お知らせ・レポート

2016年3月11日(金)~4月24日(日)



KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015 クロエ・マイネックの成果発表として、「Kobe Music Memory Box」の展示を行いました。


デザイナー・インベンターのクロエ・マイネックは、2015年10月に開催した、高齢社会におけるクリエイティブな生き方を提案した企画展「LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。」に合わせて、約1か月間神戸に滞在して、神戸の人たちの思い出を集めた「Kobe Music Memory Box」制作のためのリサーチを行いました。本展は、滞在終了後に英国ブリストルで制作を続け、完成させた作品を公開・展示したものです。KIITOのこれまでのプロジェクト・アーカイブとなっている1階+クリエイティブ・スタジオの一角にコーナーを作って展示をしました。



合わせてリーフレットも制作。Kobe Music Memory Boxの概要説明、今回収められた思い出と音楽の一部が掲載されています。(→PDF版はこちら)

会期中には、取材にご協力くださったご家族や施設の方にもご来場いただきました。取材の成果が実際に目の前でかたちになっているようすを喜んでくださいました。ミニチュアになっても、ひと目見てこれが思い出の品だと分かったわ、と言ってくださる方もいらっしゃいました。


会場にノートを設置して、来場者の方から感想やフィードバックをいただきました。音楽再生のシステムについて詳細なアドバイスを書き込んでくださった方も。
いただいたご意見はクロエに伝え、これも今後のMusic Memory Boxのさらなる改良に活かされます。

KIITOでのレジデンス終了後も、クロエは世界各地でトークを行ったり、Music Memory Boxを出展したりと研鑽を積んでいるようです。引き続きその動向や進化に注目したいと思います。


撮影:芦田博人(人物の入った2点)/飯川雄大(Kobe Music Memory Box作品カット2点)


KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015 クロエ・マイネック 開催概要
LIFE IS CREATIVE展 クロエ・マイネック アーティストトーク 開催概要レポート
「LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。」 開催概要


デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2016年6月~7月に開催する展示についてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)

2016年3月22日(火)

新しいパンのはなしキックオフ連続レクチャー、最終回となる第3回を開催しました。ゲストは、この企画の発案者でもあるIDEO Tokyoの石川俊祐さんとAny Tokyoの田中雅人さんです。Any Tokyoについて、そして来年度に向け、新しいパンの考え方についてお話していただきました。

 
きっかけ|石川俊祐(IDEO Tokyo)
以前、永田さんとKIITOで何か教育をしたいと話している中で、何のための教育か、人が共感するものがあって、やさしい力があって、というキーワードがでました。何かをつくるプロセスを通して、育てることができないか、私たちも成長している過程なので、一緒に育っていけないかということで、パンの日常的な役割を再構築し、人の生活をより豊かに、幸せにすることをテーマに掲げました。
今日は、何ができたらいいのか、私たちが普段考えていること、Any Tokyoとは、どんな人たちがどんな思いでデザインをしているか話します。最後には、皆さんがあまり知らない、世の中の事例、こんなこととをしている人がいる、こんなにやさしいのにビジネスとして成り立っている人がいるなど紹介したいと思います。

Any Tokyoとは|田中雅人(Any Tokyo)
私は東京を中心に仕事をしていて、さまざまなデザインが集まるイベントを徳川家康の菩提寺である増上寺というところで行っています。デザインは、日本の文脈ではまだ家具や雑貨など装飾の意味として使われています。コミュニケーション自体をデザインする、社会をデザインするなどデザインの役割が変化している中で、まずは展覧会を入口にしてみようという試みです。いくつか展示した作品を紹介します。

1.職人の腕を重んじて、職人の技術を最新のテクノロジーでつくれないか、そんなことを先駆けて行っている人がいます。手でつくるのではなく、テクノロジーでつくる。手と同じ、またそれ以上に美しいものをつくっています。そのマシーンはすべて太陽光のエネルギーで動いており、職人の手仕事とは異なる美しい造形を生み出しています。彼らは、太陽エネルギーや職人技をリスペクトしながら、最新技術と合わせて新しい価値を家具に落とし込むことをしています。

2.世界を変えたデザインという本でも紹介されているパソコンです。勉強をしたくてもできない子どもに向けてつくられたデバイスで、アフリカの学校などで配られました。このパソコンは、「あなたの夢は何ですか?」「やりたい職業は何ですか?」というアプリケーションが入っており、自分のなりたいものをイメージしてからしかこのインターフェイスを使うことができません。何かゲームをやりたいとかではなく、自分が何になりたいかを考えてからスタートする仕掛けになっています。例えば医者になりたい場合は、数学が必要で、そのアプリが出てきます。子どもを自然に必要なアプリケーションに誘導し、自動にダウンロードもできます。これをデザインしたのはサンフランシスコのデザイナーです。

3.オランダのファッションデザイナーが3Dプリンターで300万円するオートクチュールドレスをつくりました。5年前ぐらい前です。パリコレでこのドレスがデビューしました。3Dプリンターでつくったドレスには、建築家が協力しています。ファッションのデザイナーではなく、建築的に物事を考えることが興味深いところです。1着300万円ぐらいするオートクチュールドレスをほぼ同じ値段で3Dプリンターでつくる新しい考え方です。このファッションはデータをUSBメモリーに入れることもでき、そのデータがあればどの国でも3Dプリンターでつくることができます。いろいろなジャンルの価値観が合わさって、建築もファッションも垣根がなくなってきています。

4.清涼飲料水のレッドブルが、一人の日本人をおったドキュメンタリーを作りました。彼は自分のつくったマイクで録音した自然の音だけで音楽をつくるミュージシャンで、世界で活躍しています。レッドブルは彼をDJとして注目しました。自分でつくったマイクで、誰も行ったことがないようなアフリカの大地や誰も聞いたことがない虫の音などを録り、それをミックスして音にします。ミュージシャンとして注目されていますが、もともとは建築家です。楽器のデザインもしている表現者です。彼のコンセプトを聞くと、聞く人が主役になる音楽をつくりたいと。音楽は自己表現ではないと思っているようです。

今日はなんども、「さまざま」や「いろいろ」といった言葉を使っていますが、Any Tokyoをなぜつくったのか、まとめとしてお話します。いろいろなプロダクトが、いろいろな要素を持って、いろいろな思考でつくられています。「家具だから家具の思考」ではなく、エネルギーの思考だったり、旧石器時代の思考だったり、社会問題などさまざまなアプローチから、人のためにつくられているものに興味があってAny Tokyoをつくりました。“Any”は「誰かのため」、「何かのため」、”Anything“、”Anyone“の「何か」、「誰か」のキーワードを共通の言葉としています。それ以外は何もありません。そこが特徴になっています。AnyはSomeだけでなく、”x”のような不思議な数値も含みます。ジャンルを定めず、またそれを超えていく…自分の考えるすべてをもって、誰かのため、何かのために生み出しているものであれば、それはきっと美しいと思う。その美しさを感じていただき、美しさから物事を考えて欲しいと思っています。

 
デザイン思考について|石川俊介(IDEO Tokyo)
私と永田さん、田中さんと雑談をする中で、何か気が合うと思ったことがきっかけで、ここにいます(笑)。ここからは実際に「新しいパンをつくる」プロジェクトに向け、具体的な話をしていきます。
IDEOの中で使っているツールの「DESIGN FOR LIFE」という考え方があります。私たちがデザインするものは、世の中に何かしらのインパクトを与えています。これを置いた時の周りのインパクト、次に生まれてくるものにインパクトがあったり、何かその中で志向性をもってデザインをしていかなければいけない。生き物から学ぶなどの考え方も大切です。例えば、文化人類学や人間学を専門とする人が、IDEOの社内でつくったツールを紹介すると、ここにはラッコの話が出てきます。ラッコはウニが大好きで、お腹でウニを割って食べています。そのことでウニの数のバランスがとれているが、ウニの数が多いと海の藻を食べすぎてしまい、魚の数が減ってしまう。私たちが何か新しいものをデザインするときも、どの範囲までインパクトを考えてデザインできるだろうか。より良いことが起きるところまで思考できているだろうか。やさしいイノベーターなどと言いましたが、デザインするときに何か美しい、おいしい、最高、最強…そのときにもう一歩進み、もしこれを出したらこういうことが起きるかもしれない、もしくは起きた方が良いかもしれない、そこまで考えるような人たちが増えると良いのではないか、というところからスタートします。

我々は「新しいパン」を考えていきます。どんなメソッドで行うのか、何かをつくる、何かを生み出すこと、つくる過程、失敗する過程が学びです。そこで何を学んだかを振り返ります。その中でデザイン思考のプロセスをきちんと使っていくのが良いと思います。このようなテクニックがある、このようにできる、このようにものを売っている、このように売り続けるなど。人は変わり続けているので、ニーズ、欲望なども変わり続けます。最近の人は、ものを待てない人に変化してきています。待ち時間が苦手、なぜならば全てのものが待たなくてもできるようになっているからです。昔に比べると忍耐力があまりありません。そこを捉えたうえで、どのように実現するか、人間のことをきちんと理解したところから始まらなければいけません。デザイン思考は人間から考える、いつも人を中心に考えるということです。改善というよりは、どちらかというと今ないものに重きを置き、生み出すアプローチです。例えば、馬がいる時代にお客さんにどんな馬が欲しいですかと尋ねると、速い馬が欲しい、乗りやすい馬が欲しいなどと答えます。それは自分の願望をあまり捉えきれていない回答です。「速い馬」とはどういうことかというと、A地点からB地点へできるだけ早く行けたらいいという表層的な洞察です。観察する力が今回の中では重要になります。何が大切なのか、本当にこの人は何がしたいのかを思考することです。馬ではなく車でいい、飛べるといい、もしくは行かなくてもいいこともあるかもしれません。そのような思考をすることは、1→100ではなく、0→1を生み出すことです。

デザインリサーチは、自分で幅広いリサーチを行い、データを集めていきます。そこから何かを集約することを「結晶化」といいます。結晶化とまとめることは異なるものです。そこで出たテーマに対して、アイデアを出し、考え、プロトタイプをつくります。その中でキーとなるツールで大事なポイントがあります。まずは観察する力です。人はインタビューされた時に、自分の無意識な行動を理解していないために、嘘をつくつもりがなくても嘘をついてしまいます。グループインタビューをすると、自分を少しいい風に見せようと思ってしまいます。そうなるとなかなか真実が見えてきません。自分が思っていることもきちんと説明できず、感じていることを言葉にできなかったりします。誰かがそれを見て、観察してあげることが必要です。共感することも大切で、相手の身になってみることで発見があります。

パンであれば、いつもパンを食べている人に聞くのではなく、全くパンを食べない人やパンが好きすぎて週に4-5回も食べる人など、エクストリームな人たちに聞く方が新しい学びがあります。また例になりますが、緊急治療の手術室について考えるときに、似て非なる環境みたいなところを探します。車のレースのピットに医者を連れて見学に行くなどします。1秒を争う環境の中でみんなが何をしているのかを単純に観察します。そうすることで面白い発見があります。道具を誤って落としてしまっても、無駄な時間がかからないように2本ずつ道具をもっているので、リカバリーが早いことや、ドライバーに話しかけるだけの人などもいます。異なるところへリサーチに行くことも大切だったりします。
最近ニュースにもなりましたが、世の中の食べ物がどれくらいゴミになっているか知っていますか。だいたい1/3がゴミとして捨てられていると言われています。そこで、世界ではじめて賞味期限切れの食べ物を安く買い取って販売するスーパーマーケットがデンマークでつくられました。彼らだけが行うのではなく、それに参加するスーパーマーケットなどと提携し、ネットワークが広がっています。販売価格は通常の1/3程度です。賞味期限が切れているだけなので、問題なくおいしく食べることができる仕組みです。無駄がなくてお店も繁盛しています。

KIITOで行っている「神戸PANPO」という企画はとてもおもしろいです。パン屋さんをめぐるアイデアやマップづくりなどはつくるのはどこでもできそうであるが、いろいろなパン屋さんを回れるように、食べ歩きしやすい小さいパンをつくっているところが特に良いと思います。開発の部分まで少し踏み込んでいることがなかなかできないことだと思います。
私が大切にしていることですが、しゃべらずにつくってしまう、考えて思いついたら、完璧ではなくてもつくってしまう。外に出てアイデアを人に聞いてみよう、失敗してもいい、そんな場にしたいです。

 
質疑応答
会場:観察をして、真の課題は何かを見つけるフェーズと、その課題からアイデアを発散、収束させるのは、どちらに時間がかかりますか。
石川:悩む時間がかかるのは収束です。1人で収束することはないですが、チームの場合、4人いたら4人で収束するので、それが大切です。多様性のある人たちの視点が、収束されていく際に、一人よがりではない、世の中のためになるものになります。収束していくなかで重要なのことは、共感できるかです。リサーチを行ったチームは、数字とか関係なく、共感ができています。私たちは自分の中に情報を溜めることはなく、みんなの目に入るように壁に全部張り出します。そうすることで、自然と頭の中に重要なポイントが入ってきます。リサーチを行ってすぐに大事だと思ったことを3つだけ共有します。すぐなので直観で覚えていることしか言いません。時間が経ってからだとたくさん出てしまい、何が重要なのか分かなくなってしまいます。

会場:私は大学でまちづくりを学んでいます。そこで悩んでいるのが、地域らしさをどう出すのかです。
地域らしさを探る中で、フィールドワークをどのように進めたらいいのでしょうか。収束の仕方も知りたいです。
永田:地域にあるリソースを観察して、どうとらえていくかが大切です。地場のモノだけでなく、そこにいる料理人などとつながって見えてくる地域らしさもあります。それらをどのように感じ取るかが重要だと思います。私の感覚では、地域らしさというものはたくさんあると思います。すべてを扱うのではなく、どこをくみ取って、生かしていくのかが重要です。

会場:全体のプロセスの流れの中で、重要な所、神経を使うところはどこですか、またその理由も知りたいです。
石川:統計でも出ていますが、重要なのは、プロジェクトの最初の週だったりします。面白いアイデアは1週目、2週目あたりに出ます。学べば学ぶほど、頭がクリエイティブではなくなっていきます(笑)。制約とか、これが大切かもしれない、マーケットってこうなのかもしれない、人ってこうなのかもしれない、学ぶほどに発想力と反比例していきます。1週目に出たアイデアを壁に貼ることにしています。それをサクリファイスコンセプトといい、犠牲になっても良いアイデアを出します。大きな割合で、それが生き残るケースが多いです。そして神経を使うのは、収束の部分です。何が重要で、解くべき問なのかを決めなければいけないので、大変です。通常3カ月間のプロジェクトの中で2週間をそこに費やします。みんなで壁に向かって考えるだけの時間です。

まとめ|永田宏和(デザイン・クリエイティブセンター神戸)
3回シリーズはとても刺激的で、頭がはち切れそうです。石川さんからもご案内いただきましたが、これで終わりではありません。ここからが本格的なスタートになります。次年度には「(仮)新しいパンをつくる」ラボを始めます。ゲストの皆さんにもご協力いただき、考えるだけでなく、実際につくるところまでトライアルしたいと思います。KIITOとしても初めての試みですが、とても楽しみにしているプロジェクトです。神戸から新しい何かを生み出していきたいと思います。

+クリエイティブ・ラボ キックオフ連続トークセッション 「新しいパンのはなし」
開催概要はこちら

デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2016年6月に開催するイベントについてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)

2016.5.2(月)、5.9(月)、5.16(月)は臨時開館(10:00-18:00)いたします。
その他の5月の休館日は通常通り、毎週月曜となります。

デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2016年5月から開催するイベントについてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)

2016年3月27日(日)

異分野のクリエイター同士の出会いにより演出された空間で、彼らの活動に身近に触れてもらう企画「Meets+DESIGN」。
今回のコラボレーションは、神戸の創作フレンチ・アノニムのシェフ加古拓央さんと、植物図鑑「微花」(かすか)を発行する2人組・石躍凌摩さん+西田有輝さん。
「微花」では石躍さんは文章、西田さんはデザインを担当。ともすれば見過ごしてしまいそうな、その名の通り「微か」な植物たちを紹介する図鑑を制作しています。
加古さんの「言葉から料理を作ってみたい」という思いから、今回の企画ははじまりました。
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薄暗い照明の中、暗幕の奥の明かりが灯り、石躍さんが登場。彼の朗読から会は幕を開けます。

「0皿目」は純水で作られた「氷」。参加者は目を閉じ、朗読を聞きながら、氷を口に含みます。

電球の明かりが灯り、ここからメインの料理がスタート。参加者は皿を手に取り、思い思いの場所で料理を味わいます。
一皿目のタイトルは「タコ/木の芽/ビーツ」。
タコを溶かしたゼラチンのスープに、スポンジのような食感のパンを添えたもの。食べた後、紙の皿に水彩画のような美しい模様が残ります。

二皿目の料理は「シリアル/スプラウト」。豆苗や小松菜などが雑草のように盛られ、そこに麦やゴマ、鱒の卵など、さまざまな食感が一度に口の中で感じられる、不思議な味わいです。
その後、三皿目「焼き畑/青豆」、四皿目「経産牛/ヒネ芋/落葉」と続きます。「焼き畑/青豆」は「焼き畑小麦」と呼ばれる小麦を使った薄いクレープのようなもの。「経産牛/ヒネ芋/落葉」は、経産牛(出産後の牛)のホホ肉を赤ワインや味噌で煮込んだもの。ルッコラの葉にビオラの花、うずらの黄が美しい料理です。

今回のメニューは、加古シェフが石躍さんが書いたテキストを読み、そこから着想を得て創作したもの。

撮影:西田有輝

目で、舌で料理を味わった後、それを言葉にするワークの時間に入ります。
参加者は3名ずつ、全部で10のグループに分かれ、それぞれ一皿目~五皿目を担当します。ワークは2種類あり、一つはAからZまでの頭文字を使い、その料理に関連した27個の言葉を考えるワーク。たとえば、一皿目「タコ/木の芽/ビーツ」なら
A…あまい B…ビビッドな色 C…ちょうどよい苦み
といったように、食べた時に感じたこと、そこから連想したこと、印象などを言葉にしていきます。
もう一つのワークは、同じように料理を食べて感じたことを、しりとり形式で、最後は「ん」で終わるよう、27個の言葉を繋いでいきます。例えば、
「みどりの」→「のはらみたい」→「いかではない」…「たりないよ」→「よかん」
といったように。
ヒントがほしい時には、本を開いてそこから言葉を拾ってもOK。セレクトされた食にまつわる本や漫画を参考にしつつ、言葉を連想していきます。

 
撮影:西田有輝

グループワークが終わったら、そこからは一人で言葉を紡ぐ時間です。3人で話し合ったことや本で見つけた言葉を思い出しながら、料理を味わって浮かんできた感覚を、今度は自分と静かに向き合いながら、自由に紙に書いていきます。
この「AtoZ」と「しりとり」、一人で紡いだ言葉は、微花がデザインした冊子となり、後日参加者の皆さんの元に届きます。
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最後は加古シェフと微花の石躍さんと西田さん、空間構成担当の姉崎さん・時本さんも加わりトークを行いました。一部をここに採録します。

石躍:「はじめてあじわうときのように」の企画は、加古さんの「テキストから料理を作りたい」というお話から始まったんですよね。なぜそうお考えになったんですか?

加古:仕事で料理をしていると、レシピをアレンジしたり、今までの経験から料理が生まれたり、「自分の料理を作っている」というよりも「パッチワークしている」という感覚。時々、自由な時間に本を読んでいると自然とアイデアが湧き上がってくる時があって、そんな時は自分が料理を作っているという感覚になる。既成の言葉、町にあふれている言葉じゃなく、イベントのために作られた言葉で作ってみたいと思いました。
経験を積めば積むほど、「初めてやること」は必然的に少なくなってきます。石躍さんの文章を読んで、「この人の書く文章なら、今までやったことのあることに行き着くはずがない」と思いました。初めて読むリズムや文体にすごく引き込まれて、その言葉で料理を生むことができたら、自分がまた大きくなれるのではと思いました。


石躍:空間構成をお願いした姉崎さんと時本さんは、僕らのトークイベントに来てくださったお客さんでした。

姉崎:最初に今回のイベントのチラシの石躍さんの言葉を読んで、どんな空間がふさわしいかを考えました。時本さんと話をする中で、その中にあった「あじわうことをあじわう」という言葉、それを改めてするためには、非日常性のある場所になればと考えました。

石躍:一か月ほど後に皆さんのお家に「図鑑」が届きます。その図鑑は、皆さんが今日のあじわいを少しでも思い出せるようなものであればと思っています。図鑑というのは一般的には公に見せるものですが、今回の図鑑は基本的には自分だけが見るもの。自分のために、自分で図鑑を作っている。ある意味日記のようですが、いろんな人の手が加わったという意味で、編集というプロセスも踏んでいる。

西田:今日「言葉を出さなければいけない」という課題があって、それを前提にものを食べた時、いつもと違う味覚が働いていたと思う。そのチャンネルをまた思い出すことができたら、今まで食べていたものも違う形であじわうことができるかもしれない。そんな、これからの日常に変化をもたらすようなイベントにしたかった。

石躍:最初に氷を食べながら朗読を聞いて、そのまま飲み下してもらうというアイデアの参考にしたのは、どこかの民族で、トーラという法律を書いた石板に蜜を塗って目隠しして舐めるというもの。それがすごく効くらしい。僕らは僕らの尺度でそんなもの意味がないと思ってしまいますけど、何か法を犯そうとした時にふとその蜜の味がしたり、歯止めになるらしいんです。
僕らは食べるとか、読むとか、分けすぎているんじゃないかと思います。今回はそれを繋げてみようと思いました。

西田:石躍が文章を書くということは、世界を「読んで」、それを翻訳して文章にするということ。その文章を今度は加古さんが読んで、つまり「食べて」、体に取り入れて、また加古さんの言語で翻訳をする。そうして出てきた、ある種テキストのようなものが料理。その料理を今日、皆さんが召し上がって、また文字に戻す。その流れをやりたかった。

加古:石躍さんの文章、難しかったです。何度も黙読だけじゃなく、声に出して読みました。そうすることによって、少しずついろんなことが引っかかったり、飛び出してきたりした結果、料理にすることができたかなと思います。
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最後は石躍さんが今日の料理の元になったテキストを朗読して、イベントは終了しました。
普段何気なく行っている「あじわう」という行為を、言葉という一見離れた文脈から捉え直す試み。このイベントが参加者の皆さんにとって、「あじわう」ことについて日々、発見していくきっかけになればと思います。

Meets+DESIGN「はじめてあじわうときのように」開催概要はこちら

デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2016年6月に開催するイベントについてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)

2016年3月26日(土)

KIITOアーティスト・イン・レジデンス招聘作家の長島有里枝さんによるアーティスト・トーク「女性の話/about women」を開催しました。

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長島さんは、2015年10月から、神戸に短期滞在を繰り返して、神戸の女性に取材して作品制作を行ってきました。制作は成果発表展を開催する6月の直前まで続きますが、折り返しの時期となる3月の末に、長島さんはこれまでどのような作品を制作してきたのか、神戸でどのような作品に取り組んでいるのかを、一度、作家本人から直接話してもらう機会を、ということでアーティスト・トークを企画しました。

聞き手には、旧知の仲であるという、批評家・キュレーター・京都造形芸術大学准教授の竹内万里子さんをお迎えしました。同世代で、出産を経験し、子育てをしながら仕事もしているという共通点のあるお二人。ざっくばらんな対話のようなかたちで濃密なお話を聞くことができました。


90年代に発表したデビュー作の、家族のヌードのポートレイトを制作した時の意識と、作品がどのように受け止められたか、それを発表した90年代という時代について/その後アメリカに留学して経験したこと、感じたこと/家族との記憶や関係/出産、子育てを経験して気付く事実/作品集『SWISS』について/ここ10年くらい、「女性」にまつわる仕事や作品制作をしていること、その理由/東京で発表されている、母と共作したテントの作品と、神戸でのタープの制作との関係など、初期作品から最新の制作までをご自身のことばで話してくださいました。

今回のトークの内容は、一部を再編集して、4月末発行予定の季刊誌「KIITO NEWSLETTER」vol.13に収録しますので、詳しくは発行を楽しみにお待ちください。そして、そちらを読みつつ、6月の成果発表展をご期待いただきたいと思います。

撮影:飯川雄大



長島有里枝アーティスト・トーク「女性の話/about women」
開催概要はこちら

2016年3月12日(土)

オープンKIITO2016のイベントの一つとして、東京のフリーペーパー専門店・ONLY FREE PAPER(以下OFP)によるイベントを開催しました。

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撮影:芦田博人

過去2回もオープンKIITOに合わせて開催し、「今読んでほしいフリーペーパー50誌」を展示・配布し、好評を得てきた企画ですが、今回は特別に、この日のために、OFPが2010年のオープン以来蓄積してきた、膨大な数のフリーペーパーアーカイブから、記憶に残る「ベスト100誌」を選出・展示する「FIVE YEARS-100 BEST FREE PAPERS by OFP」、というスペシャルコンテンツが加わりました。


今も発行が続いている人気のものから、廃刊となってしまったもの、くしゃっとしたゴミと間違えられそうな紙で作られたもの、などさまざまなフリーペーパーがNo.1~100にランク付けされて展示されました。100誌に選ばれたひとつひとつへの、松江健介オーナーによる熱いコメントがまとめられた解説書も合わせて配布しました。A4サイズ12ページものの、それだけでも読み応えのある解説書でした。

例年開催してきた「今読んでほしい50誌」の展示・配布コーナーでも、精選された50誌が並びました。じっくり選び、気に入ったフリーペーパーを両手いっぱいに抱えて持ち帰る来場者がたくさん。早々になくなってしまったものもありますが、多めに提供いただいたものは、引き続きライブラリに配架をしていますので、KIITO来館時には覗いてみてください。

終日、松江オーナーとスタッフの渡辺さんが会場に常駐くださり、来場者の好みに応じてフリーペーパーのオススメや情報交換も行われており、活気のある会場でした。フリーペーパー発行者自身の来場も多数あったようで、発行者側のコミュニケーションの場ともなっていたようです。

なお、今回、「ベスト100誌」展示をするにあたり、展示用のフリーペーパーラックが必要になったので、KIITOで1月に開催したセルフ・ビルド・ワークショップ「余白不動産-余白につくる小さな建築」でDIY技術を身に着けたワークショップ参加者に声をかけ、ワークショップ参加者有志でフリーペーパーラックを作る、という特別企画に挑戦しました。


ラックの設計と制作指導は、当該ワークショップにゲスト講師として参加したNO ARCHITECTS。土台に、KIITOに既にある小学校の机を利用して、計4台のラックを1日で制作しました。棚板が段違いなっていたり、45度になっていたり、バリエーション豊富で楽しいデザインです。イベントでも展示に花を添えてくれました。
イベント終了後は、館内でラックが必要な場所で再活用することにしました。これも来館時に出来栄えを見ていだたくことができます。


今回は、これまでの中で一番だったのではないか、というくらい絶え間なく来場者に恵まれ、フリーペーパーファンの多さ、フリーペーパー文化の豊かさを実感しました。KIITOでも引き続き、継続的なイベント企画・発信をしていきたいと考えています。


【オープンKIITO2016】ONLY FREE PAPERのオールタイムベスト100
開催概要はこちら

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