在の活動のこと、これからの目標などについて、熱く語らう場面が繰り広げられました。その流れでそのままに、二次発酵を終えたパンが会場内のオーブンのもとへやってきます。来場者の前で続々と焼成がスタート。一緒に焼きあがりを見守ります。

20分ほどの焼成のあと、いよいよ来場者のみなさんと試食。手間をかけただけのことはあって、いつも以上にふっくらした仕上がりのパンとなりました。次回以降のカフェやすらぎのパンも、さらに美味しさを増していきそうなところ。新しいパンへの挑戦も楽しみです。

終了後の反省会では、工程についての反省が出るとともに、各工程の目的、特に発酵の重要さについて、もっとしっかり勉強する機会を持ちたいというメンバーが相次ぎました。つねに研究熱心な第2期メンバー。工夫を凝らした素晴らしいパンが、青木から誕生しそうです。

 
11月21日(土)
11月3日(金・祝)に大丸神戸店で行われる「ちびっこうべカフェ」本番を控えた第1期メンバーが集合。本番前最後のリハーサルとなることもあって、緊張も感じられる中、パン作りがスタートします。これまではジャガイモのパンとチョコレートのパンを提供する予定で練習を重ねてきましたが、季節にちなんで、ジャガイモをかぼちゃに変更することに。新しい材料ということもあって、メンバーも慎重に作業を進めていきます。また、「ちびっこうべカフェ」では200セットと、いつも以上に大量に作り上げなければなりません。各工程についても当日を念頭にいれて、注意深く確認していきます。

メンバーがまず苦戦したのはかぼちゃの水分。ジャガイモよりも水分が多いため、水の量には気を配らなければなりません。水を生地に加えていくタイミングも重要になります。ベタベタにならず、良い状態の生地を作るのに悪戦苦闘。試行錯誤と苦労を重ねました。

少しいつもより柔らかめな感じにはなりましたが、生地の練り上げまでは比較的順調に工程が進み、一次発酵へ。発酵後の生地もやや水気が多い感じでしたが、成形もズムーズに進み焼成へ。来場者の目の前で、オーブンへとパンが吸い込まれていきます。香ばしい匂いが漂う中で焼きあがり。新しいかぼちゃのパンもは来場者にも好評です。

パンをふるまいながら、来場者と交流するメンバーたち。大丸神戸店での本番に向けて、意気込みと自信、チームワークの良さが感じられた一幕でした。反省会では、当日に向けて分量や工程について再確認し、万全を期します。

2回にわたって開催された「“パンじぃ”がパンをつくりながら、夢を語る」。パンを作って多くの人たちにふるまう中で、パンジぃたちが目標を持って自分たちの手で、活躍の場を切り開いていく姿を印象づける催しとなりました。


つながる食の連続トーク「“パンじぃ”がパンをつくりながら、夢を語る」
つながる食のデザイン展
パンじぃ

2017年10月7日(土)~22日(日)まで、KIITOを会場に「つながる食のデザイン展」を開催しました。神戸の料理人、酪農家、販売者などの思いや描く夢を、神戸を拠点とするさまざまなクリエイターが、体験や映像、写真などで表現した展示物がKIITOホールに並びました。食をテーマとしているが、食べられない展覧会です。KIITOの建物にも告知チラシやポスターのデザインが装飾され、いつもとは少し雰囲気の違う様子を演出しました。会場に入ると、蛍光オレンジのラインが目に入ります。

 
味覚を体験するもの、牧場で取り組む循環の仕組みを学ぶもの、1つのパンができるまでを詳細に紹介したものなど11個のコンテンツがKIITOホール、ギャラリーAのスペースに展示しました。

 
【味覚の不思議、再発見】パティスリー モンプリュ・林周平さん(シェフ)×DESIGN HERO・和田武大さん(デザイナー)
普段あまり意識しない味覚の繊細さや違いを体感する展示となりました。3種のチョコレートを試食し、甘味、酸味、苦味を表すカラーボールを感じた比率で試験管に入れていくというものです。「最後に少し酸味を感じた」「どれも苦いぞ」など感じ方はそれぞれです。味覚を評価した試験管を持ち、展示の裏に回ると、他の体験者の試験管がたくさん並んでいます。その横に自分の試験管を並べ比べます。「えっ!こんなにみんな違うの?」という感想がほとんどでした。家族でも味覚の感じ方が異なり、たくさんの発見や気づきがありました。

 
【あえて聞きたい/答えたい、食の疑問】出展者:ケルン・壷井豪さん(シェフ)×神戸芸術工科大学・曽和具之さん(ドキュメンタリスト)
生産者、消費者、農家など、日常生活では接点の少ない様々な立場の人たちが、9月にKIITOに集まり、食について知りたいこと、疑問に思うこと、伝えたいことについて垣根を超えて話し合い、多く疑問をぶつけあいました。その様子を映像にまとめ、会場で上映しました。生産者が知ってほしいこと、消費者が知りたいことなど、普段なかなか伝わらずにもどかしく思っているそれぞれの本音をぶつける様子見られます。熱心に鑑賞される方も多くみられました。

 
【牧場からはじまる、もうひとつの未来】弓削牧場・弓削忠生さん(酪農家)×DML・久慈達也さん(デザインリサーチャー)
神戸市北区、住宅街に隣接した牧場が進める“無駄のない実践”から、エネルギー需給に留まらない「食の循環社会」について展示で紹介しました。牛1頭から取れるメタンガスや実物の消化液も展示され、消化液は実際に匂いを嗅ぐこともできました。恐る恐る鼻を近づける来場者も。匂いは牛糞のようではありません。消化液を使って育てられた、実際の農作物も展示しました。消化液を活用し、量産や流通を目的としない、学校や地域、家庭での菜園にて在来作物を育てる未来図も示しました。

 
【豚まん、100年の洗練】老祥記・曹英生さん(シェフ)×神戸芸術工科大学・曽和具之さん(ドキュメンタリスト)
創業100年を超える神戸南京町の豚まん屋「老祥記」の厨房の様子を撮影した映像を上映しました。メニューは豚まん1つです。普段あまり見ることのない、1日に1万3000個つくられる店内で熱気立ち込める中繰り出される洗練された職人技と無駄のない協働作業をまとめました。何度も映像を見られる方も多く、職人の動きや独特のリズムに興味を持たれたようです。

 
【ゴカンノキオク屋-飲食店が子どもたちを見守る寺子屋のようになれる未来-】玄斎・上野直哉さん(シェフ)×KUUMA inc.・濱部玲美さん(クリエイティブディレクター)×Apartment film・野田亮さん(映像作家)
まちのなかの飲食店は、食を提供する以外に、子どもたちを見守り、五感をくすぐる場所になれないだろうかという上野さんの思いに対し、実験として子どもたちが開店前の仕込みの時間に飲食店を訪ね、料理人の手さばきや仕草、店内のにおいや音、手触りなど観察を行い、その様子を映像やパネルで紹介しました。子どもたちが店内で感じたこと、発した言葉や動きなどを通して、大人も感じることが多かったようです。

 
【ひとつのパンができるまで】PAINDUCE・米山雅彦さん(シェフ)×NO ARCHITECTS・西山広志さん(建築家)
お店に並ぶパンを見ただけでは、想像することの難しい、原料からパンができるまで、生産者から購入者の手に渡るまでを、原料そのものや細かな工程をイラストで描き紹介しました。関わる人や時間、コストなども詳細に描かれています。1つのパンに必要な小麦の本数は120本。実際に小麦が並び、来場者も大変驚いていました。また砂糖、塩などもイラストで工程が描かれており、じっくりと鑑賞される方が多く見られました。

 
【不便から生まれるコミュニケーション】サ・マーシュ・西川功晃さん(シェフ)×MuFF・今津修平さん/KUAV・北川浩明さん(建築家)×Apartment film・野田亮さん(映像作家)
神戸北野にあるパン屋さん、サ・マーシュの店内を舞台に、Inconvenience(不便)=Communication(コミュニケーション)をキーワードに、売り場でのコミュニケーションのあり方を実験する様子を巨大な写真で展示しました。便利さを求めるあまりにそぎ落とされてしまっているコミュニケーションの重要性や、そこに生まれる付加価値について、来場者が改めて考える機会を生みました。

 
【知っているようで知らない野菜のはなし】はっぱや神戸・加古憲元さん/加古祐樹さん(農産物販売)×坂下丈太郎さん(カメラマン)
野菜を育てる人の手や道具、田畑の美しい様子や野菜が咲かせる可愛らしい花など、普段目にしている野菜の「知っているようで知らない」一面を、フィルムカメラに収めた大小さまざまなサイズの写真とちょっとしたエピソードともに展示しました。来場者はスーパーなどに並ぶ前の野菜の姿を見て、「こんな環境で育っているのか」「オクラって上を向いて育つの?」など気づきがたくさんあったようです。

 
【Experimental Tables 食べる「かたち」の実験室】anonyme・加古拓央さん(シェフ)×DESIGN SOIL(デザインコレクティブ)
食べる行為の舞台となるテーブルのまだ見ぬ可能性を探るためのアイデアテーブルを展示しました。加古さんが普段感じている様々な疑問や思いに対し、DESIGN SOILの学生たちがアイデアを検討した4つのテーブルと高さをスタディするもの、計5点が並びました。各テーブルを体験することもできるため、来場者も実際にテーブルを体験しながら食事をする際のマナーや意識を考えるきっかけが生まれていました。

 
【シニアから始めたパンづくり】
2015年KIITOで開催された「LIFE IS CREATIVE展」で生まれた、シニア男性チーム「パンじぃ」を紹介する展示です。神戸のパン職人から本気でパンづくりを学び、地域などで活躍している様子の写真や実際に使用している道具を並べました。会期中2日間は、実際に会場でパンじぃがパンを焼き、来場者に振舞いながら、パンじぃとしての思いや今後の夢について語りました。「うちの夫もパンじぃになってほしい」など彼らの活動に興味を持った方が多かったです。

 
【KIITOでつながる食のプロジェクト】
これまでKIITOで行った食にまつわるさまざまな企画をチラシや映像で紹介しました。食について共同で学ぶ食ゼミ、シェフや生産者によるトークイベント、シェフとクリエイターのコラボレーションによるパーティ企画「Meets+Design」など、「つながる食のデザイン展」につながった事業が分かります。「このチラシ見たことある」「これ、以前参加した」などの声もありました。

来場者の方は、食べることだけではない視点や考えに触れ、普段の生活の中から様々な気づきが生まれたようです。会期中に開催した「つながる食の連続トーク」も好評で、展示に至るまでの過程やエピソードなど、より深く食を知り、学ぶ機会をつくることができました。食を通してより豊かな神戸のまちにつながっていくことを願っています。

写真:片山俊樹


「つながる食のデザイン展 食べることから、はじまる」
会期:2017年10月7日(土)-22日(日)※休館10月10日(火)、16日(月)
会場:デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)1FKIITOホール、ギャラリーA
主催:デザイン・クリエイティブセンター神戸
特別協力:AnyTokyo
企画協力:田中みゆき
後援:NHK神戸放送局、Kiss FM KOBE、神戸市教育委員会、神戸新聞社、サンテレビジョン、ラジオ関西


デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2017年12月から開催する「+クリエイティブゼミvol.26 高齢社会編 “風の人”になるための“種”の作り方を学ぶ実践ゼミpart.1 『パンじぃ、洋裁マダムにつづく、高齢者がワクワクできるプログラムを考える』」についてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)


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+クリエイティブゼミvol.26 高齢社会編 “風の人”になるための“種”の作り方を学ぶ実践ゼミpart.1

2017年8月からスタートした「ちびっこうべ学校|食|接客を学んで、1日限定のオープンカフェの店員になろう」の成果発表として、11月3日(金・祝)に大丸神戸店を会場に「ちびっこうべカフェ」を開催しました。参加したこどもたちは、大丸神戸店の教育係の方から、接客用語や振る舞いについて学び、KIITOカフェで実習も行いました。また家でも接客用語など何度も練習をしてきたこどももいます。

 
 
会場は大丸神戸店の北側の外廊で、天気も良く過ごしやすい陽気でした。参加しているこどもは16名で、前半と後半に分かれて接客を行いました。オープン前から行列ができていました。こどもたちも少し緊張気味でしたが、はじまると今までの研修や実習以上に大きな声で丁寧接客を行い、とても頼もしい様子でした。

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カフェのメニューはパン2種類とドリンクのセットです。パンは、「パンじぃ」と呼ばれるシニア男性チームが作りました。2015年にKIITOで開催した「LIFE IS CREATIVE展」から生まれたチームで、イベントなどでパンを焼き提供しています。今回はカボチャをベースに、チーズとチョコレートの2種類のパンを焼きました。お客様が焼き立てを食べられるよう、朝から準備をして一生懸命焼きました。
パンじぃのロゴマークが完成し、おそろいのオリジナルエプロンもつくりました。エプロンは、同じくKIITOの事業から生まれた洋裁マダムの皆様に制作いただきました。

 
 
こども店員は、接客だけでなく、お客様が帰られた後すぐにテーブルの上を片付け、次のお客様用の準備をしたり、提供するドリンクを作ることもしました。お客様もこども店員の一生懸命なおもてなしに感激されている様子でした。満席の状態になるなど会場は終始にぎわっていました。

あっという間に終了時間となり、こども店員も疲れているのかと思いましたが、「もっと接客をしたい」とまだまだこども店員といて働きたかったようです。
終了後の振り返りでは、「メニューを運ぶ際にドリンクがこぼれないように注意した」「お客さんの喜んでもらえて良かった」「笑顔で大きな声を出せた」「大きくなったらカフェ店員になりたい」などそれぞれ思いを語ってくれました。

 
 
最後に大丸神戸店さんから修了書とバッジが手渡され、みんなの頑張りをほめていただきました。
こども店員の皆様大変お疲れ様でした!またこのような機会がつくれればと思います。

写真:坂下丈太郎

まとめ映像

映像撮影編集:神戸芸術工科大学

ちびっこうべ学校
店員研修①レポート
店員研修②レポート
パンじぃ

2017年9月30日(土)~10月22日(日)

石塚まこ「ちいさな世界を辿ってみると」(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2017 報告展)を開催しました。

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ストックホルムとパリを拠点にする作家が、2017年5-6月と9-10月に神戸を拠点にリサーチや行いました。その「成果」ではありませんが(※アーティスト・トークのレポートを参照)、期間中に行ったリサーチや、作家なりのKIITOの場所性・歴史の解釈などが織り込まれた「報告」としての展示です。

会場は、カフェの北側、中庭の北側、中庭南、と、固有の名前がなく、ふだん展示会場としては使われていない通路のような空間です。避難経路として空けていますが、利用者の動線には入らないので、ほぼ人が立ち入らない空間です。KIITOは、もともと生糸検査所として建てられた建物をリノベーションしているので、用途変更や改装の過程で、このような空間がいくつか生まれています。
それらの未活用空間が、展示ケースが置かれ、作品が配置されたことにより、見ごたえのある美術展の会場に変貌していました。展示什器も、生糸検査所時代の机やケースが用いられ、隣接するカフェとの親和性が高い展示になっていました。

左:《同じ青い空の下で Under the same blue sky (version 2016)》 2009- 、プロジェクト/ インスタレーション (写真、レーザープリントシール)、 《ルーツと異文化体験に関する思考のスケッチ》2017、オブジェクト/ インターベンション(世界各地の置物)、右:《同じ青い空の下で》(一部)

左:《星たちと月たちと太陽たちと(穏やかな世界) Stars, Moons and Suns (pacific world) 》2011/2016、インスタレーション(紙、オイルパステル)、右:《ポスト・カード プロジェクト Post-Card project》2007-、プロジェクト/ インスタレーション(ポストカード)

展示は、旧作から本展のために選ばれた数点と、「コレクティブ・アクト」の「おすそわけ」の資料(※同レポート参照)、本展で実現されなかったプランのスケッチ、作品のようなノート、随筆など、多岐にわたる内容で構成されていました。中庭南の窓に直接描かれたマインドマップのようなドローイングは、神戸でのリサーチが反映されている作品です。本展の展示設営期間中に描かれました。

右:《知恵とレシピのおすそわけ 『コレクティヴ・アクツ』『種の循環』『共生の儀式』『ゼロから』より》 2008-2014、プロジェクト(一部)

《ちいさな世界を辿ってみると》 2017、ドローイング/ インターベンション(マーカー)

本展は視覚的な作品展示以外にもさまざまな試みがなされていました。
会期中の週末に、KIITO CAFEとコラボレーションし、作家が友人から集めた世界各地の「おふくろの味」といえる煮込み料理を特別メニューとして提供しました。メニューはティガデゲナ、ムサカ、フェジョアーダ、バルシチ/ボルシチ。メニューを注文すると、そのメニューの解説や、レシピをくれた友人のこと、作家の随筆が書かれたカードがついてきます。


また、会場には、作家に代わって作品にまつわる物語を来場者に伝える「ストーリーテラー」が常駐し、来場者の都合に合わせた長さで作品の説明を行いました。ストーリーテラーの目印は、アフリカの布で作られたエプロンです。ストーリーテラーの橋渡しにより、「理解が深まった」と多くの来場者から好評を得ることができました。実験的な試みの多い本展でしたが、来場者一人一人に作品の物語や試みがもたらす気づきの種を届けることができたのではないかと思います。


写真:大島拓也(最後の2点を除く)

石塚まこ「ちいさな世界を辿ってみると」(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2017 報告展) 開催概要

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