お知らせ・レポート

つながる食のデザイン展

2017年10月21日(土)
「カレーライスを一から作る」先行上映+トークイベントを開催しました。

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元町映画館との連携企画として、「つながる食のデザイン展」の開催期間中に、同じ「食」を扱うドキュメンタリー映画「カレーライスを一から作る」を映画館での上映に先駆けてKIITOにて上映、さらに関野吉晴さんと前田亜紀監督、同時期に展覧会を開催する石塚まこさんの三者でトークを行いました。

映画は、武蔵野美術大学で行われた関野さんのゼミを追いかけたもの。コメも野菜も香辛料も、タネを入手するところから初めて一から育て、肉も鳥を飼育して屠るところまでを行い、文字通りカレーライスを「一から」作っています。回を重ねるごとにゼミの参加者が減ったり、鳥がうまく育たなかったり、育てるうちに屠りたくないと言う学生があらわれたり、とさまざまな壁にぶつかるようすが映像に収められており、いのちとは、食べることとは、を考えさせられる映画です。

KIITOアーティスト・イン・レジデンス招聘作家として展覧会を開催中だった石塚さんも、奇しくも当初は「カレー」が神戸での制作・リサーチのキーワードとして挙げられており、また、作品や、制作過程でつづられるノートの中にも、ものごとの起源や来歴へのまなざしを感じられることから、トークに登壇いただくことになりました。

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トークは、前田監督に進行いただき、映画のテーマや撮影前後のエピソード、教育の現状など、さまざまな話題に及びました。

映画ではいのちの話が大きなテーマとして受け取れますが、本来、関野さんのゼミは、いのちが主題だったわけではなく、一からものを作るといろいろな気づきがある、ということがテーマなのだそうです。開催年によって作るものも違うし、参加する学生によって展開も変わってくる。映画になった2年目のゼミで、たまたま屠りたくない、という人が出てきたので、「いのちになっちゃった」のだそうです。
前田監督は、すべてを撮り終えたときに、すごく心に残っていたのが、関野さんの「植物にだって命はある」という、命に対する定義を考えさせられる言葉で、それを一番大事にするように作ることを考えたとのこと。

関野さんに言わせれば、植物も、口の中の微生物も命。ゼミの中で彼らが嬉々としてやっていた、稲刈りやウコン・しょうがの収穫も、それらを殺すことなのに、動物を屠るときだけ、悲壮な顔をする。ほんとうにいのちを奪いたくないと思うなら、抗生物質も飲めない。たくさんの死の上になりたっている社会に生きているのに、そこまで思いが至らない。生態系全体を考えるようにしたい、と。認識が新たになるお話でした。

ゼミの本来のテーマ「ものを一から作る」に関して、関野さんは、みんな一からものを作るということをやっていない、と指摘します。ゼミが開講されている美術大学でも、彫刻科は木の伐採をしたことはないし、テキスタイルやファッションの科でも桑や蚕は育てたことがない。なんでもいいからひとつ、調べるだけでも、それを作ることで何が起こっているか、誰が利益を得ているか、社会が見えてくる。「一から」の過程で学ぶことは本当にたくさんあり、それを経験することで自分の引き出しが増えるのです。関野さんは、この映画は小中学生に観てほしい、このゼミ自体、ほんとうは小中学生がやるものだとよく話すそうです。
しかしながら、現在の日本の教育現場では、センシティブな親も多く、なかなか難しいようです。
学生も、どんどんセンシティブになっているようです。10年前なら「生を全うさせたい」という学生は出てこないだろう、と。
それには、前田監督が、しみじみ思う、と言う、私たちのいま生きている「きれいな、クリーンな」社会-スーパーではお肉もパックに入って、その来歴も、元の状態もわからない、その状態から始まっていると思っている人もいるような、「包み隠されている」状況、も影響しているように思えます。


来場者から、ゼミの学生たちの食生活に変化はあったのか、という質問がありました。食べるものの原材料をよく見るようになったのだそうです。よく知らない材料があまりにも入っているので、とジュースを飲まなくなった学生や、売っている鶏が何を食べているか分からないから、鶏が食べられなくなった学生がいるそうです。
また、関野ゼミ生は、最初はもちろん美術を志して来ているけれど、卒業すると、だいたい第一次産業-日本を底から支える仕事をしていることが多い、というお話が印象的でした。

映画上映は全国で続き、また小学生向けに書籍化もされています。ぜひ合わせてご覧ください。


『カレーライスを一から作る』先行上映+トークイベント(元町映画館 連携企画) 開催概要
『カレーライスを一から作る』 公式サイト
「つながる食のデザイン展」 開催概要
石塚まこ「ちいさな世界を辿ってみると」(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2017 報告展) 開催概要

2017年10月13日(金)

「つながる食のデザイン展」での展示「不便から生まれるコミュニケーション」に関連して、トークイベントを開催しました。

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「不便から生まれるコミュニケーション」 撮影:片山俊樹

「不便から生まれるコミュニケーション」は、北野に店を構えるブーランジェリーサ・マーシュの店内を舞台に、Inconvenience(不便)=Communication(コミュニケーション)をキーワードに掲げ、売り場でのコミュニケーションのあり方を実験する様子を撮影した写真の展示した作品です。

サ・マーシュでは、販売スタッフがコミュニケーションをとり、今日おすすめや焼き立て、○○に合う…など、お客様が求めている商品を丁寧にヒアリングし、ご購入いただく仕組みになっています。店内にはお客様が使えるトレーとトングは無く、パンを勝手に選びお会計をすることはできません。一見手間がかかり不便にも見えますが、この仕組みがあることで、自分自身だけの選択では出会えなかった商品との出会いや、発見を生むことができます。

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今回の試みでは、このサ・マーシュの商品棚のパンを取り払い、コンビニ商品を並べました。コンビニの商品のパッケージには、商品のほとんどの情報が記載されていて、販売スタッフとのコミュニケーションの必要性がほとんどありません。それをあえてサ・マーシュの棚に並べ、販売スタッフが商品の説明をしているような演出をして撮影をすることで、便利さを求めるあまりにそぎ落とされてしまっているコミュニケーションの重要性や、そこに生まれる付加価値について思考するための実験を行いました。

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シェフの西川さんは、この日のトークのために、売り手と買い手のコミュニケーションを要する「面倒くさいパン」を用意してくださいました。パンを「むく」「取り出す」「包む」など、様々な工程をふまないと味わえないつくりのパン。西川さんの説明がないと、正しい食べ方はわかりません。コミュニケーションがあるからこそ、商品をより楽しめるということを参加者のみなさんと体験しました。

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展示の企画を担当いただいた今津さん、北川さんには、この展示で表現したいこと、また見た人に感じてもらいたいことについて、丁寧にお話をいただきました。最も重要なのは、「売り場でのコミュニケーション」についての価値観は人それぞれであるということ。当然コミュニケーションに必要性を感じない人もいます。お2人は、そんなそれぞれの価値観をリサーチしてみたいと、売り場でのコミュニケーションや、そこから得られる価値や知識について、参加者のみなさんとのディスカッションを提案しました。
それぞれにちがう「売り場でのコミュニケーション」の捉え方を共有することで、人の意見に納得してもしなくても、自分自身の実生活での消費の仕方に、何か変化をもたらすきっかけになったのではないかと思います。


つながる食の連続トーク「不便から生まれるコミュニケーショントーク」開催概要はこちら
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