お知らせ・レポート

2015年10月23日(金)

各界で活躍するトップランナーをお招きする「+クリエイティブレクチャー」。「LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。」の開催に合わせ、英国の公的な国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルのアーツ部長、湯浅真奈美さんをお迎えしてレクチャーを開催しました。

湯浅さんの所属するブリティッシュ・カウンシルの活動の中心はカルチュラル・リレーションシップ。文化を通して関係を築くことを目的に、世界100以上の国と地域に拠点を置き、現地スタッフが様々なパートナーと協働してプロジェクトを実施しています。

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英国における文化芸術の現状
英国では、歳出削減策を掲げる現政権の政策の中で、文化芸術予算も削減されてきました。削減された予算のなかで、どのようにして文化芸術がインパクトを保ち続けるかを示す必要性と、文化芸術に投資することの社会的意義を説明していかなければなりません。
そのひとつとして制作されたものが、アーツカウンシル・イングランド(ARTS COUNCIL ENGLAND)の 「Great art and culture for everyone(質の高い文化芸術をあらゆる人に届ける)」と題した、5つの目標を掲げた10年間の戦略フレームです。これを映像で紹介いただきました。

アーツカウンシル・イングランドは、2013年と2015年に、文化芸術が英国の経済に果たす効果(雇用創出、観光への貢献、文化芸術業界の経済活動の成長)を具体的な数値でも出しています。それだけではなく、数値では測れない「社会的価値」「コミュニティーや人々への価値」を示すレポートも制作しています。
また、文化芸術が人々に対してどういう価値があるか、その効果の検証事業も行っています。

高齢化社会に向かう世界
日本では、2015年の人口に占める65歳以上の割合は26.75パーセント(人口の1/4)、2040年には36.1パーセントになるといわれています。
英国では、2015年の人口に占める65歳以上の割合は17.7パーセント(人口の1/6)、2050年に人口に占める65歳状の割合が1/4(現在の日本の状況)になるとされています。

2012年に発表されたデータでは、日本での認知症の方は462万人、400万人は軽度の日本の認知症を患う人々で、高齢者の1/4が何らかの認知症的症状を持つとされており、2025年には認知症の方が700万人になるといわれています。英国では認知症の方は85万人、2025年100万人、2025年200万人になると想定されています。世界的に見ると、2015年で認知症の方は4600万人と言われており、2050年には3倍が想定されており、医療費の増加なども懸念されています。

このような深刻な状況を、1国では解決できない重大な課題と位置づけ、2013年には英国首相が主導して、G8を集めた認知症サミットを開催、各国共同でリサーチを進めること、介護の在り方を変えること、市民の理解を深めること、認知症の方も生き生きと暮らせるコミュニティーづくり、などが提言されました。
現在では、銀行・金融関係セクターの連携により、認知症の方がパスワードを忘れてお金を引き出せない場合にどのような対応をするのかなど、既存のシステムでは解決できない課題や状況に対しての対応を協議したレポートが作成されています。また、文化芸術セクターに関しても、高齢者、認知症の方に対してどのようなポリシーで活動を推進するかが検討されています。

英国の文化芸術団体の高齢社会における取り組み
文化芸術機関による高齢社会に関する様々な取り組みは、医療や福祉といった既存のサポートに加えて、新たな切り口で課題にアプローチできるものとして注目されています。
ここで、英国における文化芸術団体による高齢者を対象にした取り組みをご紹介いただきました。

ウィットワース美術館
マンチェスター市はAge friendly Manchester(高齢者にやさしいマンチェスター)を掲げています。市内では、文化芸術関連16団体(美術館、博物館、楽団、アート団体、劇場など)が連携し、共同でのリサーチや事業を実施しています。
そのひとつ、マンチェスター大学付属ウィットワース美術館は、館の改修期間だった1年半の間にアウトリーチに注力し、デパートでの展覧会、大学と連携したプロジェクト実施、市郊外ケアホームや病院など、市内のあらゆるところ場所をフィールドに、徹底的に市民とかかわる多くの事業を展開しました。
改修を経てオープンした年には、多くの市民が来館し、ミュージアム・オブ・ザ・イヤー(Museum of the Year)も受賞。
また、教育普及プログラムに定評がある同館は、幼児から高齢者までを対象としたプログラムを展開しています。
その中で、認知症の方やその介護者、高齢者の美術館訪問をサポートするプログラム「Coffee, Cake and Culture(コーヒー、ケーキ、文化)」を紹介いただきました。

マンチェスター・カメラータ
マンチェスター・カメラータは、音楽によるパフォーマンスだけでなく、教育プログラムや人とつながるための部門も擁する室内管弦楽団です。
ご紹介いただいた「Music in Mind(ミュージック・イン・マインド)」というプログラムは、音楽を作る手法を用いて一緒に活動することで、認知症の方とその介護者のQOL(生活の質)を向上すること、認知症の方と介護者の関係性を改善すること、さらに介護の質を向上させることで薬物の摂取量を減らすことを目標にしています。
アルツハイマー協会などの専門的な知見に加え、マンチェスター大学との共同で、医学的な効果に対するリサーチを取り入れるなど、認知症や高齢者に対する音楽の効果を検証するプログラムとしては大規模なものと言えます。

ナショナル・ミュージアムズ・リバプール(NML)
8つのミュージアムの集合体であるナショナル・ミュージアムズ・リバプール(NML)が実施するプログラムで最も特徴があるものが 「House of Memories(ハウス・オブ・メモリーズ)」という介護者のためのプログラム開発と実践です。大学やアルツハイマー協会と協働し、回想法を取り入れた介護者のための、トレーニングとサポートを美術館が行っています。このプログラムは「LIFE IS CREATIVE展」会場においても紹介しており、その中のひとつのプログラム「My House of Memories(マイ・ハウス・オブ・メモリーズ)」はアプリにもなっています。
その他に、美術館のコレクションを基にした対話を促すツール「Suitcase of Memories(スーツケース・オブ・メモリーズ)」、対話を促進する「Memory Tree(メモリー・ツリー)」「Meet Me at the Museum」など多くのプログラムを実践していますが、特筆すべき点は、これらの開発と実践のために英国保健省から予算を獲得していることです。
福祉セクターと協働して美術館が福祉の予算を獲得して実施している事業は、医療にとって代わるものではなく、美術館が持つ様々なリソースやコレクションにより高齢社会に貢献するひとつの好例と言えるでしょう。

エンテレキー・アーツ
ロンドンの南東を中心に、地域社会に根ざした参加型のアートプログラムを多数展開しています。彼らが目指すのは、高齢者なのでできない、高齢なので自分で限界を決めてしまう、また社会が限界を決めてしまう、そして介護施設では選択が制限される(選択の余地がない)、状況を受け入れるばかりで自発的に選択しない、という高齢者に対する様々な限界や制約を乗り越えるための、アートの可能性を示すことです。
また、人とのつながりを強めるために、アートは中心的な役割を果たすことができ、アートを通して全ての人たちの可能性を伸ばし、クリエイティブなコミュニティーを作り、地域で支え合う活動を行っています。

History Pin(ヒストリーピン)
デザインで社会的な課題を解決し、社会での人のつながりをつくる、デザインを通して人々の行動を変えていくことを目的とする社会企業、Shift(以前の名称はWe Are What We Do)が事業化した「History Pin(ヒストリーピン)」をご紹介いただきました。
目的は写真の掲載ではなく、対話のプログラムとすること、社会的なコミュニティーのつながり、信頼やネットワークを高め、孤立を解消することです。英国のレディング(Reading)というまちでの検証を含めた成果もご報告いただきました。スタートアップから、継続させ、事業化してサスティナブルなものとしたプロジェクトの例と言えます。

年代を超えての対話を促進、地域のつながり、財産ともいえる共同のアーカイブに育つこのプラットフォームを、ブリティッシュ・カウンシルは富士通やグローコムと共同で総務省の「ICT超高齢社会づくり推進事業」の採択を受け、日本語化を実施、「認知症フレンドリー」「エイジ・フレンドリー」のまちづくりを促進している富士宮市で活動も実践しました。



実際に人々が出会う機会をつくり、地域の写真を共通の話題にした対話ワークショップを通して、世代間の対話が促進され、ICTはそのコミュニケーションを強化・発展させる役割を担うという英国の事例が日本でも実証されました。

ヒストリー・ピン 日本語サイトはこちら

高齢社会と文化芸術:英国団体の招聘
英国においては、高齢化の進む日本の社会での高齢者のあり方や、地域やコミュニティーで高齢者や認知症の方をどのように支えているのかに関心が集まっています。
ブリティッシュ・カウンシルは、2015年4月に、英国のベアリング財団の助成を得て英国の文化芸術14団体を招聘、日本の社会での高齢者との取り組みやコミュニティーの視察を実施しました。
その様子を映像で紹介いただきました。



最後に、レクチャーの参加者からの質問の時間には、紹介されたプロジェクトの社会的価値や評価などをデータベース(社会的資産)として積み上げる英国での方法や、今後の英国での文化芸術プログラムと施設の展望についてお答えいただきました。

ご紹介いただいたプロジェクトに共通するのは継続させることの重要性、地域やコミュニティーの人々が続けていくこと、継続できる仕組みが大切だということです。
KIITOにとっても、高齢化社会に対する取り組みを継続するなかで、プラットフォームとしての役割を果たすための示唆に富むお話をうかがえた貴重な時間となりました。
また、文化芸術施設だから行うのではなく、社会やコミュニティーの一員としてできることを、個人的に再考する機会にもなりました。



LIFE IS CREATIVE展「高齢社会における文化芸術の可能性 英国を事例として」レクチャー開催概要はこちら
LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。開催概要はこちら

2015年10月22日(木)

LIFE IS CREATIVE展に合わせてKIITOアーティスト・イン・レジデンス作家として招聘したデザイナー・インベンター、クロエ・マイネックさんのアーティストトークを開催しました。

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クロエ・マイネックさんは、「Music Memory Box」(以下MMB)という認知症の方とその家族向けのプロダクトを開発しており、英国でも高い評価を受けているデザイナー・インベンターです。今回は、LIFE IS CREATIVE展の会期中約1ヶ月、神戸に滞在し、神戸版MMB制作のためのリサーチを行いました。神戸の人たちとコミュニケーションを取りながら、双方の経験と今後の発展に活かそうという試みです。

アーティスト・トークでは、前半は、どうしてMMBを作るに至ったか、どのようにブラッシュアップしてきたか、神戸での滞在制作の内容、所感などスライドショーを使いながら話しました。


クロエさんは、英国南西の都市・ブリストルのメディアアーツセンター・WATERSHED内にあるPervasive Media Studioを拠点に活動しています。Pervasive Media Studioはアーティスト、研究者、振付家、リサーチャーなどさまざまな専門を持ったクリエイターが協力し合って新しいものを作っているスタジオです。

認知症の方向けのプロダクト開発に取り組むきっかけとして大きいのは、2012年ごろに、高齢化がこれからの英国の社会課題の中で最も大きなものとなるだろうという報道を目にしたことと、自身の祖母が認知症になったこと。祖母はピアノが得意で、親族を思い出せないくらいになっても、音楽は50曲ほども覚えていたり、口ずさんだりしていたことから、音楽の力を認識するようになったそう。

MMBは、基本的には特定の個人のために作られます。靴箱程度の大きさの箱に、フタの内側に、本人の思い出の写真がいくつか挟むところがあります。
箱の中には、小さなオブジェがいくつか入っておりICチップがついています。箱の真ん中のセンサーにかざすと、オブジェと関連がある音楽が流れだします。好きな音楽がかかると、不安な気持ちがなごんだり、写真と合わせてみると、音楽と関連のある写真を指差したり、音楽が人の感情や記憶にダイレクトに働きかけていることが実感されます。オブジェは鳥、猫、オペラハウス、刺繍糸などさまざま。どんなオブジェや音楽をおさめるかは、本人や家族への丁寧なインタビューを通して、本人が憶えておきたい思い出や、家族に関する記憶と結びつくようなものを選びます。オブジェは思い出の品そのものではなく、レプリカやミニチュアをクロエさんが作っておさめます。オブジェを手に取った感覚も思い出の引き金になるので、素材の違いも重要です。
2012年以降、個人向けや施設向け、レジデンスプログラムの中でなど、さまざまなシチュエーションで制作されてきました。

今回の滞在では、デイセンター、グループホーム、特別養護老人介護施設、個人宅、など、さまざまな介護状況にある方の話を聞き、リサーチを行い、MMBが日本でも役に立つのかどうかの検証を試みました。
リサーチでは、懐かしい音楽を聴いてもらったり、好きな音楽やそれにまつわる思い出を聞いたりしました。また、展覧会の会場内でも、思い出の音楽とエピソードのリサーチシートを設置し、来場者に書いてもらえるようにしました。
印象的だったのは、大工仕事が得意だった90代の男性が、自身が認知症になる前に、テレビで見て知った、ぼけ防止のためのボードゲームのようなものを、ネジと木の板で「ボケボーシ」と名前をつけて自作し、周囲の仲間にもプレゼントしていた、というエピソード。実物を出して、その思い出を話してくれるご家族も楽しそうに話してくださり、家族がとても協力的で助けあっていることが感じられたとのこと。

須磨在宅福祉センター(須磨区) グループホーム「希望の家」(兵庫区)

また、北名古屋の「昭和日常博物館」では、昭和30年代のまち並みを再現し、所蔵品を利用した回想法のワークショップを積極的に行っているということで、視察に行きました。対象は認知症の方に限らないようですが、竹トンボやお手玉で、60~80代の方がすごくいきいきと楽しそうにされていたとのこと。

MMBはまだプロトタイプの段階ですが、帰国後、製品化へ向けて具体的に工場とのやりとりなどを進める予定とのことです。

後半は、実際にMMBをデモンストレーションしてみせた後、来場者との質疑応答を行いました。といっても、質問者のなかには、親が認知症である、介護の現場で働いている、という方もおられ、MMBの利用の可能性について具体的な質問、感想や提案が出て、つっこんだ意見交換のような状況になりました。

介護職の方からは、ケアホームなどに入所されるとどうしても分断されてしまうので、本人のためもあるが介護者のためにも、MMBのようなものがあれば、個別的なケアがしやすく、ツールとして有効だと思う、とのコメントが。クロエさんは、ケアホームでの取材の際、個人の部屋にあまり荷物が持ち込まれていなくて、ものが少ないことに気がつき、思い出の品があるなら1つ2つでも持ち込んでおけば、記憶をよみがえらせる引き金になって有効だと思う、と言っていました。

日本では終活が盛んになってきているから、認知症になる前の備えとして、自分のために作っておく、というのも考えられるのでは、というコメントも。クロエさんは、それは、その人自身が好きなものを入れることができるから、理想的な使い方かもしれない、たとえば70歳の誕生日プレゼントとしてプロモーションするとか。できるだけいろいろな人に使ってもらって、使い道を見つけてほしい。「Music Memory Box」を「Dementia(認知症) Box」としなかったのも、使い方を限定したくなかったのが理由だ、とのこと。

終了後は来場者からアンケートをもらいましたが、丁寧に感想を書いてくださる方が多数でした。クロエさんはアンケート集計に対して丁寧にメモを取っていました。これからの製品開発に活かしてくれることと思います。

滞在期間が約1ヶ月と短かったので、今回は滞在期間内での完成を目標とせず、リサーチに重点を置いて活動しました。帰国後に、滞在制作でのリサーチをもとに、神戸版のMMB制作を進めてもらいます。
2016年2月頃に、完成した神戸版MMBをKIITOの中で展示する機会を設けたいと考えています。またみなさんにも進捗をご報告いたしますので、楽しみにしていてください。


開催概要
KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015 クロエ・メイネック
LIFE IS CREATIVE展 クロエ・メイネック アーティストトーク
「LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。」

2015年10月21日(水)

KIITOのクリエイティブラボスペース入居クリエイターで、秋田県発行のフリーマガジン『のんびり』のほか、吉本興業発行の『おおらかべ新聞』など、編集を軸にローカルデザインを考える編集者、藤本智士さんを講師に迎え、整理しないまましまいこんでしまった写真を持参し、たった一冊のアルバムにまとめる「アルバム整理ワークショップ」を開催しました。

終活ラボでなぜアルバム整理ワークショップなのかというと、終活に取り組む人の多くの方のその動機に「子ども、孫に迷惑をかけたくない」という想いがあるようで、後世に残しても仕方がない、と、写真やアルバムを捨てる方が多くいらっしゃるようです。そんな写真を捨てる前に、とっておきの一冊を作ることを目指しました。


はじめに、藤本さんから東日本大震災とアルバムについてのお話がありました。
震災後、津波によって流されたものの中でも、最も大切に扱われたものの中に写真アルバムがあったそうです。
亡くなられた方のご遺体を捜索する際、道なき道を歩き、瓦礫をかき分け、かつて家だったもの、店だったもの、商品だったもの、あらゆるものが破棄される運命にあるものとして扱われました。そんなか、瓦礫から発見された写真アルバムだけはとても大切に一箇所に集められていったそうです。そして、避難を余儀なくされた人たちが一時帰宅の際、まず持ち帰るものの中にアルバムが含まれていたそうです。
写真とは、私達にとってそれだけ意味深く、かけがえのないものになりうるということをお話いただきました。


昨今、写真はデジタル化が進み、プリントされることはかなり減ってきています。
代わりにPC保存やクラウドフォルダに保存されたりします。それらの容量は進歩するにつれて増加し、それと足並みを揃えるようにシャッターを押す量も増加しています。
藤本さんはこのことに疑問を覚えたそうです。撮られた写真たちはほとんど見返されることもなく、ただただ蓄積され、データとして残されたものは実は故障や事故で一瞬で消え去ってしまいあとすら残らない頼りなさがあるからです。写真とはプリントされてこそ価値がある、と藤本さんは話されました。

次に整理と整頓についてのお話に移りました。
整理と整頓の違いをご存知でしょうか。整理とは「必要なものが必要なときに取り出せる状態」を指し、整頓は「整然と綺麗に並べられている状態」を指すそうです。
写真アルバムはどうでしょうか。写真アルバムは時系列に並べられることが基本とされているが、それは整頓されているだけで、整理されていないのかもしれません。
アルバムにもならず、プリントしたまましまいこんでしまっている写真、これはどうでしょうか。もはや整理も整頓もなされていません。持っていることさえ忘れてしまうようなもの、これは仏教の言葉では「無明」と言われるそうです。無明とは忘れたつもりでいても、心はちゃんと覚えていて、「どうしようかな」と思い続けている状態です。こういったものが増えると無意識の中でも記憶のデータベースを混雑させていしまい、脳の働きを低下させてしまうのです。この無明の領域を減らすためにも、整理整頓の滞った写真をアルバムにまとめることはとても良い、とお話がありました。

いよいよ、アルバム整理に移ります。
まずは皆さんの自己紹介と、お持ち頂いた写真がどういったものかを紹介していただきました。
数年前に行った海外旅行のお写真をお持ちになった方や、ご両親の写真を整理したいのでその練習ということでまずは練習用にご自身の写真をお持ちになった方、シニアの方の自分史作りのサポートに役立てたいということでご参加いただいた方など、様々な目的の方にお集まりいただけました。
目標はとっておきの一冊のアルバムです。


今回の整理には、「いろは整理術」を用います。
大阪のある写真屋の奥さんが開発した整理方法です。
まずは、アルバムのページ全てに「いろはにほへとちりぬるを・・・」の48文字を各ページに2文字ずつ書き込んでゆきます。合計24ページになります。
そして、その文字を頭文字としたタイトルを考えながら、写真を選びます。
例えば、「いい笑顔!」と思った写真は「い」のページに貼り付けてタイトルを書き込む、と言った具合です。



深く悩まず、どんどんやってゆきます。
また、誰かと相談しながらやることも大切です。一人でやっているとのめり込んでしまうので、誰かに相談したり、どっちかを選ばなければいけない時も他の人の力を借りれます。
家族でやるのもおすすめです。いろいろな写真を見ながら、この時はこうだったんだよ、と語り継ぐことができ、形式張ったエンディングノートよりも想いを込めてこれまでの”人生”を語り継ぐことができます。



写真の選定で悩まれる方や、すぐに決めてどんどんいらない写真を捨てていく方や、ザクザクと切り抜いて貼り付けていく方など、同じアルバムでも様々なものが仕上がっていく様子が伺えたのがとても印象的でした。


最後に、皆さんの出来上がったアルバムを紹介してもらいました。




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LIFE IS CREATIVE展 ワークショップ「アルバム整理ワークショップ」
http://kiito.jp/schedule/workshop/article/14411/

LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。
http://kiito.jp/schedule/exhibition/article/13681/

2015年10月21日(水)

LIFE IS CREATIVE展「公園ラボ」ワークショップ「公園×シニア×健康の未来を描こう」第3回目を開催しました。
3週連続のワークショップも今回で最終回。
「こうだったらいいな」という公園を思い描き、自由に表現してもらいます。アウトプットの方法は自由。

最初に1時間ほどアイデアと制作の時間を設け、その後、皆の前で発表してもらいます。
画用紙や粘土を使って制作する人も。皆さん真剣ながらも、子どもに返ったように楽しそう。

 
 
約一時間後、いよいよプレゼンテーションの時間です。
発表内容は、どんぐりの形の公園の中にどんぐりの足ツボ押しが敷き詰められている、といった空想的なアイデアから、公園の使い方や作り方、さらに「公園」の考え方自体を捉え直すことへの提案まで実に多様。公園に親しみやすい名前を付ける、公園内は携帯電話をOFFにしてコミュニケーションを促進するなど様々なアイデアが出ましたが、皆、公園を開かれた場所にしたいという思いは共通しています。
 
 
 
最後に、一人3票持って、共感したアイデアに投票してもらいました。
最も皆の共感を得たのは、写真左下の一見不思議な形の遊具。実はこれは健康器具で、いろいろな身長の人が使えるように考えられた、背伸ばし器。
この器具を考案したのは、普段子どもに美術のワークショップを開催する、造形作家の女性です。これまでの健康器具の形にとらわれない柔軟な発想で、遊び心満載です。健康器具は大人が対象なのですが、この器具なら子どもから大人まで、多世代が利用することができます。見て楽しい、使って楽しい未来の健康器具のアイデアです。
 
 
発表が終わった後、簡単な懇親会を開きました。皆さん、公園話に花が咲きます。参加者同士、出来上がった作品を熱心に鑑賞していました。
今回皆さんが制作した作品は、LIFE IS CREATIVE展の残りの会期中、公園ラボ内に展示します。

今回の展覧会では、公園ラボ内に来られた方々にヒアリングをしました。公園に対する思いは様々ですが、中には暗いイメージすら持っている方も多いことがわかりました。本来、公園は誰もが集い、楽しむことのできる場所であるはず。
そんな公園のことをもう一度、楽しく考えてみようというのが今回のワークショップです。大学生やお子さんを持つお母さん、デザイナーなど様々な人たちが集まりました。

このワークショップは、11月から始まる「+クリエイティブゼミ vol.18 まちづくり編 これからの公園のあり方について考える part.2「公園×健康」」へバトンタッチします。
ゼミでは約3ヶ月にわたりグループワークを行い、実際の公園での実現に向け企画を練り、最終回にはプレゼンテーションをします。実現に向け動くこちらのプログラムもぜひ、ご期待ください。
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LIFE IS CREATIVE展 ワークショップ「公園×シニア×健康の未来を描こう」
http://kiito.jp/schedule/workshop/article/14212/

LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。
http://kiito.jp/schedule/exhibition/article/13681/

デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2015年11月から開催するイベントについてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)

1日目:2015年10月9日(金)

お気に入りだったけど、とっても好きだったけど、着ることが無くなってしまった服を、リメイクしてもう一度自分で着れるようにし、最後に自分で来てファッションショーにお披露目するというワークショップを開催しました。

1日目は、顔合わせと自己紹介を行いました。
今回の参加者は、60歳以上の女性4名。日頃からリメイクをし慣れている人もいれば、今回のワークショップでリメイクのスキルを身に付けたい人もいました。


各自持ってきたリメイクしたい服を出し、それぞれの服の思い出やリメイクしてどういう風に着たいかを話してもらいました。
ある参加者は、元小学校の先生で、当時入学式などに来ていたお気に入りのピンクのブラウスを、型パットが入って古い形になってしまった袖をどうにかして着れるようにしたいとのこと。他にも、親から譲り受けた着物の生地を使って、お出かけ用のワンピースをつくるという人もいました。
既に日頃からリメイクをしている参加者は、過去に自分でリメイクした服も持って来ており、それらを講師・他の参加者と一緒に来てみながら、リメイクの技を共有し合いました。


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2~4日目:10月10日(土)、16日(金)、10月17日(土)

各自リメイク作業。会場に来て作業をする人もいれば、自宅で作業を進める人もいました。
まずはつくりたい服のかたちの型紙をつくるところからはじめた。つくる工程では、講師からリメイクに必要な道具の紹介もあり、参加者が次回までに新たに道具を揃えている場面も見受けられました。
服のサイズなどは、講師からのアドバイスもあり、今後身体の動きが鈍くなった時でも着やすい工夫がなされていました。


ある参加者は、古い男性着物用の総絞りの帯を、チュニックにリメイクしました。あえて絞りをアイロンで伸ばし、絞りでない端の部分を襟に使うなど、作業が進むにつれてアイディアも色々と思い浮かんでいる様子でした。途中で何回か試着をして、首回りや袖周りの大きさの確認、身丈の調整等を行いました。


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参加者は、つくる中でリメイクのスキルを身に付けることはもちろんですが、つくることによるおしゃれに対する気持ちの高まりや、できた服を着て誰かに見せたいという、気持ちがだんだんと外へ向いていくように感じました。

さあ、各自どんな服にリメイクしたかは、「ライフ・イズ・クリエイティブファッションショー2015」でお披露目です!


LIFE IS CREATIVE展 恋愛ラボ「おしゃれ着リメイクワークショップ」
http://kiito.jp/schedule/workshop/article/14178/

LIFE IS CREATIVE展 「ライフ・イズ・クリエイティブファッションショー2015」
http://kiito.jp/schedule/event/article/14696/

LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。
http://kiito.jp/schedule/exhibition/article/13681/

2015年10月18日(日)

誠光社(元恵文社一乗寺店店長)の堀部篤史さんをお招きし、シニアをテーマにした本を題材に、トークイベントを開催しました。トークでは、実際に本を手にしながら、物語の中でのシニアの描かれ方やライフスタイルなどを、写真や映像をまじえながら紹介。一冊の本からその他の文化へと広がる、読書の愉しみを知る時間を、参加者のみなさまと共有しました。

今回、堀部さんにご紹介いただいた本は、トーク会場となったLIFE IS CREATIVE展のシニアメディアラボ内、「プロの書店員が選ぶ65歳からの一冊」で堀部さんに選書いただき、展示していた本です。

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選書には、今回のトークの講師である誠光社の堀部さんをはじめ、他にも京都から、ホホホ座の山下賢一さん、善行堂の山本善行さん、大阪からスタンダードブックストアの中川和彦さん、そして地元神戸から、ジュンク堂三宮店の朝野道則さん、ポレポレ書舗の今野雅彦さん、Fabulous OLD BOOKの村田智さんにご協力いただき、魅力的なシニアが登場する本や、晩年に魅力を増した作家の本など、さまざまな切り口で5冊ずつ本を選び、ご紹介いただきました。(各書店員さんの選書内容はこちら

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今回、堀部さんには選書していただいた5冊の他にも、たくさんの本を、さまざまなエピソードとともに紹介していただきました。小説や文学の話はもちろん、芸術やアール・ブリュット、漫画や映画など、さまざまな切り口でシニアに関する本の紹介をしていただく中、堀部さんからは「老人力」という表現が頻繁に出てきていました。

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「老人力」とは、もともとは現代美術家の赤瀬川原平氏の著書で、90年代後半にベストセラーとなった本のタイトルであり、物忘れやため息、独り言など、年をとるに連れ増えてくることを、普通は減退、低下と捉えますが、赤瀬川氏はそれに「老人力」と名付け、些細な事を気にせず、大らかであるという一つの魅力に置き換えたのだといいます。

メディアは、若々しさや美しい青春といったイメージを頻繁にとりあげ、シニアに焦点があてられたものはあまり多くは見られないが、歳を取り、感覚が鈍くなっていくということは、消して悲観することではなく、とても重要なことだといえるのではないか。
若い頃は、繊細で傷つきやすく、恋愛や自己実現にとらわれ殻に閉じこもったり、自分自身が家庭や地域のコミュニティの一員であることがつまらなく感じたりする。
それは、年を取り敏感さを摩耗していかなくては、辛いことなのかもしれない。鈍くなるということは、家庭や暮らしを守るためのコツであり、大切な能力なのではないかとお話していただきました。

また、その鈍さを持つことに寄って、脇目もふらず自分の趣味に没頭できたり、作為の無い純粋な作品を生み出すことができたり、人生に新たな広がりをもたらすことが多くあるのではないかとのことでした。

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今回、堀部さんが紹介してくださった、高齢を迎えて新たにジャズ音楽に目覚めた植草甚一氏のお話や、ミステリー小説に登場する若者の暴力に対峙する老人の姿、ロンドンから一歩も外に出たことのない1人の高齢男性の日常を追った写真集など、多様なシニアの生き方、描かれ方を、本を通して覗き見ることで、自分自身がなりたいシニア像や、これからの年の重ね方を考える、一つのきっかけとなるイベントとなったのではないでしょうか。

LIFE IS CREATIVE展  「トーク・アラウンド・ザ・ブックス」
http://kiito.jp/schedule/lecture/article/14338/

LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。
http://kiito.jp/schedule/exhibition/article/13681/

2015年10月17日(土)

「LIFE IS CREATIVE展」食ラボ企画として開催した「男・本気のパン教室」の成果発表として、パン教室メンバーと子ども店員による1日限定のカフェ「ライフ イズ クリエイティブ カフェ」をオープンしました。パンとドリンクのセット100円で提供しました。


パンづくりは、50歳以上の男性限定で集まった6人が、神戸中央区・北野にあるベーカリー「サ・マーシュ」の西川功晃シェフに事前に2日間指導していただきました。本番前日にもメンバーが集まり、パンづくりやオペレーションの確認を行いました。練習では失敗を重ね、本番では今まで一番良いできのパンを焼くことができました。パンづくりが間に合わないほど大盛況でした。子ど店員も、はじめは少し恥ずかしそうでしたが、カフェが忙しくなるにつれ、声も出るようになり、大忙しのカフェをしっかり切り盛りしてくれました。お客さんもパンがとてもおいしいと満足していただけました。
 
 
 
販売のパンは、チーズと野菜の入ったパンの2種類を作りました。材料の計量から始まり、生地を作ります。お店での練習を思い出しながら、各作業を分担しながら行いました。生地を作る人、具材を混ぜ込む人、発酵を管理する人、メンバー同士声をかけ合いながら手際よく進めていきました。前日練習でしっかり発酵時間が取れず失敗していましたが、本番は温度管理もバッチリでした。焼く準備ができたら、オリーブオイルをしっかり塗ってオーブンに入れます。焼き時間の間も次の準備に移ります。15分後、1回目のパンが焼きあがりました。焼き目もきれいにつき、おいしそうなパンが焼けました。メンバーも満足な出来です。パンを子ども店員に渡し、お客さんへ提供してもらいます。休憩する間もなく、100セットのパンを焼き上げました。さすがにメンバーもお疲れの様子でしたが、おいしいパンが焼け、ほっとしていました。
 
 
 
小学校3年生から中学校3年生までの子どもを募集し、集まった6名は店員をするのは初めてです。サポーターのお姉さんに挨拶や注文の聞き方、ドリンクの提供方法、お客さんへの渡し方など、細部までしっかり指導していただきました。顔を合わせるのは初めてなので、挨拶の声も小さく、少し心配でしたが、カフェが始まると、次第に声も大きくなり、店員として一生懸命取り組んでいました。コーヒーの提供は地域で行われている介護予防カフェなどでも使われているバリスタマシーンをネスレ日本様よりお借りしました。オープン中は、うれしいことにひっきりなしにお客さんが訪れ、とても忙しかったですが、子どもたちも楽しんでくれたようです。
 
 
閉店の16時に限定100セットがちょうど完売しました。閉店後みんなで片づけを行い、振り返り会を行いました。パンづくりメンバーは、お店での練習中は本当に自分たちだけでパンを焼くことができるのか不安だったようですが、本番で自分たちも満足のいくパンをつくることができ大変良かった、今後もこのメンバーでパンづくりしたいとおっしゃっていました。子ども店員もとても楽しかった、店員はこんなに大変なのだと初めて分かったと、今までにない経験ができたようです。またこのメンバーでチャレンジしていければと思います。パンメンバーの次の目標は「あんパン」とのことです。地域で行われているさまざまな活動にも、パンづくりで学んだ知識を生かし活躍しいってもらいたいと思います。


男・本気のパン教室
http://kiito.jp/schedule/workshop/article/13921/

LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。
http://kiito.jp/schedule/exhibition/article/13681/

2015年10月17日(土)

KIITOのクリエイティブラボスペース入居クリエイターであり、吉本興業とタッグを組んだ「おおらかべ新聞」(大阪)や、秋田県庁とのプロジェクト「のんびり」など、地方の魅力を発信し続ける編集者、藤本智士さんを講師に迎え、神戸のまちの魅力的なシニアを伝えるための壁新聞を一日で制作。取材から編集会議、原稿作成、デザインまで、すべてのプロセスを行い、編集の力を学びました。

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初めに藤本さんに、これまでに制作された雑誌をご紹介いただきながら、編集のコツについてお話ししていただきました。藤本さんの言葉を胸に、さっそく神戸のまちへと飛び出します!

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【取材】
2班に別れ、取材スタート。1つの班はKIITOを出てすぐに出会ったシニア男性について行き、神戸港へとたどり着きました。船着場でたくさんの実りあるエピソードを得たよう。藤本さんの言葉の通り、素敵な偶然の出会いができたようでした。
もう1つの班は、一期一会の出会い探しに苦戦し、時間を延長して再挑戦。今度は予想外になんとチームでの取材ではなく、公園やタクシーの車内などへの1人1人に別れての単独取材をして帰ってきました。

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【成果発表】
順調にさまざまな人と出会い、短時間で取材を終えた班と、苦戦しながらも個に寄ったエピソードを得て帰ってきた班、それぞれに成果のある取材内容となりました。自分たちの良かった点、悪かった点を見つめました。

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【原稿執筆】
鉛筆を取り、原稿を書き上げていきます。取材で見えたことの中から、一体どんな点が面白かったのか、何が読む人の興味を惹きそうか、整理していきます。文体に出るそれぞれの個性を生かしながら、ひとつの記事に仕上げます。

【デザイン作業】
原稿執筆と平行して、undersonの堀口勉さんが、ライブエディティングでかべ新聞のデザインを仕上げていきます。原稿や、参加者の描いたイラストなどの素材が、みるみるうちに一枚の新聞の中に落とし込まれていきました。

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【かべ新聞完成】
朝に集合し、日も沈んだ頃、ようやく一枚の新聞が仕上がりました。自分たちが取材した記事がきちんと形になったことに、参加者の皆さんもとても満足されたようでした。

神戸港で8年間信号旗を振るアクティブなシニアや、昔から神戸に住んでいるシニアだからこそ知っている豆知識の紹介など、読むと元気になる、神戸ならではの新聞が仕上がりました。
壁新聞はこちらからご覧いただけます。

LIFE IS CREATIVE展  「編集を学ぶかべ新聞部」
http://kiito.jp/schedule/workshop/article/14317/

LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。
http://kiito.jp/schedule/exhibition/article/13681/

2015年10月17日(土)

LIFE IS CREATIVE展「シニア防災ラボ」内の企画、トークセッション「高齢社会における新しい防災のカタチを多面的に考える。」を開催しました。

神戸市兵庫区前入江地区防災福祉コミュニティ委員長である六條進さんと、滋賀県高島市の災害支援ボランティアネットワーク「なまず」の代表である太田直子さんにお越しいただき、NPO法人プラス・アーツ理事長永田宏和と共に、超高齢化社会に求められる2つの防災のカタチ「高齢者を対象としたカタチ」と「担い手としたカタチ」 について考えました。

 
まずは永田より、地域防災の課題についてNPO法人プラス・アーツが実施している楽しみながら防災を学ぶプログラム「イザ!カエルキャラバン!」を通して問題提起をしました。
「シニア防災ラボ」では、イザ!カエルキャラバン!が全国各地で多数開催されている一方、高齢者の多い地域だとおもちゃが集まらない、開催が大変だという声もあり、もっと高齢者に寄り添った新しい防災のカタチはないのかと考え、全国の開催団体にヒアリングを行いました。

●幅広い世代の参加を促す
東京都墨田区「一寺言問を防災のまちにする会」の事例では高齢者中心の活動を続けているが、地元の若手建築家などを積極的に巻き込み多世代で防災活動の今後について話し合ったり、大学の研究対象として毎年ゼミ生が集会所の会議に出席し、高齢者と一緒に毎年新しい防災訓練の企画を考えたりしています。

●かえっこをしない簡単なイザ!カエルキャラバン!へ
防災訓練がマンネリ化していて何か新しいものに変えたい―。しかし、地域では急にシナリオを変えることが難しいということも分かってきました。垂水区で行われているミニカエルキャラバンや調布市上ノ原まちづくりの会が行う「防災チャンプになろう!」は実施が容易なスタンプラリー形式で行われています。子どもが少なく高齢者中心でも無理なく行える身の丈のあったスタイルにアレンジして続けている地域もあります。

●世代を超えて日頃のご近所付き合い、他防コミとの連携
防災訓練の集まるメンバーの顔ぶれがいつも同じー。本山第二防コミでも他の防コミと同じ問題を抱えていました。
年間通じて様々な行事に防災訓練を取り入れている本山第二防コミが、地域に溶け込み、また地域の団体活動に寄り添うことや他防コミだけでは解決できない課題を共に考え、連携することで、新しい輪や取り組みでの発見が広がっています。

●介護の技を取り入れる
会場にはリサーチでヒアリングをした復興庁復興支援専門員の川池知代さんもお越し頂いていおり、被災した宮城県山元町で行われている「老老避難」での工夫もお聞きしました。
高齢化する災害公営住宅のコミュニティづくりの一環として避難訓練が行われ、毛布で人を運ぶ際に介護の技がとても役立ち、膝を立てて肩と一緒に持って体を横にするといった簡単に体を動かす方法や腰を痛めない持ち上げ方なども説明がなされているという事例を教えて頂き、そこから「高齢者のための防災」には介護の世界の技のスキルや商品が参考になるのではないかというヒントが浮かび上がりました。

このように全国各地で様々な高齢者防災の工夫がなされている事例が紹介され、「無理なくコンパクトに訓練を行う」という選択肢がある中で、そこにプラス・アーツが何かしら提供する価値、必要性があるのかという問題提起がなされました。
 
 
続いて、六條さんより、兵庫区入江地区で行われている「ぼうさい運動会」の事例をご紹介いただきました。
「防災○×クイズ」や「畳に載せて搬送する体験」など実践的な取り組みが多数行われており、主に高齢者と主婦の方や女の子が集まりにぎわったそうです。
誰でも楽しめる防災ゲームをご自身で探され、積極的に防災訓練に取り入れているのが印象的でした。メンバーは平均72歳。飽きがこないように内容を変えて、2年に一度ぼうさい運動会のような企画を実施。開催の度に新しい防災知識を覚えて帰ってもらうようにしているそうです。2年前は200人ほどが集まり、今年は250人を集めたいと意気込まれていました。

次に滋賀県高島市「なまず」代表の太田さんからお話をして頂きました。2001年から52000人ほどの小さな街で活動をされております。(高島市は高齢化率が約30%)元々社会福祉協議会で勤められていた際に阪神・淡路大震災の教訓をたくさん学び、仕事以外でも防災にのめり込み、地域の皆さんに声をかけて団体を立ち上げたそうです。被災をしたメンバーは誰もいないので方法を考えないと何も伝わらないということで様々なアイデアが生まれたそうです。地域防災出前講座では全員参加型を狙い、漫才や腹話術、クイズを取り入れて盛り上げているそうです。年間70回実施されており、中身を少しずつ変えて子ども向け高齢者向けとアレンジを加えられています。

最後に、参加者も一緒に「高齢者が主体となる防災のカタチ」について話し合いました。
(以下主な質問)
●防災ゲームなどを作っているのが楽しそうに見えたが?(永田)
(六條氏)中心メンバーで考えて、こんなものを作っているけどどうですかと相談をしている。
(太田氏)アイデアを考えてみんなで内容を決めてメンバーに集まってもらって一生懸命作っている。文化祭、クラブ活動のように楽しんでやっている。

●一緒に作る仲間をどのように増やしているのか?(永田)
(太田氏)毎年研修に行き、参考になる模型などがあったら、作れる人に頼む。その人はスキルを活かせるので一生懸命になる。
(六條氏)消極的な方が多いが、種目別に任せていく。担当町会からこれをやりたいという声はまだないが、担当種目について町会ごとに考えるという感じだ。

●男性の高齢者がなかなか社会参加できないと言われているが、いい呼び水はあるのでしょうか?(永田)
(太田氏)「なまず」サークルのメンバーは様々なサークルにも参加している。防災サークルにもいつの間にか入っているという感じだ。
(六條)「なまず」はかなり成熟している。何か面白いことをちょっとずつやって、役割を少しずつ担ってもらって、変わっていく感じでしょうか。

ユニークで本質的な回答も会場から出ました。惹きつける方法の一つは「飲み会」。「飲み会」があれば必ず参加する。消防団でも「飲み会」を楽しみに来る人は多い。もう一つは、ゴルフ三昧の生活をしていた方が「男にはDuty(義務)が必要なんだ」と言った。ゴルフも毎日やっていたら飽きてしまう。人から頼まれるとか、頼られるとか、ある種義務感があれば、自分の特技を活かせるのではないか。お酒の場で聞き出したり、頼んだりするといいのではないか。

(永田)根無し草になってしまっている人が根をはれる場の作り方が大事なのでは。いきなり防災組織づくりというのではなく、関われるプロセスを踏んで、仲間を作っていく。これが大事なのでは。
(川池氏)高齢者と一括りにせずに、それぞれの自負やプライドを尊重して、趣味や好きな事の延長から引っ張っていく。おじいちゃん、おばあちゃんと言わずに「人生の先輩」と見てみると関わり方が変わるのでは。60歳だとバリバリ元気で、レッテルを貼られるとやる気をなくしてしまうので、新しい呼び方があってもいいのでは。

まとめ:
本トークセッションでは大変示唆に富んだキーワードが飛び交いました。「お酒とDuty」、「楽しく防災をやっている」「無理をしない」「自分で作っていくプロセス」「誰かのためになるというモチベーション」「いきなりではなくプロセスを踏んで担い手を増やす」そこから、特技やスキルが見えてきたら、頼みやすい関係性が生まれてくる。そのためにはつなぎ手(地域の世話役)が必要ということで締めくくりとなりました。
 
 
 
LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。開催概要はこちら

LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。トークセッション「高齢社会における新しい防災のカタチを多面的に考える。」開催概要はこちら

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