お知らせ・レポート

2015年6月27日(土)

未来のかけらラボvol.6 トークセッション「水俣からの新たな価値創造―甘夏ミカンから国産ネロリが生まれるまで」を開催しました。

今回お招きしたのは、熊本県水俣市で甘夏ミカンから抽出する国産ネロリの開発・製品化に尽力されている、ネローラ花香房の森田恵子さんです。
ディフューザーからのやさしい香りと、紅茶に甘夏ネロリを数滴たらしたフローラルティを楽しみながら、多岐にわたるお話をお聞きしました。

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ネロリ
ネロリはローズ、ジャスミンと並んで世界三大アロマの1つ。ビターオレンジの花から抽出され、甘いだけでなくバランスが良い香りで、パーフェクトなアロマと言われる。
紀元前から地中海地域の生活の中の一つの習慣として、傷薬、胃薬(海外で展示会などに出展すると「昨日飲み過ぎて胃の調子が悪いから、ネロリを飲ませて」と言ってくるアラブ系の人が必ず1,2人いるほど)、化粧水、儀式、お菓子など万能に活躍し、今も作られているもの。

甘夏ネロリは、甘夏ミカンの花を蒸留器にかけて作る。甘夏ミカンの花のネロリ成分はとても細かい分子のため、近年、健康への影響が問題になっている乳化剤(界面活性剤)がいらない、天然の化粧水を作ることができる。

甘夏ミカン
甘夏ミカンは日本の固有種。作りやすさ、花付きの良さが特徴。あまりにも実がなるので、実を取る人にとっては摘果が追い付かず大変なくらい。花摘みは摘果作業を少し減らすことになって、農家にとっては両得になっている。
むきやすくて甘い伊予柑やデコポンの登場によって、甘夏栽培が不振になってきたところに、甘夏ネロリ事業がぎりぎり間に合った!というところ。農家の+αの助けになっている。

水俣
水俣病があって、すばらしい海産物があったのに漁業は全面禁止になってしまった。代わりに、甘夏栽培が奨励された。当時の強い農薬をまいて育てたところ、体調を崩す人が出た。それではいけない、できなければできないでいい、悲劇を繰り返さないように、と無農薬で栽培し始めた。
水俣が無農薬で栽培していたことが、ここならひょっとしたらネロリを作れるのかな、と思ったきっかけになっている。


人工アロマの未知の危険性
アロマの世界はとても深い。化学合成されたアロマについては、未知の問題点が指摘されている。帝王切開すると羊水から柔軟剤の香りがする/香気成分が経皮吸収されて子宮に蓄積する/香気成分が情動、感情をつかさどる大脳辺縁系に直接脳に影響を与える? など。柔軟剤の警告表示も強い表現に変わってきている。

怖いのは、飲んで溜まるわけではなく、皮膚を通して溜まるということ。水俣病の例が思い返される。これからの未来をどう考えるか?甘夏ネロリの活動も、こういったことへの注意の喚起ができるようなものになればと思っている。

今後の展開
オーガニック志向が強くなってはいるが、国内の消費者志向が大きく変わったというまでではない。甘夏ネロリは、海外の方が「日本製」「オーガニック」「トレーサビリティ」の3つが強みになり、反応がある。反応を見ながら長く世界に流通できるものを目指したい。

剪定する葉や青みかんからの抽出にも取り組んでいる。これらが進んで、甘夏一本で一家を食べさせられて、Iターン希望者や後継者も出てくるくらい、魅力がある事業にできればというのが目標。
いま事業に共感して協力してくれているのは、60代くらいのシルバー世代の方々。どこもそうだと思うが、地方では彼らが若手。彼らが支えている。

オーガニックなものをもっと追究して、水俣から新しい分野ができるくらいになるといい。元々これをやるつもりではなく、たまたま甘夏ネロリを見つけて、その奥深さに出会い、私がやるしかない、伝えるしかない、と、えいやっと起業した。まさか私がこんなことをするとは。でも、せっかくだから、そこまでやって、未来に良いことがしたい。


過去の教訓から学び、未来のために、環境や健康に配慮しながら事業としても成り立つシステムを目指すこと。森田さんの明確なビジョンと、それを着実に形にしていく地道な行動力。またさらにそれを偶然のような必然が後押ししていること。具体的な取り組みを通してお聞きすると、とても興味深く、示唆に富むものでした。

最後に森田さんからは、KIITOも生活全体を見渡して、未来のあり方をいろいろな人たちと協働しながら、総合的に考え目指していける場だと思う。新しい未来のデザインを打ち出していくような場にしてほしい、とメッセージをいただきました。



未来のかけらラボvol.6 トークセッション「水俣からの新たな価値創造―甘夏ミカンから国産ネロリが生まれるまで」
開催概要はこちら

2015年6月6日(土)

昨年に引き続き、「KIITOマルシェ2015」を6/6(土)に開催しました。小児がん専門医療施設、「チャイルド・ケモ・ハウス」の支援を目的に、KIITOと協働するクリエイターが集結し、販売やワークショップ、飲食などたくさんのブースが並びました。開場前から並ぶ人もおり、開始からとても賑わいのあるマルシェとなりました。

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会場の中央には大きな青のカーテンが、各ブースには網状の黄色いとんがり屋根が並びます。会場の真ん中に位置するピクニックヤードには巨大なダンボールの床が設置され、子どもたちは靴を脱いで、床に絵を描いたり、転がったり、まるで原っぱで遊んでいるような様子で、楽し王でした。
会場デザインを手がけていただいたのでは、2014年のちびっこうべで建築家チームとしてご協力いただきました、MOMさんです。
 
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チャイルド・ケモ・ハウス チャリティーウォーク2015」では、チャイケモカラーの緑色Tシャツを着て、711名の参加者が、東遊園地をスタートし、三宮センター街、南京町、メリケンパークを通り、ゴールのKIITOまで、全長約5㎞を歩きました。街中を通ることで、たくさんの方へチャイルド・ケモ・ハウスを知っていただく機会となりました。
 
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出店ブースでは、未来に届く手紙を書くワークショップ、木片が5円玉の穴を貫通した不思議な木のキーホルダーづくりやイラストレーターによる似顔絵など様々なプログラムが並びました。また飲食も、ホルモンうどん、コッペパンサンド、コーヒー、かき氷、はちみつドリンクなど、どれも食べてみたくなるメニューばかりでした。参加者はいろいろな体験や食べ物を楽しみながらゆっくりと過ごしていただけたようです。

KIITOマルシェで集まった寄付は、合計247,444円になりました。ご協力いただいた出店者の皆様、ありがとうございました。
寄付受渡の様子
 
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photo:株式会社イデアグラフフォトワークス

「KIITOマルシェ2015」
http://kiito.jp/schedule/event/article/12103/

2015年6月6日(土)

昨年に引き続き、「KIITOマルシェ2015」を6/6(土)に開催しました。小児がん専門医療施設、「チャイルド・ケモ・ハウス」の支援を目的に、KIITOと協働するクリエイターが集結し、販売やワークショップ、飲食などたくさんのブースが並びました。開場前から並ぶ人もおり、開始からとても賑わいのあるマルシェとなりました。

その中のワークショップブースにて、ちびっこうべのデザイナーチームが「せかいをかえるマグネット」と題してワークショッププログラムを出店しました。

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ブースでは、きもちを伝える絵を描いたり、メモをとめたり、ご家族のコミュニケーションを新たに生み出すことを目的として、冷蔵庫やドア、ポストなど、あちこちを○△□のマグネットシートでデコレーションできるものをつくりました。

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会場は親子連れの方たちで賑わっており、参加したこどもたちは、さかなやどうぶつ、飛行機や車など思い思いにマグネットの形を組み合わせ、自分だけのマグネットシートを生み出していました。

せかいをかえるマグネット
開催概要はこちら

KIITOマルシェ2014のレポートはこちら

デザイン・クリエイティブセンター神戸で、2015年7月、8月に開催する催事についてプレスリリースいたします。

プレスリリースはこちら(PDF)

2015年6月6日(土)

「海のピクニック」がテーマの「KIITOマルシェ2015」にあわせて、1日限定の「海辺のレストラン」がオープン。

料理は、真空パック料理のネット販売やケータリングを行う松平英也氏(ボングー宝塚)が海の幸を使ったカレーとハヤシライスの2種がけを提供し、イタリア料理の教室も行う吉島幸代氏(cucina sacci)が自家製の鶏ハムを使った夏にぴったりの冷製パスタを提供しました。

<メニュー>
・シーフードカレー&和牛特製ハヤシライスの2種合いがけ(ボングー宝塚)
・自家製鶏ハムとツナの冷製パスタ(cucina sacci)

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空間は、いりえみなこ氏と加藤正基氏が手掛け、海辺の楽しい雰囲気をカラフルな台(テーブル、イス)で演出し、KIITOマルシェに訪れた人たちがほっと一息つける楽しい空間を演出しました。
木製の台の上に、色々な硬さの板状のスポンジを重ね、少し段差を作ることで、座りながら一角をテーブルとして使う人や、小さい子どもを台の上に寝かせている親御さんの姿も見受けられました。

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会場では、来場者が思い思いにカラフルな台を使い、楽しいひと時をすごしていました。

「海辺のレストラン」開催概要はこちら

KIITOマルシェ2015のレポートはこちら

2015年6月13日(土)

「食からはじまるライフデザイン -自然によりそう暮らし- volume.3」を開催しました。
都市で生活する人々が、食を通じて自然に寄り添い、こころ豊かな暮らしを楽しくデザインしていくきっかけとして本企画は、2014年11月にスタートしましたが、今回はその第三回目です。

2014年11月3日開催 volume.1のレポートはこちら
2015年2月8日開催 volume.2のレポートはこちら


第三回は『タネのある暮らしを愉しむ』をテーマに実施しました。

タネのデザインの美しさを知る
講師の出口さんは、たくさんのタネを収集し、その保存をされながら、移動販売の八百屋さんをしています。
そんな出口さんは、私たちが食べている食物はほとんどがタネから育ち、そこから実ったものを食べているため、タネがなければ食物を食べることができず、タネを守ることはとても大事だということを、伝える活動を日頃からされています。
タネにもいろいろな種類があり、その見た目はとてもデザイン性が高いと、スライドを見せながら出口さんはおっしゃっていました。また、タネの名前にはおもしろい由来もあり、例えば「花嫁小豆」は「花嫁さんがいつ帰ってきても炊ける」という意味があるそうです。


タネのめぐり、サイクルを知る
タネを収集している出口さんですが、今回は約100種類のタネを持ってきていただき、参加者みんなで観察をしました。
その際にタネのサイクルの話をしていただき、タネを蒔けばちゃんと野菜になり、できた野菜をすべて食べるのではなく、次の野菜を育てるためのタネを残すことも大事だということを教えていただきました。そういったことも、農家さんであればタネを蒔いているので知っているが、普段スーパーなどで野菜を買っているだけだと気づかないことも多く、タネの大切さをより多くの方に知ってもらえることは農家さんもとても喜ぶそうです。


色々なタネを見て、そのサイクルを学んだあと、13種類の蒸したタネ(主に豆)を食べ比べしました。「粉っぽさを感じるのはインゲン豆」など、それぞれ感想が色々と出ていました。
はじめはタネとして見てきたものを、ここで初めて参加者は口にしたのですが、「タネと思うか、豆と思うかは、蒔く気持ちがあるかどうかだ」と出口さんはおっしゃっており、とても印象的でした。


タネを蒔く
タネのサイクルを知ったところで、実際に参加者1人1人が、自分でタネを植えてその苗が育つ過程を体験してもらおうと、「金ゴマ」と「黒豆」のタネを、それぞれポットに植えて、各自持って帰ってもらいました。
後日、参加者の方からは「こんなに育った」「収穫できた」と、嬉しいコメントもいただきました。



タネ料理を食べる
最後に、木下かよこさんに料理していただいた、約10種類のタネをつかった料理を参加者全員で食しました。
<メニュー>
・玄米ごはん(大納言小豆、イロイロ米)
・黒っこむすび(胚芽米、黒大豆、黒ゴマ)
・えごまのふりかけ
・黒豆コロッケ(丹波黒大豆)
・もちきび入り春巻き
・いとこに煮(春日黒さや大納言小豆、かぼちゃ)
・もちきびアーモンド
・炒り黒豆とひじきにお重ね煮
・ひたし豆(青大豆)
・白いんげんと重ね煮のスープ
・まだか漬け(炒り黒豆)
・ごぼう漬け
・新玉甘酢漬け
・白あん(白小豆)と玄米コーヒーとイチゴの甘酒アイス


タネがあることの大切さを知り、最後に食すことで、美味しく食べて楽しく暮らすということを参加者のみなさんと一緒に学びました。


イベント内で展示した約100種類の種は、その後、約1か月間展示を行いました。

「食からはじまるライフデザイン -自然によりそう暮らし- vol.3」
タネのある暮らしを愉しむ EXHIBITION


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2015年6月19日(金)

セルフ・ビルド・ワークショップ KIITOの余白活用実験2015「余白不動産」プロジェクト 第0号物件となる「YOHAKU PUB」を実施しました。

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KIITOクリエイティブラボ入居者から、KIITO内の「余白」活用アイデアを引き出すべく、まずは企画者のRADが、「余白不動産第0号物件」として、1階エレベーター脇のくぼみを使って、一日限定のYOHAKU PUBをオープンさせました。

KIITOにあった、催事などで使用し残っていた半端なサイズのベニヤ板や角材を利用して、3時間ほどでカウンターを制作。席数4の極小PUBです。

金曜の夜とあって?途切れなく入居者の来訪に恵まれ、「卓球スペース」「チャレンジショップ」など、おもしろくなりそうな余白活用アイデアが聞けました。


PUBはもう1回開催予定。
その後、入居者主導のもとに、このような余白活用を実現させるのが目標です。
どんなアイデアが実現するのか?今後もレポートしますので、お楽しみに。


YOHAKU PUBについてはこちら

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6/6(土)、ポートアイランドにある小児がん専門治療施設「チャイルド・ケモ・ハウス」の活動を支援するチャリティーイベント「KIITOマルシェ2015」を開催しました。
昨年を大幅に上回る、2,089名の方にご来場いただきました。

出店者の方に、マルシェでの売上からご寄付をいただき、先日、チャイルド・ケモ・ハウスへお届けしました。
寄付総額は¥247,444となりました。
今回の寄付は小児がん治療中の子供たちのために役立てられます。
ご来場いただいた方々、出店者の皆様、本当にありがとうございました。

今後もチャイルド・ケモ・ハウスへとの協働を継続していきます。


KIITOマルシェ2015
開催概要はこちら

チャイルド・ケモ・ハウスについてはこちら

2015年5月28日(木)

KIITOのデザイン・トークイベント「Designers」。様々な分野で活躍されているデザイナーの方々にお越しいただき、仕事の紹介やその進め方、デザインの考え方や今後の活動について、お話をして頂くレクチャー企画です。
第9回目となる今回は、デザインリサーチャーの久慈達也さん(DESIGN MUSEUM LAB)と田頭章徳さん(DESIGN SOILディレクター/神戸芸術工科大学助教)のお二人をお招きし、毎年4月に開催される世界最大規模の家具見本市ミラノサローネでの、世界各国のデザインスクールの展示についてと、神戸芸術工科大学「DESIGN SOIL」の出展の舞台裏についてお話をして頂きました。

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はじめに、久慈さんより、ミラノサローネとはどういうものなのかということと、今年の傾向についてお話いただきました。そして、今回の主題である、ミラノサローネに出展している世界各国のデザインスクールのお話へと移ります。

デザインスクールが出展するエリアは大きく分けて4つあり、中でも本会場に付随しているサローネサテリテ、新興地区であるランブラーテに出展校が集中しています。本会場内にあるサローネサテリテでは、大学の出展枠が用意され、各国の代表を選抜するという形での展示がされており、田頭さんがディレクターを務めるDESIGN SOILも、こちらの会場で3年間出展されたのだそうです。

比較的新しいエリアであるランブラーテには、26校ほどのデザインスクールが出展し、期間中最も多くの学生作品を見ることができます。ここでは、社会課題にアプローチし、主題がはっきりとした作品が多いのが特徴です。全体を通して見ると、卒業制作優秀展として出展している大学が最も多いのですが、社会性のあるテーマを設定し、学生の作品を再編集して出展している大学も見られます。また、マテリアルへのリサーチに取り組む大学が多いのも、近年の特徴なのだそうです。

社会との接続は、デザインを学ぶ学生にとって大きな課題であり、日本国内のデザインスクールも、重要視して取り組まなければならないと言われていました。

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そして次にお話して頂いたのが、2010年より神戸芸術工科大学のデザインプロジェクト「DESIGN SOIL」のディレクターとして、学生たちと一緒に毎年ミラノサローネに出展されている田頭さん。出展者ならではの、いかに荷物を軽量化し、飛行機に詰め込めるサイズと重さにするか、といった舞台裏の苦労話や、学生がミラノサローネに出展することの意義など、普段なかなか聞くことのできない貴重なお話をしてくださいました。

英語が話せない学生も、身振り手振りで自分の作品についてプレゼンします。ミラノサローネの会場を訪れる人々は、不慣れな英語にもしっかりと耳を傾け、理解を示してくれるのだそう。ミラノでは、小学生の社会科見学の授業にミラノサローネが組み込まれているほど、デザインが教育に必要なプログラムであると位置づけられています。出展者だけでなく、大人も子供も、街の人全体が連なってミラノサローネに関心を持っていることが、最大の魅力であり価値であり、日本の学生は、必ず多くの刺激を受けることになると言われていました。

今回は、実際の出展者の言葉とあわせ、各国のデザインスクールの状況を俯瞰することで、企業の新作発表の場に留まらない、ミラノサローネのもうひとつの魅力を感じていただけるトークイベントとなりました。

また、久慈さんに、今回お話して頂いた内容についてのレポートをまとめて頂きました。会場に足を運んで頂けなかったという方も、是非こちらをご覧頂き、世界各国の優れたデザイナーの卵たちの可能性と、デザイン教育の今後の展望について、再考して頂くきっかけになればと思います。

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ミラノサローネ2015レポート 久慈達也さん(DESIGN MUSEUM LAB/デザインリサーチャー)
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多くの企業が新作家具を発表する世界最大級の国際家具見本市ミラノサローネにあわせて、ミラノの市内でも様々な展示やイベントが開催される。その中には、世界各地のデザインスクールの展示も含まれており、この時期のミラノは、世界中の学生の新鮮なアイデアに触れられる貴重な機会にもなっている。

デザインスクールが主に展示している場所は、本会場フィエラに設けられたサローネサテリテ、および新興のランブラーテ地区の二カ所に集中している。若手デザイナーの登竜門として日本からも多くの出展者がいるサローネサテリテには、大学の出展枠が設けられており、日本から毎年一校が参加している。本年は、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科が出展した。芸術系大学の国際連合組織CUMULUSがミラノ工科大学(Politecnico di Milano)と合同で、ミラノ万博用の展示のプレビューを行っていたのが今年らしい話題だった。

サローネサテリテ会場風景 サローネサテリテ会場風景 アアルト大学「still leben」 アアルト大学「still leben」

作品では、ドイツのバウハウス大学ヴァイマール(Bauhaus-Universität Weimar)やパリのエコール・ブルー(L’Ecole Bleue)などが目立ったが、フィンランドのアアルト大学(Aalto University)が他校に対し頭一つ抜けていた。1.5mmの航空機用合板から作られた5脚の椅子は、同素材を用いながらもデザイナーとしてのそれぞれの個性がはっきりと感じられる形状に仕上がっていた。北欧勢お得意のガラスや陶磁器も流石の出来映え。国内ではデザインの文脈で制作されたガラス器を眼にする機会は依然として少ない。アアルト大学の展示を見ると、工芸とデザインの間を取り持つようなプロジェクトの必要性を感じさせられる。

市内に移れば、昨年の「Delirious Home」の成功も記憶に新しいフランスのECAL (Ecole cantonale d’art de Lausanne)
の展示にまず目がいく。本年のテーマは「#Photo Booth」。スマートフォンでの「自分撮り」という時代感のある主題に挑んでいた。昨年に引き続き、ECALの展示は決められた主題に沿って作品を作り込む内容であり、いわゆる優秀作品展とは一線を画している。また、同校に関して特筆すべき点は、企業とのコラボレーションの多さである。EuceplanやAxor、Vacheron Constantin等と取り組んだプロジェクトが市内の各所で展示され、ECALのブランド力を押し上げている。それぞれのプロジェクトを率いているのが、ミシェル・シャーロットやフォルマファンタスマなど現在第一線で活躍する1980年代生まれの若いデザイナーたちであることも指摘しておきたい。

ECAL「#Photo Booth」: Kévin Gouriou and Calypso Mahieu,The Selfie Project ECAL「#Photo Booth」: Kévin Gouriou and Calypso Mahieu,The Selfie Project ECAL×Euceplan 会場風景:Michel Charlotとのワークショップ ECAL×Euceplan 会場風景:Michel Charlotとのワークショップ

今年、日本の大学生にとっては明るい話題が一つあった。トルトーナ地区で行われたTOKYO DESIGNERS WEEKの中に、卒業制作作品を紹介するコーナー「TDW卒展」が新設されたのである。これまで国内の学生がミラノサローネに参加するためのチャンネルは、神戸芸術工科大学DESIGN SOILのような特殊なプロジェクトを除けば、さほど多くなかった。本企画によって、海外のデザイン関係者に直接作品をみてもらえる機会が広がったことは歓迎すべきことである。輸送や渡航に関する補助を受けられるメリットもあるので、学生にはぜひ挑戦してもらいたい。

TDW卒展会場風景 TDW卒展会場風景 Ventura Lambrate会場風景 Ventura Lambrate会場風景

さて、今年で6回目の開催となる「Ventura Lambrate」は、ミラノデザインウィークの中で最もデザインスクールが集まっているエリアである。「素材」や「構造」のスタディに取り組むドイツのオッフェンバッハ・アム・マイン造形大学(Hochschule für Gestaltung Offenbach am Main)やデンマークのオーフス大学(Aarhus University)など基礎研究的な部分を掘り下げるところもあれば、ファッションやジュエリーコースの学生も参加し、動物がいる暮らしを再考するプロダクトを並べたスイスのジュネーブ造形芸術大学(Haute école d’art et de design)のようにテーマ性の強い展示を見せるところもあった。

ジュネーブ造形芸術大学「The Animal Party」 ジュネーブ造形芸術大学「The Animal Party」 ブルグ美術学校 Carolin Schulze, Bugs Bunny ブルグ美術学校 Carolin Schulze, Bugs Bunny

今年は、万博のテーマでもあり、近年の傾向の一つといえる「食」に関するプロジェクトがやはり目立つ結果となった。スウェーデンのルンド大学(Lund University)は、「Tomorrow Collective」と題して、自家製のチーズ製造機や化粧道具など、サステナブルな生活のための雑貨を多数提案したし、ドイツのブルグ・ギービヒェンシュタイン美術大学(Burg Giebichenstein University of Art and Design)は、今後の食料供給の問題から昆虫食の可能性に言及してみせた。オランダのピート・ズワルト・インスティテュート(Piet Zwart Institute)は「Next Habitat」をテーマに、残薬やエネルギーなどの社会課題にアプローチしていた点が印象的であった。これらの大学に共通しているのは、現状の課題を踏まえてこれからの生活や社会の在り方にオルタナティブな解答を打ち出していく、スペキュラティブな姿勢である。未来の生活にどんな貢献ができるのかを真摯に掘り下げている点が、前述の「TDW卒展」に選出されていた作品たちとの根本的な違いとして表れていた。

ピート・ズワルト・インスティテュート「Next Habitat」 ピート・ズワルト・インスティテュート「Next Habitat」 デザイン・アカデミー・アイントホーヘン「Eat Shit」 デザイン・アカデミー・アイントホーヘン「Eat Shit」

今回、ランブラーテで話題をさらったオランダのデザイン・アカデミー・アイントホーヘン(Design Academy Eindhoven)もこの延長線上に位置している。「地球に食を」がテーマのミラノ万博の開催年に、彼らが投じてきたテーマは「Eat Shit」という挑発的なもの。今回の展示は、昨年設立されたFOOD NON FOODコースのお披露目という意味もあり、会場の壁面には1976年から2014年までに同校で制作された食に関するプロジェクトが時系列で張り出されていた。その年度の優秀作品を並べる展示を続けてきた同校にしては珍しいスタイルであったが、展示におけるこの変化は、裏を返せば、食との関わりを持たぬために居場所を見つけられなかった作品たちが一定数存在したということでもある。実際、昨年のデザイン・アカデミー・アイントホーヘンの卒業制作展でみかけた幾つかの作品が、オランダの若手が集ったクレリチ宮殿にてひっそりと展示されている様子が印象的だった。

デザインスクールの展示は、大学をPRするための「Show Case」としての性格が強いことは否めない。それでも企業が主役の巨大なビジネスシーンの裏側で、若い才能たちによってこれからの生活の在り方が同時に点検されているという状況は心強いことであり、他のデザインフェアとは異なる深みをミラノサローネに与えてくれていることをぜひ記憶に留めておいてもらいたい。(文責:久慈達也)

axis lecture

KIITO副センター長・永田宏和が、東京、AXISギャラリーで6月26日(金)に開催されるAXISフォーラムに登壇します。
テーマは「+クリエイティブ」で地域にアクションをー社会課題に取り組む神戸KIITOの挑戦

KIITOは「+クリエイティブ」を活動のコンセプトに掲げ、地域住民と共に神戸が直面している様々な社会課題に取り組んでいます。
現場のリサーチから始まり、議論を重ね、実際のアクションプランづくりから事業化に至る、ゼミ形式で行われた成果の多くが神戸で試行されインパクトを与え続けています。
実際に動いてる多くのプロジェクトを紹介しながら、KIITOが社会課題に取り組む際のフィロソフィー、ビジョンや展望などをお話します。是非ご参加ください。

第51回 AXISフォーラム 永田宏和 講演会
「+クリエイティブ」で地域にアクションを ー社会課題に取り組む神戸KIITOの挑戦


日 時:6月26日(金)19:00~20:30 開場18:30(終了後、懇親会あり)
会 場:アクシスギャラリー(東京都港区六本木5-17-1 アクシスビル4F)
参加費:1,000円(税込)
定 員:100名(先着順)

お申し込み
メールタイトルに「AXISフォーラム申し込み」と明記のうえ、氏名・ふりがな、職業、電話番号、メールアドレス、永田への質問とともにforum@axisinc.co.jpまで。

第51回AXISフォーラムについて、詳しくはこちら

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